海外粗飼料情勢
輸入粗飼料情勢 / 令和7年8月号
1. 米国産アルファルファヘイ
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- カリフォルニア州南部インペリアルバレー
- 40℃を超える日が続いています。圃場では6番刈りが行われており、サマーヘイと呼ばれる、CP,RFVの低い、低グレード品が生産されています。暫くはサマーヘイの生産か、DIPプログラムによる圃場の休眠となります。アルファルファ生産者にとっては、インフレが続き、生産コストに対し、昨今の流通価格が魅力的では無いため、DIPプログラムへの参加する圃場は増えました。
輸出需要については、全体的には低調で、サウジアラビアおよび中国向け需要のみが、限定されたサプライヤーを通じて流通しています。米国国内の酪農需要も低調で、一部の酪農現場では使用割合を削減していると言われています。
2025年7月11日のIIDの発表によれば、灌漑面積は145,187エーカー、昨年同期は142,263エーカー、先月は145,699エーカーでした。

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- ワシントン州コロンビア盆地
- 5月中旬より、約2か月間に及ぶ高温乾燥が続いていましたが、7月下旬から、散発的な降雨があり、気温も下がりました。コロンビア盆地南部の圃場では8月上旬までに3番刈りを完了しており、中部、北部もそれに続いています。2番刈りおよび3番刈りの大半は、非常に良い天候条件で収穫されたため、外観は非常に綺麗ですが、テスト結果が例年よりも良くない印象です。
輸出市場からの引き合いは低調ですが、米国内の酪農家およびフィードロットからの引き合いは少し活発化しています。暫く高温乾燥傾向にあったため、牧草地での生産が不調で、早めに購入飼料への切り替えている模様です。そのため、価格相場は、低グレード品から堅調に推移してきています。

2. 米国産チモシーヘイ
(1)米国コロンビア盆地
5月末から始まった刈り取りは、7月までに順調に進み、ほとんどの貨物が降雨被害なしで収穫を終えています。全体的にプレミアム品が多いですが、旧穀よりも若干茶葉が目立つ印象です。一方、#1グレードの発生が少なく、上級品に偏った品質分布になることが予想されます。
圃場では、2番刈りの収穫が始まっています。8月上旬に散発的に降った雨の影響で、数%程度がダメージを受けたようですが、その後は順調な収穫が見込まれています。

(2)エレンズバーグ
6月から本格的に収穫が開始されました。晴天に恵まれて、雨当たりの無い貨物が多く収穫されていますが、例年よりも雑草の混入が多い傾向にあります。2番刈りは、8月上旬からスタートしています。
(3)アイダホ(天水地域)
乾燥傾向にあり、気温が上昇したことから例年よりも早めに刈り取りが開始されています。現在収穫されている貨物は若刈りが多いことから、柔らかく、見た目もきれいな貨物が多い印象です。一方で、単収が下がっており、全体的な供給量は減少することが見込まれます。
(4)カナダ(アルバータ州南部)
作付面積については昨年度から大きな変化はなく、1番刈りは7月から開始されました。8月上旬までの収穫時において、通常の2倍以上の降雨量が記録されており、収穫が進まない状態です。引き続き雨予報があり、品質および供給量について、懸念があります。
ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。

3.米国産スーダングラス
1番刈りはほぼ完了しています。収穫期は天候に恵まれ、貨物は順調に集荷されています。全体的に緑色の貨物が多く、中間グレードが多い模様です。昨年よりも取引価格が上昇した事により、生産産者は2番刈りを40-50%程度生産するだろうと、予想されています。輸出事業者によると、収穫初期は、日本からの需要が低調でしたが、徐々に回復しているようです。
2025年7月11日のIIDの発表によれば、灌漑面積は25,074エーカー、昨年同期は14,219エーカー、先月は24,754エーカーでした。

