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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和7年2月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     当地では、1番刈りを行う圃場が徐々に見られるようになりました。1月中旬頃からクリッピングと呼ばれる圃場整備作業を行い、収穫を進めています。いくつかの圃場では、昨年からの節水プログラム(DIP)の開始で、雑草や枯れた茎などの混入が見られ、品質の低下を招いているようです。現在収穫されている貨物は、水分が高く国内流通されるのが一般的で、ほとんどの需要国からの購買の動きは見られなく、一部の中東需要が購買を行っているのみです。
     産地の価格相場に大きな動きは無く、生産者としては依然としてDIPプログラムへの参加に意欲的なようです。つまり、当地の生産者にとっては、夏季のサマーヘイの販売見込み価格が魅力的では無いため、DIPからの補助金で収益の確保を見込んでいます。
     2025年1月13日のIIDの発表によれば、灌漑面積は148,072エーカー、昨年同期は146,446エーカー、先月は148,882エーカーでした。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     収穫作業は終了しており、圃場は休眠中です。1月下旬頃より、寒波の影響で徐々に冷え込み、零度を下回る朝晩となっています。例年通りではありますが、いくつかの圃場にて、トラックが入れずに、貨物の搬入タイミングに支障が出ております。
     気温の低下とともに、近隣酪農家の需要が上がると見込まれていましたが、米国内需要に大きな変化は無く、短期的な集荷の動きが見えるのみです。
     輸出事業者は、緊急な新規需要が無い限り、市場での購買を進めていません。また、現在の価格水準が生産者へは魅力的では無いため、当地ではアルファルファの作付面積を減少し、より収益性の高い他の作物へと転作を検討しており、現在は、チモシーへの移行が多いようです。

2. 米国産チモシーヘイ

(1)米国コロンビア盆地
 2024年cropは収穫を終えて、順次出荷を進めています。産地に余剰在庫は無く、1番刈り、2番刈りともに完売です。例年はコロンビア盆地の南部から収穫が始まり、収穫エリアが北上していく様子ですが、今年は、収穫直前に盆地全体で気温が上昇し、全域で例年よりも数週間早めに刈り取りを行ったため、茶葉が少ない貨物が多い印象です。今年は特に、馬糧用および米国国内需要が好調で、3タイでの収穫が多くみられました。
 生産者がアルファルファより収益性の高い作物を探しているため、アルファからチモシーの作付移行が進んでいます。また、チモシー種子価格がリーズナブルな値段のため、生産者にとってチモシーへの転作を進める好材料となっています。

(2)カナダ(アルバータ州南部)
 今年度の収穫は終わりました。1番刈りは主に上級品(65~70%)が収穫され、中低級品が30%程度収穫されました。貨物はほぼ完売しており、順次出荷されています。

(3)カナダ(アルバータ州中部)
 収穫の品質と収量は良好で、8月初旬に終了しました。主に上級品が収穫されました。収量は例年よりやや少なく、カナダ国内からの引き合いも強いため、繰り越し在庫は無い状況です。
 ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。

3.米国産スーダングラス

 スーダンの収穫は終了しています。通年の作付け面積が減少し、2番刈りを行わない圃場もあったため、供給力は大幅に減少しました。供給量が限定的であったこともあり、余剰貨物は払底しており、契約された貨物が順次出荷されています。
 次シーズンに向けて、スーダンの作付けは徐々に増えてくる見込みですが、過去にあったスーダン需要は既に縮小しており、リーズナブルな価格であろう低級から中級品の需要に合わせた生産が見込まれます。

4.米国産バミューダ

 昨年の収穫を終え、圃場は既に休眠中です。収穫が再開されるのは、3月下旬以降が見込まれています。一般的に、1番刈りは高値で取引され、国内の馬糧用へ流通されます。
 バミューダヘイの需要については、大きな変化はありませんが、DIPへ参加する農家が見込まれるため、例年の作付面積から予想される生産量よりも、実際の生産量は減少する見込みです。バミューダストローについては、国内への荷動きがあるようです。
 1月13日のIIDの発表によれば、灌漑面積は77,110エーカー、昨年同期は66,502 エーカー、先月は77,531エーカーでした。

