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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和7年4月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     3月下旬に降雨があり、一部の1番刈りが雨あたり品となりました。これらの貨物は、成分は良いのですが見た目が不十分として低級品として流通されます。
     4月に入り2番刈りが始まっており、月内にほとんどの圃場で収穫が進みます。日中には30度を超す日も多く、順調に収穫された貨物は比較的高成分のものが多く、高成分アルファルファを狙っている中東からの購買が進んでいる模様です。また、周辺の酪農家およびフィードロットからの引き合いも、活発なため、高成分の貨物は順調に購買が進められています。一方、その他の輸出国からの引き合いは、依然として低迷しています。
     2025年3月15日のIIDの発表によれば、灌漑面積は146,620エーカー、昨年同期は145,569エーカー、先月は147,431エーカーでした。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     米国内酪農家、フィードロットおよび輸出事業者が新穀開始までの需要として、引き続き購買を進めています。良質なアルファのほとんどは、契約がなされ、市場に残っている在庫は、中級から低級品となっていますが、低級品の価格は$5-10程度の値上げが見られます。周辺の気候は、例年よりも低く、ほぼ毎週の降雨があり、生育環境としては良い傾向で順調に生育しています。3月後半には、積雪不足の傾向にあった山間部への積雪もあり、灌漑用の貯水池も良い方向に進んでいます。このまま順調に生育が進めば、4月末頃から新穀1番刈りの収穫が始まる見込みです。
     一部の輸出事業者は、中低級品のアルファルファの購買を続けていますが、その他ほとんどの輸出事業者に動きはありません。
     既報の通り、アルファルファの産地相場は低迷を続けており、生産者は、より収益率の高い作物への作付移行を進めてきたところ、作付面積は減少しています。

2. 米国産チモシーヘイ

(1)米国コロンビア盆地
 順次、2024産貨物の出荷を進めています。産地に余剰在庫はありません。冷涼で降雨の多い春先であったため、チモシーの生育環境としては、好条件でした。4月に入っても朝晩は冷え込みますが、日中は20度近くまで気温が上昇しています。
 このまま天候が安定していれば、5月中旬から下旬には新穀1番刈りの収穫が始まる見込みです。生産者にとって、アルファルファ等の他の作物よりも魅力的な品目として作付面積は増加傾向にあります。

(2)カナダ(アルバータ州南部)
 2024年産の収穫は終わっており、1番刈りは主に上級品(65~70%)が収穫され、中低級品が30%程度収穫されました。貨物はほぼ完売しており、順次出荷されています。
 昨今の輸出市場価格と国内取引相場の乖離から、米国内の馬糧用への販売を増やした事業者も多く、以前よりも販売先の多様化が進んでいる印象です。

(3)カナダ(アルバータ州中部)
 2024年産の収穫の品質と収量は良好で、主に上級品が収穫されました。収量は例年よりやや少なく、カナダ国内からの引き合いも強いため、繰り越し在庫は無い状況です。
 トランプ大統領によるカナダから米国向けの関税が上昇した事を受け、菜種等の米国需要に向けた品目の価格相場が軟調に推移しています。この影響を受け、生産者のあいだでは、乾牧草等の他の作物への移行が伺えるようです。
 ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。

3.米国産スーダングラス

 スーダンの作付が始まっており、徐々に面積が増えていきます。スーダンの種子が順調に売れていることもあり、一部の輸出事業者の間では、2025年産の最終的な作付面積は、2024年産の作付面積よりも増加することが予想されています。
 2025年4月1日のIIDの発表によれば、灌漑面積は8,838エーカー、昨年同期は4,366エーカー、先月は3,695エーカーでした。

4.米国産バミューダ

 日中に30度を超す気温となり、順調に生育が進んでいます。天候が安定していれば、4月下旬にはバミューダヘイの1番刈りが収穫される見込みです。これら貨物は、大宗がプレミアム品として集荷され、米国内向けに流通されます。馬糧用向けの市場は活発で、高値での流通が行われているようです。
 バミューダ種子の収穫開始は6月上旬が見込まれており、6月中を掛けて種子の収穫と同時にストローが発生します。
 多年草を対象とするDIPプログラムへ参加する生産者が多く見込まれるため、例年の作付面積よりも、大きく増加しています。バミューダストローについては、国内と日本向けが順調に出荷されているようです。
 3月15日のIIDの発表によれば、灌漑面積は76,576エーカー、昨年同期は65,715エーカー、先月は76,815エーカーでした。

