海外粗飼料情勢
輸入粗飼料情勢 / 令和6年9月号
1. 米国産アルファルファヘイ
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- カリフォルニア州南部インペリアルバレー
- 9月現在、例年であれば7-9 番刈りが進むタイミングですが、今年は多くの圃場でDIP(節水助成金)プログラムが実施され、当地の50%程度が申請していると推定されています。DIPプログラムとは、多年作物の使用する灌漑水について、一定期間(45-60日)の使用停止を行うことにより、エーカーフット当たりに対価が支払われるものです。
アルファルファの需要は低調で、サウジアラビアは2025年産の購入を完了しました。中国と韓国の需要も低調です。米国内市場も現在アルファルファをあまり購入していません。
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- クラマスフォール
- 9月上旬に3番刈りが終盤を迎えています。3番刈りの収穫が始まった8月中旬に若干の雨が降り、刈り取り後の約20%が雨あたり品となりました。残りの3番刈りは、軟調な市況を受けて、栽培期間を長くすることを決めた生産者も多く、収量が多くなりましたが、プレミアム品よりもスタンダード品の発生が多くみられています。生産者は生育期間を延長して3番刈りに集中することにしたため、4番刈りの生産量は限られています。
乳価市況の回復を受けて、高品質な貨物は輸出市場よりも高値で国内酪農家向けに取引されています。低級品の輸出需要は少なく、生産者は現在の取引価格が生産コストを下回っているため、キャッシュフローに余裕のある生産者心理としては、低価格で販売したくないタイミングです。
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- ワシントン州コロンビア盆地
- 4番刈りが進行中です。8月末時点で約30%以上が完了しています。4番刈りの品質はこれまでのところ良好で、今後の天気予報も良好なため、この状態が続くものと思われます。一方で、小規模の山火事は顕在化しており、未だに大気の質は不安定で、煙が濃い日もあります。9月から風向き変わり、風が煙を盆地から遠ざけており、このような日は少なくなりました。
アルファルファ相場は依然低迷していますが、取引量は若干回復してきています。どの市場でもバイヤーはまだ短期的な需要への購入のみです。輸出需要の買い付けは8月末に向けて進んだようで、市場を底堅くするのに十分な量と見られています。
2. 米国産チモシーヘイ
生産者がアルファルファより収益性の高い作物を探しているため、今秋はチモシーの作付面積が増えています。来月には作付けが終了する予定です。
(1)コロンビアベースン
2番刈りの収穫が終盤です。品質状況は順調で、収穫スケジュールが後半になるにつれて茶葉の混入は増える傾向にありました。
(2)エレンズバーグ
8月中旬以降2番刈りの収穫が進んでいます。キティタスバレーでは収穫中に雨が降ったため、品質にばらつきが発生しています。
(3)アイダホ
収穫期の天候は順調で、生育期に十分な降雨があった地域では、灌漑産チモシーに近い品質の貨物も多く、作柄は総じて良好でした。
(4)カナダ(アルバータ州南部)
1番刈りは7月下旬から8月上旬に終了しました。主にプレミアムとチョイスグレード(65~70%)が収穫され、スタンダード、スタンダードプラス、ユーティリティが少量(30%)収穫されました。国内からの需要は依然として堅調に推移しています。2 番刈りは9 月中旬以降に行われる予定です。
(5)カナダ(アルバータ州中部)
1回目の収穫の品質と収量は良好で、8月初旬に終了しました。主にプレミアム品が収穫されました。収量は例年よりやや少なく、国内需要は堅調に推移しています。
3.米国産スーダングラス
9月上旬時点で、スーダンの収穫は90%以上が終了しています。一部の2番刈りと、遅蒔き1番刈りが多少残っており、収穫が進んでいます。作付のピークは6月中下旬で、歴史的な低水準の15,000エーカー程度となりました。日本の為替が変動した7月下旬まで、需要は低迷しており、スーダン圃場の約80-90%が2番刈りを行わなかったと推定されています。日本からのスーダンへの需要は、8月以降増加しています。なお、スーダンは単年度作物であるため、DIP プログラムの対象にはなりません。
4.米国産バミューダ
牧草生産のみを行っている(種子の収穫を行わなかった)圃場の3番刈りや4番刈りは終盤を迎えています。DIPプログラムが始まったため、4番刈りをする生産者はそれほど多くないと見込まれます。2024年においては推定70%のバミューダ圃場で、夏に種子が収穫され、その後ほとんどで、8月以降にDIPプログラムへ登録されると予想されており、今年のバミューダヘイの発生量は限定的です。
