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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和4年5月号

1. アルファルファヘイ

  1. カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     現在では主に3番刈が進められており、一部の生産者は4番刈を開始しています。価格は依然として非常に堅調である一方で、中東からの需要は高く中国の一部政府関連企業も積極的に購買を進めている様子です。現在収穫されているアルファルファヘイの一部は高気温の影響から上級品は少なく中級以下品が中心ですが、中級以下品に対しても国内市場と輸出業者両方からの需要が強く、取引が盛んにおこなわれているようです。一方、生産者の中には更なる価格上昇を見込んで販売を控える者もいるようです。
     一部の生産者では高品質なものを収穫するよりも収穫量を増やすことに焦点を当てる者もおり、これは、高成分を狙って早めに刈取るのではなく単収を得るために生育期間を長めにして収穫することを意味します。
     4月中旬のインペリアルバレー灌漑局からの発表によると、133,608エーカーが灌漑されています(前年同月:146,454エーカー、先月:134,031エーカー)。
  2. ワシントン州(コロンビア盆地)
     4月上旬の天気予報では米国西海岸北部の降水量は低い見通しでしたが、4月中旬には暴風雨が発生したため、平野部には降雨、山間部には降雪がありました。一方、この暴風雨の影響により気温が氷点下まで下がったことから、作物の成長の遅れを引き起こしました。このため、収穫開始時期は、今後の天候にもよりますが例年同様に5月中旬頃になると見られます。
     干ばつについては、ワシントン州、オレゴン州北部、アイダホ州、モンタナ州で一定改善が見られたものの、米国海洋大気庁などが発表している「米国干ばつモニター」のデータによると、他の西海岸の州では4月中旬の暴風雨以前の状況と比べてあまり変化が見られません。しかし、今回の降雨は、灌漑用水を使用するタイミングを1~2週間ほど遅らせることが出来るなど、当該地域の生産者にとっても一定貢献したものと思われます。
     一方、価格相場は米国西海岸南部を中心に依然として堅調に推移しており、米国西海岸北部においても前年産牧草と比較して大幅な価格上昇があるものと見られます。

2. 米国産チモシーヘイ

 コロンビア盆地では、4月の降雪による低気温の影響から作物の成長が鈍化しました。圃場を見る限りでは品質は良好ですが、収穫時期に近づくにつれ降雨が継続すれば茶葉の混入につながる可能性があります。現在のところ、収穫時期は例年と比べて7~10日ほど遅れ、5月下旬~6月上旬頃に収穫開始となる見通しです。
 天水地域においても4月以降の降雪・降雨に恵まれ、圃場水分は一定確保されている状況です。干ばつだった昨年と降雨量と比較すると、ある地域では現在まで既に昨年の5-7月分の降水量が得られたとのことです。一方で、低気温のため生育は例年と比べて2週間程度遅れており、7月中旬頃の収穫開始となる見通しです。

