食鳥情勢(令和5年9月)
生産動向
生産・処理動向調査((一社)日本食鳥協会令和5年7月末実施)によると、7月の推計実績は処理羽数58,621千羽(前年比100.4%)、処理重量175.3千トン(同101.2%)となった。前月時点の計画値より処理羽数は0.6%下方修正、処理重量は0.7%上方修正された。熱死等の影響で処理羽数は下がったものの、増体はよく処理重量は上回る結果となった。処理羽数・重量共に中部地区以外のすべての地域で前年同月を上回る実績となっている。
8月の計画は処理羽数、処理重量とも前年を上回る見通しとなっている。北海道・東北地区、関東地区、中部地区、近畿・中国・四国地区、北部九州地区、南九州地区、全地区で前年を上回る見通しとなっている。ただ、8月に入り、北海道・東北地区で例年以上に猛暑日も多く観測され、熱死が増えてきたとの報告が上がっており、生産への影響が懸念される。工場の人員不足は技能実習生が来日するようになったことで、少しづつ解消されており、加工品(切り身・手羽中二ツ割・砂肝スライス等)や副産品(小肉・ハラミ等)の生産は徐々に回復していくと思われる。

輸入動向
財務省8月30日公表の貿易統計によると令和5年7月の鶏肉(原料肉)の輸入量は前月から▲11.0千トンの46.7千トンで、国別ではブラジルが前月▲7.7千トンの33.8千トンでタイが▲2.9トンの12.2千トンとなり、ブラジル・タイともに前月より減少となった。前年同月の実績に対しては+1.1千トンとなった。(独)農畜産業振興機構(ALIC)による今後の見通しでは、8月が48.8千トン(前年比103.0%)、9月は43.3千トン(前年比92.5%)となっている。ブラジルでの鳥インフルエンザ発生に伴う発生州からの一時輸入停止措置の影響もあり、9月は前月時点の予測から減少となっている。ブラジル産については一時輸入停止措置が解除されたことにより、価格が下降傾向となっており、今後の国内市場への影響が懸念される。タイ産については引き続き価格は上昇傾向となっており、国産ムネ肉への影響が考えられる。
鶏肉調整品の輸入量は前月から▲0.2千トンの39.5千トンで、国別では中国が▲0.6千トン、タイが+0.2千トンとなった。前年同月の実績に対しては▲4.3千トンとなり、前月比・前年比ともに下回る結果となった。タイの生産は引き続き安定しており、7月実績は増加となった。価格については依然として高騰しており、上昇傾向が予想される。外食についてはインバウンド需要等で回復しつつあり、中食・総菜向け等の引き合いも継続して強い状況である。
財務省が8月30日に公表した貿易統計によると7月の輸入鶏肉(解体品)の価格は前年同月より4.2%下降し、鶏肉調整品は前年同月より4.1%上昇した。国別ではブラジル産の価格が350円/kg(前月比27円高)、タイ産が395円/kg(同23円高)となっている(国別平均価格)。前年比ではブラジル・タイともに下降した状況である。ブラジル産は7月実績は上げ基調となっているが、一時輸入停止措置が解除された影響もあり、国内市場価格は下降傾向となっている。タイ産については現地価格が引き続き上げ基調になっており、今後の国産鶏肉への影響を注視したい。

消費動向
家計
総務省統計局発表の家計調査報告(全国・二人以上の世帯1世帯あたり)によると、令和5年7月の生鮮肉消費(購入)は数量3,927g(前年比96.8%)、金額6,261円(同100.8%)と、数量は前年を下回り、金額は前年を上回った。鶏肉は数量1,361g(同94.6%)・金額1,422円(同105.7%)・単価104.5円/100g(前年同月+11.0円)と、数量のみ前年を下回る結果となった。調理食品が金額13,202円(同106.2%)、外食が14,657円(同114.5%)となっている。光熱費の高騰やあらゆる商品の値上げが相次ぐことや、猛暑により調理が敬遠され中食需要が伸びている。外食においても、行動制限もなく、加えて入国規制緩和による外国人旅行客によるインバウンド需要もあり、コロナ前に戻りつつあると考えられる。
量販
食品関連スーパー3団体の販売統計速報によると、令和5年7月の食品売上高は全店ベースで前年比105.5%と前年を上回った。生鮮3部門の売上高は全店ベースで同104.0%、既存店ベースは同102.7%となった。また、畜産部門の売上高は約1,142.7億円で全店ベース同103.9%、既存店ベース同102.4%となった。一般社団法人全国スーパーマーケット協会によると、猛暑により季節商材の販売が好調。夏祭りやイベント需要も回復し、光熱費の高騰や猛暑による調理敬遠を追い風に特に総菜部門が好調とのこと。畜産部門においては、精肉全般で相場高が続いているが、豚肉・鶏肉では安価な部位や涼味商材を中心に好調。牛肉では国産相場は高値が続いており、輸入牛のほうが動きがよい。ステーキやバーベキュー需要は好調。加工肉を含め、低価格商品に需要がシフトしており、売上高は確保できても利益が取れない状況が続いているとのこと。

加工筋
日本ハム・ソーセージ工業協同組合調べによると令和5年7月度の鶏肉加工品仕向肉量は、前年比105.8%の4.9千トンとなった。うち国内品は同94.3%の3.7千トンと前年を下回り、輸入品については同165.4%の1.2千トンと前年を上回った。
在庫状況
(独)農畜産業振興機構(ALIC)の推計期末在庫では国産30.6千トン(前年比106.0%・前月差+2.0千トン)、輸入品129.6千トン(同107.0%・同▲4.0千トン)と合計で160.2千トン(同106.8%・同▲2.0千トン)となった。
(独)農畜産業振興機構(ALIC)が発表した鶏肉需給表では、7月の出回り量は国産131.5千トン(前年比97.5%・前月差▲10.8千トン)、輸入品50.7千トン(同116.4%・同▲0.9千トン)と合計で182.1千トン(同102.1%・同▲11.7千トン)となった。8月以降の国産在庫については、販売に苦戦しているモモ肉や年末特殊品の製造等により増加していくと予測する。輸入鶏肉については(独)農畜産業振興機構(ALIC)の予測では、入荷量は、8月は、鳥インフルエンザが発生した影響によりブラジル産の輸入量は減少するものの、タイ産の輸入量が増加することから、前年をやや上回ると予測されている。出回り量は前年をわずかに上回る予測のため、8月の期末在庫は前年同月を上回ると予測される。
