海外粗飼料情勢
輸入粗飼料情勢 / 令和8年6月号
はじめに
米国西海岸の主産地では本格的な収穫シーズンに突入しています。日本へ多く輸出されるスーダングラスやクレイングラスなどを生産するカリフォルニア州南部インペリアルバレーに位置する輸出業者と会話する際によく登場する最近のキーワードに「DIP」があります。簡単ですが、当地での水不足問題も含めてまとめてみます。
DIP(Deficit Irrigation Program)は、インペリアルバレーにおいて農業用水の使用を一時的に削減し、その節約分を確保するための制度。具体的には、農家が灌漑を停止する代わりに、約300ドル/エーカーフィートの補償を受け取る仕組み。2023~2026年の期間で約70万エーカーフィートの節水が目標とされています。
このプログラムが導入された背景は、コロラド川の深刻な水不足です。流域では長期的な干ばつと気温上昇により流量が減少する一方、農業や都市部の水需要は依然として高く、供給を上回る状態が続いています。こうした状況を受け、貯水池(Lake Meadなど)の水位維持や都市への安定供給を目的として、短期的に大規模な節水を実現する手段としてDIPが実施されています。
DIPは当地での輸出用牧草の生産量に与える影響は大きいことは言うまでもありません。
1. 米国産アルファルファヘイ
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- カリフォルニア州南部
- 2026年5月時点の栽培面積は157,423エーカーで前年よりも8%増加しています。現在、多くの生産者が4番~5番刈を行っています。若刈で収穫される圃場も見られ品質は良好です。高品質および中品質の収穫が中心である一方、CP22%を超える最上級品は限られています。
価格は現時点では昨年同時期とほぼ同水準ですが、夏場に収穫される低品質に移行していくにともない圃場価格も下がることも考えられますが、中級品の圃場価格を左右する輸出需給状況に注目が集まります。
当地で収穫されるアルファルファの主な需要先は中東と中国であり、サウジアラビアは成分値の高い最上級品に、中国は主に中級品に需要は集中しています。中東情勢の影響で中東諸国への海上輸送が難しくなっておりますが、これらの国々では備蓄用として約1年分の在庫を維持するために原料集荷に積極的です。
一方で、中国需要は、西海岸の他地域でアルファルファの収穫が進むにつれて、当地への需要は落ち着いていく見通しです。
西海岸全体での作付面積は前年より減少しており、2025年産の生産量も2024年年産より少ない状況でした。さらなる供給量の減少と生産費上昇により、これからの2026年産のアルファルファ価格は前年よりも高くなると見通されています。
また、生産性の低い圃場(4~5年経過した圃場)は節水を目的としたDIPに転用される見込みとなっています。
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- ワシントン州コロンビア盆地
- 4月下旬からコロンビア盆地南部にて1番刈の収穫が開始されました。収穫後にところどころで散発的な降雨が発生しましたが全体の7割程度は降雨被害を受けず通常の刈り取りを終えることができそうです。暖冬の影響(休眠期間が短いこと)が成分値に与える影響が心配されましたが、今年度産の特徴として、CP22%以上の貨物でもRFVは160~170程度と例年より低めに出ている貨物が多いように思われます。
ワシントン州の乳牛頭数は減少傾向にある一方、生産性を上げるために高品質なアルファルファの需要が強くなっています。このため、成分値の高い新穀圃場価格は国内需要により引き上げられ昨年同時期対比で上昇しています。また、アイダホ州では干ばつの影響からアルファルファの生産量が大きく減少していることもコロンビア盆地の圃場価格を上昇させている要因の一つと言えます。
コロンビア盆地における天候は総じて良好に推移しており、6月第1週目から早い圃場では2番刈の収穫が始まっています。
2. 米国産チモシーヘイ
(1)米国コロンビア盆地
5月下旬より1番刈の収穫が始まりました。生産面積は昨年までのアルファルファの市況の悪さからチモシー生産への移行が大きく進み、また生産量も増加しています。先月までの報告でも記載しましたとおり、暖冬の影響により雑草の種子の生存率が高まった結果、一部の圃場で、雑草割合が増加しています。そのため、品質は昨年と比較すると見劣りしますが、平年並みの仕上がりに近いものとなっています。