3. スーダングラス

 収穫はまだ開始していません。早播きスーダンの圃場は、現在早い圃場で5月末頃に収穫開始となり、収穫開始のピークは6月第1週頃になり、6月第2週が収穫の最盛期となる見通しです。他の品目同様、肥料費、燃料代、人件費など物価上昇に伴う生産コスト上昇のため他の品目と同様に昨年よりも上昇する予想されます。4月のインペリアルバレー灌漑局からの発表によると、29,968エーカーが灌漑されています(前年同月:27,578エーカー、先月:21,925エーカー)。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 直近の輸出量から見ると前四半期に比べて今期では増加しているため、2021年産の在庫を出荷しきれる可能性が見えてきましたが、繰越在庫の懸念が無くなったわけではありません。中国でのロックダウンの影響が、今後数か月の間にどのように輸送スケジュールと船舶のスペースに影響するかは不明です。
 収穫は2022年5月上旬の時点で予定通りに行われている様子です。ウィラメットバレー南部のアニュアルとフェスクは、6月末~7月初旬頃に収穫開始する予定です。中部のフェスクは7月上旬、ペレニアルライグラスは7月中下旬の収穫開始となる見通しです。作付面積の見通しとしては安定しており2022年にはおそらく供給不足とはならないと見られます。2022年産の供給量を確保するため一部の牧草収穫請負業者と輸出業者が圃場契約を進めており、この状況からすると2022年産の価格は上昇するものと見られます。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     サプライヤーより2022年産の新穀の状況を聞き取りしたところ、ウクライナ危機の影響を受け世界的に穀物価格が上昇していることを背景に、生産者の多くが小麦/大麦/カノーラの作付けに意欲的です。このため、地域・エリアにより変化はあるものの、牧草需要としてのオーツヘイの作付面積が前年比20-50%割合で置き換わる可能性があるようです。豪州の2021年産冬作物(穀物)の生産量は豊作でしたが、オーツヘイの生産量は輸出需要に対して不足でした。このため、次年度への旧穀在庫の持ち越しは少なく、2022年産オーツヘイの生産量については、高まる輸出需要と豪州国内需要に対して不足が懸念されます。
     価格については、豪州国内畜産相場の高値維持、堅調な輸出需要と共に、海上運賃の上昇を受け、引き続き価格は上昇傾向にあります。
     サプライヤーのプレススケジュールは既に8月まで埋まっており、日本向け即積みを行っても、9月以降の入船が目安となります。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     上述の通り、2021年産の小麦の生産量は過去30年で最大の年となりました。2022年産については、前年比で若干の減が見込まれるものの、生産者の作付意欲は高いため、高水準が維持される見込みです。2021年産のストローについては、穀物価格の高騰により利益確保が十分である事や、世界的な肥料価格高騰や燃料価格の高騰を受け、集荷が行われず圃場への「すき込み」が増加しました。オーツヘイ同様に、集荷量が輸出需要に対して不足しているため次年度への繰越し在庫は無く、2022年産においても上記のトレンドは変わらない事が見込まれるため、引き続き需給ひっ迫が懸念されます。
     価格については、豪州国内需要と輸出業者との取り合いと共に、解除運賃の上昇を受け、引き続き上昇傾向です。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、引き続き動静の大幅な遅延および、ブッキングの確保が厳しい状況が続いています。
  1. 北米航路
     アジア発北米向けの貨物量は、引き続き堅調な推移となっています。太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は、最も混雑していた昨年12月頃と比較すると滞船数は減少していますが、港湾CYにおおける混雑は継続しており、滞船の減少は本船のアプローチ速度を調整していることも背景にあります。作業員不足およびトラッカー不足、また船会社が設定しているターミナルへの搬入時間の急激な変更が多発しているため、予定していた本船に貨物を載せることができず、遅延が多発しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、バンクーバー港の混雑やコンテナ機器不足により、本船ブッキングが困難な状況が継続しています。
     日本直行便の本数が減少している中で、中国や韓国などからの接続船にて日本の地方港への輸送を行うケースがでていますが、上海のロックダウンに起因する接続港の遅延についても深刻な状況が続いています。
     5月積のGRI(海上運賃一括値上げ)についても一部船社にて値上げが発表されたほか、東航路の年間運賃交渉が大幅値上げで決着したことも受け、西航路についても堅調に推移する見通しです。
     2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉については、5月10日から交渉がスタートしており、争点は、①港湾の自動化と②給与関係があげられます。今後の交渉状況に注視が必要な状況です。
  2. 豪州航路
     豪州航路においても北米航路同様の状況が続いています。中国の上海、広州で3月末より実施しているロックダウンが長期化しているため、輸出入の貨物量が低下した事から、豪州発のブッキングの状況は改善が見られます。ただし、上記ロックダウン影響でトランジットの代替となった寧波や香港、青島の港では滞船や混雑が発生しております。また、当初の航路から変更が余儀なくされている事から、海上輸送日数は、以前より増加している状況です。
     豪州国内の各港の状況は、南豪州(アデレード港)では空コンテナ不足から非常にブッキングが取りづらく、次いで西豪州(フリーマントル港:パース市)も厳しい状況が続いております。ビクトリア州(メルボルン港)では順調にブッキングされているため、港毎で温度差が発生しています。

以上

令和4年5月20日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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