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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和5年8月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     現在、生産者は5番または6番刈を行っています。この時期は気温が高く、アルファルファの成長は短期間で進む一方、茎が細く、低成分です。中には、ヒートストレスで、開花しているものも多くみられます。これらの貨物は、一般的に、サマーヘイと呼ばれ、低級品として国内市場へ流通されます。輸出市場は引き続き静かで、中東市場のみが購入を続けていますが、現在は、低グレード品のみの発生のため、中東の中でもサウジアラビアが求める高品質の貨物の取引は、ほとんど行われていません。テキサス州やカンザス州などは未だ干ばつ傾向にあるため、近隣の州から集荷する可能性があります。
     2023年7月12日のIIDの発表によると灌漑面積は145,769エーカーで、昨年同時期は130,758エーカー、先月は151,915エーカーでした。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     コロンビア盆地の生産者は、7月末から8月上旬に3番刈りを終えました。7月の天候は好天に恵まれ、3番刈り開始直前と7月末に1度だけ小さな降雨があった程度でした。また、いくつかの山火事が発生しましたが、発生地域はコロンビア盆地の北西部で、風と天候のおかげで、煙はZHI社が主に集荷を行う南部へほとんど入りませんでした。盆地全体では2、3日の間、煙がかった薄暗い日がありましたが、過去4、5年ほどではなく、乾牧草の品質や色に影響はない程度でした。
     一部の生産者では、2番刈りから3番刈りの生育期間を短く設定し、単収は落ちるものの、成分が高い貨物を少しでも市場で高値流通させるように収穫を進めているようです。依然として、国内市場も輸出市場ともに生産者との取引は限られています。国内酪農家は、長期間の需要分を購買することは無く、短期間で必要な数量のみを都度、購買している状況です。輸出事業者も徐々に集荷を進めているものの、控えめな進め方であり、今年は売り手、買い手の双方に納得感のある価格へ落ち着くのに時間が掛かっています。

2. 米国産チモシーヘイ

 コロンビア盆地地域における1番刈りは7月時点で完了しており、一部の生産者は2番刈りの収穫を開始しました。コロンビア盆地北部、オレゴン州、アイダホ州では、春の天候の遅れと1番刈りの開始スケジュールが遅れたため、2番刈りのスケジュールは2週間ほど遅れている模様です。
 昨今の米国国内からの3タイベールに対する需要は旺盛で、ある生産者は自社圃場の2番刈り全量を3タイ集荷することにより、ビッグベール集荷よりも$100/st以上の高値で販売しています。
 今年の1番刈りプレミアムグレードの発生量は限定的なため、輸出事業者からの需要は高まっており、大手の輸出事業者が先月までの提示価格よりも高値での取引を開始しました。この噂は生産者間で広がり、市場価格を引き上げています。現時点でプレミアムグレードのチモシーを所有している生産者は多くないですが、所有している生産者は2ヶ月前より$20/stほど高い値段で取引がされています。
 オレゴン州と南アイダホ州の灌漑地域について、今年は冷涼な春の影響で、収穫スケジュールは全体的に遅れました。一旦刈り取りが始まると、刈り取りを中断させるような雨はほとんど降らず、品質は非常に良好でした。PNWでチモシーを収穫できる最後の地域であるため、プレミアムグレードの需要はやや旺盛でした。やはりこちらの地域でも、東海岸の国内競走馬向けを含む馬糧用の需要が旺盛で、圃場で刈り取りを行ったチモシーを、サプライヤーが3タイベールに集荷して、国内流通用に準備しているとの話も聞いています。
 アイダホのドライランドと呼ばれる天水地域の1番刈り収穫も終了しました。収穫開始しばらくは、良いスタートを切りましたが、その後4~5日間雨が降り収穫は中断されました。生産者が収穫を再開した後、天候は良好でしたが、成熟しすぎて茶色の葉が多くなっています。