まだコロンビア盆地南部での収穫がはじまったばかりですので、当地全体での作柄は今後の天候に左右されるため天気予報から目が離せません。
圃場価格はまだ定まっておらず、潤沢な供給力を背景に、牧草生産者との交渉がこれから徐々に本格化します。チモシーの生産費も他品目と同様に上昇していることから、生産者と輸出業者との価格交渉攻防は例年よりも長引くものとなりそうです。
(2)エレンズバーグ
主産地である当地における懸念は引き続き貯水量の少なさです。カスケード山脈における積雪量は少ない状態が続いておりました。キッタスバレーおよびヤキマバレーにおいては、生育時期の灌漑制限が計画されており、早ければ6月中旬から下旬にかけて実施される見通しです。1番刈の収穫は6月15日の週から本格化する見通しですので、1番刈の単収に与える影響は限定的とみられます。しかしながら、2番刈チモシーの生育時期に十分な灌漑を行えない可能性があり、生産量は昨年よりも少なくなる見通しです。
(3)アイダホ(天水地域)
6月上旬時点としては、作物の生育状況は良好です。例年に比べて乾燥傾向にありますが、今年は生産者たちが先手を打ち、例年よりも1ヶ月早い時期に施肥を実施しました。これは、昨年のように5月が乾燥した天候に見舞われた場合でも、作物の初期生育を確実に促進させることを目的として行われた措置です。刈り取りは例年であれば7月初旬から始まりますが、今年は6月下旬から始まる見込みです。
3.米国産クレイングラス
2026年5月時点の栽培面積は24,791エーカーであり昨年同時期対比で微増です。
1番刈りの収穫は例年より早く始まり、4~5月において乾燥した気候が続いていたため、圃場は例年よりも雑草等がない状態でした。1番刈りの品質は圃場により差が出ているようで、質感が柔らかい上級品と若干刈遅れが見られる品質とが散見されます。総じて悪くない作柄といえるでしょう。
現在、多くの圃場では2番刈りを開始しています。
複数の輸出業者各社からの情報によると、圃場価格は昨年同時期対比で上昇しており、その背景として、肥料などの生産費の上昇の他、需要が強かった旧穀在庫の繰り越しが少ないことがあげられます。
2025年産では高単収を狙った低級品も収穫されましたが、2026年はこのような品質で収穫されることが昨年より少なく、多くの生産者は上級品および中級品の生産を目指しています。低級品は降雨の影響を受けたものなど意図せずに発生するものに限られそうです。
4.米国産バミューダ
2026年5月時点の栽培面積は86,536エーカーと大きく伸びています。
バミューダグラスの1番刈りは4月に始まり、その大半は国内の小売市場(乗馬用など)に向けに販売されています。当地の圃場の多くは、種子やストローの収穫を目的としています。ストローへの国内需要は旺盛であるため、作付面積が増加したとしても、需給は均衡する見通しです。
ヘイとして収穫される圃場では2番刈りが始まっています。天候に恵まれ作柄は良さそうです。他品目同様に生産費上昇の影響から圃場価格は上級品を中心に上昇しています。
5. 米国産スーダン
2026年4月時点の栽培面積は20,616エーカーとなり昨年同時期と同水準です。
収穫開始が例年よりも2週間早く、5月中旬からとなりました。これは3月の気温が非常に高く、スーダングラスの生育が早まったためです。
輸出業者からの情報によると、現在の日本市場での価格は昨年と同等かそれ以下であるため、生産者は早期販売に消極的で収穫済み貨物を抱えたまま様子を見ているようです。生産コストも上昇しているため、市場の動向を見極めたいという考えによるものです。また、上昇している生産コストに見合う販売が今後できないことを危惧し遅まきスーダングラスの作付けに慎重な姿勢をとっています。
2026年6月5日現在では、収穫の最盛期を迎えています。シーズン後半のスーダングラスは生産量が限定的である見通しから、例年のような色抜け品や、低価格帯品の供給余力は限定的になる可能性があります。
6. 米国産ライグラス、フェスクストロー
6月初旬の時点で、ウィラメットバレー地域全体で例年より7~10日ほど早い進捗状況です。
同南部地域では、フェスク及びアニュアルライグラスの刈り取りが6月中旬、ペレニアルライグラスは6月下旬から始まる見通しです。
同中部地区では、フェスク及びアニュアルライグラスの刈り取りが6月中下旬、ペレニアルライグラスは7月上旬から始まる見通しです。
収穫時期が早まることによる収量への影響は限定的で例年並みとなる見通しです。なお、2025年産は例年の8割程度であったため、供給量は回復していくことになりますが、刈取後の天候に注目されます。
