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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和5年3月号

1. アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     生産者は 2023 年の1番刈の収穫を進めています。1月末から2月初めにかけて降雨があったため、いくつかの圃場がダメージを受け、品質はまちまちな状況です。牧草価格は、昨年の今頃と比べる高価ですが、2022年産のピーク時と比べると低くなっており、更なる上昇は今のところ想定されません。
     2月中旬のインペリアルバレー灌漑局からの発表によると、153,211エーカーが灌漑されています(前年同月:134,690エーカー、前月:153,369エーカー)。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     隣のアイダホ州では牧草価格は堅調である一方で、ワシントン州では僅かながら軟化傾向にあります。米国内酪農家・肥育農家では牧草在庫が無くなりつつあるため、牧草購入に動き始めています。依然として多くの生産者がアルファルファを手元に在庫しているため、在庫切れとなるリスクは低い状況です。作付面積は昨年とほぼ同等となる見込みです。今年は大手輸出業者がサウジアラビア資本の生産者と提携して、米国西海岸北部にて所謂スーパープレミアムアルファルファを生産・集荷するとの話が挙がっており、上級品の需要が高まる可能性があります。
     ワシントン州、オレゴン州、アイダホ州の山間部における積雪はこの時期としては良好です。また、カリフォルニア州およびネバダ州でおいても冬場の積雪の影響で干ばつが改善してきています。

2. 米国産チモシーヘイ

 コロンビア盆地では、直近約30日間雨が少なかったことから圃場が乾燥しており、例年の春風で作付けしたチモシーが吹き飛ばされる吹き出す可能性があります。正確な作付状況を把握するにはまだ時期尚早ですが、今後、圃場が乾燥と強風の影響を大きく受けた場合、昨年の作付面積よりも少なくなる可能性があります。

3. スーダングラス

 2022年産の荷動きはあるものの、あまり活発ではなく、日本の購買者は一定の在庫を抱えている模様です。一方、2023年産の作付面積はまだ不明です。政府機関は、7月1日から2ヶ月間、節水のための灌漑停止プログラムを提示しています。作付け時期によって刈取番手が少なくなる可能性があるため、生産者が今年スーダンを作付けするかどうか加え、そのタイミングにも注視する必要があります。
 インペリアルバレーは砂漠に囲まれているため砂地が多く、スーダンが多く作付けされています。スーダンの種類や品質、生産者の判断にもよりますが、スーダンは1番刈りまでに100日前後を要し、最低3回の灌漑が必要です。また、砂漠に近いような砂質土壌の場合は5~6回とより多くの灌漑が必要となるため、今年は水資源の状況によっては、砂質土壌の圃場からスーダンの収穫量があまり期待できない可能性があります。
 スーダンの作付けは通常3月中旬に始まり、7月上旬頃に1番刈が行われる見込みです。このため、インペリアルバレー灌漑局はまだスーダンの作付面積を報告していません。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 ペレニアルライグラスについては、昨年末~今年の2月初旬までの期間に一定の降雨があったにもかかわらず、昨年9~10月の干ばつの影響を受け、多くの圃場で変色した作物や枯れが見られました。2月中に圃場から作物を取り除いた生産者もいましたが、圃場の撤去を決めかねている者もいます。春になるとペレニアルライグラス作付けには遅すぎるため、作物を取り除いた生産者は、牧草以外に転作すると見られます。なお、昨年秋から初冬にかけて作付けされた作物は、干ばつの影響を回避し一定の収穫が期待できます。一方、フェスクについては、秋の早い時期に作付けされれば、翌年夏後半~秋の初めにかけて種子やストローの収穫できます。ただし、春にフェスクが作付けされた場合、収穫は翌年の夏になるため、2023年産牧草としての収穫量には寄与しないことになります。
 2023年の収穫スケジュールを明らかにするには時期尚早です。湿潤な気候が継続した場合は収穫が遅れる傾向があり、春に乾燥した気候が続いた場合は、スケジュールは通常通りであったとしても収量は低くなる可能性があります。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     例年の2-3月は、生産農家が播種を行う作物を選定する時期ですが、穀物輸出が堅調であるため、引き続き穀物を作付けする動きが活発です。牧草品目の作付面積は減少するトレンドが継続する事が予想されます。
     産地価格は、低級品については豪州国内需要が堅調に推移しています。輸出貨物については、海上運賃の下落を反映し、弱含みで推移しています。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     2022年産収穫が終了しました。例年に比べて、SA(南オーストラリア州)、VIC(ビクトリア州)では特に大幅に遅延しました。
     単収は増加傾向にありますが、SAとVICは大雨・洪水や収穫時の降雨の影響のため、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日、長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の品物が不足しています。一方、チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)は、十分な量が確保できる状況にあり、追加購買へも対応ができる見込みです。ロングタイプのストローの数量確保には産地への早期連絡が肝要です。
     新穀価格については、海上運賃の下落に加え収穫量が多い事も受け、弱含みでスタとしています。ただし、数量が限定されるロングタイプと、チョップタイプで価格差が発生する見込みです。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は現在確認されていませんが、一方で日本直行便の減少から、同一本船への集中が引き続き見られています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、本船動静遅延などから動静の乱れが見られています。特にポートランド港ではコンテナ機器不足から、ブッキング取得が困難になっています。
     直近のGRI(海上運賃一括値上げ)については、アジア発北米向け航路の貨物量減少を受け、往航運賃の減少が一部航路で見られています。復航航路についても、物量減少から運賃は軟調に推移しています。しかしながらコンテナ機器不足の状況や、労使交渉の進展など、今後について注視する必要があります。
     2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉については、5月10日から交渉がスタートしており、現在も決着はしておりません。争点は2点、福利厚生面とターミナルのオートメーション化についてです。7月26日、福利厚生面についての交渉が妥結し、引き続き自動化についての協議が行われています。
  2. 豪州航路
     豪州航路において、世界的な流通貨物量の減少を受け、日本直行便(メルボルン―東京/神戸)が無くなるなど、過去に比べ本船サービス減少した前提で運行されています。また、WAでは新穀の牧草コンテナの輸出が増えているため、ブッキングが確保しにくい状況が発生しています。SAは空コンテナ不足によりWAと同じ状況、VICは比較的に安定しています。春節の影響で本船サービスの減少やトランジット港での滞留による遅延が見られましたが、今月末より徐々に改善していく見込みです。

以上

令和5年3月16日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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