海外粗飼料情勢
輸入粗飼料情勢 / 令和6年6月号
1. 米国産アルファルファヘイ
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- カリフォルニア州南部インペリアルバレー
- 現在3番刈りが終盤を迎えており、圃場によっては4番刈りが始まろうとしています。気温は40℃を超えてきました。5月までに生産されたアルファルファは良い品質の貨物が集荷されましたが、6月に入ってから収穫された貨物は、分析値がプレミアム(CP>20%)には届いていないようです。今後、気温の上昇に連動して品質は低下していき、スタンダード(CP>18%)以下の品質になると見込まれ、4番~6番刈りは例年TMRグレードとして流通します。
一方、需要は引き続き低迷しています。唯一サウジアラビア向けが活発に動いていますが、日本、中国などの輸出事業者からの需要は乏しく、国内市場からの需要も低調です。
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- ワシントン州コロンビア盆地
- 12~16日間おきに雨雲がPNWを通過し、降雨が何度かあったため、その度に収穫が 2~3日遅れました。1番刈りの35%は降雨被害に遭うことなくベーリングされ、40%は雨に降られ、残りの25%は今後ベーリングされる予定です。この後半の25%は輸出事業者にとって十分な品質が見込まれないため、分析結果の高い貨物を求めるには、早期の35%から選ぶことになると見込まれます。
5月の1番刈りの取引は低調で、月末にかけて若干持ち直したようです。米国内の酪農家は積極的に購買を進めていますが、輸出事業者のバイヤー担当の大半は傍観しています。アルファルファ生産者は昨年並みの価格設定を望んでいますが、現在の提示価格はそれより低く、1番刈り以降、かなりの面積が生産されなくなると予想され、年後半に供給不足に陥る可能性もあります。
2. 米国産チモシーヘイ
収穫は6月に入り本格化する予定です。5月の最終週は天候が不安定で、5月24日から25日、6月1日から2日にかけて雨が降りました。ほとんどの生産者は6月5日まで収穫を待つつもりです。
(1)コロンビア・ベースン
5月後半の2週間は涼しくて雨が多く、ほとんどの地域で収穫が遅れました。5月中旬にチモシーを収穫しようとした生産者がいましたが、刈り取ったチモシーの大半をベーリングする前に雨が降りました。一般的な生産者は6月初旬の降雨が通過した後、6月前半に刈り取りを開始する予定です。
(2)エレンズバーグ
収穫は6月上旬から中旬に開始される見込みです。
(3)アイダホ天水地域
収穫は6月中旬から下旬に開始される見込みです。
3.米国産スーダングラス
2024年産スーダンの早刈りが始まりました。天候は例年より涼しかったですが、6月に入ると気温が44℃まで上昇しました。この気温上昇はスーダンの生育には好環境です。また、まだ湿度は高くないため、今のところ茶葉の心配は少ないです。例年であれば、7月後半から8月前半にかけて雨が降りますが、今年の夏はエルニーニョからラニーニャへの移行期にあたるため、長期的な天候の影響については不透明です。
今年は作付面積がかなり少ないため、生産者は単収を上げることに注力する可能性があり、発生するグレードは中~低級品が多くなる見込みです。よって、プレミアムやスーパープレミアムのような上級品の供給力は、あまり期待できません。6月上旬時点での日本からの需要量は低・中グレードが多いようですが、以前のような需要は見込めません。
<インペリアルバレーのスーダン圃場>
4.米国産バミューダ
種子生産を行っていない圃場では、1番刈りがまだ続いています。すでに1番刈りを行った早期収穫の圃場では、6月中旬に2番刈りが始まる予定です。ただし、乾牧草の生産量はまだ限られています。種子生産およびストロー収穫後の1番刈りが6月末か7月以降に予定されており、より多くのバミューダヘイが入手可能となる見込みです。
台湾のプレミアム品の需要は安定しており、1番刈り時点で$20/stの値上げとなりました。また、米国内の馬糧用市場は台湾よりも高い価格を支払い、3タイベールを購入しています。結果、1番刈りの供給は逼迫しており、一般市場にはほとんど出回っていません。
