海外粗飼料情勢
輸入粗飼料情勢 / 令和7年6月号
0.海外粗飼料事業体制再編のお知らせ
- 2025年6月1日付で、全農グレインポートランド支店の粗飼料事業をワシントン州パスコの全農ヘイ(ZHI)へ統合しました。当支店では、全農の代理購買機能を備え、サプライヤーからの購買、コンテナフレートおよび内陸物流管理、顧客対応等を行ってきました。全農グレインポートランド支店としては2005年から20年間となりますが、全農の海外粗飼料事業としては、1970年からの55年間に及ぶ長い歴史ある代理店機能をサプライヤーであるZHIへ移管することになります。ZHIでは、その機能を統合することによる事業領域の拡大および情報収集力の強化を進め、総合粗飼料会社として生まれ変わり、より厚みのある事業を行っていきます。引き続き粗飼料事業の推進、ご協力の程を宜しくお願い致します。
1. 米国産アルファルファヘイ
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- カリフォルニア州南部インペリアルバレー
- 5月は若干涼しい気候でしたが、6月に入り最低気温20度、最高気温45度という幅の中で、順調に育っています。圃場では3番刈りおよび4番刈りが進んでおり、これまでのところ、比較的綺麗なプレミアムグレードから#1グレードが中心に収穫されています。主に、サウジアラビアと中国からの購買が進んでいますが、米国と中国との間に関税問題が継続しているため、90 日間の交渉休止中に中国向けの荷動きはあるものの、多くはなく慎重になっていることが伺えます。
2025年5月12日のIIDの発表によれば、灌漑面積は145,743エーカー、昨年同期は144,365エーカー、先月は146,054エーカーでした。

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- ワシントン州コロンビア盆地
- 順調な生育を続けた1番刈りは、4月下旬から始まり、6月上旬までに85%以上が刈り取りを終えており、その80%は雨に降られたと推定されています。5月は散発的に降雨があったため、その雨を嫌って収穫が遅れた圃場では、色目は維持できたものの、刈り取り適期に間に合わず高成分が見込めるか不明です。雨に降られなかった早刈りのアルファルファの収穫量は限定的になる見込みです。

2. 米国産チモシーヘイ
(1)米国コロンビア盆地
例年より若干早いですが、5月末から1番刈りが始まりました。6月前半は連続した晴天が予報され、気温も上昇したため、コロンビア盆地の北部から南部に至るまで一斉に刈り取りが開始され、順調に進んでいます。作付け面積は20%近く増加している模様です。

(2)エレンズバーグ
コロンビア盆地より1週間ほど遅れて6月から本格的に収穫が開始されました。ほとんどの圃場は綺麗な緑色に見えますが、一部の圃場では雑草の混入があり、収穫、検品後にグレードが下がる恐れがあります。水利制限や旺盛な需要から、多年草のチモシーは例年より長い運営をする圃場が増えているため、雑草混入の割合が増えている可能性が考えられます。
(3)アイダホ(天水地域)
5月の降雨量が少なく、気温が上昇しているため、例年よりも早く収穫が開始されることが見込まれています。いくつかの圃場では、成熟が始まっており、生産者は早期の収穫を行う可能性があります。背丈が充分に伸びていない状態での収穫は、単収を減少させ、当地からの供給量は減少させることが想定されます。
(4)カナダ(アルバータ州南部)
圃場ではチモシーが順調に生育していますが、例年よりも降雨量が少ないです。作付面積について、昨年度から大きな変化は見られません。1番刈りは7月上旬から中旬が予定されていますが、天候が安定していれば、6月下旬から開始するかもしれません。灌漑エリアでは、2番刈りも行われる見込みで、通常1番刈りの60日後を目途に収穫が始まります。
(5)カナダ(アルバータ州中部)
作付面積について、若干の減少があるとの話がありましたが、5月下旬に降雨があり、単収の増加に繋がったと思われます。今のところ順調な天候のため、このまま天候が安定していれば、7月上旬に収穫が始まる見込みです。
ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。

3.米国産スーダングラス
良好な天候のおかげで、例年より早く5月中旬から1番刈りが順調に進んでいます。5月後半は比較的気温が上がらず、湿度も低かったため、緑色の貨物が多く収穫されています。また、茶葉の混入は、ほとんど見られなく、主に中軸~細軸程度の貨物が多く収穫されているようです。6月中旬以降に気温が上昇し、湿度が上がってくれば、徐々に色が抜けた貨物が収穫される見込みです。2025年産の作付面積は、2023年程度になっており、昨年の2024年産より供給力の回復が想定されます。
2025年6月1日のIIDの発表によれば、灌漑面積は23,575エーカー、昨年同期は14,371エーカー、先月中旬は21,401エーカーでした。


