海外粗飼料情勢
輸入粗飼料情勢 / 令和5年4月号
1. アルファルファヘイ
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- カリフォルニア州南部インペリアルバレー
- 先月もお伝えしたように、今現在、2023年の作付け面積は2022年よりも大幅に増加しています。アルファルファは多年草ですので、一般的には、複数年の相場を想定して作付けを決定します。生産者がアルファルファの作付けを増やしたのは、今現在のアルファルファ市場が好調で、アジア、中東、国内市場など、様々なアルファルファ需要が下支えしていることを見据えたものです。
収穫時の状況としては、今年は既に数回の軽い雨が降りましたが、生産者は2番刈りの収穫を開始しています。1番刈りおよび2番刈りは全体的に分析結果もよく、プレミアム以上のグレードとして扱われます。暖かい季節になるにつれ、分析結果は低下し始めます。通常、3番刈りではプレミアムやスタンダードグレードが想定されます。
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- ワシントン州コロンビア盆地
- 国内および輸出の乾牧草市場について、3月中は安定した取引があったため、市場は堅調に推移しています。フィードロット等の国内需要者が新穀収穫までの間、低グレードの乾草を集荷しています。 1番刈りが始まるまでに追加購入する必要があるかどうかは、現時点では不明ですが、特にコロンビア盆地南部では、収穫まで30~45日しかないため、毎週購入していくものと思われます。生産者は、新穀の収穫が近づくにつれ、毎週売りたがるようになるため、バイヤー等の需要者にとって、充分な取引をすることができるようになります。
今年の輸出市場については、誰もがキャリーオーバーを抱えており、輸出業者は動きがまだ鈍く、新穀まで買い付けを待っているのがほとんどです。一方、生産者は5月5日~10日が1番刈りの開始日だと想定しており、生育は例年より若干遅れているところです。
3月は西海岸全域で降雪があり、特にPSWやカリフォルニアで多く見られました。これは春に向けて良いニュースであり、乾牧草価格の弱材料として作用すると思われます。 懸念材料としては、米国内の畜産農家が例年より長く雪に覆われる山の牧草地に行くのが遅れるかもしれないことです。
2. 米国産チモシーヘイ
コロンビア盆地では、新穀が生育中です。 2月は乾燥した天候が続き、荒れてしまった圃場が多かったようです。その影響を受け、一部の圃場からは、作物が取り除かれたようです。
当エリアのチモシーの5%~10%程度が減少したと予想されています。現在の天候では1番刈りは5月の最終週に始まると想定しています。
3. スーダングラス
生産者は早播きスーダンの作付けおよび灌漑を開始しており、今後2、3カ月の間に作付面積が増加することが見込まれます。一部の輸出業者は、総栽培面積が30,000エーカーを超えないだろうと予測しています。遅播きスーダンがどの程度植えられるかは、現時点では不明です。生産者の中には、市場が低迷していてもスーダンを作付けする人もいますが、それはスーダンという植物が土壌調整に良いからと言われています。また、マーケット価格に魅力がなければ遅播きの作付けはしない、2番刈りはしない、という生産者もいます。水を節約し、秋に収穫される農産物のために畑を準備することができるのです。
2022年産スーダンのキャリーオーバーがあるので、スーダンの供給量は日本市場には十分だと見込まれますが、各グレードの数量がどの程度になるかは分かりません。
一般的に、早播きで5月から6月上旬に収穫される貨物は、緑色が強く、中太から細軸サイズが中心となります。6月下旬以降は、暖かくなるにつれて色抜け品が多く収穫されますが、緑色が残った貨物も一部収穫されます。
1番刈りは、2番刈りより茎が細くなるため、夏の半ばに収穫される圃場では色抜け品の細軸傾向が見られます。2番刈りで収穫される太軸品は、夏の終盤に収穫されるため、色抜け品緑色の貨物が収穫されることもあります。
今のところ、1番刈りは5月中旬に刈り取りを開始し、5月下旬から6月上旬にベーリングする予定です。
2023年4月1日のIVレポートでは、昨年同時期は13,987エーカー、先月は2,395エーカーだった灌漑面積が、10,678エーカーとなっています。
4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)
主産地となるウィラメットバレーでは、昨年の干ばつの影響を受けて、2月に圃場から作物を取り除いた生産者もいました。3月下旬から4月上旬にかけての天候は寒く、雨が多かったため、草の生育が遅れています。今後、天候に大きな変化がなければ、今年は収穫が遅れることが見込まれます。
収穫量が例年並みになるかどうかの判断は時期尚早ですが、秋に乾燥した天候が続いたため、ペレニアルライグラスの畑は例年より、収穫量が少なくなると予想されています。
5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー
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- オーツヘイ
