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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和4年7月号

1. アルファルファヘイ

  1. カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     現在5-6番刈の収穫が進められています。品質は中級品から色目の劣る低級品が中心です。水資源の利用制限により、一部生産者は夏の半ばから後半にかけて灌漑を止め、秋の野菜栽培のために水を節約する可能性があります。アルファルファの作付けから年数が経過している圃場での作物の品質と収量は年数が浅い圃場ほど魅力的ではないため、特に古い圃場を持つ生産者は野菜栽培用に水を節約する可能性があります。今後、収穫が進むにつれより多くの圃場が転作したり休耕することが予想されます。
     とうもろこし価格は下がっているものの、多くの業者がアルファルファの価格が高くても高い需要を一定維持すると考えています。米国国内、中国、サウジアラビアによる購買は今年非常に好調ですが、現在では日本や韓国も購買に興味を示しています。これは、おそらく米国西海岸北部での1番刈アルファルファの品質が悪かったことが要因と見られます。
     現在、カルフォルニア州には約40万エーカーのアルファルファが作付けされています(10年前は約100万エーカー)。このうち、インペリアルバレーでは約13万5千エーカーが作付けされています。
  2. ワシントン州(コロンビア盆地)
     春以降の低気温の影響によりアルファルファの生育および1番刈の収穫が遅れたため、2番刈の収穫は6月下旬頃に開始しました。これは例年と比べ2週間程度の遅れです。一方、冷涼な気候が続いたことから品質は良好です。
     相場は非常に堅調です。国内酪農家および肥育農家は2021年産の不足を補おうとするとともに今後の必要量を確保するため、年末までは旺盛な需要が継続すると見られます。また、輸出業者は非常に積極的に購買しており、一部の業者は生産者に高値で提示しているため、生産者は常連の買い手でなくても販売するケースがあるようです。生産者は記録的な燃料価格および肥料価格、人件費の上昇に直面しており、このことが生産者としてより高値で交渉・販売するためのインセンティブとなっています。
     干ばつの程度は、依然厳しい米国西海岸南部と比べ北部では改善しています。

2. 米国産チモシーヘイ

 コロンビア盆地においては、6月の天候は低気温が続くとともに複数回の降雨があるなど不安定な状況から収穫が開始しました。このため、早刈りされたチモシーのうち、30-40%は雨当たりとなりました。一方、6月後半には天候にも恵まれ、コロンビア盆地北部および南部において高品質なものが収穫されました。
 輸出業者は2021年産が干ばつにより不作であったことから在庫が不足気味であることを背景として、収穫開始時期の降雨は価格上昇圧力となりました。このため、当初は記録的な価格が見られたものの、現在では相場が少し落ち着いてきている様子です。
 エレンスバーグでは50%程度収穫が完了しています。コロンビア盆地と同様、1番刈の収穫期前半は雨当たりが多く発生したものの、後半は乾燥気候が続いたため品質良好なものが収穫された模様です。
 天水地域においては今週収穫が開始し、例年と比べて1週間程度の遅れとなりますが、これは春の遅れや6月の大雨の影響で、今が圃場に入る最も早いタイミングとなります。作物の品質は非常に良好で、今後暫くは天気予報も温暖かつ乾燥気候が続くと見られます。