4.米国産バミューダ
順調に生育が進んでいます。一部の圃場で、バミューダヘイの1番刈りが収穫されていますが、プレミアム品として集荷され、大半は馬糧用向けとして流通しているようです。バミューダ種子の収穫開始は6月下旬と見込まれており、種子の収穫と同時にストローが発生します。DIPプログラムとヘイ価格相場の低迷により、輸出用ヘイとしての収穫は多くないと予想されています。
バミューダストローについては、近隣州の干ばつの影響を受け、国内畜産農家からの需要が旺盛となり、産地相場は上昇しています。
5月12日のIIDの発表によれば、灌漑面積は77,416エーカー、昨年同期は66,447エーカー、先月は76,763エーカーでした。


5. 米国産クレイングラス
5月下旬に向けて、大半の圃場で1番刈りが終わり、いくつかの圃場では2番刈りが始まりました。収穫された貨物の品質はまちまちで、早刈りした貨物には雑草の混入も見られます。
その後に収穫された貨物は色目が綺麗ですが、質感は固めな仕上がりとなっています。2番刈りの品質は良好で、緑色で柔らかい貨物の収穫が見込まれています。繰越在庫が予想ほど多くなかったため、輸出事業者は積極的に集荷を進めている模様です。
作付面積は増加していますが、DIPプログラムへ登録する圃場が多く、それら圃場は夏場までに数回の刈り取りを行い、灌漑を止め、9月から収穫を再開することが見込まれため、生産量が作付面積に比例して増えることは無さそうです。
5月12日のIIDの発表によれば、灌漑面積は22,857エーカー、昨年同期は21,353エーカー、先月は22,919エーカーでした。


6. 米国産ライグラス、フェスクストロー
主要産地のウィラメットバレーでは、適度な降雨と日照時間により、順調に育っています。
一方で、6月に入り晴天が続いているため、今後も雨が降らずに気温が上昇し乾燥傾向が続くと、単収は例年を若干下回ることが予想されます。
ウィラメットバレー南部では、アニュアルライグラスとフェスクの受粉が最盛期を迎えており、6月中旬から刈り取り、7-10日間の乾燥を経て、7月上旬からベーリングが見込まれます。ウィラメットバレー中部では、7月上旬から刈り取りが始まり、7月下旬にはベーリング作業が進む予定です。ライグラスの収穫作業は、そのスケジュールを1週間程度後から追い掛けます。
貨物の荷動きは順当で、適宜、日本と韓国へ出荷されていますが、ポートランド港でのコンテナ不足は慢性化しており、今後も注視が必要です。

7. 豪州産品目
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- オーツヘイ
- 24年産について、各州ともにベーリングが完了しました。
西豪州は、生育期間に好天に恵まれ当初は上級品の発生が中心になる見込みでしたが、収穫後ベーリングを待つ段階で広範囲に降雨があり、中級品の発生が中心となっています。
南豪州は生育期に干ばつに見舞われ、生産量は平年の30%程度と大幅に減少しました。出来栄えは、典型的な干ばつ型(細軸、茶葉の発生、高分析値)となる予想です。
ビクトリア州は例年よりも降雨が少なかったものの、おおむね順調に生育しました。上~中級品の発生が中心となる見通しです。国内畜産向け需要は依然として旺盛で、原料ヘイ価格は堅調に推移しています。
25年産新穀について、作付けが終盤を迎えています。
西豪州は、平年程度の土壌水分を保持していると見られています。
南豪州は、昨年からの干ばつ状態が継続していますが、6月に入り降雨が多く観測され、土壌水分は改善傾向にあります。
ビクトリア州は、6月に降雨が観測されましたが、土壌水分は平年以下の状態となっています。

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- 小麦ヘイ/ストロー
- 24年産について、各州12月から収穫が始まりました。
西豪州は、12月の降雨により刈り取りが進まなかった地域が散見され、ベーリングが遅延しました。刈り取り後の雨当たりは少なく、上級品の発生が中心になっています。一方で、次年度産の肥料代を節約するために、ストローを圃場にすき込む農家が増加しています。結果として、ストローの相場は高止まりしています。
南豪州は、干ばつの影響から発生量が激減しており、価格競争力はありません。
ビクトリア州は生育期の降雨が例年よりも少なかったものの、輸出に適したストローが収穫できています。一方で畜産向け内需が強く、サプライヤーは生産者からの集荷に苦戦しています。
25年産新穀について、播種が開始されました。
8. 海上運賃情勢
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- 北米航路
- 米中の貿易戦争によって、北米航路は需要が減退していましたが、米中の関税合意により中国発米国向けの輸送需要が急増しました。船会社は4月以降減らした船腹供給量を順次戻してきていますが、北米航路の船腹需給は逼迫しており、北米向け運賃は上昇しています。貨物の殺到で米国港湾の混雑も予想されます。また、米国通商代表部(USTR)は 10月から中国建造船などに対する米国港への入港料導入を発表しています。実際に導入されると運賃への影響は避けられない見込みです。各船会社は中国建造船を北米航路から他の航路に移動させており、それに伴うサービスの不安定化も生じています。
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- 豪州航路
- 豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港におけるスケジュールの乱れによる一部の貨物で本邦への到着遅延が発生しています。
以上
令和7年6月25日
全国農業協同組合連合会(JA全農)