海外粗飼料情勢
輸入粗飼料情勢 / 令和5年11月号
1. 米国産アルファルファヘイ
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- カリフォルニア州南部インペリアルバレー
- アルファルファの収穫は8~9番刈りを行っています。気温が下がり、アルファルファの品質は向上しています。 生産者は今年最後になるであろう9番刈りの準備をしています。10月に収穫された貨物は、前の刈り取り番手で残ったアルファ混入されている貨物が散見され、多くのスタックの品質は期待されたほど良くなく、基本的にはサマータイプの乾草に近い模様です。米国内需要は低成分のアルファルファや、輸出に適合しないグレードのアルファルファを積極的に購入しています。
10月収穫分までは低調だった輸出需要について、現在、品質が向上しているため、中東と中国が購買を再開しています。しかし、中国の需要は、それほど強くないと予想され、サウジアラビアを主とした中東の需要は強い状況です。
2023年11月13日のIIDの発表によると灌漑面積は145,411エーカーで、昨年同時期は143,373エーカー、先月は132,315エーカーでした。
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- ワシントン州コロンビア盆地
- 10月最終週には寒冷前線がPNWを通過したため、国内需要が若干持ち直しましたが、大部分は低調に推移しました。輸出事業者は依然としてプレミアム品を探しており、国内需要者はより安価で低品質の乾牧草を購買しようとしています。市場には十分な量の色目のよいアルファルファが出回っているにも関わらず、そのほとんどはプレミアム品に適合する分析結果になっていません。
また、先月、アリゾナ州知事は、アリゾナ州はサウジアラビア系企業が過去10年間耕作してきた約1万エーカーの土地のリース契約を更新しないとの声明を発表しました。同社はこの決定を不服としていますが、今後PNWへの購買は強くなることが予想されます。
2. 米国産チモシーヘイ
チモシー市況は堅調ですが、低級グレードよりもプレミアムグレードのチモシーに関心が集まっています。今年はプレミアムグレードの貨物が少なかったため、まだ残っている僅かなスタックへの関心が高まっています。 低グレード品も取引は行われていますが、生産者の手元には販売可能な低グレード品の在庫が多くはないようです。 アルファルファ相場と同様に、チモシーをまだ保有している生産者は、今年の終わりに向けて相場が好転することを期待しています。
また、種子販売業者からの聞き取りによれば、種子の販売量が昨年よりも減少していることから、アルファルファと同様、チモシーの作付面積も来年は減少すると予想されています。
ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。
3. スーダングラス
今年度産のスーダンの需要は引き続き低調に推移しています。多くの生産者は 2 番刈りを収穫せずに、圃場へ漉き込みました。また、国内顧客や輸出業者からの需要が低迷しているため、一部の生産者は売れ残ったスーダン乾牧草を普段から取引のある輸出事業者に受託するケースもあるようです。一部の生産者は、後に取引価格が上昇すると見込み、タープ保管をしているようです。
来年2024年には、節水することによる補助金プログラムが予定されているため、2024年産のスーダンの面積は減る可能性があります。また、現在のところ、スーダンの需要は低迷しているため、生産者が2024年にスーダンを作付けする意欲は低いです。従って、2024年のスーダンの作付面積が減少する可能性が高いですが、一部の生産者にとっては輪作作物の選択肢でもあるため、一定数量のスーダンは作付けされる見込みです。
2023年11月13日のIID発表によると灌漑面積は、1,399エーカーでしたが、昨年同期比は 6,301 エーカー、先月は 4,150 エーカーでした。
4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)
主産地のウィラメットバレーでは、収穫は終了しています。ペレニアルライグラスおよびフェスクストローについては、生育期の高温乾燥により、品質は良好であったものの、単収が大幅に減少し、約50%程度になったと言われています。
韓国では、フェスクとアニュアルライグラスの両方の需要がありますが、韓国の需要を満たすのに十分なフェスクがないと予想されるため、フェスクの価格が上昇しています。韓国の輸入業者の中には、ライ麦ストローなど多様なストローを輸入しているところもあるようです。
5. 豪州産
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- オーツヘイ
- 新穀の収穫は西豪州北部で9月下旬からスタートしました。進捗は、西豪州・南豪州では大方完了し、ヴィクトリア州では50%程度進んでおります。
6月から7月に降雨に恵まれましたが、8月は少雨傾向となりました。これを受け西豪州の一部地域では収穫量の減少が懸念されていますが、他の地域では生育状態が維持できており良好な収穫量が予想されています。現時点で収穫期の雨当たりは少なく、また今後3か月の天気も乾燥傾向であることから今年は上位グレードの発生が中心になる見通しです。
旧穀に関しては、下位グレードの産地在庫は比較的余裕のある状況でしたが、豪州では冬の到来を前にして越冬のための牧草取引が活発化してきました。乾燥により放牧地の牧草も十分に育っておらず、旧穀在庫への引き合いが旺盛となってきている状況です。
需要面では、9月29日に中国政府が豪州産オーツヘイの輸入を再開しました。主に購買されている中位~下位グレードを中心にオーツヘイの需給は引き締まることが予想されます。
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- 小麦ストロー
- 旧穀に関して、特にSAとVICでは収穫時の降雨の影響のため、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日、長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の品物が不足しています。
一方で、チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)は、比較的在庫に余力がありましたが直近では豪州国内や韓国などから引き合いが増えており、産地在庫はひっ迫感を見せ始めています。
新穀について、作付面積は昨年並みの見通しとなっています。生育については、7月の降雨を受けて順調に進んでいます。需給については、農家が輸出価格に魅力を感じておらず、輸出向けストローの生産量が減少し、国内向けを中心に流通することが予想されています。
6. 海上運賃情勢
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- 北米航路
- 太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港についてはおおむね正常通り稼働しています。しかしながら日本直行便の本数も限られており、同一本船への集中は続いています。
太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、ポートランドにおけるコンテナ機器不足が発生しており、動静遅延・デリバリーに支障が出ています。ポートランドのコンテナ機器不足は慢性的な状況となっており、解消する見通しは立っていません。
直近のGRI(海上運賃一括値上げ)については、アジア発北米向け航路の貨物量減少を受け、往航運賃の減少が続いていましたが、船社による需給調整の結果、直近は再び反発し始めています。復航航路についても、GRIの値上げ要請を謳う船社がでてきており、今後の動向に注視が必要です。
今後春節に向けたブランクセーリングの状況などを鑑みると、徐々に船腹の余剰感はなくなっていくと思われます。
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- 豪州航路
- 豪州の輸入貨物量は低水準で推移しており、輸出向け空コンテナの量は引き続き限定的です。それに加えて、船社の中にはより収益性の高い航路にコンテナを集めるために豪州発アジア向けに空コンテナを輸送しているところもあり、豪州国内の空コンテナ不足に拍車をかけています。事前通知なしの豪州抜港や減便も散見され、突然の動静遅延が発生し得る環境は継続しています。
以上
令和5年11月20日
全国農業協同組合連合会(JA全農)