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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和6年8月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     現在5-6番刈りが進んでいます。生産者によっては、7番刈りを行っている圃場もあるようです。高温の中での生育、収穫を行っているため、サマーヘイと呼ばれる低成分の貨物が収穫されています。
     輸出需要は引き続き、全般的に低迷しており、昨年まで好調だったサウジアラビア向けも、分析値が向上しないことから荷動きは鈍化しており、中国需要も限定的です。米国内酪農家の需要も低迷していますが、乾乳期や育成期に低成分のアルファルファを利用できないか検討しているようです。
  • クラマスフォール
     7月末までに2番刈りがほぼ終わり、3番刈りを待っているところです。2番刈りの品質は良いのですが、荷動きは少なく、価格動向は不透明です。1番刈りの70%は非常に良い仕上がりになっています。一方、米国内の乳価が持ち直した背景もあり、近隣の酪農家は、高品質の高価な牧草へ購買意欲を示しており、相場は堅調に推移すると見込まれます。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     3番刈りの収穫が終盤で、一部の生産者は8月上旬から4番刈りを開始しましたが、大半の生産者は8月中旬以降に開始しています。天候は、生育期間と収穫期間ともに良好で、雨当たりのダメージはほとんどありませんでした。需要は依然として低迷しており、リーズナブルな価格で需要喚起を行いたいところですが、米国の農業生産費用はインフレをおこしており、しばらくバイヤーと生産者の間で硬直した状態が続くと見込まれています。
     ここ数年間継続していますが、毎年夏季になると西海岸では山火事が発生しています。圃場での乾燥中に、煙によって日光が遮断され、湿度が上がり、色目が褪せる可能性があります。また、山火事の原因は、主に自然発火で、気温上昇、急激な湿度の変化によって発火するようです。

2. 米国産チモシーヘイ

 1番刈りのチモシーの収穫は終了しました。大手のサプライヤーは、チモシーの収穫を終えたようですが、まだ数社が全グレードのチモシーを積極的に探しているようです。
 2番刈りのチモシーも需要が高く、2番刈りのために圃場を残した生産者の何人かは、ベーリング時に貨物を売却し、輸出事業者がすぐに搬出しました。
 今年は冷涼な天候のため、ゆっくりした生育を経て、収穫時期は少し遅れたものの、ベースン南部から北部までほぼ同時に刈り取りを開始しました。大手サプライヤーからの積極的な購買価格の提示により、産地取引相場は上昇中ですが、加熱し過ぎた取引価格について、市場が受け入れない可能性も考え、購買数量を控えている中小サプライヤーもいます。
(1)コロンビアベースン
 南部では、2番刈りが進んでいます。馬糧用貨物を扱う大手の輸出事業者は、積極的な集荷を進めています。短時間の乾燥が可能となったため、良品が多く収穫されています。今年は全体的に良品が収穫されており、米国内外の馬糧用を意識した3タイベールでの収穫が多いです。2番刈りのスケジュールが早まったため、3番刈りの可能性も出てきました。

(2)エレンズバーグ
 徐々に2番刈りの収穫が進んでいます。天候に恵まれ、品質は良好です。また、当エリアのためのダムの貯水率が低くなったため、8月中に灌漑用水に制限が掛かる可能性がありましたが、9月まで延期されました。
(3)アイダホ
 収穫期の天候は順調で、生育期に十分な降雨があった地域では、灌漑産チモシーに近い品質の貨物も多く、作柄は総じて良好でした。
 コロンビアベースン同様、収穫/集荷時期に多くの動きがあり、自社のチモシー圃場を持った大手サプライヤーによる強気な価格での購買が進んでいます。

3.米国産スーダングラス

 現在、遅蒔きのスーダンの1番刈りが終盤です。作付のピークは6月中下旬で作付面積は歴史的な低水準の15,000エーカー程度となり、2番刈りまで行った生産者は、全体の15-30%程度と想定されます。これは2023年産の価格相場および2024年産早播きの取引価格に満足できない生産者が作付けを減少させた結果となります。よって、本年度の生産量は限定的ですが、旧穀の繰越在庫と需要減少で、不足分を補う構造となる見込みです。価格は旧穀対比で値上げの通知がされ始めています。
 1番刈りで収穫された貨物は、中間グレードが多く、プレミアム品や低グレード品の発生は限定的です。また、天候不順のため、全体的に品質へのばらつきが発生している模様です。

