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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和4年8月号

1. アルファルファヘイ

  1. カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     現在6番刈の収穫が進められています。高温多湿の影響で中級以下品が中心です。水資源の利用制限により、一部生産者は9月までに灌漑を止め今年は6-7番刈で終了する可能性があります。依然として輸出市場と国内市場の両方からアルファルファの需要は高く、収穫期後半も堅調に推移すると考えられます。
  2. ワシントン州(コロンビア盆地)
     一部の輸出業者は継続して積極的に購買を進めており、色目のきれいな牧草を成分値に関わらず購買している様子です。このため、中級以下品の需要がある米国国内酪農家および肥育農家、輸出業者にとって購買を厳しくしています。多くの購買者が2番刈が進むにつれて価格が軟化するものと信じていましたが、今のところそうではありません。一部の業者は、価格競争の結果スポット的に高値で購入しましたが、今秋以降の不安定な相場に対する懸念があるため、多くの購買者は慎重に購買を進めています。一方、近隣の州では依然として干ばつが続いておりこれらの州からの需要が高まることや、特に米国西海岸北部では収穫する刈取番手が 2つしか残っていないため、需給バランスがタイト化する可能性もあります。
     7月の天候は例年のように暑く乾燥した状態に戻りました。 2回アルファルファの品質は、天候が改善したことから多くの生産者がきれいな緑色の牧草収穫できました。現在は3番刈が開始しています。8月以降は35℃以上の高気温および乾燥した気候が続いており、今後も色目の良い牧草を収穫する機会が多く得られることが期待されます。

2. 米国産チモシーヘイ

 コロンビア盆地では7月中旬頃に南部で収穫が開始しましたが、一部雨当たりとなるなど厳しいスタートとなりました。しかし、以降は天候が回復したため、中部や北部では良品が多く収穫されました。一方で、コロンビア盆地南部やエレンズバーグで収穫開始時に雨当たり品が発生したことから、特にコロンビア盆地北部・中部のチモシーの需要が高まり輸出業者間の価格競争となった結果、相場は堅調に推移しました。
 エレンスバーグではコロンビア盆地と同様、1番刈の収穫期前半は雨当たりが多く発生したものの、後半は乾燥気候が続いたため品質良好なものが収穫された模様です。
 天水地域においても収穫の終わりを迎えています。大干ばつであった昨年と比べると、収量大幅時増加しており、一部地域では例年以上の収量となっています。この要因としては、春から夏にかけて冷涼な気候が長く続いたことと、適期での降雨に恵まれたことが考えられます。品質は総じて例年並みですが、色がやや薄めで茶葉や雑草混入があることから中級品が多く見られます。多くの輸出業者で在庫が不足気味であることから、需要は依然として堅調です。

3. スーダングラス

 スーダンの作付面積は2021年産よりも約20%多いため1番刈の収穫量は昨年よりも多くなると見られますが、今年は水資源の利用制限のため、2番刈が少なくなると予想されます。
 1番刈の収穫はまもなく終了予定です。品質は細軸かつ標準的な色目のものが中心ですが、色抜け品もあります。2番刈も開始しており、品質は例年通り中軸のものが中心です。インペリアルバレーの天候は高温多湿なため、茶葉が入ったスタックも見られます。今後、刈取が進むにつれて太軸の収穫が増えるものと見られます。ただし、前述のとおり今年は2番刈の収穫自体が少なくなる可能性があります。現在、日本からの需要は中~太軸品が高くなっています。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 現在も収穫が進められていますが、今年は8月末には完了すると見られます。ペレニアルライグラスの収穫はウィラメットバレー中部では8月初旬に開始されました。
 これまでの天候は良好でしたが、直近で一部地域に降雨があったため、収穫スケジュールの変更を行った圃場もあるようです。雨あたり等への影響は不明ですが、刈取前の圃場が比較的多かったため、今のところ大きな品質問題にはならないと予想されます。
 フェスクは80%程度刈取りが終了しています。品質は総じて良好ですが、湿気により一部色褪せた茎の混入が見られるものもあるようです。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     2022年産の播種は終了しています。世界的な穀物価格の高騰、バイオ燃料に利用される作物需要の高まりを受け、小麦・大麦の生産量は高水準が維持され、カノーラの生産量は大幅に増加しました。対して、牧草を主として収穫する作物(えん麦=オーツ)の作付面積は、州による差はありますが、前年比50%近く現状したエリアがあるようです。加えて、「オーツ」を「穀物」として収穫するか「ヘイ」として収穫するかは最終的に生産者の判断に委ねられており、2021年産からの繰越し在庫も少ない事から、「ヘイ」の輸出需要に対して生産量が大幅に不足する可能性があります。既に、いくつかのサプライヤーは新穀切り替えまでに在庫が切れてしまう懸念を表明しており、また新穀で需要に対して集荷が不足するとアナウンスをしている所が出てきています。
     オーツヘイの不足に対し、諸外国では既に「小麦/大麦」の「ヘイ」をオーツヘイの代替品として利用しています。これが解決策になるわけではありませんが、受け皿を広くする準備を進めておく必要があると考えられます。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     2022年産の播種は終了しています。上述の通り、小麦や大麦は穀物集荷で十分な収益が得られるため、生産者はストローの集荷に消極的です。また、肥料価格が高騰しているため、ストローを「すき込み」してしまう事で集荷量の減少が懸念されています。産地相場はシドニーで再び発生した洪水を含め、過去数度洪水が発生したNSW(ニューサウスウェールズ州)やQLD(クィーンズランド州)での粗飼料不足による国内需要の高まりや、諸外国の強気の購買により強含みで推移しており、新穀価格も高値で推移する可能性があります。
  • 豪州の環境
     下図は8-10月の降水量が例年を超える可能性を表現していますが、WAでは平年降雨量を下回り、SA/VICでは平年より多い降雨が見込まれる状況となっています。冬作物にとって収穫後半の降雨は収穫量に大きく影響します。畜産農家の自給牧草の生産状況が好転すれば、豪州国内需要の減少にもつながるため注視が必要です。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、引き続き動静の大幅な遅延および、ブッキングの確保が厳しい状況が続いています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は継続しています。船社の搬入時間の締め切りが厳しくなることから、翌週に遅延するケースが発生しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、抜港などの影響を受け、スペースがタイトになりつつあります。
     直近のGRI(海上運賃一括値上げ)についてアナウンスはありませんが、東航路の年間運賃交渉が大幅値上げで決着したことも受け、西航路についても堅調に推移する見通しです。
     2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉については、5月10日から交渉がスタートしており、7月1日を迎えても決着はしませんでした。争点は2点、福利厚生面とターミナルのオートメーション化についてです。7月26日、福利厚生面についての交渉が妥結し、引き続き自動化についての協議が行われています。荷役のスローダウンなどの戦術はとられておらず、荷役は継続しています。
  2. 豪州航路
     豪州航路においても北米航路同様の状況が続いています。中国(上海)のロックダウンが明けたものの、新型コロナウィルス感染者が中々減少しない事もあり、処理能力は鈍化しているようです。船会社は、日本直行便(メルボルンー東京/神戸)のサービスを減少させるなど航路の調整や、ブッキングの制限を行っているため、特にWAでは船腹確保が難しく、SAもアデレードへの寄港数の減少、VICのメルボルン港は安定的に出荷できていますが、それぞれブッキング確保が難しい状況となっています。

以上

令和4年8月22日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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