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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和8年5月号

はじめに

 全農ヘイについて簡単にご紹介します。1995年に米国ワシントン州パスコ市に設立されました。使命は全農の飼料サプライチェーンを粗飼料の側面からサポートすることです。
 当地はワシントン州の南東部に位置し、農業が盛んなコロンビア盆地の南部にあります。乾燥した内陸性気候ですがコロンビア川を水源とした農業が盛んな地域です。牧草はもちろんのこと、じゃがいも、リンゴ、ブドウ、たまねぎ、などのほか、生産された農産物を保管・加工・輸送する業態も含めると農業は大きな産業です。

 また、全農ヘイは2025年6月から全農グレイン(株)ポートランド支店の粗飼料部門と統合しました。自社製品のみならず、他地域の従来からの取引先とも連携し“粗飼料総合会社"として全農粗飼料事業の一端を担ってまいります。

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部
     2026年4月時点の栽培面積は157,710エーカーで前年よりも増加しています。現在は2番刈の刈取りが終盤、一部の圃場では3番刈が開始されています。春先までの天候不順と3月の高温により、2番刈は高品質品の発生は少なく、成分値の低い貨物が見られます。
     米国内需要は低価格品への需要が引き続き強いです。乳価が回復してくると高品質高価格帯への需要も増えてくる可能性があります。
     中東勢の購買は比較的安定的になされていますが、中国需要の割高な高成分品への需要は昨年と比較すると少なく、2026年度産は低価格品へ需要が移っています。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     先月号から1か月間、需給環境に大きな動きはありませんが、相場は堅調に推移しています。特に低価格帯貨物の取引が米国内向けに比較的旺盛でした。これは新穀産地価格の値上がりを見越して、フィードロット需要家たちが低品質品の確保に動いたためです。牧草生産農家での在庫はほぼ完売しており、数少ない未販売在庫は中~低品質の貨物です。
     コロンビア盆地における天候は良好に推移し、生育に適した環境が続いています。しかし、カスケード山脈における積雪量は、4月に入ってもわずかに改善したにとどまっています。キッタスバレーおよびヤキマバレーにおいては、生育時期の灌漑制限が計画されており、早ければ6月中旬から下旬にかけて実施される見通しです。
     牧草生産者はコロンビアベースン南部地域において4月20日頃からの収穫開始に向けて準備を整えていましたが、降雨予報が出たため、収穫開始は4月28日まで延期されました。これら刈り取られた牧草のうち、ベール作業まで完了したのはごく一部にとどまっています。外観上は非常に良好ですが、懸念材料の一つとして、成分分析の結果が低く出ていることです。これは、PNW地域における暖冬の影響である可能性があります。暖冬によりアルファルファ株が完全に休眠状態に入ることができず、新穀の生育に必要な養分やエネルギーを十分に蓄えることができなかったということです。引き続き成分値に注視してまいります。また、先月号でも記述しましたが、2026年産の作付面積が減少していますので需給へ与える影響が危惧されます。

2. 米国産チモシーヘイ

(1)米国コロンビア盆地
 生育状況は引き続き良好です。暖冬傾向が続いたことは、生産量の点において「良好」と評価されています。先月号でも報告したとおり、暖冬の影響により雑草の種子の生存率が高まった結果、一部の圃場で、雑草割合が増加する可能性があると予測しています。
 生産者は、当地の天候状況や牧草の成熟度を見極めつつ、5月中旬から下旬にかけて収穫が開始されることを目指して準備を行っています。

(2)エレンズバーグ
 当地においての懸念は貯水量の少なさです。カスケード山脈における積雪量は、4月に入ってもわずかに改善したにとどまっています。キッタスバレーおよびヤキマバレーにおいては、生育時期の灌漑制限が計画されており、早ければ6月中旬から下旬にかけて実施される見通しです。これにより2番刈チモシーの生育、生産は昨年よりも少なくなる可能性があります。

(3)アイダホ(天水地域)
 5月上旬時点としては、作物の生育状況は良好です。例年に比べて乾燥傾向にありますが、今年は生産者たちが先手を打ち、例年よりも1ヶ月早い時期に施肥を実施しました。これは、昨年のように5月が乾燥した天候に見舞われた場合でも、作物の初期生育を確実に促進させることを目的として行われた措置です。この地域では4月下旬に2インチを超える雨が降ったものの、平年並みの収穫量を確保するには、5月および6月上旬にさらなる降雨が必要な状況です。

3.米国産クレイングラス

 2026年4月時点の栽培面積は24,509エーカーであり昨年同時期対比で微増です。
 インペリアルバレーでは1番刈が進んでいます。この時期に収穫される貨物は上級品が中心です。引き続き韓国需要が非常に強いですが、旧穀在庫は払底しており、新穀の低価格品質の登場が待たれています。肥料、燃料価格の上昇と韓国からの強い需要により、圃場での新穀価格は昨年と比較すると上昇することが見込まれます。

