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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和4年11月号

1. アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     生産者は、7番刈あるいは8番刈の収穫を行っています。多くの生産者は水不足のために灌漑を停止していましたが、現在は灌漑を再開しています。アルファルファの上級品に対する中東からの需要が旺盛ですが、現在収穫されているアルファルファの品質は期待したほど良くありません。また、中級品以下品の発生も比較的少ない状況です。中国からの需要は安定しており、輸出業者は見た目がきれいで緑色の濃い牧草を中国に出荷しています。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     収穫は終了しており、市場は秋に向かって落ち着いている状況です。10月初旬の気温は平年よりも高く、生産者はこの秋に牧草を作付けするまで少し長めに間をおいており、場合によってはアルファルファを余分に刈り取ることができました。10月後半になると降雨とともに気温が低下し、山間部には降雪がありました。米国内の牧場と肥育農場は、雨当たりや森林火災による煙の影響を受けた低品質のアルファルファを着実に購入しており、低級品の相場が堅調に推移する要因となっています。輸出業者は、向こう4か月~半年間の出荷動向を注視しつつ、牧草購買には非常に慎重ですが、ほとんどの輸出業者は、来年の新穀発生までの間のある時点で、市場に戻ってくると予想されます。
     周辺生産者から聞く限りでは、来年の作付面積は今年と同等になると聞かれます。

2. 米国産チモシーヘイ

 チモシーの収穫は終了しています。コロンビア盆地では、生産者が来年に向けチモシーを作付けしており、12月中旬ころまで継続すると見られます。今のところ、来年のチモシーの作付面積は今年と同等になると見られます。
 天水地域においてもチモシーの作付けが行われていましたが、いくつかの地域では氷点下まで気温が下がり降雪があるなど外での作業は徐々に厳しくなっており、近いうちに作付けも終了すると見られます。

3. スーダングラス

 2022年産の収穫は終了しました。9月の降雨のため、特に2番刈では一部雨あたり等があった模様です。直近では日本向けの出荷は鈍化しており、日本向け需要は中級以下品が中心です。一方、国内業者は輸出向けとはならない低品質なスーダンを中心に購入を続けている様子です。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 2022年産の収穫は終了しました。ペレニアルライグラス、フェスク、アニュアルライグラスを含めて、品質は例年並みかやや明るめのものが収穫されました。アルファルファやチモシーの価格が高いことから、韓国は乳牛と肉牛で利用しているチモシーやクレイングラスを一定程度ストローに置き換えるため、需要が旺盛な状況が続いています。中国は、アニュアルストローを肥育での利用を行っているようです。
 来年以降の景気後退への懸念や新規購入の住宅需要が低調なため、2023年の芝生用種子(アニュアル・ペレニアル・フェスキュー他)の作付面積は減少する可能性があります。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     2022年産収穫と集荷が進んでいます。WA(西オーストラリア州)は収穫が完了し、集荷やグレーディングの段階に入っています。SA(南オーストラリア州)とVIC(ビクトリア州)は、大雨の影響で収穫が大幅に遅れており、例年の収穫に比べて1ヵ月以上遅延している所も見られます。遅延の状況を受け、ヘイとしての収穫を諦め、穀物として収穫する農家が増えている状況です。このため、例年と異なり、現時点でも全豪州の収穫量が見通せていない状況です。
     オーツ(えん麦)の作付面積は、世界的な穀物高を受け前年比で大きく減少したため、今年度のヘイとしての収穫量は減少します。ただし、今年度は降雨量が十分にあった事に加え、上述の通り刈遅れの状況のため、WAでは、単収で10トン/ヘクタール(平年5~6トン/ヘクタール)というような大きな単収を挙げた圃場の報告が入っています。
     北米の粗飼料価格が高騰していることを受け、豪州への需要は高まる一方です。また、上述の洪水影響で、畜産地帯のVICやNSWの放牧用の牧草が不足し、豪州国内で政府が輸送費を支援し、WAや各エリアからの輸送が行われるなど、国内需要が強く、輸出向けの集荷価格に影響を及ぼす見込みです。
     11月積から新穀価格となり値上げのアナウンスが出ていますが、集荷状況が未確定な状況のため反映方法はサプライヤー毎に温度差が出てきています。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     2022年産の牧草が順調に生育しています。上述の通り、オーツヘイの収穫が大幅に遅れている状況と同じく収穫時期は遅れています。
     小麦や大麦は穀物集荷で十分な収益が得られるため、生産者はストローの集荷に消極的です。また、肥料価格が高騰しているため、ストローを「すき込む」ことによる集荷量の減少が懸念されます。このため、ストローの集荷は産地への早期連絡が必要となります。
     11月積から新穀価格となり値上げのアナウンスが出ていますが、集荷状況が未確定な状況のため反映方法はサプライヤー毎に温度差が出てきています。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、引き続き動静の大幅な遅延および、ブッキングの確保が厳しい状況が続いています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は継続しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、本船動静遅延などから混雑が継続しています。
     直近のGRI(海上運賃一括値上げ)については、アジア発北米向け航路の貨物量減少を受け、往航運賃の減少が一部航路で見られたものの、西航路については依然としてコンテナ不足・港湾混雑・本船遅延・抜港などに起因する船腹不足から、運賃は横ばいで推移する見通しです。
     2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉については、5月10日から交渉がスタートしており、現在も決着はしておりません。争点は2点、福利厚生面とターミナルのオートメーション化についてです。7月26日、福利厚生面についての交渉が妥結し、引き続き自動化についての協議が行われています。
     全米の貨物鉄道会社の労使交渉について、米国鉄道会社の労働者で構成される12の組合のうち2組合が政府からの調停案を否決し、11月19日までの交渉期限に対し、ストライキの発生懸念がありましたが、12月8日まで「現状維持」の期間を延長するとの発表があり、月内のストライキについては回避されました。今後も引き続き注視が必要な状況となっています。
  2. 豪州航路
     豪州航路においても北米航路同様の状況が続いています。中国(上海)のロックダウンが明けたものの、新型コロナウィルス感染者が中々減少しない状況が継続し荷役効率が鈍化しているようです。船会社は、日本直行便(メルボルンー東京/神戸)のサービスを減少させるなど航路の調整や、ブッキングの制限を行っているため、特にWAやSAでは船腹の確保や空コンテナ確保が難しい状況となっています。VICのメルボルン港は安定的に出荷できていますが、それぞれブッキング確保が難しい状況となっています。

以上

令和4年11月24日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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