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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和7年3月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     当地では、輸出に適したアルファルファを収穫する時期に入っています。生産者によっては、1番刈りと呼びますが、他の生産者は、クリッピング作業を行った後のため2番刈りと呼んでいます。収穫された貨物は、高成分のものが多く、見た目も良いです。これら高品質の貨物は、まだ輸出事業者からの積極的な取引が進んでいるわけではありませんが、中東向けの輸出事業者が高値で購買を進めています。また、アジア諸国へ販売している輸出事業者の購買も見られますが、米国酪農家からの引き合いもあるため、一部、国内向けに販売される可能性も考えられます。低級品の取引価格は、昨年よりも堅調に推移している模様です。
     2025年2月15日のIIDの発表によれば、灌漑面積は147,431エーカー、昨年同期は146,5776エーカー、先月は148,072エーカーでした。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     米国内酪農家および輸出事業者が新穀開始までの需要として、徐々に購買を進めています。これは今年は作付面積が減少することが予想され、初夏の出荷分をカバーするために、先取りした購買と想定されています。
     当地では、気温が上昇してきており、圃場が緑色に変わってきました。生産者は圃場での作業を開始しており、追加播種、肥料の散布を始めています。一部、クリッピング作業による収穫が見られますが、水分も高いため米国内向けに流通すると思われます。この時期は、輸出用に向く品質の貨物の集荷は、ほとんどありません。
     輸出事業者は、アルファルファの作付面積の減少により、産地取引価格が上昇するか、依然として回復しきらない輸出需要を背景に、取引価格がこのまま維持されるかを見極めるため、慎重になっています。

2. 米国産チモシーヘイ

(1)米国コロンビア盆地
 2024年産のチモシーは収穫を終えて、順次出荷を進めています。産地に余剰在庫はありません。コロンビア盆地内を車で走ると薄っすらと緑色のカーペットが見られるようになってきました。アルファルファを含む他品目に比べ、需要が見込めるとして、作付面積については、増加している様です。
 気温上昇に伴い、圃場では、前作の掘り起こし、播種および追加播種、肥料散布作業が順次進んでいます。

(2)カナダ(アルバータ州南部)
 2024年産の収穫は終わっており、1番刈りは主に上級品(65~70%)が収穫され、中低級品が30%程度収穫されました。貨物はほぼ完売しており、順次出荷されています。
 昨今の輸出市場価格と国内取引相場の乖離から、米国内の馬糧用への販売を増やした事業者も多く、以前よりも販売先の多様化が進んでいる印象です。

(3)カナダ(アルバータ州中部)
 2024年産の収穫の品質と収量は良好で、主に上級品が収穫されました。収量は例年よりやや少なく、カナダ国内からの引き合いも強いため、繰り越し在庫は無い状況です。
 トランプ大統領によるカナダから米国向けの関税が上昇した事を受け、菜種等の米国需要に向けた品目の価格相場が軟調に推移しています。この影響を受け、生産者のあいだでは、乾牧草等の他の作物への移行が伺えるようです。
 ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。

3.米国産スーダングラス

 昨年の作付け面積は減少し、2番刈りをおこなわない圃場もあったため、供給力は大幅に減少しました。一方、日本向けの需要も下がり、需給バランスは均衡した様子です。
 今後、スーダンの作付けは徐々に増えてくる見込みですが、現在、種子会社からはスーダン種子が順調に売れており、昨年スーダンの生産をおこなわなかった生産者も購入しているとのことです。スーダンの作付面積については、3月の下旬を目途に発表される見込みです。

4.米国産バミューダ

 昨年の収穫を終え、圃場は休眠していましたが、気温の上昇に伴い、灌漑作業をおこなう生産者が増えてきました。収穫が再開されるのは、4月以降と見込まれています。一般的に1番刈りは高値で国内の馬糧用へ流通されます。
 需給については、大きな変化はありませんが、台湾向けの需要は引き続き好調で、安定した量が出荷されています。また、多年草を対象とするDIPプログラムへ参加する生産者が多く見込まれるため、例年の作付面積よりも、大きく増加しています。バミューダストローについては、国内と日本向けが順調に出荷されているようです。
 2月15日のIIDの発表によれば、灌漑面積は76,815エーカー、昨年同期は66,347エーカー、先月は77,110エーカーでした。

