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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和4年6月号

1. アルファルファヘイ

  1. カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     現在4番刈が進められており、高気温のため成分値の低下が見られます。このため、サウジアラビアと中国の購買者は当面の購買を控え、秋頃に再度成分値が高くなったタイミングで市場に戻る動きをする可能性があります。しかしながら、干ばつのため生産者が例年通り8-9番刈まで継続するかどうかは不明であり、水資源の利用制限の影響から今年は4-6番刈で終了することも考えられます。
     6月中旬のインペリアルバレー灌漑局からの発表によると、133,831エーカーが灌漑されています(前年同月:146,466エーカー、先月:133,598エーカー)。
  2. ワシントン州(コロンビア盆地)
     多くの生産者が5月中旬から下旬にかけて1番刈の刈取りを行いました。収穫時期としては過去5年間と比べ10日間の遅れであり、4-5月の低気温による作物の生育遅れが要因です。また、刈取開始以降には暴風雨を含め3-5日おきに降雨があったため、程度は圃場により異なるものの、牧草の色目の減退につながりました。総じて、5月末の時点で約60%のアルファルファが雨あたり、残り40%は収穫待ちという状況でした。
     国内酪農家の購買意欲は非常に旺盛で、彼らは色目に関わらず高成分な1番刈アルファルファが市場に出て間もなく購買を開始しました。一方、輸出業者は購買に参加したりしなかったりの状況で、今のところ輸出に似合う品質の玉を購買しようとしていますが、需要に沿うものはあまり多く発生していないようです。
     干ばつの程度はワシントン州、アイダホ州、およびモンタナ州で改善している一方で、オレゴン州、カリフォルニア州、ユタ州、およびアリゾナ州では依然十分な降雨は得られておりません。このようななか、新穀相場は牧草価格の上昇とともにスタートしており、需要が落ち着き圃場在庫が満たされるまでの間、少なくとも今後2か月間は堅調に推移する見通しです。

2. 米国産チモシーヘイ

 コロンビア盆地においては、1番刈の収穫が盛んに進められており、現在まで20%程度刈取が完了している様子です。春の冷涼かつ湿潤な気候のため、単収は例年並みかそれ以上となる見込みです。刈取前の時点では圃場を見る限り品質は非常に良かったものの、刈取開始後には散発的に降雨が発生したため、品質への影響が懸念されます。
 エレンスバーグでは春により湿潤かつ冷涼な気候であったため作物の生育が促進し、品質は良好となることが期待されます。
 天水地域においても春は作物の生育を促す降雨に恵まれました。生産者は7月5-10日ころの収穫を予定しており、単収も平年並みとなるものと見られます。

