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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和7年9月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     昨年から始まったDIPプログラムの対象となり、多くの圃場が休眠中となっています。DIPプログラムに申請されていない圃場では、6番刈りが行われており、サマーヘイと呼ばれるCP/RFVの低い、低グレード品が生産されており、それら貨物のほとんどが米国内のフィードロットへ流通されています。8月は頻繁に降雨があったため、収穫は思うように進まず、収穫量は限定的でした。
     輸出需要については、全体的に低調です。サマーヘイとなったため、サウジアラビアからの購買は停止しており、中国向けの需要は中国資本の会社が主に出荷を進めていますが、購買数量は少ない状況です。
     2025年8月11日のIIDの発表によれば、灌漑面積は142,037エーカー、昨年同期は135,219エーカー、先月は145,187エーカーでした。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     3番刈りは完了しており、4番刈りが進んでいます。8月中旬までは晴天も多く、40度近くになる日もありましたが、ここ数年に比べると涼しい印象です。日照時間は、ここ1ヶ月で1時間程度短くなりました。また、乾燥気候が長く続いたこと、8月末に山間で雷雨があったことから、多方面で山火事が発生しており、煙が空を覆うことにより湿度が保持され、牧草を乾燥する期間が長くなり、くすんだ色目の貨物も収穫されています。今年は、市場取引価格が低迷していることと、生産費用が高止まりしていることから、Premiumグレードと#1グレードとの価格幅が少なく、生産者は良品を生産するよりも収量を目指した収穫が多い印象です。
     輸出市場からの引き合いは低調ですが、米国内の酪農家およびフィードロットからの引き合いは回復傾向にあります。特に、子牛価格が高くなってきたため、肉牛生産者からの引き合いは堅調で、低級品価格の相場を支えています。

2. 米国産チモシーヘイ

(1)米国コロンビア盆地
 1番刈りについては、ほとんどの貨物が降雨被害なしで収穫を終えています。全体的にプレミアム品が多いですが、旧穀よりも若干茶葉が目立つ印象です。一方、#1グレードの発生が少なく、上級品に偏った品質分布になることが予想されます。作付け面積は、昨年よりも20%以上が増加したと見られていますが、旺盛な需要から市場取引価格は堅調に推移しています。
 圃場では、2番刈りの収穫が終盤を迎えています。8月上旬に散発的に降った雨の影響で、数%程度がダメージを受けており、その後も山火事等の影響を受け、綺麗な緑色の良品は少ない印象です。

(2)エレンズバーグ
 晴天に恵まれて、雨当たりの無い貨物が多く収穫されしたが、例年よりも雑草の混入が多い傾向にあります。2番刈りは、8月上旬から開始され、終盤となっております。良品は少なく、茶葉の混入がある貨物が多い模様です。

(3)アイダホ(天水地域)
 6月7月に乾燥傾向にあり、気温が例年よりも早めに上昇したことから、例年よりも1-2週間早めに刈り取りが開始されました。収穫された貨物は若刈りが多いことから、柔らかく、見た目もきれいな貨物が多いです。一方で、単収が下がっており、全体的な供給量は減少することが見込まれます。

(4)カナダ(アルバータ州南部)灌漑地域
 作付面積については昨年度から大きな変化はなく、1番刈りは7月から開始されましたが、8月上旬までの収穫時において、降雨が続き、半分以上が刈り取り適期を逃したか、雨あたり品となっています。良品の供給力は減少しており、価格は上昇傾向です。
 現在2番刈りが進んでおり、9月中旬まで収穫が続く見込みです。全体的に収穫スケジュールが遅れているため、2番刈りの生産量は限定的になる見込みです。

(5)カナダ(アルバータ州中部)天水地域
 8月上旬までは天候が安定しなかったため収穫は進まず、後半に入り天候の安定とともに、かけ足で収穫が進んでいます。収穫時期が遅れたため、主に、過熟気味な中級品の収穫が多い状況です。
 ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。

3.米国産スーダングラス

 収穫スケジュールが順調に進んでいる圃場では、2番刈りを進められています。輸出事業者の推計では、40-50%程度の圃場で2番刈りが行われたと考えられています。8月後半は天候が安定しなかったため、一部の圃場では9月上旬まで1番刈りを行っており、2番刈りに間に合うか定かではありません。これまでの収穫状況をまとめると、60%程度が中軸から細軸品で、40%が太軸品。70%程度が緑色の貨物、30%がやや色抜けから色抜け品となっています。
 輸出事業者によると、収穫初期は、日本からの需要が低調でしたが、徐々に回復しているようです。
 2025年8月11日のIIDの発表によれば、灌漑面積は20,432エーカー、昨年同期は10,814エーカー、先月は25,074エーカーでした。