7. 豪州産品目
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- オーツヘイ
- 西豪州:
作付は概ね完了しています。一部の農家は乾燥した天候であることから、乾式播種を行っているようです。新穀の生育は降雨不足からゆっくりと進んでいます。
南豪州:
一定の降雨があったことから例年よりも早く作付けが進んでおり、概ね完了しています。生育は順調に進んでいます。
VIC州:
5月下旬時点で作付けは約6割進んでいました。一部の地域では作付けが完了しております。一定の降雨があったため、早く作付けを行った地域の生育は順調です。またこれから作付けされる新穀についても、一定の降雨が予想されるため、生育が順調に進むことが予想されます。
新穀の生育はある程度順調に開始しましたが、今後の降雨予報は作物にとってよろしくありません。以下は7-9月の降雨予報を示していますが、西豪州・南豪州・VIC州の生産地域で例年よりも降雨が不足することが示唆されています。
今年はエルニーニョ現象になる可能性が非常に高いと予想されており、これが豪州での降雨不足を引き起こすと考えられます。
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- 小麦ヘイ/ストロー
- 豪州全土の小麦作付面積は2019年以降で最小になると予想されています。小麦は肥料を比較的使用する作物ですが、肥料価格は中東情勢を受けて急騰しているため、一部の農家は他作物に移行しております。現時点で小麦の作付面積は前年から12%減少、生産量は前年から26%減少する見込みです。
8. 海上運賃情勢
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- 北米航路
- 中東情勢による燃料価格の上昇により、各船会社は4月の船積貨物から緊急燃料サーチャージの適用を開始しております。この影響で4月以降に日本へ入港している貨物の価格が上昇しております。アジア向けのコンテナ貨物量を可能な限り維持したいためか、緊急燃料サーチャージの値下げを発表した船会社が複数ありますが、依然として緊急燃料サーチャージの適用は続いております。
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- 豪州航路
- 中東情勢による燃料価格の上昇により、各船会社は4月の船積貨物から緊急燃料サーチャージの適用を開始しております。この影響で4月以降に日本へ入港している貨物の価格が上昇しております。また、中東行きだった船舶がスケジュールを変更したことで、シンガポールや中国の積み替え港での積み替え遅延が発生しており、日本港への到着が遅れるケースが発生しています。
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- 欧州航路
- 中東情勢による燃料価格の上昇により、各船会社は4月の船積貨物から緊急燃料サーチャージの適用を開始しております。この影響で4月以降に日本へ入港している貨物の価格が上昇しております。中東情勢を受けてホルムズ海峡は事実上の閉鎖、また紅海情勢によるスエズ運河の通航制限により、貨物は喜望峰まわりでの輸送が行われているため、欧州から日本までの輸送日数が延びることが懸念されます。
あとがき
気がつけば、ココに赴任してからもうすぐ3か月が見えてきました。時間の流れは不思議なもので、長く感じる日もあれば、一瞬のように思える日々もあります。
聞いてはおりましたが、やはりココで日本のふわふわした食パンに出会うことはございません。棚に並ぶのは、主張の強い全粒粉やずっしりとしたパンばかりで、あの白くてやさしい存在とは無縁です。
先日、近くのスーパーにて思いがけずホンモノの食パン(日本の製パンメーカー品)と再会しました。ビニール越しに見るその姿は、懐かしく、また頼もしく、値札には約6ドル(≒930円)。日本で200円前後で買っていた頃の記憶がよみがえり、しばらく売り場の前を行ったり来たり…三往復した末にようやく手に取ったのは、理屈よりも感情が勝ったからなんでしょうか。
帰宅すると、妻はパンを一枚ずつ丁寧にラップで包み、冷凍庫へ収めていきました。
すぐに食べず、「少しずつ楽しもう」という様子は、ささやかな贅沢を大切に抱え込むようで。たった一枚の食パンが、こんなにも静かに、深く、心を満たしてくれるとは…思いもよりませんでした。
以上
令和8年6月12日
全国農業協同組合連合会(JA全農)