3. スーダングラス

 1番刈の収穫は5月下旬から6月上旬に開始しましたが、現時点ではほとんどの玉がまだ販売されておらず、多くの生産者が今後の価格上昇を期待し販売を控えている様子です。まだ収穫開始から間もないこともあり、1番刈の全体的な品質は未だ不明ですが、圃場を見る限り茶葉は少なめで高品質と見られます。これは、比較的涼しい気候が続いたことが原因と見られます。以降は気温の高まりによって色目や茶葉の発生など、品質への影響がみられる可能性があります。これまでの経験上、1番刈の初期に収穫されたものは細軸の上級品が中心です。
 6月のインペリアルバレー灌漑局からの発表によると、46,011エーカーが灌漑されています(前年同月:38,629エーカー、先月:52,524エーカー)。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 これまでの降雨かつ冷涼な気候の影響により、収穫は2-3週間ほど遅れています。6月一杯は冷涼な気候が続く可能性があるものの、気温が上昇し降雨が無くなれば収穫が一気に進むとみられます。今後、生産者は作物の受粉を経て刈取り、圃場乾燥後に収穫という流れで作業を進めることになります。
 ウィラメットバレー南部のフェスクは7月上旬に収穫開始予定です。ウィラメットバレー中部のフェスクは7月の第2週もしくは第3週頃の収穫、ペレニアルライグラスは第3週もしくは第4週頃の収穫開始となる見込みです。フェスクは通常、ベール中の水分が十分に低下するまで圃場で2-3週間乾燥しますが、ペレニアルライグラスは収穫後1-2週間で出荷可能となります。ただし、牧草加工工場からの出荷スケジュールはオレゴン州立大学のエンドファイト分析の結果次第です。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     2022年産新穀の播種はほぼ終了しています。世界的に穀物高騰しており、また、バイオ燃料に利用される作物の需要の高まりを受け、下図のとおり、小麦・大麦・カノーラの生産量が大幅に増加する見込みです。対して、牧草を主として収穫する作物(えん麦=オーツ)の作付面積は大幅に減少しており、数年前の干ばつ時期と同様の生産量まで落ち込む見通しです。VIC(ビクトリア州)での面積減少が顕著ですが、SA(南オーストラリア州)、WA(西オーストラリア州)総じて前年比で15-35%減少しています。また、直近でかなりの降雨と共に気温の低下が発生しており、牧草生育は鈍化しています。豪州国内では、旧穀の牧草やストローの他に、ベッチヘイやアルファの需要も高まっています。
     また、下図の生産量予測は「オーツ」の作物としての収穫予測となるため、「穀物」として収穫するか「ヘイ」として収穫するかは最終的に生産者の判断に委ねられています。2021年産からの繰越し在庫も少ない事から、「ヘイ」の輸出需要に対して生産量が不足する可能性があり、価格上昇の懸念が現時点から高まっています。日本以外の諸外国(中国、韓国、台湾、中東等)では、「豪州産ヘイ」として品目問わず輸入を行っているようです。オーツの生産量増加を期待する事は難しいため、日本も「オーツヘイ」のみではなく「小麦/大麦」の「ヘイ」を代替利用できる準備を進めておく必要があると考えられます。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     2022年産の播種はほぼ終了しています。下図の通り、小麦や大麦の作付面積は増加していますが、生産者は穀物相場が高騰している事で十分な収益が得られるためストローの集荷に消極的です。また、肥料価格の高騰の影響もあるため、ストローを圃場に「すき込み」を行ってしまうため、輸出需要に対して集荷量の不足が懸念されます。産地相場は、諸外国の強きの購買、豪州国内の畜産相場が好調を維持している事から、強含みで推移しています。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、引き続き動静の大幅な遅延および、ブッキングの確保が厳しい状況が続いています。
  1. 北米航路
     アジア発北米向けの貨物量は、引き続き堅調な推移となっています。太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は、最も混雑していた昨年12月頃と比較すると滞船数は減少していますが、港湾CYにおおける混雑は継続しています。作業員不足およびトラッカー不足、また船会社が設定しているターミナルへの搬入時間の急激な変更が多発しているため、予定していた本船に貨物を載せることができず、遅延が多発しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、コンテナ機器不足や本船スペース不足により、本船ブッキングが困難な状況が継続しています。
     日本直行便の本数が減少している中で、中国や韓国などからの接続船にて日本の地方港への輸送を行うケースがでていますが、上海のロックダウンに起因する接続港の遅延についても深刻な状況が続いています。
     直近のGRI(海上運賃一括値上げ)についてアナウンスはありませんが、東航路の年間運賃交渉が大幅値上げで決着したことも受け、西航路についても堅調に推移する見通しです。
     2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉については、5月10日から交渉がスタートしており、争点は、①港湾の自動化と②給与関係があげられます。今後の交渉状況に注視が必要な状況です。
  2. 豪州航路
     豪州航路においても北米航路同様の状況が続いています。中国では上海のロックダウンが明けました。一部報道では500隻の滞留があったと言われるコンテナ船の貨物流入と、海外向けの出荷滞留貨物やクリスマス商戦へ向けての出荷貨物量が徐々に増加している状況にあります。この状況により各船会社が空コンテナの中国への輸送を急いでいるため、早期のコンテナ返却の求めが強まっている状況です。今後は、中国向け空コンテナの輸送の増加による日本向けの実入り貨物輸送のブッキングが取りづらくなる懸念があります。また、上海を避けて他港でトランジットされた貨物は、当初予定の航海日数から大幅に伸びている状況です。
     豪州国内の各港の状況は、南豪州(アデレード港)では空コンテナ不足から非常にブッキングが取りづらく、次いで西豪州(フリーマントル港:パース市)も厳しい状況が続いております。ビクトリア州(メルボルン港)では順調にブッキングされているため、港毎で温度差が発生しています。

以上

令和4年6月24日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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