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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和5年1月号

1. アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     現在、2023年産として最初の刈取が実施されようとしていますが、天気予報が好ましくなく、生産者は現在待機中です。直近は湿度が非常に高く霧や降雨となる日が多かったこともあり、牧草集荷および取引は低調です。輸出向けに見合う品質の牧草も一部収穫されましたが、全体的に品質の低いものが中心です。ただし、現時点では収穫されて間もないこと、成分分析が進んでおらず全体的なグレードが分からないこと等から、輸出向け牧草の市場価格はまだ確立されていません。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     収穫は終了しています。昨年12月は11月に引き続き輸出向け牧草の出荷が鈍い月となりました。ワシントン州の輸出業者と確認する限りでは、中国はこれまで継続的に輸出向け牧草の出荷先となっていましたが、他の輸出先国と同様に減速し始めています。
     米国内では、低気温と降雪の影響によりわずかに需要の増加が見られます。また、米国西海岸からモンタナ州、コロラド州、ワイオミング州、ニューメキシコ州にかけて降雨と降雪が一定程度見られることから、干ばつは一定程度改善しています。

2. 米国産チモシーヘイ

 チモシーの収穫は終了しています。灌漑地域・天水地域ともに作付け作業が終了しており、次回の作付けは来年に春頃となる見通しです。

3. スーダングラス

 スーダンの荷動きは例年と比べて鈍化しています。いくつかの輸出業者はこのまま荷動きに改善が見られなければ繰越在庫を抱えることになると見られます。牧草の荷動きが非常に鈍く、2023年産の作付けへの影響が懸念されますが、生産者の動向を見通すには時期尚早です。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 2022年産のペレニアルライグラス、フェスク、アニュアルライグラスを含めて、品質は例年並みかやや明るめのものが収穫されました。ここ6か月のポートランド港での空コンテナ供給量は厳しい状況ではないものの、一部の船社で供給不足が見られます。オレゴン産ストローの荷動きは比較的順調であり、韓国向けのフェスクも継続して出荷が進められています。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     2022年産集荷が終了しました。今年度はオーツ麦自体の作付面積が減少したため、例年の輸出需要に対して、供給量が確保できていない状況です。サプライヤー毎に数量限定で販売するなどの動きが発生しています。
     豪州各州の単収は、全体的に刈り遅れとなった事から増加しました。(平年:5-6トン/ヘクタール、WA:西豪州では最大10トン/ヘクタール、SA:南豪州/VIC:ビクトリア州では6-8トン/ヘクタール)
     ただし、SAとVICでは、収穫適期から収穫後まで洪水を招くレベルの大雨が継続したため、収穫の大幅遅延に加え、牧草として収穫する時期を逸し穀物で収穫せざるを得ない圃場も発生しました。また、降雨の隙間を縫って収穫したものの、雨あたりに遭ってしまい輸出に適さない品物も多く、全体収穫量としては例年より大幅に減少した状況です。
     刈遅れは牧草の繊維質を増加させ糖度を減少させることから、2019年~2021年産(干ばつにより高糖度、低繊維)に比べ、嗜好性が低下し反芻力が強くなる事が予想されます。
     新穀価格は12月積みから設定された状況ですが、サプライヤー各社の旧穀在庫の保有状況により温度差が出ています。豪州国内需要は依然として強く、輸出業者との購買競争が発生しているため、産地相場は堅調です。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     2022年産の穀物の収穫が今月中旬には完了見込みです。オーツヘイの収穫遅延の影響で、SA/VICでは集荷が完了するのは2月中旬までかかる見込みです。
     単収は増加傾向にありますが、SA/VICは大雨・洪水や収穫時の降雨の影響のため、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日、長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)については、倒伏やダメージ、圃場での雑草混入が増えことから数量は限定的になる見込みです。一方、チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)は、十分な量が確保できる状況にあり、追加購買へも対応ができる見込みです。ただし、穀物生産者は穀物だけで十分な収益が得られるためストローの集荷には消極的です。このため、ストローの数量確保には産地への早期連絡が必要です。
     新穀価格については、オーツヘイでの価格反映が遅れた影響から、サプライヤー毎に改定時期が異なる可能性があります。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は一時期と比較すると緩和していますが、日本直行便の減少から、同一本船への集中が引き続き見られています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、本船動静遅延などから混雑が継続しています。またポートランド港でのコンテナ機器不足から、ブッキング取得が困難になっています。
     直近のGRI(海上運賃一括値上げ)については、アジア発北米向け航路の貨物量減少を受け、往航運賃の減少が一部航路で見られています。復航航路についても、一部航路・船社での値下げがありましたが、すべての航路・船社で値下げが起きている状況ではありません。また、冬場を迎え、ブランクセーリングの影響や、依然としてコンテナ不足・港湾混雑・本船遅延・抜港などに起因する船腹不足が懸念されるため、今後の先行きは不透明な状況です。
     2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉については、5月10日から交渉がスタートしており、現在も決着はしておりません。争点は2点、福利厚生面とターミナルのオートメーション化についてです。7月26日、福利厚生面についての交渉が妥結し、引き続き自動化についての協議が行われています。
  2. 豪州航路
     豪州航路において、中国(上海)での新型コロナウィルス感染者が減少しない状況で、ゼロコロナ政策が続いていた事から、中国発着の貨物量の減少が発生しています。船会社は、日本直行便(メルボルンー東京/神戸)が無くなっており、また本船サービスの全体的な減少が発生しているためブッキングの制限が発生しています。WAでは新穀の牧草コンテナの輸出が増えているため、ブッキングが確保しにくい状況が発生しています。SAは空コンテナ不足によりWAと同じ状況、VICは比較的に安定しています。1月22日は春節となり、この前後で本船サービスの減便が表明されており影響の注視が必要です。

以上

令和5年1月16日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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