3. スーダングラス

 1番刈りはおおよそ完了しています。8月第1週に1日だけ雨が降ったため、一部の圃場に少し被害があったようです。2番刈りは7月末から始まっていますが、生産量は少ないと見込まれています。
 今年は、スーダンの作付面積が減少したため、プレミアムとされる細軸品も低級品の太軸品も発生量が少ないと見込まれています。早播きスーダンは少なかったですが、ほとんどのスーダンは早播きから中播きのスケジュールで作付けされ、作付面積は伸び悩み、遅播きはほとんど清算されません。また、市場があまりに低迷しているため、ほとんどの生産者は1番刈り後に畑からスーダンを撤去して、より利益率の高い野菜等への転作を行っています。
 現在市場に出回っている低級グレードのほとんどはオールドクロップで、2023年産は、ほとんどが中間グレードと見込まれています。
 2023年7月12日のIIDの報告では、22,456エーカーでしたが、昨年の同時期は46,888エーカー、先月は23,540エーカーでした。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 主産地のウィラメットバレーの2023クロップとしては、ライグラスおよびフェスクストローともに品質は、おおむね良好と報告されています。
 ペレニアルライグラスについては、ほとんどの圃場でベーリングが終わり、順次プレス工場および保管庫へ運ばれています。品質面では、全体的に例年よりも緑色が薄く見えます。これは、6月から7月にかけて乾燥した気候であったことと、単収が下がり圃場での天日乾燥の密度が低かったことに起因しています。単収は、例年の2-2.5st/エーカーよりも低く、1-1.5st/エーカーと見込まれています。
 フェスクについては、昨年より少し緑色が強い圃場も見られます。一部の圃場では、例年よりも収穫が早かったためと想定されています。単収は、例年2.5-3st/エーカーのところ、1.5st/エーカーと推定されています。
 現在、韓国でのフェスクとアニュアルライグラス需要が堅調で、一部では、輸出事業者が在庫を買うために集荷競争が始まり、そのために集荷価格が上がっているようです。

5. 豪州産

  • オーツヘイ
     新穀の作付面積について、WA(西オーストラリア)は昨年並み。SA(南オーストラリア)は昨年対比90%、VIC(ヴィクトリア州)は昨年対比90-95%となりました。
     6月の降雨で、土壌水分は改善傾向となり、8-10月の降水量の見通しについても前月よりも状況は改善し、乾燥状況は緩和傾向にあります。ただし、オーストラリア気象庁は先月6日、年内にエルニーニョ現象が発生する確率が70%に高まり、乾燥見通しを「アラート(警告)」に引き上げたと発表しました。加えて同庁は、熱帯インド洋の状況もオーストラリア全域に乾燥をもたらす可能性が高いと警告し、一般的には乾燥の懸念は強い見通しです。仮に今後も乾燥が継続すれば新穀の単収は下がり、また収穫期の雨当たりも無ければ上位グレードが中心に生産され、下位グレードの生産量が落ち込む可能性もあります。
     旧穀に関しては、下位グレードの産地在庫は比較的余裕のある状況でしたが、豪州では冬の到来を前にして越冬のための牧草取引が活発化してきました。乾燥により放牧地の牧草も十分に育っておらず、旧穀在庫への引き合いが旺盛となってきている状況です。
     また、8月4日に中国政府が豪州産大麦の関税を解除したことを受け、オーツヘイへの輸出再開への動きは現時点で見られませんが、今後の動きに注視する必要があります。
  • 小麦ストロー
     旧穀に関して、特にSAとVICでは収穫時の降雨の影響のため、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日、長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の品物が不足しています。一方で、チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)は、比較的在庫に余力がありましたが直近では豪州国内や韓国などから引き合いが増えており、産地在庫はひっ迫感を見せ始めています。
     新穀について、作付面積は昨年並みの見通しとなっていますが、乾燥懸念による単収減少が懸念されます。

5. 海上運賃情勢

 北米航路、豪州航路について、一部動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港については一部混雑があるものの、おおむね正常通り稼働しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、PNW航路にて経由するバンクーバー港にて労使交渉の抗議活動として7月にストライキが発生していたことから、本船動静の遅延が発生しております。船社はバンクーバー抜港などのスケジュール調整で、遅延の解消を急いでいます。
     直近のGRI(海上運賃一括値上げ)については、アジア発北米向け航路の貨物量減少を受け、往航運賃の減少が続いていましたが、船社による需給調整の結果、直近は再び反発し始め、底を打った状況となっていると見られています。復航航路についても、物量減少から運賃は軟調に推移していましたが、一部地方港向けには減便の影響から値上要請があります。日本直行便・地方港への航路、コンテナ機器不足の状況について、今後も注視する必要があります。
     2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉については、2023年6月14日に米国側で新たな6年間の労働協約が暫定合意しました。カナダにおいては依然交渉が続いておりましたが、2023年8月3日4日に実施された投票により、新たな4年間の労働協約が暫定合意しました。
  2. 豪州航路
     豪州の輸入貨物量は低水準で推移しており、輸出向け空コンテナの量は引き続き限定的です。それに加えて、船社の中にはより収益性の高い航路にコンテナを集めるために豪州発アジア向けに空コンテナを輸送しているところもあり、豪州国内の空コンテナ不足に拍車をかけています。事前通知なしの豪州抜港や減便も散見され、突然の動静遅延が発生し得る環境は継続しています。

以上

令和5年8月24日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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