- 現在、豪州の生産農家は、冬作物に作付けする品種の意向を固めている所です。2022Cropは牧草を生産する農家にとって決して良いシーズンではありませんでした。理由はSA(南オーストラリア州)とVIC(ビクトリア州)の大雨&長雨&洪水による収穫量の減少と、品質の低下で収入が極端に減ったためです。大雨&長雨&洪水の爪痕は激しく、今年はインフラのメンテナンスにも費用が掛かるという情報が届いています。こういった状況から、穀物を選択する農家が増える懸念があります。下図(左)5-7月(右)6-8月の3か月間の降水量が平年を超える確率を示した内容となっています。4-6月期は降雨量の不足が心配されておりましたが、6-8月は若干回復する見込みです。昨年から比較すると雨量としては少ないため、9-11月に収穫シーズンを迎える冬作物の収穫量は若干減少する可能性が見込まれます。
豪州国内の状況として、食肉相場や素牛相場が下落しています。生産農家は販売価格が回復するまで移動を躊躇しており、飼料の需要が一時的に高まっています。国外へ輸出を行っている粗飼料への影響は軽微ですが、今後も国内消費が増加する場合、輸出価格へ影響する可能性があるため、注視すべき動きとなります。
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- 小麦ヘイ/ストロー
- 2022年産収穫は完了しています。 単収は増加傾向にありますが、SAとVICは大雨・洪水や収穫時の降雨の影響のため、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日、長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の品物が不足しています。一方、チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)は、十分な量が確保できる状況にあり、追加購買へも対応ができる見込みです。
ロングタイプの在庫不足から、「ミドルタイプ」という名前でチョップタイプのストローを選別した品物が流通しています。上述の通り、ロングとチョップ+ミドルは生産方法が異なる事に注意が必要です。
産地価格は希少価値が高いロングタイプは堅調ですが、チョップ+ミドルタイプのストローは、韓国のストロー需要減少や日本国内の自給飼料回帰の動きなどが影響し、軟化傾向です。
6. 海上運賃
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- 北米航路
- 太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は直近まで確認されていませでしたが、4月6日7日に北米労使交渉に進展があり、抗議行動の一貫でターミナルが閉鎖されました。現在ターミナルは再び稼働していますが、今後の状況に注視が必要です。また、日本直行便の減少から、同一本船への集中が引き続き見られています。
太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、一部本船動静の遅延が見られています。ポートランド港ではコンテナ機器不足が課題となっています。
直近のGRI(海上運賃一括値上げ)については、アジア発北米向け航路の貨物量減少を受け、往航運賃の減少が続いていましたが、直近は再び反発し始め、頭打ちとなってと見られています。復航航路についても、物量減少から運賃は軟調に推移していましたが、一部船社では再び値上げした航路も出始めました。コンテナ機器不足の状況や、労使交渉の進展など、今後について注視する必要があります。
2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉については、5月10日から交渉がスタートしており、現在も決着はしておりません。争点は2点、福利厚生面とターミナルのオートメーション化についてです。7月26日、福利厚生面についての交渉が妥結し、引き続き自動化についての協議が行われています。
上述のとおり、11か月にわたって進行中の労使交渉が、抗議行動の一貫で4月6日7日にターミナルが閉鎖、週明けの4月10日はターミナルのシャットダウンはされなかったものの、作業の遅延が発生しました。現在は通常どおりに戻りつつありますが、今後の動静に注視が必要な状況となっています。
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- 豪州航路
- 豪州航路において、世界的な流通貨物量の減少を受け、日本直行便(メルボルン―東京/神戸)が無くなるなど、過去に比べ本船サービス減少した前提で運行されています。また、WAでは新穀の牧草コンテナの輸出が増えているため、ブッキングが確保しにくい状況が発生しています。SAは空コンテナ不足によりWAと同じ状況、VICは比較的に安定しています。 船会社毎でスケジュールの遅延は大きく差があります特定の船会社では数か月のロールが発生する状況もあり、サービス減少の影響は船会社毎で濃淡があるようです。
海上運賃については北米航路での値下げに連動し、豪州航路でも価格の見直しがなされています。この運賃減少が輸入価格へ影響している状況です。
以上
令和5年4月24日
全国農業協同組合連合会(JA全農)