5. 米国産クレイングラス

 冬季は、休眠時期ともなるため、事前にクリッピングと呼ばれる表面をきれいにするための刈り取りを行った圃場は来年に向けて休眠に入っています。
 通常、クレイングラスの1番刈りは、 3 月下旬か 4 月上旬に始まります。
 ここ数年で、アルファルファの次にタンパク値が高く、消化性のよい粗飼料として再評価を受け、日本および韓国向けの需要は比較的安定しています。現時点での需要見通しでは、全体の供給量に問題はありません。
 1月13日の IIDの発表によれば、灌漑面積は22,906エーカー、昨年同期は21,330エーカー、先月は22,915エーカーでした。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 昨年の収穫は概ね良好でした。現在の圃場は休眠状態で、安定した降水量を受けて、順調に土壌水分が蓄積されています。
 主産地ウィラメットバレーでは、世界の6割近くの牧草種子が生産されているため、世界経済の鈍化により、住宅や商業施設向け牧草種子の在庫は重く、繰り越し在庫が多いため、種苗会社から生産者へ生産面積は下方修正されています。結果的に、今年のストローの生産量は少なくなる可能性が高いです。一方、現在の荷動きは、日本と韓国へ順調に出荷されています。

7. 豪州産品目

  • オーツヘイ
     各州ともにベーリングが完了しました。
     西豪州は、生育期間に好天に恵まれ当初は上級品の発生が中心になる見込みでしたが、収穫後ベーリングを待つ段階で広範囲に降雨があり、中級品の発生がメインになっています。
     南豪州は降雨の少なさが以前より指摘されていましたが、生産量は平年の30%程度と大幅に減少する見込みです。出来栄えは典型的な干ばつ型(細軸、茶葉の発生、高分析値)となる予想です。
     ビクトリア州は例年よりも降雨が少なかったものの、おおむね順調に生育しました。上~中級品の発生がメインとなる見通しです。国内向け需要が強く、足元の原料ヘイ価格は堅調に推移しています。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     24年産新穀について、各州12月から収穫が始まりました。
     西豪州は、12月の降雨により刈り取りが進まなかった地域が散見され、ベーリングが遅延しました。刈り取り後の雨当たりは少なく、上級品の発生がメインとなる見通しです。
     南豪州は、オーツヘイ同様に干ばつの影響から発生量が激減しており、輸出向けに出てくる数量は限定的とみられています。
     ビクトリア州は生育期の降雨が例年よりも少なかったものの、輸出に適したストローが収穫できています。一方で内需が強く、サプライヤーは生産者からの集荷に苦戦しています。

8. 海上運賃情勢

 年末年始例外荷役(12月31日、1月2~4日)が実施されなかったことによる深刻な影響はなく、2025年のスタートを切ったとみられます。
 2025年の春節(旧正月)は1/29であり、1/28~2/4の中国春節休暇の影響から一時的な輸入コンテナの荷揚げと搬出の集中とコンテナヤードの混雑が懸念されます。

  1. 北米航路
     米国東岸港湾の労使交渉が、暫定合意されました。労働組合ILA(国際港湾労働者協会)と使用者団体USMX(米国海運連合)は1/8、期間6年の基本協約について暫定合意した旨の声明を発表しています。これによりストライキによる大幅な混乱は避けられる見通しとなりました。アジア―米国航路では昨年12月から、ストライキ発生を避けるための前倒し出荷が加速していましたが、今回の暫定合意が西海岸への貨物集中も緩和していくとみられます。
     また、1/20には米国でトランプ新政権が誕生します。関税の引き上げなど通商政策の変化に引き続き注目が集まります。
     カナダ・バンクーバー港における労使交渉について、港の機能は再開されていますが、船舶と貨物の到着が集中しスケジュールに遅延が発生してきます。遅延の影響は、主にバンクーバー港とシアトル/タコマ港をルートにする本船貨物に影響があり、平常に戻るまでまだ時間が必要とみられます。
  2. 豪州航路
     北米航路で記載しました通り、アジアから米国への輸出量は堅調である影響を受け、豪州へ寄港する本船と輸出用空コンテナの不足が心配されます。また、豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港におけるスケジュールの乱れによる一部の貨物で本邦への到着遅延が発生しています。

以上

令和7年2月25日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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