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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和7年5月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     5月に入り、当地の日中では気温が平均的に30度を超え、40度超えになる日も発生しています。圃場では、3番刈りが始まっています。収穫された2番刈りはプレミアム品が多く、依然として国内の酪農家と中東向け需要が中心です。
     中国市場については、米中間の関税問題により動向が読めていません。昨今の米国からのアルファルファ輸出市場については、中国向けが大きな割合を占める一方で、ここ数年の中国の経済成長の鈍化に伴い、乳製品の消費も低迷しているため、大きな回復は見込めない模様です。
     2025年4月10日のIIDの発表によれば、灌漑面積は146,054エーカー、昨年同期は145,273エーカー、先月は147,520エーカーでした。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     順調な生育を続けた1番刈りは、4月下旬から収穫が始まっており、例年よりも若干前倒ししたスケジュールで進んでいます。
     今春は冷涼な気候であったため、例年よりも良い成分の貨物の集荷が見込まれている一方で、作付面積は1番刈りおよび2番刈り時点で10-20%減少すると見込まれています。
     中国との関税問題で、市場での取引は停滞しています。また、同エリアのフィードロットが2件封鎖することが発表されたため、当地の需要は軟化しています。
     既報の通り、アルファルファの産地相場は低迷を続けており、生産者は、より収益率の高い作物への作付移行を進めてきたところ、作付面積は減少しています。

2. 米国産チモシーヘイ

(1)米国コロンビア盆地
 冷涼で降雨の多い春先 であったため、チモシーの生育環境としては好条件となり、今のところコロンビア盆地全域で順調に育っています。
 このまま天候が安定していれば、5月中旬から下旬には新穀1番刈りの収穫が始まる見込みです。
 チモシーは他の作物よりも需要が強いため、PNW全域で、10-15%程度の作付増加が見込まれています。

(2)カナダ(アルバータ州南部)
 気温が上昇してきており、圃場ではチモシーが徐々に生育を始めています。作付面積について、昨年度から大きな変化は見られません。天候次第ですが、1番刈りは7月上旬から中旬が予定されています。灌漑エリアでは、2番刈りも行われる見込みで、通常1番刈りの60日後を目途に収穫が始まりますので、時期は9月の上旬頃になりそうです。

(3)カナダ(アルバータ州中部)
 作付面積について、昨年度から大きな変化は見られません。今のところ順調な天候のため、このまま天候が安定していれば、7月中旬から下旬に収穫が始まる見込みです。
 2024年産のキャリーオーバーは多くなく、中国向けには安定的に出荷が続いています。
 ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。

3.米国産スーダングラス

 スーダンの作付は徐々に増加しており、5月上旬は雨も無く、順調な生育状況です。一部の生産者は、既に刈り取りを開始していますが、限定的です。例年通りに進めば、5月末から6月上旬には、全体的な収穫が始まる見込みです。
 単年草のスーダンは、DIPプログラムの対象にならず、基本的には、野菜や麦との二毛作を行います。スーダンの種子が順調に売れていることもあり、2025年産の最終的な作付面積は、昨年度の倍近くになっており、供給力が回復する見込みです。一方、価格の動向が読めにくいため、一定の単収が見込める中間グレードを生産する生産者が多くなると思われます。
 2025年5月1日のIIDの発表によれば、灌漑面積は19,246エーカー、昨年同期は10,625エーカー、先月中旬は14,388エーカーでした。

4.米国産バミューダ

 順調に生育が進んでいます。4月下旬よりバミューダヘイの1番刈りが収穫されています。これら貨物は、3タイでの収穫が進んでおり、プレミアム品として集荷され、ほとんどは馬糧用向けの市場に向いています。
 バミューダ種子の収穫開始は6月上旬が見込まれており、6月中にかけて種子の収穫と同時にストローが発生します。
 多年草を対象とするDIPプログラムへ参加する生産者が多く見込まれるため、例年の作付面積よりも、大きく増加していますが、バミューダヘイの夏期の収穫が減少するため、供給量が大きく増えることは無く、需給はバランスする見込みです。バミューダストローについては、安い繊維減として、国内からの引き合いが強い模様です。
 4月10日のIIDの発表によれば、灌漑面積は76,763エーカー、昨年同期は65,462 エーカー、先月は76,815エーカーでした。