3. スーダングラス

 一部の生産者は、水資源の利用制限があるため、1番刈後に収穫を終了しています。6~7月初旬までに収穫された作物の品質は上級品と中級品の標準的な色目のものが中心でした。7月に入って以降、いくつかの圃場に茶葉が見られるようになりますが、6月に収穫された玉の品質は良好でした。色目が明るい玉は7月後半以降に収穫されますが、茶葉混入のリスクがあります。
 米国国内の購買者がより安価な粗飼料を探して低級品を多く購入しているため、今年は上級品と低級品の価格差が小さくなることが想定されます。2022年のスーダンの相場はまだ構築されていませんが、米国内向け市場は色目を気にせず低級品のみを購買対象としているため、今年は低級品をめぐって国内市場と輸出市場の間で激しい競争が繰り広げられると見られます。低級品となる軸の太いものは2番刈が中心であるため、8月中旬もしくは下旬まで収穫されません。生産者が3番刈を実施すれば太軸となりますが、どの程度の生産者が3番刈まで行うのかは不明です。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 ウィラメットバレー中部では今週フェスクの刈取りを開始しました。ベーリングは天候が良好であれば刈取後数日で行われます。フェスクはアルファルファのように2-3週間程度、ベールでの乾燥が必要であるため、新穀の輸出開始は8月中旬頃と見られます。一方、7月より前に収穫された南部のフェスクは1週間程度早く出荷される見込みです。ただし、牧草加工工場からの出荷スケジュールはエンドファイト分析の結果次第です。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     2022年産の播種は終了しています。世界的に穀物価格が高騰しており、また、バイオ燃料に利用される作物需要の高まりを受け、小麦・大麦の生産量は高水準が維持され、カノーラの生産量は大幅に増加する見込みです。対して、牧草を主として収穫する作物(えん麦=オーツ)の作付面積は、州による差はありますが、前年比15-35%減少しており、2016-2019年の干ばつ期と同様の生産量まで落ち込む見通しです。加えて、「オーツ」を「穀物」として収穫するか「ヘイ」として収穫するかは最終的に生産者の判断に委ねられており、2021年産からの繰越し在庫も少ない事から、「ヘイ」の輸出需要に対して生産量が大幅に不足する可能性があります。これらの状況は、2022年産の価格上昇懸念の他、日本以外の諸外国(中国、韓国、台湾、中東等)との競合により需要量を満たせない可能性が高まっています。諸外国では既に対応している代替策ですが、「オーツヘイ」のみではなく「小麦/大麦」の「ヘイ」を利用するなど受け皿を広くする準備を進めておく必要があると考えられます。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     2022年産の播種は終了しています。上述の通り、小麦や大麦は穀物集荷で十分な収益が得られるため、生産者はストローの集荷に消極的です。また、肥料価格が高騰しているため、ストローを「すき込み」してしまう事で集荷量の減少が懸念されています。産地相場はシドニーで再び発生した洪水を含め、過去数度洪水が発生したNSW(ニューサウスウェールズ州)やQLD(クィーンズランド州)での粗飼料不足による国内需要の高まりや、諸外国の強気の購買により強含みで推移しており、新穀価格も高値で推移する可能性があります。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、引き続き動静の大幅な遅延および、ブッキングの確保が厳しい状況が続いています。
  1. 北米航路
     アジア発北米向けの貨物量は、引き続き堅調な推移となっています。太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は継続しています。作業員不足およびトラッカー不足、また船会社が設定しているターミナルへの搬入時間の急激な変更が多発しているため、予定していた本船に貨物を載せることができず、遅延が多発しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、コンテナ機器不足や本船スペース不足により、本船ブッキングが困難な状況が継続しています。
     日本直行便の本数が減少している中で、中国や韓国などからの接続船にて日本の地方港への輸送を行うケースがでていますが、積み替え港についても混雑が発生していることから、本船スケジュールへの影響があります。
     直近のGRI(海上運賃一括値上げ)についてアナウンスはありませんが、東航路の年間運賃交渉が大幅値上げで決着したことも受け、西航路についても堅調に推移する見通しです。
     2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉については、5月10日から交渉がスタートしており、7月1日を迎えても決着はしませんでした。荷役のスローダウンなどの戦術はとられておらず、荷役は継続しています。争点は、①港湾の自動化と②給与関係があげられます。今後の交渉状況に注視が必要な状況です。
  2. 豪州航路
     豪州航路においても北米航路同様の状況が続いています。中国では3/28-5/31まで続いた上海のロックダウンが明けたものの、直近では新型コロナウィルス感染者が急増しており、再びロックダウンの懸念が発生しています。もしロックダウンとなった場合、上海沖に滞留していたコンテナ船が再び増加する可能性と共に、海外向けの出荷滞留貨物やクリスマス商戦へ向けての出荷貨物が停滞してしまう事で、船会社のサービス停止や抜港などが発生する事も懸念されます。豪州各港の現状は、南豪州(アデレード港)では空コンテナ不足から非常にブッキングが取りづらく、次いで西豪州(フリーマントル港:パース市)も厳しい状況が続いております。ビクトリア州(メルボルン港)では順調にブッキングされているため、港毎で温度差が発生しています。

以上

令和4年7月25日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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