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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和4年4月号

1. アルファルファヘイ

  1. カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     上級品を中心に相場は堅調に推移しています。中国とサウジアラビアは非常に積極的に購買を進めているようです。米国内では上級品を積極的に購入している酪農家がいる一方で、一部は今後の価格下落を期待し購買を少量に抑えている酪農家もいる様子です。現在購買を抑えている米国内酪農家は、後に市場に参加することになるため、後半での需要の高まる可能性があることを認識しておく必要があります。
     生産者はすでに2番刈の収穫を進めています。天候に恵まれ、刈取後に素早く乾燥が進み、早朝には適度の朝露と湿気もあるため、品質は非常に良好な状態で収穫されている模様です。
  2. ワシントン州(コロンビア盆地)
     米国西海岸北部および南部は、改善が見られた地域が一部あるものの、別の地域では悪化するなど変動はありますが、全体的には干ばつが続いています。3月上旬には降水量が増加しましたが、3月後半では予想よりも乾燥した気候が続きました。オレゴン州東部は干ばつが悪化し、「干ばつがシビアな地域」と後退した地域の1つです。通常、コロンビア盆地では通常4月に多くの降雨があるため、今後も注視する必要があります。
     気候が温暖なことが作物の早期成長を促しています。2週間前の時点では、アルファルファの背丈は、過去5年間の平均よりも5~7日程度生育が進んでいました。温暖な気候が続くと作物の成長期が長くなるため、収穫量が増える可能性があります。一方で、今週のコロンビア盆地周辺の天気予報によると気温が下がる予報であるため、このことは成長を遅らせる要因になると見られます。
     相場は安定しているものの、在庫が品薄となっており購買の機会は非常に少ない状況です。今後作物が収穫されるまで間もないですが、昨年対比で相場が大幅に上がることを予測する生産者がいるようです。

