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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和5年9月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     当地では、 8月下旬にカリフォルニア州へ上陸したハリケーン“ヒラリー”以降、9月の第一週まで断続的に降雨がありました。生産圃場では、6番刈りを行っていますが、依然として華氏100度(摂氏38℃)を超える日が続いているため、サマーヘイと呼ばれる低成分のアルファルファが生産されています。
     この時期に生産されたサマーヘイは、国内酪農家からの需要も限定的で、現在、輸出事業者からの引き合いも非常に弱いため、灌漑を止め、減産する生産者も出てきました。
     また、現在の市場動向を見る限り、暫くはこのような低調な状況が続くとみられ、多くのアルファルファ生産者は、気温が下がり高成分のアルファルファが生産される10月頃まで生産意欲は低く、古い圃場からアルファルファの撤去作業を行っています。10月以降に、再度アルファルファを作付けすると想定されますが、灌漑を開始する来年の春まで、IIDレポートに作付面積は反映されない見込みです。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     生産者は、8月の最終週から4番刈りの刈り取りを始めました。生育環境は良好で、乾燥した気候が続いていました。9月下旬までに終了する計画でしたが、9月に入り、気温が低下し始め、降雨があったため、コロンビア盆地では生産スケジュールが遅れ始めています。今後も気温が上がらず降雨の予報があれば、全体的にスケジュールは遅れる可能性があります。また8月17日から25日にかけて、山火事の煙が盆地内に入り込み、その間にベーリングされた貨物については、色に影響が出た模様です。刈り取り回数を増やそうと5番刈りを狙う生産者もいますが、収穫時期は、9月下旬以降になる見込みで、高い成分値が見込めれば、近隣の酪農家へ受渡されることになりそうです。一方、アルファルファの取引は、ほとんどのバイヤーが短期的な需要に対し、スポットで買い続けているため、依然として静かな展開です。

2. 米国産チモシーヘイ

 コロンビア盆地およびエレンズバーグにおける1番刈りは7月に完了しています。6月の収穫時期に散発的な降雨があったため、良品は20-30%程度と見込まれています。降雨があると、刈り取りを行っていた牧草は雨あたり品となり、茶葉が増える傾向にあります。また、刈り取り後の雨にあたることを避けるため、刈り取りを中断した圃場では刈遅品となり、嗜好性に劣ると言われています。
 8月下旬から始まった 2番刈りですが、9月中旬には全ての収穫を終える見込みです。今年のチモシーの取引価格に満足しない生産者は多く、多くの圃場が2番刈りを行わずに豆類等の収益が良い作物への転換が行われたため、生産量は大きく減少しています。また、米国国内の馬糧用向けへの販売を意識した生産者が3タイベールでの収穫を行っており、養牛用として輸出される量は限定的です。
 オレゴン州と南アイダホ州の灌漑地域については、冷涼な気候から例年より収穫時期が遅れましたが、品質は良好に収穫されました。やはりこちらの地域でも、東海岸の国内競走馬向けを含む馬糧用の需要が旺盛で、一部は、3タイベールで収穫され、国内流通用となっています。

3. スーダングラス

 主産地インパリアルバレーとアリゾナ州ユマでは、スーダンの収穫が終盤に差し掛かっています。日中の気温は上がるものの、夜は涼しくなり、スーダンの乾燥期間に時間が掛かるため、まだ収穫がされていない圃場では、茶葉の発生が多くなることが予想されています。
 インペリアルバレーでは大きく生産量が減っているため、例年であれば、各輸出事業者が今シーズンの運営準備のため集荷を進めますが、需要が低調であることと多くの輸出事業者が昨年産の旧穀を多く抱えており、新シーズンでも旧穀での運営をするケースが予想されることから、市場は依然として静かな状況が続いております。
 全体的な需要は低調なままですが、昨年からの高値を嫌って、低級品へのスポット需要があるようです。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 主産地のウィラメットバレーでは、収穫は終了しました。
 ペレニアルライグラスおよびフェスクストローについて、品質は良好であるものの、単収が大幅に減少しました。
 6月、7月に高温かつ乾燥した期間が続いたことにより、種子の育成が進み、茎が通常レベルまで伸びる前に収穫されたことが主要因です。結果、ウィラメットバレーで生産されるストローは、昨年比で50%程度の生産量になると言われています。収穫された貨物は、順次プレス工場および保管庫へ運ばれています。
 現在、日本からの需要は強くないですが、9月に入り韓国からの需要は特に強まっています。これは、干ばつによる欧州のストロー価格が高騰しており、韓国がオレゴンストローの価格競争力に注目しているためです。現時点で、2023年12月以降の韓国の需要については不透明ですが、韓国国内の稲わらの収穫は9月から10月にかけて行われる予定です。豪州の新穀価格も未定ですが、もし韓国内稲わらおよび豪州ストローともに豊作であれば、韓国の需要は、落ち着く可能性もあります。

5. 豪州産

  • オーツヘイ
     新穀の作付面積について、WA(西オーストラリア)は昨年並み。SA(南オーストラリア)は昨年対比90%、VIC(ヴィクトリア州)は昨年対比90-95%となりました。
     西豪州北部では収穫が始まりつつあり、他地域も9月下旬から10月中旬にかけて収穫が行われる見通しです。
     6月から7月に降雨に恵まれ、土壌水分は改善傾向となったことで、良好な生育状況で収穫を迎えています。収穫期に雨当たりがなければ、今年は各地域ともに上位グレードの発生が中心になる見通しです。9-11月の降水量は例年よりも少なくなる予想です。
     旧穀に関しては、下位グレードの産地在庫は比較的余裕のある状況でしたが、豪州では冬の到来を前にして越冬のための牧草取引が活発化してきました。乾燥により放牧地の牧草も十分に育っておらず、旧穀在庫への引き合いが旺盛となってきている状況です。
     また、8月4日に中国政府が豪州産大麦の関税を解除したことを受け、オーツヘイへの輸出再開への動きは現時点で見られませんが、今後の動きに注視する必要があります。
  • 小麦ストロー
     旧穀に関して、特にSAとVICでは収穫時の降雨の影響のため、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日、長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の品物が不足しています。
     一方で、チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)は、比較的在庫に余力がありましたが直近では豪州国内や韓国などから引き合いが増えており、産地在庫はひっ迫感を見せ始めています。
     新穀について、作付面積は昨年並みの見通しとなっています。

5. 海上運賃情勢

 北米航路、豪州航路について、一部動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港については一部混雑があるものの、おおむね正常通り稼働しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、バンクーバー港にて7月にストライキ、8月に森林火災が発生していたことから、本船動静の遅延が発生しておりますが、徐々に解消に向かっています。
     直近のGRI(海上運賃一括値上げ)については、アジア発北米向け航路の貨物量減少を受け、往航運賃の減少が続いていましたが、船社による需給調整の結果、直近は再び反発し始め、頭打ちとなっていると見られており、船社によって対応が様々です。復航航路についても、物量減少から運賃は軟調に推移していましたが、一部地方港向けには減便の影響から値上要請があります。日本直行便・地方港への航路、コンテナ機器不足の状況について、今後について注視する必要があります。
  2. 豪州航路
     豪州の輸入貨物量は低水準で推移しており、輸出向け空コンテナの量は引き続き限定的です。それに加えて、船社の中にはより収益性の高い航路にコンテナを集めるために豪州発アジア向けに空コンテナを輸送しているところもあり、豪州国内の空コンテナ不足に拍車をかけています。事前通知なしの豪州抜港や減便も散見され、突然の動静遅延が発生し得る環境は継続しています。

以上

令和5年9月27日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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