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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和5年10月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     現在、7番刈りが終盤で、多くの圃場では8番刈りに向けて生育中です。気温が低下してきており、収穫されている貨物は、夏場から9月にかけて収穫された貨物に比べて、葉が多く、品質がよいものが収穫されています。多くの生産者は、高値で売れる国内の馬糧用へ向け3タイベールの生産を行っています。輸出事業者は、未だに静観しており、購買は進めていません。馬糧用市場では、輸出相場に比べ$100/st程度高値で取引される場合もあるので、生産者は、輸出用ビッグベールの集荷よりも、3タイベールでの集荷を優先させているようです。生産者は、天候が良ければ、年末までにあと1、2回収穫する見込みです。
     2023年9月12日のIIDの発表によると灌漑面積は128,950エーカーで、昨年同時期は117,146エーカー、先月は136,028エーカーでした。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     9月の中旬に数日間の降雨がありましたが、大半は天候に恵まれました。コロンビアベースン北部の圃場を中心に降雨被害にあった圃場もあったようですが、ZHIの集荷先の生産者は、予報に合わせて集荷スケジュールを組むことが出来たため、大きな被害は無かったようです。
     また、4番刈りの収穫期間は、過去5年間に比べ、曇りや山火事による煙の被害が少なく、例年よりも色目の良いものが収穫されています。昨年度に比べて、大きく価格が下がったアルファルファ相場ですが、9月後半より堅調に推移してきました。生産者は既に来年の準備を始めており、アルファルファの作付面積は例年より少なくなっています。 作付けが終了する来月にかけて、この状況を注視していきます。

2. 米国産チモシーヘイ

 今年のチモシーの収穫は終了しました。 昨年より価格が大幅に下がったため、1番刈りの後に残された作付け面積は減少しました。 通常、2番刈りに向けて15%程度が残されるのに対し、今年は1番刈りの後に転作が進み、残されたのは 5%以下であったと推測されています。また、種子の販売業者からの販売減少の報告や、生産者からの来年の作付意向を聞き取る限り、次年度向けのチモシーの作付面積は減少することが見込まれます。一方、生産者は、寒くなり、天候不順で畑に入れなくなるまでまだ1か月間程の猶予があるため、チモシーを植える可能性は、まだ流動的です。
 ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。

3. スーダングラス

 2023年産のスーダンの収穫は終了しました。2番刈りについては、スーダンの生産者の約 20%のみが刈り取りを行ったと予想されています。2番刈りの 50%は8月下旬と9月上旬に雨に降られ、良品は限定的な状況です。現在のスーダン市場は生産者のコストを下回っており、今後も市場の回復が見込まれなければ、生産者にとって、2024年にスーダンを作付けするインセンティブが無い状態となります。
 直近、日本からのスーダン需要が若干回復傾向にあるようです。これは、旧穀在庫が徐々に消化され、購買意欲が回復してきていると想定されています。現在、高グレードの貨物に引き合いがあり、低グレードの貨物については、日本での相場が低いため、取引に至っていないようです。生産者は輸出事業者へ販売するよりも、国内市場へ販売する方が容易な状況です。
 2023年産では水の供給は問題ありませんでしたが、2024年産ではIV生産者が利用できる水は少なくなると予想されており、スーダンを作付けしない生産者が増える可能性があります。
 2023年9月12日のIIDの発表によると灌漑面積は9,773エーカーで、昨年の同時期は22,002エーカー、先月は16,022エーカーでした。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 主産地のウィラメットバレーでは、収穫は終了しました。ペレニアルライグラスおよびフェスクストローについては、生育期の高温乾燥により、品質は良好であったものの、単収が大幅に減少し、約50%程度になったと言われています。一方で、各サプライヤーには、繰り越し在庫があり、年間供給については、問題ないだろうとの見方が強いです。
 韓国からの需要は増えていますが、日本からの需要は現時点ではあまり強くありません。輸出港となるポートランド港の輸出用コンテナ供給力は少ない状況です。

5. 豪州産

  • オーツヘイ
     新穀の収穫は西豪州北部で9月下旬からスタートし、各地域で進んでおります。
     6月から7月に降雨に恵まれましたが、8月は少雨傾向(図1)となりました。これを受け西豪州の一部地域では収穫量の減少が懸念されていますが、他の地域では生育状態が維持できており良好な収穫量が予想されています。現時点で収穫期の雨当たりは少なく、10-12月の降水量(図2)も少雨となる見通しのため、今年は上位グレードの発生が中心になる見通しです。
     旧穀に関しては、下位グレードの産地在庫は比較的余裕のある状況でしたが、豪州では冬の到来を前にして越冬のための牧草取引が活発化してきました。乾燥により放牧地の牧草も十分に育っておらず、旧穀在庫への引き合いが旺盛となってきている状況です。
     また、9月29日に中国政府が豪州産オーツヘイの輸入を再開しました。現時点で中国の具体的な購買予定数量は不透明ですが、オーツヘイの需給は引き締まることが予想されます。
  • 小麦ストロー
     旧穀に関して、特にSAとVICでは収穫時の降雨の影響のため、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日、長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の品物が不足しています。
     一方で、チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)は、比較的在庫に余力がありましたが直近では豪州国内や韓国などから引き合いが増えており、産地在庫はひっ迫感を見せ始めています。
     新穀について、作付面積は昨年並みの見通しとなっています。生育については、7月の降雨を受けて順調に進んでいます。需給については、農家が輸出価格に魅力を感じておらず、輸出向けストローの生産量が減少し、国内向けを中心に流通することが予想されています。

6. 海上運賃情勢

 北米航路、豪州航路について、一部動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港についてはおおむね正常通り稼働しています。しかしながら日本直行便の本数も限られており、同一本船への集中は続いています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、本船動静の遅延が発生しておりますが、徐々に解消に向かっています。しかしながらポートランドにおけるコンテナ機器不足が発生しており、デリバリーに支障が出ています。
     直近のGRI(海上運賃一括値上げ)については、アジア発北米向け航路の貨物量減少を受け、往航運賃の減少が続いていましたが、船社による需給調整の結果、直近は再び反発し始め、頭打ちとなっていると見られており、船社によって対応が様々です。復航航路についても、物量減少から運賃は軟調に推移していますが、一部地方港向けには減便の影響から値上要請があります。日本直行便・地方港への航路、コンテナ機器不足の状況について、今後について注視する必要があります。
  2. 豪州航路
     豪州の輸入貨物量は低水準で推移しており、輸出向け空コンテナの量は引き続き限定的です。それに加えて、船社の中にはより収益性の高い航路にコンテナを集めるために豪州発アジア向けに空コンテナを輸送しているところもあり、豪州国内の空コンテナ不足に拍車をかけています。事前通知なしの豪州抜港や減便も散見され、突然の動静遅延が発生し得る環境は継続しています。

以上

令和5年10月24日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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