4.米国産バミューダ

 種子生産を行っていない圃場では、7月下旬より3番刈りが収穫されており、8月下旬には終盤となります。台湾からの需要は旺盛で、産地相場は堅調に推移しており、平均してトン当たり$20程度の値上げとなっています。1番刈りは、プレミアム品と#1品が多く、主に米国内市場へ流通しました。
 既報の通り、今年はバミューダ生産者の多くが、種子収穫を行うため、バミューダストローの発生量は、例年以上となります。

5. 米国産クレイングラス

 現在、主に3番刈りを行っています。例年であれば、一定の輸出需要が見込まれ、その後も順次集荷されますが、本年は輸出需要が低迷しており、生産者はコスト削減のため、4番刈り以降は農薬散布を控える可能性があり、良品の発生割合が下がる可能性があります。
 また、8月中旬までに節水プログラムが承認されると、多くの圃場では4番刈りが収穫されずにスキップされ、5番刈りのタイミングで再開したとしても、気温の低下に伴い、充分な乾草を確保出来ないことが懸念されます。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 2024年産オレゴン産ストローの収穫は間もなく終わる見込みです。フェスクとアニュアルは終了しており、ペレニアルライグラスストローは8月中旬までに終了の見込みです。現時点で、ペレニアルライグラスの約65%が終了しています。
 7月後半に散発的に雨が降りましたが、多くの圃場がまだ刈られていなかったり、既にベーリングされていたりしたため、今のところ品質の大きな問題にはならなさそうです。
 新穀フェスクは例年より明るく見えますが、これは緑が少し少ないことを意味しています。ペレニアルライグラスは現在ベーリング中で、色は平年より薄いです。収量は昨年より良いようです。

7. 豪州産品目

  • オーツヘイ
    23 年産の収穫は各地域で完了しました。
    西豪州の一部地域を除き、概ね生育状態は良好でした。収穫期の雨当たりが少なかったことを受け、今年は上位グレードの           発生が中心になる見通しです。
    24 年産オーツヘイの作付は各地域で完了しました。生育状況は西豪州、ビクトリア州では背丈が30cm 以上に生長している一方、南豪州では生育が遅れている地域が見られます。

 オーツヘイ新穀の出来栄えを占う上では、9月ごろまでの降水量が重要となります。今後3か月の降水量予想は、概ね平年並みの予想となっています。

  • 小麦ヘイ/ストロー
     現行の2023年産について、圃場での乾燥時に雨当たりとなってしまった地域が多く、収量は限定的でした。そのため各産地の在庫は払底に近い状態です。
     2024年産新穀について、作付が概ね完了しました。オーツヘイ同様、今後数か月の降水量が重要となります。

8. 海上運賃情勢

 北米航路、豪州航路について、一部動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港については、おおむね正常通りに稼働しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、ポートランドにおけるコンテナ機器不足が発生しており、動静遅延・デリバリーに支障が引き続き出ています。
     カナダ鉄道労組によるスト可能性を巡り、カナダ労働基準監督機関(カナダ労使関係委員会(CIRB))は、現地時間8月9日(金)、スト実施可とする裁定を出しました。CIRBは13日間のスト猶予期間設定を指示しており、現地時間の8月22日(木)からスト突入の可能性が高まっている模様で注視が必要です。一方で、使用者側のカナダナショナル鉄道とカナダ太平洋カンザスシティ鉄道は期限までに労使協約交渉の合意が行われない限り、8月22日午前0時1分からロックアウトすることを正式に通知しています。さらに、カナダの港湾労組(ILWU Local 514)においても、カナダ西岸港湾施設を対象にスト権確立を問う組合員投票が8月9日(金)まで実施されております。企業側は連邦政府の仲裁を引き続き求める姿勢ですが、ストライキ突入とそれに対する企業側のロックアウトと鉄道輸送停止措置が懸念されます。
  2. 豪州航路
     豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港において、スエズ運河を回避し喜望峰ルートへ変更を余儀なくされたスケジュール乱れの貨物が集中し、一部の貨物で遅延が発生しています。

以上

令和6年8月21日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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