文字サイズ
標準
拡大

海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和5年7月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     インペリアルバレーへ農業用水を供給しているコロラド川に関連するダムの状況は昨年度よりも改善されているものの、依然として低い貯水レベルにあります。本年については、大きく制限されない見通しですが、今後3年間を通じて、250,000エーカー/フィートの水の使用量を減らす方針が示されています。生産者は、乾牧草相場の低迷により、7月から8月までの水の利用をやめ、収穫を中断することを考えているようです。
     アルファルファの収穫については、3番刈りが終了し、現在 は4番刈りの最中です。今年は作付面積が増加しています。1-2番刈りはサウジアラビアの旺盛な需要により高値で取引されましたが、3番刈りからは暑い気候のため品質が低下し、それに伴って価格も下がり、4番刈りではサウジアラビアは手を引いている状況です。ただし、テキサス州やカンザス州などの国内は干ばつ傾向にあり、自給乾牧草が制限されるため、国内からの需要が強まる可能性があります。
     2023年6月15日のIIDレポートによると、灌漑面積は151,915エーカー。昨年同時期は133,831エーカー、先月は152,480エーカーでした。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     コロンビア盆地周辺の2番刈りは、ほぼ終了しました。米国内需要および輸出事業者からの買い付けは非常に限られています。牧草バイヤー等の情報交換の場においても、数件のスポット買付が報告されるのみで、市場はまだ形成されていません。2番刈りの収穫時期で、これほど市況が低迷したのは 25年ぶりかも知れません。米国内向けの取引は、酪農家への分析結果が良いアルファルファの購買に限られており、昨年同時期から$100/stドル以上の値下がりが見られます。雨あたりの低級品だと$150/st以上の値下がり状況です。このような状況を受けて、まだ3タイベーラーを所有している一部の生産者は、米国内の小売り向けに高値で売れることを期待して、2番刈りを3タイにベーリングしています。しかしながら、歴史的にこの小売り向け市場は小さく、この傾向が3番刈りまで続くとは考えられていません。
     多くの生産者は、今年はタイトなスケジュールを維持しようとしており、7月中旬から3番刈りを行う見込みで、例年よりも高い成分のアルファルファの収穫を狙っているようです。

2. 米国産チモシーヘイ

 コロンビア盆地では、1番刈りの収穫が終了しました。市況はアルファルファよりも堅調に始まり、輸出事業者も順調に買い付けを続けていましたが、その後一定需要が満たされたと同時に#1グレードの貨物が多くベールされるにつれて鈍化してきました。
 コロンビア盆地南部では、収穫当初から50%程度までベーリングされる期間は天候に恵まれ、順調に収穫が進みましたが、6月半ばの雨により収穫は減速しました。当地域のチモシーは30%~40%が雨に降られたか、晴天を待ち、多少成熟しすぎた状態でベールされたと推測されます。
 当報告がまとめられている時点では、生産者とバイヤーとの間では、#1グレードのチモシーの価格について膠着状態にあり、多くのスタック在庫が成約されていない状況です。また、今年は価格が下がっているため、2番刈り用のチモシーを残す生産者は多くなく、代わりにスイートコーンや豆類などへ転作が進んでいるようです。  
 エレンズバーグでも、1番刈りは終了しました。25-30%程度が雨あたりにあったようですが、当初の遅れていた収穫スケジュールを取り戻し、ほとんどの貨物について良い状態で仕上がったようです。
 ドライランドと呼ばれる天水地域では、現在収穫が進められています。アイダホ州東部では降雨の恐れがあったため、7月初旬まで刈り取り作業が行われずに、品質はまちまちな状況です。そのほかの天水地域でも、ほとんどの生産者は刈り取りを開始し、7月中旬までベーリングする予定です。品質は過去2年よりも良いようですが、これらの産地での収穫進捗は、30%程度を見込まれています。

