海外粗飼料情勢
輸入粗飼料情勢 / 令和5年12月号
1. 米国産アルファルファヘイ
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- カリフォルニア州南部インペリアルバレー
- 現在、アルファルファの収穫は9~10番刈りを行っており、今年の最後の収穫を迎えています。気温が下がり、アルファルファの品質は向上していますが、直近で収穫された貨物は雨当たりとなり、収穫された貨物は、国内流通へ向くと思われます。中東と中国の購買が再開されたとの情報はあるものの、依然として、インペリアルバレーでは、輸出市場からの引き合いは弱く、収穫された乾牧草をタープ保管している圃場も散見されます。
2023年11月15日のIIDの発表によると灌漑面積は145,411エーカーで、昨年同時期は143,373エーカー、先月は132,315エーカーでした。
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- ワシントン州コロンビア盆地
- アルファルファの売買については、年末に向けて停滞しており、年明け以降に活発化していくと見込まれています。特に、米国酪農家は、短期間の需要分のみを購買したようで、来クロップの始まる夏および秋口までの在庫を持ち合わせていないため、購買意欲があるようですが、例年PNWでは1月および2月は雨が多く寒いため、天候による変動要因は大きいとみられます。直近のワシントン州およびオレゴン州の東部では、比較的穏やかな気候で、多くの酪農家は、通常よりも放牧を長めにすることが出来たため、自給飼料で需要を満たすことが出来ました。一方、ワシントン州、オレゴン州西部およびアイダホ州南部では、大雨や雪が降ったため、放牧期間が充分に取れなく、需要は堅調です。
牧草生産者からの聞き取りでは、来年も本年と同程度の作付面積を見込んでいるようですが、一方で、今年の価格水準が続くのであれば、より利益率の高い作物へ転作を検討しているため、作付け面積は若干減少するとの情報もあります。
2. 米国産チモシーヘイ
2023年産チモシーについては、収穫を終えて、圃場は休眠中となります。生産者から購入された原料ヘイは、順次サプライヤーへ搬入されています。複数のサプライヤーへグレード毎の発生割合を聞き取りした結果、グレード分布については、馬糧用のトップグレードが5%程度、プレミアムグレードが25~30%、低グレード品が70%程度の発生と推定されます。今年のチモシーは、昨年に比べて大きく価格が下がったこともあり、輸出事業者は引き続きプレミアムグレードのチモシーを探していますが、プレミアムグレードの生産量が少ない状況のため、価格は堅調に推移しています。また、種子販売業者からの聞き取りによれば、種子の販売量が昨年よりも減少しているため、チモシーの作付面積も来年は減少すると予想されています。ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。
3. スーダングラス
今年度産のスーダンの収穫は終了しています。生産量が減少し、中間以下のグレードの発生量が多かったものの、ほとんどのサプライヤーで旧穀の出荷を続けていましたので、需給がひっ迫するような状況にはなっていません。現時点で灌漑対象となっている圃場のほとんどは、羊の放牧用になっている可能性が高いです。
2023年11月15日のIID発表によると灌漑面積は1,399エーカーで、昨年同期比は 6,301 エーカー、先月は 4,150エーカーでした。
4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)
主産地のウィラメットバレーでは、収穫は終了しています。ペレニアルライグラスおよびフェスクストローについては、生育期の高温乾燥により、品質は良好であったものの、単収が大幅に減少し、生産量は例年の50%程度と想定されています。
現在、圃場は収穫を終え休眠中となりますが、12月の初旬に大雨に見舞われ、一部の圃場は冠水し、排水されるまでに時間が掛かりそうです。今後も大雨が続き、圃場からの排水が出来なければ、新たに播種されたライグラスについては、生き残るのが難しく、生産量が下がる可能性があります。一方、フェスクについては、株が大きく、強く、主に春先に播種されるため、これらの大雨による影響は小さいと見通されています。
日本および韓国からの需要は依然として強いですが、残念ながら、出荷港となるポートランド港への空コンテナの供給が逼迫しており、発注が遅れている貨物もあります。理由の一つは、慢性的にオレゴンへのコンテナ輸入量が不足しており、輸出に利用できるコンテナの量がバランスしていないためです。
5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー
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- オーツヘイ
- 新穀の収穫は各地域で概ね完了しました。
6月から7月に降雨に恵まれましたが、8月は少雨傾向となりました。これを受け西豪州の一部地域では収穫量の減少が懸念されていますが、他の地域では生育状態が維持できており良好な収穫量が予想されています。収穫期の雨当たりが少なかったことを受け、今年は上位グレードの発生が中心になる見通しです。
下位グレードに関しては、旧穀の産地在庫は比較的余裕のある状況でしたが、9月29日に中国政府が豪州産オーツヘイの輸入を再開したことを受け、主に中位~下位グレードを中心にオーツヘイの需給は引き締まることが予想されます。
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- 小麦ストロー
- 旧穀に関して、特にSAとVICでは収穫時の降雨の影響のため、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日、長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の品物が不足しています。
一方で、チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)は、比較的在庫に余力がありましたが直近では豪州国内や韓国などから引き合いが増えており、産地在庫はひっ迫感を見せ始めています。
新穀について、圃場で刈り取りが終了し、ベーリングを待っている状況となっています。12月に入ってから降雨がありましたが、品質に大きな影響はないと見られています。需給については、農家が輸出価格に魅力を感じておらず、輸出向けストローの生産量が減少し、国内向けを中心に流通することが予想されています。
6. 海上運賃情勢
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- 北米航路
- 太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港についてはおおむね正常通り稼働しています。しかしながら日本直行便の本数も限られており、同一本船への集中は続いています。また今後、春節によるブランクセーリングについても実施される可能性がありますので、動静に注視する必要があります。
太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、ポートランドにおけるコンテナ機器不足が発生しており、動静遅延・デリバリーに支障が出ています。ポートランドのコンテナ機器不足は慢性的な状況となっており、春先まで解消する見通しは立っていません。また、シアトル/タコマ港については、コンテナ機器不足は発生していませんが、鉄道ターミナルの混雑による接続遅延や、一部本船ロール・BLスプリットが発生しています。
直近のGRI(海上運賃一括値上げ)については、ポートランド港の混雑により、ポートランド発貨物の値上げ要請が出てきています。
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- 豪州航路
- 豪州港湾での労使交渉の長期化から、本船遅延が発生しています。豪州海事労働組合(MUA)と港湾オペレータであるDPワールド・オーストラリアの協定が2023年9月末に期限切れとなり、何週間にもわたる交渉にも係らず、未だ妥結に至っておりません。
DPワールド・オーストラリアの運営するブリスベン、シドニー、メルボルン、フリーマントルの4港を対象に10月上旬から断続的に争議行為の実施が行われております。現時点で労働争議の実施は12月23日まで延長されており、対象ターミナルでは、岸壁作業や貨物の作業時間の短縮が予定されています。
遅延の解消には時間がかかる見通しです。
以上
令和5年12月18日
全国農業協同組合連合会(JA全農)