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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和5年2月号

1. アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     生産者は 2023 年の1番刈の収穫を進めています。今年は圃場面積が増加しており、刈取りは更に数週間程度続くと見られます。
     1月末から2月初めにかけて降雨があったため、いくつかの圃場がダメージを受け、品質はまちまちな状況です。なお、輸出用に満たない品質の牧草は米国内で販売されます。悪天候の影響を受けずに収穫された牧草は高成分となっています。
     中東や中国はまだ買い付けを開始しておらず、新穀の相場は確立されていませんが、今後、購買が開始されれば相場がより明確になると見られます。一方、米国内酪農家は生乳生産にかかる投入コストが高いことから高価格のアルファルファを購入しないと見られ、昨年のように1・2番刈のクレインに需要がシフトする可能性があります。
     1月下旬のインペリアルバレー灌漑局からの発表によると、153,369エーカーが灌漑されています(前年同月:134,124エーカー、前月:151,509エーカー)。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     米国西海岸北部の大部分において、引き続き牧草取引は低調となっています。また、今月に入り価格がやや軟化したものの、降雪と低気温の影響から以降は堅調な相場となっています。
     12月以降は西海岸で降雨と降雪があり干ばつの程度は一定改善したものの、カリフォルニア州における貯水量は依然として不足しており、大雨や雪のほとんどは海へ流出していると見られます。また、南部周辺のミード湖とパウエル湖の貯水量はまだ非常に少なく、問題ないレベルまで達するには更なる降雪や降雨が必要です。

2. 米国産チモシーヘイ

 チモシーの収穫は終了しています。灌漑地域・天水地域ともに作付け作業が終了しており、次回の作付けは来年に春頃となる見通しです。

3. スーダングラス

 2022年産は日本向けの荷動きが鈍く例年と比べ低調です。
 2023年産のスーダンがどの程度作付けされるかは今のところ不明です。また、インペリアルバレーにおける水資源の状況についてもまだ十分な情報が得られていません。
 例年、ニンジン、タマネギ、ブロッコリーのような農産物の収穫後に早播きのスーダンが作付けされます。一方、小麦や甜菜は4-6月に収穫が始まり、遅播きのスーダンはこれらが収穫された後に作付けされます。今年は小麦の作付面積が減少していますが、スーダンの作付面積どう影響するかは不明です。一部の輸出業者ではスーダンの作付面積を3万エーカーと見積もっており、これは2022年産より少ない面積となります。しかし、2022年産の繰越在庫があるため、スーダンの供給量総量としては十分となる可能性があります。今後の課題は、紺年産のスーダンの品質です。今後、スーダン種子の価格が高くなる場合、生産者は1エーカーあたりの種子の投下量を少なくする傾向があり、その結果、灌漑する圃場単位での作物が相対的に少なくなるため、スーダンの茎大きくなります。また、収穫時の天候も品質に影響します。
 生産者はまだ2023年産スーダンの作付けを開始していないため、インペリアルバレー灌漑局はまだスーダンの作付面積を報告していません。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 圃場が新しい季節に備え、緑に変わり始める時期です。ペレニアルライグラスについては、昨年末~今年の2月初旬までの期間に一定の降雨があったにもかかわらず、多くの圃場で変色した作物や枯れが見られます。これは昨年9~10月の干ばつの影響を受けたことが原因と考えられ、今月中に圃場から作物を撤去することを決めた生産者もいます。フェスクの圃場にも褐色のものが見られますが、フェスクはライグラスよりも強い作物であるため、今後の天候次第では回復する可能性があります。
 特にペレニアルライグラスについては雑草駆除を含めた管理コストが高く、2023年のペレニアルライグラスの作付面積は減少する見込みです。今後、オレゴン州農務局による生産者調査報告書により作付面積の動向が一定明らかになると見られます。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     ABARES(豪州政府農林漁業省)より発表された12月統計(下表)によると、小麦は歴代1位を更新しました。大麦は減少したものの歴代4位を維持しています(中国向けの輸出減が影響)、菜種が代替品目として続伸し歴代1位の数字となっています。オーツ麦(すべてが牧草として輸出されるわけではない)は、2022年産から2年連続で減少し、歴代16位となりました(過去31年の平均値程度)。
     例年、2-3月は生産農家が播種を選定する時期ですが、穀物輸出が堅調であるため、牧草品目の作付面積が減少し穀物の作付けが上昇するトレンドが継続する事が予想されます。
     産地価格は、豪州国内の需要が活発である一方、SA(南オーストラリア州)/VIC(ヴィクトリア州)の大雨洪水影響により収穫量減となった事や、豪州全地域での作付面積の減少を受け、堅調に推移しています。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     2022年産収穫がほぼ完了しました(今週末には、全地域で完了見込み)。
     単収は増加傾向にありますが、SAとVICは大雨・洪水や収穫時の降雨の影響のため、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日、長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の品物が不足しています。一方、チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)は、十分な量が確保できる状況にあり、追加購買へも対応ができる見込みですが、ストローの数量確保には産地への早期連絡が肝要です。
     新穀価格については、上述の通りロングタイプとチョップタイプで価格差が発生する見込みです。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は緩和しています。一方で日本直行便の減少から、同一本船への集中が引き続き見られています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、本船動静遅延などから動静の乱れが見られています。特にポートランド港ではコンテナ機器不足から、ブッキング取得が困難になっています。
     直近のGRI(海上運賃一括値上げ)については、アジア発北米向け航路の貨物量減少を受け、往航運賃の減少が一部航路で見られています。復航航路についても、物量減少から軟調に推移しています。しかしながら一部船社では再びフリータイム条件の見直しも始まっており、今後についてを注視する必要があります。
     2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉については、5月10日から交渉がスタートしており、現在も決着はしておりません。争点は2点、福利厚生面とターミナルのオートメーション化についてです。7月26日、福利厚生面についての交渉が妥結し、引き続き自動化についての協議が行われています。
  2. 豪州航路
     豪州航路において、世界的な流通貨物量の減少を受け、日本直行便(メルボルン―東京/神戸)が無くなるなど、過去に比べ本船サービス減少した前提で運行されています。また、WAでは新穀の牧草コンテナの輸出が増えているため、ブッキングが確保しにくい状況が発生しています。SAは空コンテナ不足によりWAと同じ状況、VICは比較的に安定しています。春節の影響で本船サービスの減少やトランジット港での滞留による遅延が見られましたが、今月末より徐々に改善していく見込みです。

以上

令和5年2月21日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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