3. スーダングラス

 1番刈りは、7月中旬までに80-85%程度が収穫終了する見込みです。
 日本からの需要が低く、輸出事業者は、ほとんど新穀スーダンを購入していないため、全般的に市場は低迷しています。この需要減と価格低迷のため、今年については、2番刈りが行われるのは当初の作付面積の半数以下になると予想されています。これは2023 年産として、中軸および太軸のグレードの発生量が少なくなることを意味します。
 牧草生産者にとっては、生産費の25%程度が種子費用と言われており、スーダン種子の価格は依然として高く、2024年も続くと予想されています。茎の細いスーダンの場合、1エーカーあたりにより多くの種子を播種する必要があります。
 また、市場が低迷すると、生産者はより良い等級を収穫しようとする傾向があるようで、例年は1番刈りでの単収は1エーカーあたり3.5st前後ですが、今年は多くの圃場で2.5st以下の見込みです。生産者は、より良いグレードを収穫するために、早めの刈り取りや通常4~5回の散水を3~4回に減らしたりしているようです。市場が好調な場合、生産者はより多くの水を与え、等級は下がるが単収を増やす傾向とのことです。
 2023年6月15日時点のIIDの灌漑面積は25,158エーカー、昨年同期は46011エーカー、先月は24,704エーカーでした。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 現在のところ、フェスクとアニュアルライグラスの収穫は順調に進んでいます。主産地となるウィラメットバレーの南部では6月下旬から、中部部では7月上旬から刈り取りが始まり、種子収穫後に乾燥期間を経て、ベーリングされる予定です。これは通常のスケジュールです。
 ウィラメットバレー中部ではペレニアルライグラスの刈り取りが始まったばかりですので、7月第2週か第3週にベーリングが始まるだろうと予想されています。
 輸出事業者からの報告によると、フェスク、アニュアルライグラス、ペレニアルライグラスの3つの作物とも、収量は予想通り軽いが、収穫が始まってまだ2週間ほどしか経っていないため、今年の平均単収を知ることはまだ難しいとのことです。

5. 豪州産

  • オーツヘイ
      新穀の作付けは全地域でほぼ完了しました。作付面積の状況について下記の通りです。(サプライヤーへの聞き取りであり、統計資料に基づくものではありません)
     WA(西オーストラリア)では昨年並みの見立てです。ただしWAの中でも、北部では昨年対比80%の一方で、南部では100-110%でして、天候や土壌水分の違いによりエリアごとに作付け意向に差が生まれている様子です。
     SA(南オーストラリア)では昨年対比90%の見立てです。
     VIC(ヴィクトリア州)では昨年対比90-95%の見立てです。
     エルニーニョ現象に伴う乾燥懸念は引き続きあるものの、6月にはSAとVICを中心に纏まった降雨があり、新穀の生育見通しについて当初よりは楽観的な声が聞こえます。ただし、下図のとおり8-10月の見通しについては引き続き乾燥懸念があると言え、今後の降雨次第ではやはり単収減少の懸念はまだある状況です。

5. 海上運賃情勢

 北米航路、豪州航路について、一部動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港については一部混雑があるものの、おおむね正常通り稼働しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、PNW航路にて経由するバンクーバー港等で労使交渉の抗議活動としてストライキが発生したことから、本船動静の遅延が発生しております。バンクーバー港の操業停止の影響を受け、シアトル/タコマへ迂回する本船も出てきており、PNW航路全体の港湾の混雑が確認されています。
     2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉について、2023年6月14日に米国西岸の労使間で新たな6年間の労働協約が暫定合意されました。この協約は両者の批准を経て正式合意されますが、批准スケジュールは未定です。
     一方でカナダにおいては依然交渉中であり、2023年7月1日からバンクーバー港、プリンスルパート港でストライキが開始されました。ストライキは18日に終了し19日夜間からターミナルは再開しております。25日に組合員による暫定合意に関する投票が行われる予定となっておりますが、ストライキの影響を受けた本船の滞留や混乱の解消まで時間がかかるとみられており、PNW航路全体での遅延について注意が必要な状況です。
     直近のGRI(海上運賃一括値上げ)については、アジア発北米向け航路の貨物量減少を受けて往航運賃の減少が続いていましたが、船社による需給調整の結果、直近は再び反発し始め、下げ止まり感があります。復航航路についても、物量減少から運賃は軟調に推移していましたが、一部地方港向けには減便の影響から値上要請があります。日本直行便・地方港むけ航路、コンテナ機器不足の状況や、労使交渉の進展など、今後について注視する必要があります。
  2. 豪州航路
     引き続き豪州国内の景気低迷により、中国を中心としたアジアから豪州へのコンテナ荷動きが低水準で推移しています。そのため、輸出向け空コンテナ不足と、豪州抜港や減便の発生し得る環境下にあります。港別に見ますと、SAのアデレード港が特に空コンテナの不足や抜港の影響を受けており遅延が懸念されます。

以上

令和5年7月27日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

ページトップ