4.米国産バミューダ

 1回目の種子とストローの収穫は順調に完了し、流通が行われています。米国内からのストロー需要は旺盛で、旧穀よりも$20/st高い価格で取引されています。通常、種子生産後のヘイの収穫は8月中旬から9月上旬に掛けて行われる予定ですが、現在半数以上の圃場はDIPへ登録されているため、生産を中止しており、今後、1回の灌漑を行い、種子とストローの収穫を行うか、2026年まで休眠させる見込みです。
 ヘイとしての刈り取り収穫が行われている圃場では、4番刈りが収穫されています。全体的に色目が薄く、#2グレードの貨物が多くなる見込みです。
 8月11日のIIDの発表によれば、灌漑面積は80,859エーカー、昨年同期は71,426エーカー、先月は78,385エーカーでした。

5. 米国産クレイングラス

 多くの圃場がDIPプログラムに登録されており、45日か60日の灌漑停止をしています。その後、1回の灌漑を行い、収穫を再開する見込みです。DIPプログラムに参加していない圃場では4番刈りが終えようとしています。品質については、昨年からのDIPプログラムの影響で、1番刈りについては安定していませんでしたが、2番刈り以降は安定してきたようです。生産量は、40%程度減少する見込みで、繰り越し在庫も多くない様子です。
 8月11日のIIDの発表によれば、灌漑面積は23,241エーカー、昨年同期は21,067エーカー、先月は22,984エーカーでした。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 主要産地のウィラメットバレーでは、8月中旬には、収穫が完了しました。今年度産については、ほとんどが降雨被害なく、順調に収穫され、品質は良好です。一方で、多くの輸出事業者から、単収の減少が報告されており、フェスクとペレニアルライグラスは、20-30%の減少、アニュアルライグラスは15%程度が減少したと見られます。収穫前の5月から6月の成長期間に十分な雨が無く、背丈が伸び悩んだことが原因と考えられています。歴史的に降雨量に恵まれているウィラメットバレーでは、作付け面積の大半に灌漑設備が無いため、乾燥傾向の影響を受けました。
 種子の販売状況が芳しくないため、作付け面積を減らしており、種子の収量も低かったため、今後、種子の需給バランスが変わってくるかも知れません。
 日本および韓国からの需要は堅調で、生産量が減少した事、および年明け以降、韓国の関税割当制度が無くなるため、在庫はタイトになる可能性が高いです。

7. 豪州産品目

  • オーツヘイ
     24年産について、上級品~下級品まで在庫は払底しています。
     25年産新穀は各地域で作付が終了しました。
     西豪州は、平年程度の土壌水分を保持していると見られています。生育状況は概ね順調と見られ、背丈は70cm~80cm程度まで生育している地域もあります。
     南豪州は、昨年からの干ばつ状態が継続していましたが、7月には平均以上の降雨に恵まれ、悲観的観測は後退しています。播種時期の降雨が少なく播種が遅れたことから背丈は西豪州よりも低く、州内の平均的な単収は平年を下回る予想です。
     ビクトリア州は、6月~7月に継続的に降雨があり、土壌水分は平年並みに回復したと見られています。
     播種の遅れと8月~9月の気温の低さから、単収は平年を下回る予想です。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     24年産について、在庫はほぼ払底しています。
     25年産新穀は、各地で作付が終了しました。各州の生育状況はオーツヘイと同様です。

8. 海上運賃情勢

  1. 北米航路
     5月の米中の関税合意により、中国発米国向けの輸送需要は急増し、北米向けの運賃は高騰しました。船会社は需要の高まりを受けて、4月以降に減らした船腹供給量を戻しましたが、中国発の需要は長続きしなかったたことで需給が緩和し、北米向けの運賃は下落しました。船会社は需給調整を続けています。
     米通商代表部(USTR)による中国関連船への米国港湾入港料の徴収は10月14日から始まる予定です。船会社は中国建造船を米国以外の航路に回して対応する見込みで、それによるスケジュールの乱れが心配されます。
  2. 豪州航路
     豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。アジアから欧州向けの輸出の増加を背景に、中国と東南アジアの間で物流が活発化していることから、アジア域内での貨物量は増加しています。一部貨物では、ハブ港におけるスケジュール乱れにより本邦への到着遅延が発生しています。

以上

令和7年9月26日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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