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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和6年7月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     現在5番刈りが進んでいます。7月に入り熱波が全米を覆い、ラスベガスでも48℃の過去最高気温を記録し、インペリアルバレーでも日中は48℃近くとなっています。収穫される貨物の分析値は低グレードを示しています。
     需要は引き続き低迷しています。唯一のサウジアラビア向けも、分析値が向上しないことから荷動きは鈍化しており、中国も需要はあるものの鈍化しています。
  • クラマスフォール
     6月初旬から始まった1番刈りの収穫が終盤です。一部では2番刈りも始まっています。5月に霜が降ったため圃場の生育は遅く、成分のより高グレード品が生産されています。1番刈りの収穫時に少し雨が降りましたが、1 番刈りの 70%は非常に良い仕上がりになっています。米国内の乳価が持ち直した背景もあり、近隣の酪農家は、高品質の高価な牧草へ購買意欲を示しており、相場は堅調に推移すると見込まれます。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     2番刈りが終盤です。今年チモシーを生産していない生産者は、1番刈り後ほぼ30-33日の適正な生育期間を守ることが出来ましたが、チモシー生産に追われた生産者は、収穫が数日遅れています。天候は、生育期間と収穫期間ともに良好で、雨当たりのダメージはほとんどありませんでした。ほとんどのバイヤーは、チモシーに注目しており、市場を刺激するような購買を控えているようです。2番刈りの価格相場は固まっていなく、低い購買価格を提示したバイヤーに対し、生産者が断っている状況で、当面のあいだ、硬直した状態が続くと見込まれています。

2. 米国産チモシーヘイ

 収穫は終盤です。今年は、冷涼な天候のため、ゆっくりした生育を経て、収穫時期は少し遅れたものの、ベースン南部から北部までほぼ同時に刈り取りを開始しました。大手サプライヤーからの積極的な購買価格の提示により、産地取引相場は上昇中です。一方、加熱し過ぎた取引価格について、市場が受け入れない可能性も考え、購買数量を控えている中小サプライヤーもいます。
(1)コロンビア・ベースン
 6月初頭に降雨があり、収穫の開始時期は、生産者の希望日程より若干遅れました。降雨後、平均気温の急激な上昇に伴い、素早く圃場へ入り、短時間の乾燥が可能となったため、良品が多く収穫されています。今年は全体的に良品が収穫されており、米国内外の馬糧用を意識した3タイベールでの収穫が多いです。
(2)エレンズバーグ
 収穫は6月第2週から収穫が始まりました。天候に恵まれ、品質は良好です。6月末に暴風雨が通過したため、若干の被害があったようです。また、当エリアのためのダムの貯水率が低くなったため、3-4週間以内に灌漑用水に制限が掛かる可能性があります。今年の相場価格の値上げ要因の1つかもしれません。

3.米国産スーダングラス

 2024年産スーダン1番刈りは、概ね50%が完了しています。いくつかの生産者は、甜菜ビートの収穫後に遅蒔きスーダンを植えています。1番刈りで収穫された貨物は、中間グレードが多く、プレミアム品や色抜け品の発生は限定的です。2番刈りまで行う圃場がどれ位あるのか、現時点では不明ですが、20-30%減少することが見込まれています。一部のサプライヤーは購買を進めているようですが、昨年より品代が高く、現在の為替だと需要がついてこられないとの見方もあるようです。

4.米国産バミューダ

 種子生産を行っていない圃場では、2番刈りが収穫されています。現在、収穫されている貨物は、#1グレードの品質が多く、7月以降は更にブリーチが多く発生する見込みです。
 台湾からの需要は増加しており、産地相場は堅調に推移しています。
 バミューダ種子の収穫は6月の中旬に始まりました。例年よりも単収が低い可能性があるようですが、在庫は充分にあるため、問題にならないと考えられています。現在も収穫は続いており、8月上旬まで続く可能性があるようです。
 種子の収穫に伴い、バミューダストローの収穫が始まりましたが、米国内および輸出需要は限定的で、旧穀在庫も散見されます。

5. 米国産クレイングラス

 7月中旬までに2番刈りは、ほぼ全て終了し、No.1グレードの発生量が多いようです。特に6月下旬以降に刈り取られた貨物は、ブリーチしている個所が多く発生しています。
 輸出市場からの需要は依然として低迷しており、韓国向けに旧穀を処分価格で販売したとの話も聞きます。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 主産地のウィラメットバレーでは、刈り取りが順調に進んでいます。7月から始まった熱波の影響で乾燥、コンバイン作業が早めに進むと見込まれています。スケジュールはフェスクが先に進んでいますが、アニュアルライグラスも7月中には出荷可能となる見込みです。
 通常、種子収穫の準備のための圃場の刈り取りは、受粉の2~3週間後に行われます。刈り取られた牧草は、以下の写真の通り、コンバインやベーリングする前に2、3週間は畑で乾燥、成熟する必要があります。その期間に降雨があると色目がくすみますが、今年度について7月中旬時点で、雨の予報はありません。

7. 豪州産品目

  • オーツヘイ
     23年産の収穫は各地域で完了しました。
     西豪州の一部地域を除き、概ね生育状態は良好でした。収穫期の雨当たりが少なかったことを受け、今年は上位グレードの発生が中心になる見通しです。
     24年産オーツヘイの作付は各地域で完了しました。5 月下旬から6 月上旬にかけて各州産地で降雨に恵まれ、現在背丈が10~15cm 程度まで伸長しました。

 オーツヘイ新穀の出来栄えを占う上では、9 月ごろまでの降水量が重要となります。今後3か月の降水量予想では、各産地降雨に恵まれる見込みです。

  • 小麦ヘイ/ストロー
     現行の2023年産について、圃場での乾燥時に雨当たりとなってしまった地域が多く、収量は限定的でした。そのため各産地の在庫は払底に近い状態です。
     2024年産新穀について、作付が概ね完了しました。オーツヘイ同様、今後数か月の降水量が重要となります。

8. 海上運賃情勢

 北米航路、豪州航路について、一部動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港については、おおむね正常通りに稼働しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、ポートランドにおけるコンテナ機器不足が発生しており、動静遅延・デリバリーに支障が引き続き出ています。
     バンクーバー港発の貨物について、カナダのカナディアン・ナショナル(CN)とカナディアン・パシフィック・カンザスシティ(CPKC)の機関士と車掌から構成されるチームスターズ・カナダ鉄道会議は、新契約に関する労使間の合意には至っていません。連邦政府の規制当局はストライキによる医療等必要不可欠な物資運搬に関わる影響を及ぼすかどうかを判断するため、ストライキは延期されています。
     また、カナダ西岸港湾労組(ILWU Local 514)が7月5日に72時間前スト告知を実施し、7月8日からのストライキ突入の可能性が高まりました。しかし、カナダ労使関係委員会(CIRB)は労組によるスト通告内容にカナダ労働基準法に違反する部分があるとして、労組に対しスト通告取り消しを命令したことにより、港湾ストライキは一旦回避となっております。鉄道および港湾の両方において注視を続ける必要があります。
  2. 豪州航路
     豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港において、スエズ運河を回避し喜望峰ルートへ変更を余儀なくされたスケジュール乱れの貨物が集中し、一部の貨物で遅延が発生しています。

以上

令和6年7月25日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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