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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和6年11月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     DIPプログラムに参加した圃場では、圃場運営が再開され、灌漑が行われています。順調に進めば、30日後には収穫される予定でしたが、DIPプログラム終了後、一部のアルファルファ畑は水不足により他の圃場ほどには復活しなかったという報告もあります。
     そのため、生産者はこれらの圃場に播種し直してアルファルファとして維持するか、他の作物に輪作することになると思われます。
     ※DIPプログラムとは、多年作物の使用する灌漑水について、一定期間(45-60日)の使用停止を行うことにより、エーカーフット当たりに対価が支払われるものです。なお、圃場面積が 20 エーカー未満の場合は DIP プログラムに参加できません。
     アルファルファの需要は依然低調で、米国内、米国外ともに引き合いは少ないです。
     10月14日のIIDの発表によれば、灌漑面積は139,302エーカー、昨年同期は132,315エーカー、先月は137,284エーカーでした。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     当地での収穫作業は終盤を迎えました。朝と晩は冷えてきており、5-10℃程度です。一部の生産者で5番刈りを行っていましたが、それも終わり、収穫された貨物の在庫を確認している段階です。
     需要サイドは、引き続き低調ですが、引き続き米国内の酪農家および肥育農家からの短期的な購買が進められています。
     現在の価格水準が生産者へは魅力的では無いため、当地ではアルファルファの作付面積が減少しています。これらの作付面積は、より収益性の高い他の作物へと移行しており、現在は、チモシーへの移行が多いようです。

2. 米国産チモシーヘイ

(1)米国コロンビア盆地
 全ての収穫が終わりました。2番刈りは、例年よりも数週間早めに刈り取りを行ったため、全体的に品質が良かったです。1番刈りと同様に需要が強く、価格は例年の予想よりも高値での取引がされています。また、今年は馬糧用が好調で、3タイでの収穫が多くみられました。
 生産者がアルファルファより収益性の高い作物を探しているため、今秋はアルファからチモシーの作付け移行が進んでいます。

(2)カナダ(アルバータ州南部)
 今年度の収穫は終わりました。5、6月の春先に干ばつに見舞われ、例年の灌漑用水の50%が使用許可されるアナウンスがあり、その後、降雨があったものの、60%に緩和されたのみでした。1番刈りは主にプレミアムとチョイスグレード(65~70%)が収穫され、スタンダード、スタンダードプラス、ユーティリティが30%程度収穫されました。国内からの需要は依然として堅調に推移しています。

(3)カナダ(アルバータ州中部)
 収穫の品質と収量は良好で、8月初旬に終了しました。主にプレミアム品が収穫されました。収量は例年よりやや少なく、国内需要は堅調に推移しています。

 ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。

3.米国産スーダングラス

 2024年度産スーダンの収穫は終了しました。作付面積が減少し、2番刈りを行わない圃場もあったため、供給力は大幅に減少しています。日本からのスーダンへの需要は8月以降増加しており、安定しているようです。現時点では、2025 年の作付面積の動向は不透明で、輸出事業者たちは、需要側から情報を得次第、生産者と協議を進めるようです。
 10月14日のIIDの発表によれば、灌漑面積は3,947エーカー、昨年同期は4,150エーカー、先月は6,552エーカーでした。

4.米国産バミューダ

 種子を収穫した圃場、DIPを適用した圃場それぞれが、今年の収穫の終盤を迎えています。主だった動きとしては、作付面積が先月より増加していることが挙げられます。種子の生育期に天候不順で、充分な収量を得られなかったため、潜在的な供給力不足が予想されており、単価が上がる可能性が高く、これが作付面積増加の理由のひとつと考えられています。多くの圃場はこれから冬に向けて休眠に入ります。
 10月14日のIIDの発表によれば、灌漑面積は78,842エーカー、昨年同期は70,167 エーカー、先月は77,964エーカーでした。

5. 米国産クレイングラス

 日本および韓国向けの需要は低迷しており、現時点での需要見通しでは、全体の供給量に問題はありません。冬季は、休眠時期ともなるため、事前にクリッピングと呼ばれる表面をきれいにするための刈り取りを行った圃場は来年に向けて休眠に入っています。通常、クレイングラスの1番刈りは、 3 月下旬か 4 月上旬に始まります。
 10 月 14 日の IIDの発表によれば、灌漑面積は22,624エーカー、昨年同期は22,061エーカー、先月は22,051エーカーでした。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 2024 年の収穫は終了しました。今年の収穫は、7月8日頃に始まり、8月中旬に終了しました。天候は概ね良好で、数回のにわか雨がありましたが、品質に大きな影響はありませんでした。通常アニュアルライグラスの収穫よりもフェスクやペレニアルライグラスの収穫が優先されるので、一部のアニュアルライグラスは多少の雨あたりを受けています。
 現在、経済が鈍化しており、住宅や商業施設向けを含めた牧草種子の在庫は重く、キャリーオーバーが多いため、今後、生産量は少なくなる可能性が高いです。需要側では、今のところ日本と韓国が順調に出荷されています。

7. 豪州産品目

  • オーツヘイ
     西豪州は概ねベーリングが完了しました。生育期間は好天に恵まれました。当初は上級品の発生が中心になる見込みでしたが、収穫後ベーリングを待つ段階で広範囲に降雨があり、中級品の発生がメインになる見通しです。
     南豪州は降雨の少なさが以前より指摘されていましたが、生産量は平年の30%程度と大幅に減少する見込みです。刈り取りは完了し、ベーリングは70%程度の進捗です。出来栄えは典型的な干ばつ型(細軸、茶葉の発生、高分析値)となる予想です。
     ビクトリア州はおおむね順調ですが、直近で雨が少なかったことから、一部産地では生育の遅れが見られます。刈り取りは完了し、ベーリングは50%程度終わりました。収量は平年並みか平年を若干下回る予想で、ベーリング完了までに降雨がなければ上~中級品の発生が中心となる見込みです。

 11月は各州概ね平年並みの降水量が予想されています。

  • 小麦ヘイ/ストロー
     現行の23年産について、各産地の在庫は払底しました。
     24年産新穀について、収穫時期が近づいています。各州の出来栄えは、オーツヘイと同じ状況で、西豪州とビクトリア州では生育は順調である一方南豪州では雨が少なく収量が落ち込む見通しです。

8. 海上運賃情勢

  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港については、おおむね正常通りに稼働しています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、ポートランドにおける輸出用コンテナ不足が発生しており、動静遅延・デリバリーに支障が引き続き出ています。
     カナダ・バンクーバー港における労使交渉について、港湾労働組合であるILWU第514支部が11月4日からストライキを開始しました。これに対して、使用者団体BCMEAはロックアウトを実施し、バンクーバー港などブリティッシュコロンビア州のコンテナ港は閉鎖されていました。しかし、カナダ連邦政府の命令により、11月14日の午後より港湾業務が再開される見込みです。業務再開となりますが、多くの船舶と貨物の到着がこれから予想されるため、同州港湾全域での労働力で捌ききれない可能性が高く、本邦へ到着する貨物にも遅延が発生してきます。遅延の影響は、主にバンクーバー港とシアトル/タコマ港をルートにする本船貨物に影響がありますので、これら2港から船積される貨物の動静には引き続き注視が必要です。平常に戻るまで数週間の時間が必要とみられます。
  2. 豪州航路
     豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港において、スエズ運河を回避し喜望峰ルートへ変更を余儀なくされたスケジュール乱れの貨物が集中し、一部の貨物で遅延が発生しています。

以上

令和6年11月25日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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