海外粗飼料情勢
輸入粗飼料情勢 / 令和6年5月号
1. 米国産アルファルファヘイ
-
- カリフォルニア州南部インペリアルバレー
- 新穀の収穫が進んでいます。5月上旬時点で、現在2番刈りおよび3番刈りを収穫している圃場があり、米国内向けリテール需要に備えて、3タイでの収穫を行う生産者も散見されます。
現在のアルファルファの需要はほとんどが中東(主にサウジアラビア)からで、日本、韓国、中国などの輸出事業者からの需要はほとんどなく、国内市場からの需要も低調です。品質はプレミアムグレード(タンパク値20%以上)が多く、来月の次刈り時期になると、よりスタンダード(タンパク値18-20%)グレードのものが多く生産される見込みです。
なお、本年の夏期において同地域では、節水によるインセンティブが与えられるFallowing Programが適用される見込みです。適用期間は6月から8月までを想定しており、当期間では多くの圃場で灌漑を止め、生産活動を休止することが考えられます。
-
- ワシントン州コロンビア盆地
- 今年の春は、日中はおおむね晴れ、気温は穏やかとなり、夜は涼しく、牧草にとって良い生育環境でした。コロンビア盆地南部および中部の数軒の生産者は4月末から1番刈りを開始しています。一方で、5月上旬に降雨の予報があったため、一部の生産者は雨が降る前にベーリングする必要がありました。大半の生産者は、雨が去るまで天候を見極め、天気が回復したら刈り取りを開始する予定です。
現時点で既にいくつかの圃場でベール生産が行われていますが、まだオファーがありません。ヘイバイヤー達はより多くのベールが生産されるのを待ち、作柄を把握してから価格を決めようとしている状況です。 また、一部の輸出事業者が主要生産者の1、2軒とプレハーベスト契約を結ぶという噂もありますが、価格はまだ確認されていません。
2. 米国産チモシーヘイ
アルファルファ同様に上記の天候状況から順調に生育しています。現在の予想では、コロンビア盆地については、5月中旬から下旬に収穫が始まると見込まれています。
トウモロコシ、小麦、その他の代替作物の価格がここ1か月で軟化したため、春チモシーの作付を行った生産者がいます。この作付面積は小さく、収穫は6月中旬になりそうです。
エレンズバーグでは5月下旬から、ドライランド地域では6月上旬から中旬に収穫が始まる見込みです。
3.米国産スーダングラス
主産地であるエルセントロにおけるスーダンの作付面積は圃場を見回る限り増えましたが、その面積は例年に比べて少ないです。収穫は早くて6月中旬を見込んでいます。元来スーダンは日本向け市場に流通されており、昨今は日本からの需要が減少しているため、今後も作付面積は増加しない見込みです。
4.米国産バミューダ
バミューダ圃場では種子の収穫とストローの生産が進んでいます。5月に入り、1番刈りのバミューダヘイが収穫されています。主に米国内向けに流通しますが、一部、台湾からの購買もあるようです。6月下旬から7月にかけて、一回目の種子生産が終わった後の圃場にてヘイの生産が見込まれ、#1から#2グレードが中心になると想定されます。高温の夏季に収穫されるバミューダヘイは、プレミアムグレードは少なく、#1以下のグレードが多くなります。
5. 米国産クレイングラス
5月に入りクレイン収穫が始まりました。都心部を離れたエリアの圃場にはまだ 2023年産のキャリーオーバーがタープ保管されており、今年度の運営の一部は旧穀で行うサプライヤーも少なくありません。
6. 米国産ライグラス、フェスクストロー
2023年産のフェスクストローとアニュアルライグラスはほぼ完売しました。ペレニアルライグラスストローについては、一部の輸出事業者にはキャリーオーバーがありますが、昨年は生産量が少なかったことを受け、キャリーオーバーは限定的だと想定されます。
圃場の生育状況について、これまでのところ十分な降水量があり順調に生育しています。昨年のように春先から気温が急上昇し続けると、予定よりも早く種子が出来てしまい、茎の生育が不十分で、ストローの単収は下がります。
2024年産のペレニアルライグラスの作付面積は減少しています。種子を高値で販売するためには、コンタミの少ないクリーンな種子を集荷する必要がありますが、雑草が混入している圃場が多く、圃場転換を行っているため、作付面積は減少しています。
韓国市場では引き続きフェスクの需要が旺盛で、新穀価格は堅調な動きをしています。日本よりも高値での購買を続けているため、相場価格が上昇し続けると日本の需要は減少する可能性があります。
一方、アニュアルライグラスストローは需要減少に伴い市況は軟化していました。ストロー生産者はベーリングおよび保管費用をカバーできない価格のため、漉き込む可能性が高くなってきました。
7. 豪州産品目
-
- オーツヘイ
- 新穀の収穫は各地域で完了しました。
西豪州の一部地域を除き、おおむね生育状態は良好でした。収穫期の雨当たりが少なかったことを受け、今年は上位グレードの発生が中心になる見通しです。
2023年9月29日に中国政府が豪州産オーツヘイの輸入を再開し、一時は豪州産牧草に対する需要の戻りが期待されていましたが、畜産業界ひいては中国経済全体の不調から輸入牧草の引き合いは弱く、豪州産牧草価格は上級品を中心に軟調に推移しています。一方で、下位グレードについては、新穀発生量が少なかったことから底堅い動きとなっています。
-
- 小麦ストロー
- 旧穀に関して、産地在庫は払底に近い状況です。
新穀について、小麦ストローが圃場でベーリングを待っている状態で、年末年始にかけてヴィクトリア州から東豪州にかけてまとまった降雨がありました。これを受け、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の良品供給余力はひっ迫しています。チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)についても雨当たりによる品質劣化が懸念されていますが、農家との事前契約生産品であるロングタイプよりも構造上生産量が多いため、平年程度の需要量であれば大部分を良品で賄える見通しです。
8. 海上運賃情勢
-
- 北米航路
- 太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港については、おおむね正常通りに稼働しています。
太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、ポートランドにおけるコンテナ機器不足が発生しており、動静遅延・デリバリーに支障が引き続き出ています。また、ポートランド港におけるT6ターミナルが今後閉鎖される見通しとなっています。オレゴン産ストローの積み出しはシアトル/タコマ港に依存する傾向がより強くなるため、シアトル/タコマ港での混雑が懸念されます。
バンクーバー港発の貨物について、カナダのカナディアン・ナショナル(CN)とカナディアン・パシフィック・カンザスシティ(CPKC)の機関士と車掌から構成されるチームスターズ・カナダ鉄道会議は、新契約に関する労使間の合意には至っていません。ストライキは当初早ければ5月22日に発生すると見られていましたが、延期されました。交渉が新たな合意に至らなかった場合、ストライキの日程は7月に設定されることになります。
-
- 豪州航路
- 豪州海事労働組合(MUA)と港湾オペレーターであるDPワールド・オーストラリアの労使協定が批准され、遅延の回復に向かっています。一方、豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港において、スエズ運河を回避し喜望峰ルートへ変更を余儀なくされたスケジュール乱れの貨物が集中し、一部の貨物で遅延が発生しています。
以上
令和6年5月27日
全国農業協同組合連合会(JA全農)