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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和5年6月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     4番刈りが始まろうとしています。気温の上昇に伴い、成分値が低下してきているため、今後収穫される牧草は俗に言うサマーヘイへと近づいてきています。生産者は、分析テストの結果によって収入が変わるため、相場を確認しながら適期に刈り取りを行っている模様です。また、現在のテストの結果はタンパク値が20%を下回る傾向にあります。
     品質が低下する時期に入り、アルファルファの種子価格が堅調なため、乾牧草用ではなく、種子用に栽培されるアルファルファ畑も散見されます。
  • クラマスフォールズ
     5月は非常に暑い日が続いたため生育が進みました。その後は涼しい日が続き、生産者は6月初旬までに1番刈りを進めたいところでしたが、雨の予報が続いたため、6月中旬まで待つ生産者が多かったようです。クラマスフォールズの水利条件は、今のところ問題ないと見込まれています。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     コロンビア盆地南部の1番刈りは、ほとんどの収穫を終えました。収穫初期のタイミングでの若干のブリーチがみられるものの、きれいに仕上がっている印象です。中央、北部については、早めに収穫を終えた貨物もありますが、収穫途中に降雨があり、いくつかのスタックはダメージを受けた模様です。30%程度が雨に当たったと推定されています。
     新穀の収穫が始まって半月以上が経過していますが、今のところ、買い付けはほとんどされていません。これは非常に珍しいことで、例年であれば収穫が始まり、国内酪農家や輸出業者の動きが活発になるのですが、今年は違います。
     一部の大手輸出業者は、早々に価格提示をしていましたが、他の買い手が市場に入ってこない状況が分かり、手を引いた模様です。引き続き、他の買い手が市場へ参加するのを待っていましたが、今のところ誰も参加していません。
     現在の取引価格は、昨年対比で大幅な値下げとなるため、売り手となる牧草生産者と買い手となる輸出業者との間では、今までの取引経過や今後の取引も見据えた妥当な価格帯を探っている状況です。

2. チモシーヘイ

  • 米国産
     コロンビア盆地では、新穀の収穫が進んでいます。今年は、冷涼な気候から収穫スケジュールが遅れる見込みでしたが、ほとんどの畑では、この時期の通常の生育ペースにほぼ追いついてきています。 最初にベールされた畑は非常に良好で、収量は例年より少なめの傾向にあります。また、収穫エリアによっては雷雨の予報が出ており、収穫が数日遅れる可能性があるようです。
     エレンズバーグでの収穫スケジュールは、予定より若干遅れています。一部の生産者は6月第1週から刈り取りを開始しましたが、不安定な天気予報が出ているため、ほとんどの生産者は翌週まで待つことになる見込みです。近隣エリアの畑でも同様に、雨の予報を受け、刈り取りを遅らせる傾向にあります。
     アイダホ、オレゴン中東部にある天水地域の生育状況は順調です。生産者は、単収を上げるために、刈り取りまでにあと1,2回程度の雨を期待しています。早ければ、6月下旬には、刈り取りを開始する見込みです。
  • カナダ産
     現在、カナダでは森林火災が多発しており、火災や乾燥による放牧地の不足から、国内での旺盛な飼料需要が期待されています。
     灌漑エリアのチモシーについて、早く準備が整った畑は6月末頃から、大半は7月上旬に刈り取りを開始する予定です。

3. 米国産スーダングラス

 早播きスーダンは、5月末から1回目の刈り取りが始まりました。現在のところ、1番刈りは10~20%程度が収穫されていると推定されます。1番刈り後、生産者が畑を2回目の刈り取りまで育てるかどうかは、まだ分からないところです。
 これまでのところ、収穫された貨物の品質は中間グレードから上級グレードです。一部のスタックでは茶色い葉が見られるため、生産者が水を多く灌漑しすぎたのかもしれません。

4. 米国産バミューダ

 バミューダヘイについて、現在、1番刈りが終了し、2番刈りが始まっています。1番刈りは、ビッグベールでの収穫よりも、3タイベールが多く、品質はプレミアムと#1グレードの両方が生産されています。輸出市場が低迷しているため、輸出業者からの買い付けは多くなく、主に国内市場に販売されています。生産者は、国内市場を見込み3タイベールの生産を多くしたのだろうと想定されます。また、種子生産ではなく乾牧草生産を主としている生産者の中には、バミューダヘイを過剰に生育して収量を上げ、単収を稼ぐ生産者もいるようです。
 バミューダストローについて、種子の収穫は、6月下旬から7月上旬に始まり、種子の収穫のためにコンバインがかけられ、その後ベーリングが行われます。最も早く収穫されたバミューダストローは通常緑色で、7月末から8月にかけてベーリングが進むにつれて色が薄くなり、8月初旬には色が抜けたビーフグレードも収穫される予定です。