4.米国産バミューダ
種子とストローの収穫は順調に完了し、流通が始まっています。米国内からのストロー需要は旺盛で、旧穀よりも$20/st高い価格で取引されています。通常、種子生産後のヘイの収穫は8月中旬から9月上旬に掛けて行われる予定ですが、現在半数以上の圃場はDIPへ登録されているため、生産を中止する見込みです。多くのバミューダ生産者は、ヘイの集荷では無く、種子とストローの生産を行っていますが、一部の生産者はヘイの生産も行っています。
ヘイとしての刈り取り収穫が行われている圃場では、3番刈りが収穫されています。旧穀を含む在庫の荷動きが鈍化しており、価格は軟調に推移すると見込まれています。
7月11日のIIDの発表によれば、灌漑面積は78,385エーカー、昨年同期は68,543エーカー、先月は77,830エーカーでした。

5. 米国産クレイングラス
圃場では3番刈りが行われており、約75%が収穫されています。80%程度の圃場がDIPプログラムに登録されており、45日か60日の灌漑停止後、収穫を再開する見込みです。DIPプログラムに参加していない圃場では4番刈りを始めているところもあります。品質については、昨年からのDIPプログラムの影響で、1番刈りについては安定していませんでしたが、2番刈り以降は安定してきたようです。生産量は、40%程度減少する見込みです。
7月11日のIIDの発表によれば、灌漑面積は22,984エーカー、昨年同期は21,119エーカー、先月は23,059エーカーでした。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー
主要産地のウィラメットバレーでは、8月上旬にライグラスの収穫の大半を完了しています。8月6日に北部地域で若干の降雨がありましたが、被害は限定的なようです。春先の生育期間に十分な降雨が無かったことから、予想よりも背丈の成長が進まなかったことを受けて、単収は減少傾向です。輸出事業者毎、集荷エリア毎に情報はまちまちですが、20-30%程度の単収減少が見込まれており、一部では50%の減少とも報告されています。
一方、フェスクは8月上旬までに収穫が完了しており、降雨の影響は受けませんでした。品質も良好ですが、やはり単収の減少傾向が顕著であり、30%程度の減少を見込んでいます。

7. 豪州産品目
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- オーツヘイ
- 24年産について、上級品~下級品まで在庫は払底しています。
25年産新穀は各地域で作付が終了しました。
西豪州は、平年程度の土壌水分を保持していると見られています。生育状況は概ね順調と見られています。
南豪州は、昨年からの干ばつ状態が継続していましたが、7月には平均以上の降雨に恵まれ、悲観的観測は後退しています。
ビクトリア州は、6月~7月に継続的に降雨があり、土壌水分は平年並みに回復したと見られています。

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- 小麦ヘイ/ストロー
- 24年産について、在庫はほぼ払底しています。
25年産新穀は、各地で作付が終了しました。各州の生育状況はオーツヘイと同様です。
8. 海上運賃情勢
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- 北米航路
- 5月の米中の関税合意により、中国発米国向けの輸送需要は急増し、北米向けの運賃は高騰しました。船会社は需要の高まりを受けて、4月以降に減らした船腹供給量を戻しましたが、中国発の需要は長続きしなかったたことで需給が緩和し、北米向けの運賃は下落しています。8月上旬では、米国西岸向けは5月の米中関税合意前の水準を割り込み、東岸向けも関税合意前の水準になっています。
米国による日本やEUなどに対する相互関税の交渉は妥結しました。中国に対する相互関税停止措置は8/14に期限切れとなる予定でしたが、停止措置の90日間の延長が発表されています。荷動きに対する関税の影響は和らいだ状況ですが、在庫の積み上げで今年後半は米国の輸入需要が低下する見通しで、北米航路では需給調整が続くとみられます。
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- 豪州航路
- 豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。アジアから欧州向けの輸出の増加を背景に、中国と東南アジアの間で物流が活発化していることから、アジア域内での貨物量は増加しています。一部貨物では、ハブ港におけるスケジュール乱れにより本邦への到着遅延が発生しています。
以上
令和7年8月26日
全国農業協同組合連合会(JA全農)