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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和5年5月号

1. アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     インぺリアルバレーにおける水事情ついて、連邦政府が2023年夏の水利配分の決定について今後発表する予定があるとのことです。雪解け水のおかげで、主要貯水湖の水位が上昇したのは好材料ですが、依然として低い水準です。よって、これら貯水湖の水量を蓄えるために、水利制限が判断されれば、インペリアルバレーを含む下流州への水の供給量が減る可能性があります。
     5月上旬に3番刈りアルファルファが開始しました。生産者が圃場整備のために、早刈りをしている場合、4番刈りと呼ばれることになります。現在、インペリアルバレーでは、中東向けの上級品が高値で集荷されています。アジア向けには、現在のアルファルファ価格が高すぎるために、輸出市場は、比較的静かで、価格動向を注視している状況です。
     2023年5月9日時点のIID発表の灌漑面積は152,480エーカー、昨年同期は133,598エーカー、先月は152,686エーカーでした。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     南コロンビア盆地では、1番刈りが始まりました。4月後半の天候は、平年より気温が高く26度を超える日がありました。中央と北コロンビア盆地は南部に比べ1~3週間ほど遅れて収穫が始まります。
     一方、秋から冬にかけて、コロンビア盆地西部で作付面積が減少しているため、アルファルファの供給がタイトになるのではないかという懸念もあります。
     干ばつ状況は西海岸全域で改善傾向にあり、オレゴン州中央部のごく一部が極端な干ばつに分類されただけです。 一方、米国中部のサウスダコタ州からテキサス州中央部にかけては、まだ乾燥傾向にあるため、米国内需の状況には注意が必要です。この傾向が続けば、これらの地域は過去2~3年のように輸出市場までアルファルファの購買エリアを広げる可能性があります。

2. 米国産チモシーヘイ

 多くの輸出業者が、今年のチモシー新穀価格は大きな値下がりを予想しているため、生育状況が良くない畑を残すかどうか迷っていた生産者は、畑を引き払い、比較的利益が安定している他の春作物を植えているようです。先月時点では、作付面積は5%から10%の減少が予想されていましたが、現在は10%程度の減少が見込まれています。
 品質については、この時期としては良い状況です。生産者は、早くても5月下旬頃に刈り取りを開始するのではないかと推測しています。オレゴン州中東部やアイダホ州中西部の天水地域では、気温が上昇し、畑は成長し始め、一部の生産者は施肥を開始しています。

3. スーダングラス

 2023年5月9日時点のIIDの灌漑面積は 22,212エーカーで、昨年同期は35,030エーカー、先月は20,704エーカーでした。
 スーダン生産者はコロラド川を通じた水利事情が明らかになっていないため、水利制限が発生すれば収益が減少するリスクがあるため、スーダンに水を使うことが出来なく作付面積は減少しています。
 ただし、アリゾナ州や隣国のメキシコでもスーダンは栽培されていること、インペリアルバレーの作付面積が減少しても、2022年産の繰り越しがあることから2023年産の需要に対して十分な供給量があると見通されています。
 1番刈りは、5月末から6月第1週が予想されています。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 主産地となるウィラメットバレーは、春先にかけての寒波や雪の影響により、2023年産は4月頃から生育を始めました。そのため、現時点での株は例年よりも小さくなっています。通常、5月は背が高くなり、ストローの収穫量を推し量る時期ですが、今年は種子収穫時に植物の高さが通常レベルに達するかどうかは、不透明な状況です。5月が生育環境に適していても、6月が暑く乾燥していれば、植物が種子をつけ、背丈が伸び悩みます。また生産者は種子生産を優先し刈り取りを開始しますので、茎の高さ(長さ)は確保されません。よって、茎が通常より短くなり生産量も減少することが見込まれます。
 収穫予定は、春の涼しく湿った天候のため、収穫は予定より2-3週間遅れています。
 また、干ばつが著しい圃場については、先月から、草の種やクローバー、その他の輪作物へ切り替えている圃場もあるようです。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     2023/2024年産(新穀)を見通すには時期尚早ではありますが、2022/2023年産の豊作を背景に小麦や菜種価格が下落したため、今年は一部でオーツへ作付けが戻る可能性もあります。
     現在、2023/2024年産オーツの作付けが進行中です。西オーストラリアでは25-50%の進捗状況で、5月末に作付け終了予定、南オーストラリア、ヴィクトリア州では5-10%の進捗で、6月末までには終了の予定です。
     直近および8月までは降水量が平年を下回る見通しです。昨年の収穫期の降雨により土壌水分は潤沢で今のところ生育には問題ないですが、先々も降雨不足が継続し干ばつとなると、高成分の上位グレード収穫が期待される一方で、単収の減少が懸念されます。
     先月の豪州政府の発表によると、中国政府が豪州産大麦の輸入関税撤廃について審査を実施することが2国間で合意されたとのことです。豪州側は審査期間を3-4ヶ月と発表していますが、中国側は1年掛かる可能性も示唆しており、2国間で温度差が見られます。豪州から中国向けの輸出は、年明けに石炭が再開されましたが、これに続き大麦も再開されれば次はオーツヘイでも同様の動きとなる可能性もあります。中国は上位グレード品に需要があるため、輸出再開となっても上位グレード品が品薄の現在では需給に大きな影響はないと考えられます。しかしながら、2023/2024年産では産地相場に影響を与える要因となるかもしれません。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     2022年産の収穫は完了しています。 特に南オーストラリアとヴィクトリアでは収穫時の降雨の影響のため、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日、長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の品物が不足しています。一方で、チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)は、十分な量が確保できる状況です。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、一部動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港について、大幅な遅延は確認されておりません。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、一部本船動静の遅延が見られています。ポートランド港ではコンテナ不足が課題となっています。PNW航路にて経由するバンクーバー港にて、港湾の混雑が確認されています。
     直近のGRI(海上運賃一括値上げ)については、アジア発北米向け航路の貨物量減少を受け、往航運賃の減少が続いていましたが、直近は再び反発し始め、頭打ちとなってと見られています。復航航路についても、物量減少から運賃は軟調に推移していましたが、一部船社では再び値上げした航路も出始めました。コンテナ不足の状況や、労使交渉の進展など、今後について注視する必要があります。
     2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉については、22年5月10日から交渉がスタートしており、現在も決着はしておりません。争点は2点、福利厚生面とターミナルのオートメーション化についてです。22年7月26日、福利厚生面についての交渉が妥結し、引き続き自動化についての協議が行われています。
     抗議行動の一貫で23年4月6日、7日にターミナルが閉鎖、その後再開をしましたが、作業の遅延が発生しました。23年5月現在、交渉は進展しており、ターミナル閉鎖・ストライキなどの予定はなく、粛々と給与・年金面の話し合いを進めているとのことです。
  2. 豪州航路
     VICと比較するとSAやWA出しは引き続きタイトではありますが、先月以前と比較すると状況は徐々に改善してきてはいます。しかしながら、豪州への輸入貨物量は引き続き低水準で推移しており、輸出向け空コンテナ不足による減便や特定航路のサービス停止を行う船会社も見られます。また、船会社ごとにブッキング取得の可否やスケジュール遅延にも濃淡があり、フリータイム条件の良い船会社の起用が必ずしも叶わない状況は継続しています。

以上

令和5年5月25日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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