需要面では、台湾および日本、テキサス州やアリゾナ州の国内市場からの関心もあり、輸出事業者は現在、バミューダヘイを多く購入して、自社の取り扱い数量拡大を検討していることが伺えます。今年は昨年からの繰越在庫が少なく、作付面積減少による生産量減少を埋めるためにバミューダヘイおよびストローの取り扱い拡大を検討していると予想されています。
5. 米国産クレイングラス
DIPプログラムに参加していない生産者のほとんどで、4番刈りが行われています。今年のクレインの収穫は涼しさと市場低迷の影響で開始が遅かったため、一部で3番刈り終盤の生産者もいるようです。DIPプログラムにより4番刈りを実施する生産者が減ったため、今年は主に1~3番刈りが流通することになります。
日本からの需要は安定しています。韓国の需要は鈍く、米国内需要はほとんどありません。
6. 米国産ライグラス、フェスクストロー
2024年の収穫は終了しています。一部の輸出事業者は平年並みの単収と報告していますが、他の輸出事業者は例年より少ないと報告しています。韓国の需要は引き続き強く、日本の需要は平年並みで安定しています。
7. 豪州産品目
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- オーツヘイ
- 2023年産の収穫は各地域で完了しました。
西豪州の一部地域を除き、概ね生育状態は良好でした。収穫期の雨当たりが少なかったことを受け、今年は上位グレードの発生が中心になる見通しです。
2024年産オーツヘイの作付は各地域で完了し、生育が進んでいます。
西豪州は好天に恵まれ順調に生育が進んでいます。南豪州は降雨の少なさが指摘されていましたが、8 月下旬からまとまった降雨が続き、他2州よりも背丈は低いものの大幅な減収は免れそうです。ビクトリア州はおおむね順調ですが、一部産地では生育の遅れが見られます。
今後3か月の降水量予想は、各産地とも概ね平年並みの予想となっています。9月から10月の降雨は作柄の改善に役立ちますが、収穫時期(10月初旬ごろから開始される予定)の降雨はダメージの要因となるため、天候状況には一層注視したいところです。
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- 小麦ヘイ/ストロー
- 現行の2023年産について、圃場での乾燥時に雨当たりとなってしまった地域が多く、収量は限定的でした。そのため各産地の在庫は払底に近い状態です。
2024年産新穀について、作付が完了しました。オーツヘイ同様、今後の天候に注視する必要があります。
8. 海上運賃情勢
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- 北米航路
- 太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港については、おおむね正常通りに稼働しています。
太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、ポートランドにおけるコンテナ機器不足が発生しており、動静遅延・デリバリーに支障が引き続き出ています。
US東海岸港湾の労働組合ILA(国際港湾労働者協会)と使用者団体USMXとの労使交渉は9/4、5に賃金委員会が開かれ協議が行われましたが、依然として両者の主張には大きな隔たりがあります。現在の契約期限である9/30までに新しい労働協定が締結されなければ、ILAは10/1 からのストライキ決行を示唆しています。
カナダ2大鉄道(CN、CPKC)と労働組合(TCRC)との労使交渉が決裂し、8月22日から2大鉄道によるロックアウトが実施されました。カナダ労使関係委員会(CIRB)がTCRCと2大鉄道に対して同月26日からの職場復帰と鉄道運行再開を命令したことにより、カナダの鉄道運行は正常化しています。
カナダの港湾労働組合である国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)ローカル514は、ストライキ権確立を問う組合員投票を実施しました。今後は、72時間前のストライキ通告を経て、ストライキに突入するかどうか注視されます。
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- 豪州航路
- 豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港において、スエズ運河を回避し喜望峰ルートへ変更を余儀なくされたスケジュール乱れの貨物が集中し、一部の貨物で遅延が発生しています。
以上
令和6年9月27日
全国農業協同組合連合会(JA全農)