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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和6年4月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     新穀収穫が始まっています。3月は安定しない天候が続き、1番刈りで刈り取られた貨物の多くは雨によって品質が低下しました。生産者は2番刈りを開始しましたが、雨により収穫のタイミングを延期したため、この貨物の一部は成熟しすぎてしまっています。
     米国内酪農用および輸出用アルファルファの価格は軟調に推移しています。米国酪農家からの需要は弱く、必要なものだけを少しずつ購入している状態です。輸出業者からの需要も弱く、例年以上に余分な貨物が国内市場に提供されているため、アルファルファの価格が弱含みで推移する可能性があり、購買を急いでいない模様です。
  • 北カリフォルニア
     サクラメント地域のアルファルファの収穫は 4 月中旬から下旬の見込みです。4月中旬に嵐が来る予報が出ており、収穫スケジュールに影響が出る可能性があります。
  • クラマスフォール
     圃場は少しずつ緑が強くなっています。1番刈りは天候が順調であれば6月上旬の見込みです。今年は同地域での水の問題はなさそうです。
  • クリスマス・バレー
     まだ4インチ程度の積雪があり、クラマスフォールほど圃場の成長は進んでいません。1番刈りは、天候が良ければ6月末か7月上旬になりそうです。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     今年の春の天候は、生育に良い条件でした。圃場を視察する限り、1番刈りは4月下旬から5月上旬にかけての収穫を想定しています。アルファルファ、チモシー、小麦の作付面積は、現時点では昨年より若干減少しそうです。一部の生産者は低品質のアルファルファを安く売却している一方、高品質の貨物を在庫している生産者はより良い価格を求めて持ちこたえているため、市場は安定しているものの軟調基調です。

2. 米国産チモシーヘイ

 冷涼な気候により、順調に生育しています。現在の天候と生育状況から、コロンビア盆地では5月中旬から下旬にかけて収穫が始まると予想されます。

3.米国産スーダングラス

 主産地であるエルセントロにおけるスーダンの作付面積は、圃場を見回る限り増えましたが、例年に比べると少ないです。多くのサプライヤーは2023年産の旧穀のキャリーオーバーがあります。現時点では、一部の生産者がスーダン圃場をディスクするのか、あるいは圃場でスーダンを生育させるのかは定かになっていません。

4.米国産バミューダ

 バミューダ圃場は冬の休眠から覚め、3月に灌漑が開始されました。天候次第で4月上旬に1番刈りのバミューダヘイを収穫できる可能性があると、数名の生産者が示唆しています。1番刈りのバミューダヘイのほとんどは、国内で馬の小売市場向けに販売されます。

5. 米国産クレイングラス

 圃場は冬の休眠から覚め、成長を始め、灌漑も始まりました。一部の生産者は、4月中旬に1番刈りのクラインを収穫する可能性があるとしています。都心部を離れたエリアの圃場にはまだ2023年産のキャリーオーバーがタープ保管されています。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 2023年は乾燥した空気と急激な気温の上昇により収穫量は大幅に減少しました。旧穀のフェスクの供給力は乏しく、韓国の需要は引き続き旺盛です。韓国はブルーグラスなど他のイネ科わらについても問い合わせを始めています。
 韓国はそれほど緑色の強くないペレニアルライグラスにあまり関心がなく、より緑色の強い粗飼料を好む傾向があるため、2023年産ペレニアルライグラスはキャリーオーバーの発生が見込まれます。
 アニュアルライグラスについては、韓国からの需要はかなり落ち込んでいます。これは韓国の牛肉価格の下落が影響していると思われます。
 4月上旬現在、圃場での生育状況は非常によくみえ、天候に恵まれれば単収は良好になり、生産量について、作付面積の減少を相殺できるかもしれません。もし5月の降雨量が少なければ、2024年の収量に少し影響が出るかもしれませんが、4、5、6月に雨が多ければ、牧草には問題ないと考えられています。

7. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     新穀の収穫は各地域で完了しました。西豪州の一部地域を除き、概ね生育状態は良好でした。収穫期の雨当たりが少なかったことを受け、今年は上位グレードの発生が中心になる見通しです。
     2023年9月に中国政府が豪州産オーツヘイの輸入を再開しましたが、中国経済の不調から輸入牧草の引き合いは弱く、豪州産牧草価格は軟調に推移しています。
  • 小麦ストロー
     旧穀に関して、産地在庫は払底に近い状況です。
     新穀について、小麦ストローが圃場でベーリングを待っている状態で、年末年始にかけてヴィクトリア州から東豪州にかけてまとまった降雨がありました。これを受け、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の良品供給余力はひっ迫しています。チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)についても雨当たりによる品質劣化が懸念されていますが、農家との事前契約生産品であるロングタイプよりも構造上生産量が多いため、平年程度の需要量であれば大部分を良品で賄える見通しです。

8. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、一部動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港については、おおむね正常通りに稼働しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、ポートランドにおけるコンテナ機器不足が発生しており、動静遅延・デリバリーに支障が引き続き出ています。この傾向が大きく改善される見通しは、今のところ立っていません。
     バンクーバー港発の貨物について、カナダのカナディアン・ナショナル(CN)とカナディアン・パシフィック・カンザスシティ(CPKC)の機関士と車掌から構成されるチームスターズ・カナダ鉄道会議は、新契約に関する労使間の意見相違がみられることからストライキ投票を承認しました。4月初旬の発表によると、投票は4月8日から5月1日まで実施される見込みです。組合員の過半数がストライキに賛成した場合、カナダのCNおよびCPKC路線でウォークアウトまたはロックアウトが実施される可能性があり、早くて5月22日に決行される恐れがあります。
  2. 豪州航路
     豪州海事労働組合(MUA)と港湾オペレーターであるDPワールド・オーストラリアの労使協定が批准され、遅延の回復に向かっています。一方、豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港において、スエズ運河を回避し喜望峰ルートへ変更を余儀なくされたスケジュール乱れの貨物が集中し、混雑することが予測されます。

以上

令和6年4月23日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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