5. 米国産クレイングラス

 気温上昇に伴い、数回の灌漑が行われ、順調に背丈が伸びてきました。5月上旬から、徐々に収穫が開始されています。今年度はバミューダ同様、多年草を対象とするDIPプログラムへ参加する農家が多く見込まれるため、例年の作付面積よりも増加しています。それらの圃場では、1番刈りと早めの2番刈りを行い、夏場に灌漑を止め、9月から収穫を再開することが見込まれます。各サプライヤーでは一定のキャリーオーバーを見込んでおり、今のところ、需給状況に大きな変化は見られません。
 4月10日の IIDの発表によれば、灌漑面積は22,919エーカー、昨年同期は21,451エーカー、先月は22,843エーカーでした。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 主要産地のウィラメットバレーでは、日照時間が長くなり、気温も上昇しています。現時点では順調に生育しており、6月下旬以降、順次収穫が進むと考えられています。一方で、ライグラス、フェスクは5月から6月にあたる生育後期に、適度な降水量と気候が必要なため、今後の天候に注視する必要があります。乾燥が進み、ヒートストレスが多いと、生育が止まり、茎が伸びずに単収の減少にも繋がります。
 貨物の荷動きは順当で、適宜、日本と韓国へに出荷されていますが、ポートランド港でのコンテナ不足は慢性化しており、今後も注視が必要です。

7. 豪州産品目

  • オーツヘイ
     24年産について、各州ともにベーリングが完了しました。
     西豪州は、生育期間に好天に恵まれ当初は上級品の発生が中心になる見込みでしたが、収穫後ベーリングを待つ段階で広範囲に降雨があり、中級品の発生が中心となっています。
     南豪州は生育期に干ばつに見舞われ、生産量は平年の30%程度と大幅に減少しました。出来栄えは典型的な干ばつ型(細軸、茶葉の発生、高分析値)となる予想です。
     ビクトリア州は例年よりも降雨が少なかったものの、おおむね順調に生育しました。上~中級品の発生が中心となる見通しです。国内畜産向け需要は依然として旺盛で、原料ヘイ価格は堅調に推移しています。
     25年産新穀について、播種が開始されました。
     西豪州は、平年程度の土壌水分を保持していると見られています。
     南豪州は、これまでの降雨が極端に少なく昨年からの干ばつ状態が継続しています。
     ビクトリア州は、4月の降雨が限定的で、土壌水分は平年以下の状態となっています。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     24年産について、各州12月から収穫が始まりました。
     西豪州は、12月の降雨により刈り取りが進まなかった地域が散見され、ベーリングが遅延しました。刈り取り後の雨当たりは少なく、上級品の発生が中心になっています。一方で、次年度産の肥料代を節約するために、ストローを圃場にすき込む農家が増加しています。結果として、ストローの相場は高止まりしています。
     南豪州は、干ばつの影響から発生量が激減しており、価格競争力はありません。
     ビクトリア州は生育期の降雨が例年よりも少なかったものの、輸出に適したストローが収穫できています。一方で畜産向け内需が強く、サプライヤーは生産者からの集荷に苦戦しています。
     25年産新穀について、播種が開始されました。

8. 海上運賃情勢

  1. 北米航路
     米国の関税政策と米中の貿易戦争によって、北米航路は需要が減退し、各船会社は欠便や航路休止を相次いで実施しています。今後、牧草輸出元の米国で空コンテナの不足や、欠便によって船腹の確保が難しくなることが発生する可能性もあり注意が必要です。また、米国通商代表部(USTR)は10月から中国建造船に対する米国港への入港料導入を発表しています。導入されると運賃への影響は避けられない見込みです。各船会社は中国建造船を北米航路から他の航路スワップさせており、それに伴うサービスの不安定化も生じています。
  2. 豪州航路
     豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港におけるスケジュールの乱れによる一部の貨物で本邦への到着遅延が発生しています。

以上

令和7年5月26日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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