バミューダストローの収穫は6月後半から7月にかけて始まるため、新しいバミューダストローはおそらく6月末には入手可能となります。旧穀のバミューダストローは大量にあるため、バミューダストローを収穫しない生産者もおり、彼らは藁を畑で燃やすことになります。消費されない副産物であるバミューダストローは、2024Cropで最安値の貨物になると思われます。ジャイアント種のような特殊な繊維の長いバミューダストローは通常品より高値での取引が予想されますが、これは茎の長いバミューダストローの生産量が限られているためであり、一般的なバミューダストローの価格は昨年より下がる見込みです。
5. 米国産クレイングラス
春の気候が例年より涼しかったため、当初の灌漑を遅らせた生産者が複数おり、1番刈りは昨年より長い期間がかかっています。6月上旬現在、一部の生産者はまだ1番刈りを行っていますが、2番刈りを始めている生産者もいます。また、今年はクレインの需要が強くないため、3回刈りまでのみを計画している生産者もいます。品質は、今のところ良好で、きれいな緑色とソフトな質感のプレミアム品が収穫されています。
6. 米国産ライグラス、フェスクストロー
主産地のウィラメットバレー南部では、刈り取りの準備が始まっています。現時点では例年よりも温暖な気候が見込まれているため、フェスクは6月15日頃に刈り取りが始まり、アニュアルライグラスはフェスクの約3~4日後に刈り取りが開始される予定です。どちらも2024年7月上旬には出荷可能となる見込みで、例年より少し早いです。
ウィラメットバレー中部の圃場ではまだ受粉が始まっていませんが、近々受粉が開始されます。通常、種子収穫の準備のための圃場の刈り取りは、受粉の2~3週間後に行われます。刈り取られた牧草は、コンバインやベーリングする前に2~3週間は畑で乾燥、成熟する必要があります。
7. 豪州産品目
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- オーツヘイ
- 新穀の収穫は各地域で完了しました。
西豪州の一部地域を除き、おおむね生育状態は良好でした。収穫期の雨当たりが少なかったことを受け、今年は上位グレードの発生が中心になる見通しです。
2024年産オーツヘイの作付が始まりました。現在各地域で80%以上の作付が完了しています。今年は4月から5月中旬までの降水量が少なく、例年と比べ作付の進捗が遅れていましたが、5月下旬から6月上旬にかけて多くの産地で降雨に恵まれました。
順調な生育のためには6月から9月までの降水量が重要となります。今後3か月の降水量予想では、特にビクトリア州産地で例年を下回る可能性が高い予想となっており、今後の天候を注視する必要があります。
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- 小麦ヘイ/ストロー
- 現行の2023年産について、圃場での乾燥時に雨当たりとなってしまったことを受け、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の良品供給余力はひっ迫しています。
2024年産新穀について、作付が進んでいます。オーツヘイ同様今後数か月の降水量が重要となります。
8. 海上運賃情勢
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- 北米航路
- 太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港については、おおむね正常通りに稼働しています。
太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、ポートランドにおけるコンテナ機器不足が発生しており、動静遅延・デリバリーに支障が引き続き出ています。
バンクーバー港発の貨物について、カナダのカナディアン・ナショナル(CN)とカナディアン・パシフィック・カンザスシティ(CPKC)の機関士と車掌から構成されるチームスターズ・カナダ鉄道会議は、新契約に関する労使間の合意には至っていません。また、ストライキ実施の投票はストライキ実施支持が多数派となっており、5月22日に決行される可能が強くなっていました。しかし、連邦政府の規制当局はストライキによる医療等必要不可欠な物資運搬に関わる影響について判断するため、ストライキは延期されています。
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- 豪州航路
- 豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港において、スエズ運河を回避し喜望峰ルートへ変更を余儀なくされたスケジュール乱れの貨物が集中し、一部の貨物で遅延が発生しています。
以上
令和6年6月25日
全国農業協同組合連合会(JA全農)