2. 米国産チモシーヘイ

 コロンビア盆地におけるチモシーの生育状況は今のところ良好です。これまで温暖な気候が続いたこともあり、ここ1-2年と比較して生育が早まっていると見られます。

3. スーダングラス

 遅播きスーダンは小麦収穫後に始まるため、作付面積は予想より少し多くなる可能性があります。一方で、肥料等の生産コストの上昇が生産者にとっての障害となる可能性があるため、輸出業者は作付面積の大幅上昇を期待していません。これは、生産者が遅播きスーダンの作付けを減らして、肥料購買を抑え、低減したコストを秋以降の別の農産物の収穫に利用するかもしれません。生産者が除草剤等の農薬や肥料の調達に苦労しているという声があります。
 肥料および農薬の供給不足は、中国での新型コロナによる施設封鎖、除草剤であるグリホサートの製造施設に影響を与えたハリケーンIda(アイダ)や、グリホサートの原料供給不足に端を発した製造販売元による不可抗力宣言(供給できないが自信の責任ではないとするお手上げ:供給不能宣言)、ロシア・ウクライナ戦争等に関連している可能性があります。
 遅播きスーダンは、小麦、ニンジン、テンサイ、玉ねぎの後に作付けされます。早播きスーダンの相場が堅調で生産者にとって魅力的な価格である場合、生産者はより遅播きスーダンの作付けを行うものと見られます。
 4月のインペリアルバレー灌漑局からの発表によると、13,987エーカーが灌漑されています(前年同月:13,773エーカー、先月:2,934エーカー)。
 1番刈のスーダンは、今後の気候によりますが6月上旬頃に収穫開始となると見られます。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 新穀の収穫スケジュールを予測するには早すぎるタイミングです。一方で、コンテナ不足や、港の混雑、船のスケジュールの乱れに加え、トラックや貨車も不足しており、輸出業者は引き続き船積みに苦戦している模様です。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     全エリアで新穀の収穫・ベーリングが完了しています。サプライヤー情報によると、2021年産のオーツヘイとしての生産量は、輸出需要に対して20万トン弱の不足が見込まれ、全豪が干ばつで生産量が不足した2019年産に迫るレベルでの不足が予測されています。
     豪州国内の畜産相場の高止まりを受け、豪州国内需要と輸出業者との取り合いが続いており、現地価格が上昇しています。
     サプライヤーのプレススケジュールは既に8月頭まで埋まっており、日本向け即積みを行っても、9月入船以降が目安となります。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     小麦の収穫が完了しました。既報の通り、2021年産のストローは例年に比べ全豪での集荷量が不足しています。集荷量不足から、事前にオーダーを受けていても、「出荷できない」という回答を返しているサプライヤーの例も聞かれます。
     また、オーツヘイ同様に、豪州国内の畜産相場の高止まりや、豪州国内需要と輸出業者との取り合いが続いており、現地価格が上昇しています。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、引き続き動静の大幅な遅延および、ブッキングの確保が厳しい状況が続いています。
  1. 北米航路
     アジア発北米向けの貨物量は、引き続き堅調な推移となっています。太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は、一部業界紙などで、滞船の減少が報道されていますが、滞船が解消したわけではなく、引き続き滞船は継いています。作業員不足およびトラッカー不足、また船会社が設定しているターミナルへの搬入時間の急激な変更が多発しているため、予定していた本船に貨物を載せることができず、遅延が多発しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、年末に発生した寒波の影響でヤードやターミナルにつながる道路が一時閉鎖される事態となっておりましたが、現時点では復旧をしています。また、ブッキングの船腹についても非常に限定的な状況となっており、日本向けに希望しているブッキング枠を確保できない状況が続いています。今後の回復の見通しも非常に立ち難い状況です。
     4-5月積のGRI(海上運賃一括値上げ)についても、船会社によっては$1,000/コンテナを超えるアナウンスがされており、運賃は堅調に推移する見通しです。
     今後の懸念としては、2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉です。争点は、①港湾の自動化と②給与関係。業績が好調な船会社や港湾関係業者として②は対応ができる可能性があるものの、①は、現在の労働者にとって受け入れがたい内容となる可能性がある事から、交渉が難航する事が予想されています。
     このため、ストライキの発生懸念を鑑み、輸出入を行う各業者は、この期間に向けて在庫の積増しを行なう事が予想されており、夏頃までは確実に物流の混乱が見通されています。その先についても、溜まった荷物の荷動きの解消には時間がかかると見通されています。
  2. 豪州航路
     各船会社は、豪州航路においても北米航路同様となっており、トランジット港での混雑は相変わらず解消の目途が経たず、日本の各港への到着まで、以前よりさらに日数を要するようになっています。中国の上海ではコロナ感染者の急増を受け3月28日からロックダウンを行っています。上海港は世界最大の国際貿易港であり、コンテナ輸送量において世界1位です。ロックダウン開始以降も、上海港は24時間の運営体制を継続すると発表していますが、ロックダウンが長期化すれば、荷役作業員不足などの問題を招き、船の渋滞や内陸物流を含む運送の遅延、運賃上昇など、より深刻な影響を及ぼす可能性が出てきています。これを受け、船会社がコンテナ船の寄港を調整しているため、上海港のコンテナ船が減少。マースク、COSCOなどのグローバル大手海運会社もコロナ対策に応じて、サービスの一部を停止し、上海オフィスの社員を自宅勤務に調整している状況となっており、輸出入通関手続の所要時間も長くなっていると聞かれます。上海港での荷動きが停滞するため、豪州航路でのトランジットで遅延が発生する事が見込まれます。
     豪州のNSW(ニューサウスウェルズ)州とQLD(クィーンズランド)州の沿岸部では大雨が続き、洪水の被害が相次いでいます。NSW州の大都市ブリスベンでは、多くの洪水が発生、現在も降雨は続いています。QLD州の大都市シドニーでは、2022年1-3月の降雨量が既に年間平均降雨量1213.4mmを超えており、洪水が多発。河川の水位が歴代1位になっており、また、ダムの水位も満水に近くなり放流せざるを得ない状況となっているため、今後も洪水懸念や、水没している街の水位が下がる見通しが付いていない状況ですが、今後3ヵ月の積算雨量はこれまでの状況から減少する事から、少しずつ改善される事が予想されます。ブリスベン、シドニーの両市は豪州では大都市であり、海上物流の拠点となりますが、それぞれの港では、コンテナ貨物の輸出入について24時間の荷役が継続しているため、今の所、海上貨物の物流には大きな影響は出ておりません。現在の状況が長期化した場合、内陸物流の混乱から、コンテナの循環が悪化し、寄港するコンテナ船の減便やサービスの減少が懸念されます。
     海上運賃は北米航路同様に値上げが続いています。加えて、船会社からのLSS(低硫黄燃料サーチャージ)の追徴も再開されており、さらなる値上げを産む状況となっています。

以上

令和4年4月28日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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