5. 米国産クレイングラス

 休眠していた圃場へ灌漑が開始されました。直近では温暖な気候が続いており、3月下旬には更に気温が高まるため順調な生育が見込まれています。収穫は4月になると予想されています。
 バミューダ同様、多年草を対象とするDIPプログラムへ参加する農家が多く見込まれるため、例年の作付面積よりも増加しています。昨今の米国内の政策変更に伴い、DIPプログラムが中止されれば、大量の生産が想定されます。
 昨年DIPプログラムの対象となった圃場は、その後、1回の灌漑をおこなったとのことですが、現地輸出事業者プログラムへの参加による品質懸念よりも、生産者が高単収を目指して中級品を生産するのか、高単価を目指して単収を減らしても上級品を生産するのかによる、品質の違いの方が大きいと考えられています。
 2月15日のIIDの発表によれば、灌漑面積は22,768エーカー、昨年同期は21,378エーカー、先月は22,906エーカーでした。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 オレゴン産グラスの作付面積傾向が出てきました。当初、種苗会社から在庫調整による契約作付面積は減少するとの話があったものの、大きな影響はフェスクが主で、ライグラスについては、生産者は一般市場への生産も含め作付けを維持し、作付け面積は維持する見込みです。一年生ライグラスも、同様に作付面積は維持する傾向にあるようです。当地で置き換わる作物の価格相場が低調なことも理由のようです。
 フェスクについては、種苗会社での在庫が多く、10%弱の作付面積が減少すると見込まれています。
 荷動きは、日本と韓国へ順調に出荷されています。

7. 豪州産品目

  • オーツヘイ
     各州ともにベーリングが完了しました。
     西豪州は、生育期間に好天に恵まれ当初は上級品の発生が中心になる見込みでしたが、収穫後ベーリングを待つ段階で広範囲に降雨があり、中級品の発生が中心主流となっています。
     南豪州は生育期に干ばつに見舞われ、生産量は平年の30%程度と大幅に減少しました。出来栄えは典型的な干ばつ型(細軸、茶葉の発生、高分析値)となる予想です。
     ビクトリア州は例年よりも降雨が少なかったものの、おおむね順調に生育しました。上~中級品の発生が中心となる見通しです。国内畜産向け需要は依然として旺盛で、原料ヘイ価格は堅調に推移しています。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     24年産新穀について、各州12月から収穫が始まりました。
     西豪州は、12月の降雨により刈り取りが進まなかった地域が散見され、ベーリングが遅延しました。刈り取り後の雨当たりは少なく、上級品の発生が中心になっています。麦類の相場が好調であるため、ストローを圃場にすき込む農家が増加しています。結果として、ストローの相場は高止まりしています。
     南豪州は、干ばつの影響から発生量が激減しており、価格競争力はありません。
     ビクトリア州は生育期の降雨が例年よりも少なかったものの、輸出に適したストローが収穫できています。一方で畜産向け内需が強く、サプライヤーは生産者からの集荷に苦戦しています。

8. 海上運賃情勢

 紅海情勢は沈静化に向かっているものの、イスラエルとハマスの停戦の脆弱性とハマスを支援するフーシ派の船舶への攻撃再開の不安から、大手海運各社はスエズ運河の航行再開には慎重な姿勢を崩しておらず、引き続き現行の航路が継続されるとみられます。

  1. 北米航路
     日本海事センターによると、2025年1月のアジア地域発米国向けのコンテナ輸送量は、前年同月比15.7%増の200.8万TEUとなり、過去最高を更新しました。中国、ASEAN、南アジアからの輸送が好調で、米国の政権交代に備えた前倒し出荷が相次いだことが堅調な動きとなった主要因です。春節を挟み、米国の政権交代の影響が今後現れてくる時期となり、荷動きの状況に注目が集まります。
     一方、2024年11月の米国発アジア地域向けのコンテナ輸送量は、前年同月比11%減の48.1万TEUとなり、5か月連続で前年同時期を下回る内容になりました。1月の北米西港の運賃は、ロサンゼルス発上海向けが前月から上昇傾向で、ニューヨーク発上海向けは下落傾向となっています。
     米国通商代表部(USTR)は、中国船社の船舶や中国で建造された船舶を対象に米国港への入港手数料の徴収を検討していることを発表しました。現時点で実現するかは不透明ですが、もし実施した場合、非中国船社へのブッキングの集中や中国の船舶製造でのシェアの大きさに鑑みると、コンテナ運賃の上昇は避けられないと予測されます。
  2. 豪州航路
     アジアから米国への輸出量は堅調である影響を受け、豪州へ寄港する本船と輸出用空コンテナの不足が心配されます。また、豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港におけるスケジュールの乱れによる一部の貨物で本邦への到着遅延が発生しています。

以上

令和7年3月26日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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