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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和6年3月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     新穀の収穫が始まりました。3/15時点での進捗は5%以下とみられていますが、収穫された貨物は水分が高く、輸出する品質に見合わないため、国内に販売される見込みです。
     米国内の酪農家は、必要最低限の量を順次買い付けしており、依然として活発ではない状況です。一部、手前で現金が必要な牧草生産者は、限定的に低価格での取引を行っておりますが、一般的な生産者は相場が回復するまで、販売を控えているようです。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     ここ数か月間は暖冬傾向で充分な積雪が無い状態でしたが、コロンビア盆地周辺の水源となるカスケード山脈および近隣山地への積雪量は改善しています。3月上旬時点で、エレンズバーグやドライランド地域には、牧草の生育期に必要な水分が確保できそうな見込みです。また、気温は、3月後半にかけて50゜F(10℃)を超える見込みとなり、生育期には最適な状況です。現地での小麦価格は軟調傾向にあり、いくつかの生産者は小麦からより利益が見込めるトウモロコシ、玉ねぎ、ジャガイモや豆類への転作を検討しています。
     作付け面積は、昨年からの相場価格の低迷を受けて減少する見込みです。一般的には3月の中旬から下旬にかけて、作付け面積の大半を決定するため、4月には今年の夏の作付け面積の動向について、より見えてくると思われます。市場価格は、ほぼ横ばいですが、ここ2-3週間で荷動きが活発化しています。今のところ、4月下旬から5月上旬に新穀の集荷が開始すれば、繰り越し在庫が発生する見込みです。

2. 米国産チモシーヘイ

 コロンビアベースンでは、産地相場は牧草生産者にとって魅力的でないため、作付け面積が減少すると予想されています。4月上旬には生産者が、夏の収穫に向けた作付け意向を定めるので、より傾向値が掴めるようになります。

3. スーダングラス

 現在、主産地であるインペリアルバレーでは、スーダンの作付けを開始している圃場は多くありません。3月下旬には、作付けの動きが活発化すると予想されています。アリゾナ州では、既にいくつかの圃場にスーダンが植え付けられたと報告されています。一方で、市場価格が低迷していることを受け、生産者の今年の作付け意欲については、まだ明確になっていない模様です。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 現在、2024年収穫予定の圃場は、順調に生育しています。天候が順調で、エンドファイトの検査が順調に進めば、アニュアルライグラスは6月下旬、ペレニアルライグラスは7月中、フェスクは7月下旬に出荷できる見込みです。
 USDAの生産者調査によると2016年から2024年の作付面積の予想では、ペレニアルライグラスとフェスクの作付け面積が減少しています。オレゴン州牧草種子協会の見解では、コロナ後に牧草種子の需要が予想よりも弱く、一部の種子会社が、これ以上在庫を増やさないよう、契約している生産者に20-30%の生産を制限したことが理由として挙げられています。コロナ過では、多くの人々が家で過ごす時間が長くなり、ガーデニングへの投資を増やし、牧草種子業界は増産体制に入っていましたが、コロナ後に生活様式が再び変わったことと急激なインフレの影響を受け、牧草種子の需要が減少しました。一般的には、自宅でのガーデニング等への消費よりも、旅行等の自宅外への消費が増えているようです。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     新穀の収穫は各地域で完了しました。
     6月から7月に降雨に恵まれましたが、8月は少雨傾向となりました。これを受け西豪州の一部地域では収穫量の減少が懸念されていますが、他の地域では生育状態が維持できており良好な収穫量が予想されています。収穫期の雨当たりが少なかったことを受け、今年は上位グレードの発生が中心になる見通しです。
     下位グレードに関しては、旧穀の産地在庫は比較的余裕のある状況でしたが、新穀が上位グレード中心の収穫となったこと、また9月29日に中国政府が豪州産オーツヘイの輸入を再開したことを受け、需給は引き締まっています。
  • 小麦ストロー
     旧穀に関して、産地在庫は払底に近い状況です。
     新穀について、小麦ストローが圃場でベーリングを待っている状態で、年末年始にかけてヴィクトリア州から東豪州にかけてまとまった降雨がありました。これを受け、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の良品供給余力はひっ迫しています。チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)についても雨当たりによる品質劣化が懸念されていますが、農家との事前契約生産品であるロングタイプよりも構造上生産量が多いため、平年程度の需要量であれば大部分を良品で賄える見通しです。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、一部動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港については、おおむね正常通りに稼働しています。しかしながら日本直行便の本数も限られており、同一本船への集中は続いています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、ポートランドにおけるコンテナ機器不足が発生しており、動静遅延・デリバリーに支障が引き続き出ています。この傾向が大きく改善される見通しは、今のところ立っていません。
  2. 豪州航路
     豪州海事労働組合(MUA)と港湾オペレーターであるDPワールド・オーストラリアの労使協定が批准され、遅延の回復に向かっています。一方、豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港において、スエズ運河を回避し喜望峰ルートへ変更を余儀なくされたスケジュール乱れの貨物が集中し、混雑することが予測されます。

以上

令和6年3月22日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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