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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和4年12月号

1. アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     現在収穫された牧草の品質は成分値が低いものが多く、中級以下品が中心となっています。需要面では中東からの引き合いが強く、積極的に購買が進められている一方で、中国需要は鈍化しており、これは新年を控えていること、経済状況不安定なることなどが原因と考えられます。また、新型コロナに関する閉鎖が長引き、一部地域では貨物が受け取れないなどの影響が出ているようです。中国では最近、新型コロナの行動制限が緩和されてきていますが、今後の動向が注目されます。
     12月中旬のインペリアルバレー灌漑局からの発表によると、151,509エーカーが灌漑されています(前年同月:134,522エーカー)。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     収穫は終了しています。11月の牧草市場は非常に静かでした。米国国内の需要者は現行の在庫で当面はやりくり可能な様子です。輸出業者については、出荷が非常に鈍化しているため原料牧草の購買についても消極的な状況です。
     在庫を抱える一部の生産者にとっては、近々に値下げして牧草を販売するよりは、新年まで在庫を保有し次の販売機会を待ちたい様子です。現在、彼らは今後の天候を気にしています。ここ2週間は非常に寒く湿った空気が米国西海岸北部に入り気温が低下したため、米国国内の牧場主は牧草の給与量を増やさなければなりませんでした。天気予報によると、今後2週間はまた気温が低く雪や雨が降る可能性もあります。冬場の天候の厳しさの程度によっては、新年の牧草市場は大きく影響を受けるものと見られます。

2. 米国産チモシーヘイ

 チモシーの収穫は終了しています。灌漑地域・天水地域ともにチモシーの作付け作業も終了しており、次回の作付けは来年に春頃に再開される見通しです。

3. スーダングラス

 スーダンの出荷は進められているものの、荷動きは例年と比べて鈍化しています。いくつかの日本の輸入業者は旧穀在庫を一定抱えていたこと等から、あまり多くのスーダンを購買しなかった模様です。一方で、一部の業者は継続して低級品のスーダンを探している様子です。
 12月中旬のインペリアルバレー灌漑局からの発表によると、2,610エーカーが灌漑されています(前年同月:1,651エーカー)が、これは家畜の放牧用か、圃場の更新が灌漑局に報告されていない圃場のデータが含まれている可能性があります。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 2022年産の収穫は終了しました。ペレニアルライグラス、フェスク、アニュアルライグラスを含めて、品質は例年並みかやや明るめのものが収穫されました。ここ6か月のポートランド港での空コンテナ供給量は厳しい状況ではないものの、一部の船社で供給不足が見られます。オレゴン産ストローの荷動きは比較的順調であり、韓国向けのフェスクも継続して出荷が進められています。
 来年以降の景気後退への懸念や新規購入の住宅需要が低調なため、2023年の芝生用種子(アニュアル・ペレニアル・フェスキュー他)の作付面積は減少する可能性があります。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     2022年産集荷がほぼ終了しました。下図の降雨量グラフの通り、今年度の豪州各州の降雨量は平年以上となっています。また、収穫時期へ向けて降雨量が増加したことから、全体的に刈り遅れとなっています。特にSA(南オーストラリア州)とVIC(ビクトリア州)では、収穫適期の前から収穫後までの期間において洪水を招くレベルの大雨が発生したことから、収穫の大幅遅延に加え、牧草として収穫する時期を逸し穀物で収穫せざるを得ない圃場も発生しました。また、降雨の隙間を縫って収穫したものの、雨あたりにあった圃場も大量に発生した様子です。現在でもVICでは集荷は終了していませんが、集荷量の見通しが立たない状況です。結果として、WAやSAでは2-4週の刈り遅れ、VICでは最大2ヶ月近い刈り遅れが発生しました。
     刈り遅れはヘイの繊維質を増加させ糖度を減少させることから、干ばつにより高糖度、低繊維となった2019年~2021年産とオーツヘイと比べ、2022年産は嗜好性が低下し反芻力が強い品質になることが予想されます。
     下表のとおりオーツ(えん麦)の作付面積は、世界的な穀物高を受け前年比で大きく減少しました。また上述のとおり、穀物として収穫された圃場があり、牧草としての収穫量は大幅に減少しています。加えて、大雨被害を受けたVICは豪州の乳牛の大半が飼育されており周辺の州でも肉牛や羊の飼育頭数も多い畜産地帯であることから当地では深刻な飼料不足に陥っており、豪州国内から牧草やストローを集める動きが加速し産地相場は堅調です。
     11月積みから新穀価格が設定される予定でしたが、収穫遅延の影響により、12月積みから新穀価格となります。旧穀のキャリーオーバー(在庫)を多く有しているため価格調整を図ったサプライヤーがいる一方で、全体的には11月積み価格から大きくは変わっておらず、サプライヤー毎に温度差が出てきています。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     2022年産の穀物の収穫が進んでいます。オーツヘイの収穫遅延もあり若干の遅延が発生しているようです。ただ、天候は回復傾向にあり、ストローの集荷はヘイとしての収穫時期からズレているため、オーツヘイと比べると一定改善されたとの声があります。
     穀物生産者はそれだけで十分な収益が得られるためストローの集荷には消極的です。また、肥料価格が高騰しているため、ストローを「すき込む」ことによる集荷量の減少が懸念されます。このため、ストローの集荷量確保のため産地への早期連絡が必要です。
     新穀価格については、オーツヘイでの価格反映が遅れた影響から、サプライヤー毎に改定時期が異なる可能性があります。 11月積から新穀価格となり値上げのアナウンスが出ていますが、集荷状況が未確定な状況のため反映方法はサプライヤー毎に温度差が出てきています。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、引き続き動静の大幅な遅延および、ブッキングの確保が厳しい状況が続いています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は継続しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、本船動静遅延などから混雑が継続しています。
    直近のGRI(海上運賃一括値上げ)については、アジア発北米向け航路の貨物量減少を受け、往航運賃の減少が一部航路で見られています。復航航路についても、一部航路・船社での値下げがありましたが、すべての航路・船社で値下げが起きている状況ではありません。また、冬場を迎え、ブランクセーリングの影響や、依然としてコンテナ不足・港湾混雑・本船遅延・抜港などに起因する船腹不足が懸念されるため、今後の先行きは不透明な状況です。
     2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉については、5月10日から交渉がスタートしており、現在も決着はしておりません。争点は2点、福利厚生面とターミナルのオートメーション化についてです。7月26日、福利厚生面についての交渉が妥結し、引き続き自動化についての協議が行われています。
  2. 豪州航路
     豪州航路においても北米航路同様の状況が続いています。中国(上海)での新型コロナウィルス感染者が減少しない状況でゼロコロナ政策が続いていた事から、中国発の貨物量の減少が発生しています。船会社は、日本直行便(メルボルンー東京/神戸)を含む、本船サービスの減少が発生しておりブッキングの制限が発生しています。また、VICでの大雨洪水影響はメルボルン港での港湾作業は比較的に安定しているものの、物流網については改善されておらず、輸送の遅延が発生しています。来年1月22日は春節となり、前後での減便が懸念されます。

以上

令和4年12月21日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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