4.米国産バミューダ

 2026年4月時点の栽培面積は86,558エーカーと大きく伸びています。新穀は4月から開始されています。この時期に収穫された貨物は主に米国内需要として馬糧用途に向けられます。輸出向け需要は、価格面で慎重な韓国勢が弱くなっており、輸出全体の需要は弱いです。ヘイとして収穫するよりも種子およびストローで収穫したほうが魅力的だと考える生産者が多く、ヘイの供給余力は減少見込みです。

5. 米国産スーダン

 2026年4月時点の栽培面積は17,279エーカーと伸びています。
 5月上旬現在、インペリアルバレーにおいて、地元の肥育牛生産企業が自社で栽培した米国内需向けスーダンの収穫が開始されました。同地域では、自社のフィードロットで使用するための飼料として、自社農場での収穫が進められています。また、アリゾナ州ユマにおいても、同様に5月から収穫を開始する見込であるようです。
 輸出向けの収穫が本格化するにはまだ早いため、新穀の価格については現時点では定まっておらず、日本需要の様子見が続いています。直近では、主に低価格帯の肥育用途スーダンの問い合わせが増えているようです。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 5月上旬現在、圃場の生育状況は順調であり、収穫も順調に実施される見込みです。
 現時点での唯一の懸念は、収量に影響を及ぼす可能性がある「乾燥しすぎた天候」です。作付面積は昨年並みであるため、収量が順調に確保できたならば、2026年度産の供給量は昨年を上回ることとなります。
 日本および韓国からの需要は、引き続き強く、安定しています。

7. 豪州産品目

  • オーツヘイ
     2026/2027年産の新穀は4月から作付けが開始されています。圃場を耕すために使用するディーゼル燃料や肥料価格の高騰を受け、一部の農家はこれらの使用量が比較的少ない豆類や大麦・オーツの作付けを検討しており、オーツヘイの生産量の増加が期待されます。一方、豪州の今後の3か月間の降雨予報では、西豪州、南豪州、ビクトリア州ともに例年を下回る予想となっているため、今後の天候の動向に注意が必要です。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     2026/2027年産の新穀は4月から作付けが開始されています。オーツヘイと同様に肥料価格の高騰を受け、一部の農家は肥料の使用が比較的多い小麦の作付けを減らし、豆類や大麦・オーツの作付けを増やしているようです。そのため、小麦ヘイ/ストローの生産量が減少する可能性があります。

8. 海上運賃情勢

  1. 北米航路
     中東情勢による燃料価格の上昇により、各船会社は4月の船積貨物から緊急燃料サーチャージの適用を開始しております。この影響で4月以降に日本へ入港している貨物の価格が上昇しております。アジア向けのコンテナ貨物量を可能な限り維持したいためか、緊急燃料サーチャージの値下げを発表した船会社が複数ありますが、依然として緊急燃料サーチャージの適用は続いております。
  2. 豪州航路
     この航路においても中東情勢による影響は避けられません。各船会社は4月の船積貨物から緊急燃料サーチャージの適用を開始しております。また、豪州からシンガポールを経由して日本に輸送される貨物について、中東の港に寄港できなくなった本船と貨物がシンガポールに集中し、同港に滞留しています。この影響でハブ港であるシンガポールからの積替が遅延しており、日本各港への到着が遅れる可能性があります。
  3. 欧州航路
     同航路においても北米、豪州航路同様に燃料価格上昇による緊急燃料サーチャージが適用されています。中東情勢の緊迫によりホルムズ海峡は事実上の閉鎖、また紅海はスエズ運河の通航制限により、貨物は喜望峰まわりでの輸送が行われているため、欧州から日本までの輸送日数が延びることが懸念されます。

あとがき

 先日、社内の製造班の班長クラスを対象とした「安全管理とリスク管理」に関する研修に参加しました。内容は製造現場に即したもので、実務的な内容が多い中で、特に印象に残ったのは項目は・・・

 『銃を持った危険人物が職場に侵入した場合の対処』というものです。提示された行動原則はシンプルで、①Run(逃げる)②Hide(隠れる)③Fight(対抗する)。
 日本での安全研修といえば、地震や台風などの自然災害です。避難訓練は定期的に行われ、「いざ」という時に備える文化があります。多くの人にとって、災害は「いつか必ず起こるもの」であり、その対策は日常の延長線上にあるわけです。
 一方、ココはアメリカです。銃の所有が合法であり、その存在が社会の中に組み込まれています。「起こり得る事象」として企業が対策を講じる対象であることにほかなりません。
 日常におけるリスクの中身が根本的に違うのだということを感じた研修でした。

以上

令和8年5月15日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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