5. 米国産クレイングラス

 1番刈りが終了し、2番刈りが6月上旬に開始されているところです。買い手は積極的でなく、新穀はあまり売れていない状況で、生産者にとっては昨年より低い価格帯で取引が行われている様子です。
 生産者は、今年の相場が良くないとわかっているので、通常よりも成熟させる傾向にあります。つまり、プレミアムグレードより#1グレードが多くなります。これは、通常よりも単収を上げ、より多くの生産量を確保することにより、収入を維持させるためです。2番刈りの品質は、カットするタイミングによってプレミアムから#1グレードになります。早いカットはプレミアムグレード、遅いカットは#1グレードになると思われます。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 主産地となるウィラメットバレーにて、ライグラス圃場は6月10日前後から受粉期に入りました。受粉期に30日程度、その後刈り取りへと進みます。牧草が乾くのを待ってから、7-10日後にコンバインすることになり、ベーラーはコンバイン後すぐにベーリングを開始することができます。ベーリング後にベールを乾燥させる必要はありません。エンドファイト検査の結果次第では、ライグラスストローの新穀は7月第3週に出荷できる可能性があります。
 ウィラメットバレー南部は、中央部よりスケジュールが1週間ほど遅れています。南部のベーラーはフェスクとアニュアルをベーリングしているため、ライグラスのベーリングは遅れる可能性があります。また、このスケジュールは、7月の収穫時の天候に左右されます。
 ウィラメットバレー中央部のフェスク圃場は、6月1日頃から受粉が始まりました。生産者はおそらく30日後の(7月1日から10日の間)に刈り取りを行う予定です。牧草は乾燥させるために地面に置かれ、その後7-10日後にコンバインが開始されます。その2-3日後にベーリング作業へと続きます。ベーラーは、水分が多すぎないかどうかを確認するために少し待つことを好みます。 ベーリング後、フェスクはベール状になってから2-3週間乾燥され、エンドファイト試験の結果次第では7月末に出荷できる予定です。7月の収穫時の天候によって左右されますが、ウィラメットバレー南部地域は、このスケジュールより1週間ほど早くなる可能性があります。
 今のところ、輸出業者はフェスク、アニュアルライグラス、ペレニアルライグラスの3つの作物とも収量が通常よりやや少なくなると見込んでいます。

7. 豪州産

  • オーツヘイ
     現在、新穀の作付けが進行中です。WA(西オーストラリア)では、作付けはほぼ終了。SA(南オーストラリア)、VIC(ヴィクトリア州)では80-90%の進捗で、6月末までには終了の予定です。
     作付けシーズンである6月に関して、乾燥懸念が拡大しています。一方で7-9月の降水量は6月よりは増える見通しです。直近ではWA南部やSA、VICではまとまった降雨があり、今後の更なる降雨が期待されます。
     ただし、オーストラリア気象庁は6月6日、年内にエルニーニョ現象が発生する確率が70%に高まり、乾燥見通しを「アラート(警告)」に引き上げたと発表しました。加えて同庁は、熱帯インド洋の状況もオーストラリア全域に乾燥をもたらす可能性が高いと警告しており、一般的には乾燥の懸念は強い見通しです。
     菜種などの相場下落に伴い、新穀では他作物からオーツへの転作が期待されていましたが、乾燥懸念により休耕地は増えており、とあるサプライヤー筋の見立てによると、豪州全体では新穀の生産量は昨年並みから減少の見通しです。一方で、今後の天候リスクをどう捉えるかによって、地域ごとの作付け意向に濃淡が生まれている様子です。
     仮に今後も乾燥が継続すれば新穀の単収は下がり、また収穫期の雨当たりも無ければ上位グレードが中心に生産され、下位グレードの生産量が落ち込む可能性もあります。
     旧穀に関しては、下位グレードの産地在庫は比較的余裕のある状況でしたが、豪州では冬の到来を前にして越冬のための牧草取引が活発化してきました。乾燥により放牧地の牧草も十分に育っておらず、旧穀在庫への引き合いが旺盛となってきている状況です。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     旧穀に関して、特にSAとVICでは収穫時の降雨の影響のため、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日、長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の品物が不足しています。
     一方で、チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)は、比較的在庫に余力がありましたが直近では豪州国内を中心に引き合いが増えており、産地在庫はひっ迫感を見せ始めています。
     新穀について、乾燥懸念により小麦ストローの生産量減少が懸念されます。

8. 海上運賃情勢

 北米航路、豪州航路について、一部動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港について、6月上旬、労使交渉の関係で一時ターミナルの荷役停止があり、動静遅延が発生したものの、現在は徐々に回復しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ(SEA/TAC)港でも同様に、労使交渉の関係で荷役のスローダウンが実施され、本船動静の遅延が見られています。ポートランド港ではコンテナ機器不足が課題となっています。PNW航路にて経由するバンクーバー港にて、本船動静の遅延・港湾の混雑が確認されています。
     2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の労使交渉について、23年6月2日、交渉の難航からターミナル荷役の停止、作業のスローダウンなどのジョブアクションがLA/LB、SEA/TACで発生し、上記の荷役スローダウンが実施されました。6月14日には、北米西岸の労使間で新たな6年間の労働契約が暫定的に合意されました。この契約は組合員の投票で内容の批准が行われるものであり、速やかな批准とスローダウンの解消が望まれます。
     一方で、カナダの労使間でも交渉が最終局面を迎えています。ただし懸念材料としては、6月21日以降は72時間の事前通知を経れば、組合によるロックアウト/ストライキが可能になることが挙げられます。最短で6月24日からバンクーバー港で更なるスローダウンが発生する可能性もあり、注視が必要です。
  2. 豪州航路
     豪州の輸入貨物量は低水準で推移しており、輸出向け空コンテナの量は引き続き限定的です。それに加えて、船社の中にはより収益性の高い航路にコンテナを集めるために豪州発アジア向けに空コンテナを輸送しているところもあり、豪州国内の空コンテナ不足に拍車をかけています。事前通知なしの豪州抜港や減便も散見され、突然の動静遅延が発生し得る環境は継続しています。

以上

令和5年6月21日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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