5. 米国産クレイングラス

 気温上昇に'伴い、圃場では、一回目の灌漑が行われ、緑が広がってきました。順調な生育が見られます。収穫は5月上旬か、天候が順調であれば4月下旬を見込んでいます。
 生産者によっては、まだ旧穀在庫に余裕があるため、単収増加を狙い、#1グレードで多く収穫しようと考えているようです。
 バミューダ同様、多年草を対象とするDIPプログラムへ参加する農家が多く見込まれるため、例年の作付面積よりも増加しています。昨今の米国内の政策変更に伴い、DIPプログラムが中止されれば、大量の生産が想定されます。
 3月15日のIIDの発表によれば、灌漑面積は22,843エーカー、昨年同期は21,438エーカー、先月は22,768エーカーでした。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 主要産地のウィラメットバレーでは、例年よりも降雨が多く、土壌には充分な水分が蓄えられました。徐々に日照時間が長くなり、生育も順調に進んでいます。
 先月には、行政の調査による2025年産のオレゴン産種子採取用芝の作付面積が発表されました。フェスクが減少し、ライグラスは維持する内容でした。一部の輸出事業者からは、作付面積の減少に伴い若干の生産量減少を見込むが、例年に近い供給量が確保出来ると想定されています。
 作付面積の減少は、住宅向けの種子販売数量の減少が主な要因で、在庫が増えた種子の値段は下落を続けており、直近の最高値だった2022年から半分近くの値段となっています。
 貨物の荷動きは順当で、適宜、日本と韓国へ出荷されていますが、ポートランド港でのコンテナ不足は慢性化しており、今後も注視が必要です。

7. 豪州産品目

  • オーツヘイ
     各州ともにベーリングが完了しました。
     西豪州は、生育期間に好天に恵まれ当初は上級品の発生が中心になる見込みでしたが、収穫後ベーリングを待つ段階で広範囲に降雨があり、中級品の発生が中心となっています。
     南豪州は生育期に干ばつに見舞われ、生産量は平年の30%程度と大幅に減少しました。出来栄えは典型的な干ばつ型(細軸、茶葉の発生、高分析値)となる予想です。
     ビクトリア州は例年よりも降雨が少なかったものの、おおむね順調に生育しました。上~中級品の発生が中心となる見通しです。国内畜産向け需要は依然として旺盛で、原料ヘイ価格は堅調に推移しています。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     24年産新穀について、各州12月から収穫が始まりました。
     西豪州は、12月の降雨により刈り取りが進まなかった地域が散見され、ベーリングが遅延しました。刈り取り後の雨当たりは少なく、上級品の発生が中心になっています。一方で、次年度産の肥料代を節約するために、ストローを圃場にすき込む農家が増加しています。結果として、ストローの相場は高止まりしています。
     南豪州は、干ばつの影響から発生量が激減しており、価格競争力はありません。
     ビクトリア州は生育期の降雨が例年よりも少なかったものの、輸出に適したストローが収穫できています。一方で畜産向け内需が強く、サプライヤーは生産者からの集荷に苦戦しています。

8. 海上運賃情勢

 米国がイエメンの武装組織フーシ派への空爆を再開したことから、紅海とアデン湾における米国と同盟国の艦船に対する報復攻撃の可能性が高まっています。大手海運各社は引き続きスエズ運河航行を回避し、現行の航路を継続するとみられます。

  1. 北米航路
     日本海事センターによると、2025年2月のアジア地域発米国向けのコンテナ輸送量は、前年同月比11.1%増の175.8万TEUとなりました。トランプ大統領の関税政策を警戒して、出荷の伸びが継続していたことが要因とみられ、中国やベトナム積みなどが二桁増となっています。
     一方、2024年12月の米国発アジア地域向けのコンテナ輸送量は、前年比4.6%減の50.1万TEU となり、6か月連続で前年同時期を下回りました。
     トランプ大統領が発表した相互関税により、今後、米国向けの輸出は大きく減少すると予測されます。現時点では北米貨物に影響はみられませんが、コンテナ物流へのインパクトは未知数であり、状況を注視する必要があります。
  2. 豪州航路
     アジアから米国への輸出量は堅調である影響を受け、豪州へ寄港する本船と輸出用空コンテナの不足が心配されます。また、豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港におけるスケジュールの乱れによる一部の貨物で本邦への到着遅延が発生しています。

以上

令和7年4月25日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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