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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和8年7月号

はじめに

 先月号ではカリフォルニア州南部の慢性的なコロラド川の水不足と節水プログラム「DIP(Deficit Irrigation Program)」をご紹介しました。今月号は、全農ヘイ社があるコロンビア盆地と水源のコロンビア川を簡単にご紹介します。

 コロンビア川は米国北西部最大級の河川でワシントン州の農業を支える水源の役割を担っています。ロッキー山脈の雪解け水を水源とするコロンビア川の水はポンプにより汲み上げられダムや貯水池に貯められます。その後、パイプライン等を用いて各農地へ送られます(Columbia Basin Projectという水資源開発プロジェクト)。そのため、年間降水量が約200mmとほぼ砂漠のような当地においても、飼料作物の他、ブドウ、リンゴ、ジャガイモなどを生産することが可能です。コロンビア盆地と農業は「米国西部で最も成功した灌漑開発地域の一つであり、単位面積当たりの農業生産性は全米最高レベル」とも言われています。
 さて、今シーズンもアイダホ州やユタ州での干ばつとアルファルファの単収減少にともなう生産量の減少は主な話題です。しかしながら、コロンビア盆地における水源は十分であり、当地における単収は例年と変わりません。栽培面積の増減はあるものの、日本への安定的な牧草供給基地として重要な位置づけであります。

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部
     2026年6月時点の栽培面積は157,332エーカーで前年よりも8%増加しています。現在、当地では5番が本格化し、早い圃場では6番刈を行っています。飼料価値を高めるために早刈された圃場では高成分品が収穫される一方で、単収を高くするために遅く刈取られる圃場もあるなど品質の幅は大きくなっています。輸出適合品としては問題なく総じて良好な収穫が進んでいます。
     この時期の気温は高く全体を見渡せば、やや低級品が多いようです。それにともない産地圃場価格も落ち着いてくるのが通例ですが、ユタ州など干ばつに見舞われた近隣州の生産量が減少していることから当地での圃場価格は米国内需を中心に強く堅調に推移しています。この需給ひっ迫感は西海岸全体に見られる現象であり、今シーズンのアルファルファ価格は底堅い展開が見通されます。
     当地からの主な出荷先の一つは中国ですが、今のところ高品質品への需要が強い一方、低品質品は低調です。
     DIP(節水プログラム)に参加するアルファルファ圃場は約82,000エーカーとなっており、6月には約6,000エーカー、7月には約12,000エーカー、残り67,000エーカーが8月からDIPに参加する見通しです。これは、同地区のアルファルファ圃場面積の約52%に相当することになり、需給への影響が危惧されます。DIPによる減産、ユタ州やアイダホ州での水不足を主要因として西海岸全体のアルファルファ価格を押し上げる要因となっています。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     4月下旬からコロンビア盆地南部にて1番刈の収穫が開始され、7月上旬現在では早い圃場で3番刈が始まっています。1番刈は収穫後に散発的な降雨が発生したものの全体の7割程度は降雨被害を受けず通常の刈り取りを終えています。成分値はCP22%以上の貨物でもRFVは160~170程度と例年より低めに出ている貨物が多いのが特徴的です。2番刈は6月中旬の降雨が中部、北部の収穫に影響することが危惧されましたが、多くの被害を受けることなく終盤を迎えています。成分値の特徴はこれから見えてきますが、例年通りの仕上がりが見通されます。色目も緑が鮮やかな良好な貨物が多く順調な生産が進んでいます。
     当地における懸念事項は、圃場価格です。カリフォルニア州南部欄でも記載しましたとおり、アイダホ州での水不足による生産量減少と圃場価格の高騰がコロンビア盆地へ少なからず影響を及ぼしています。供給量が潤沢ではない見通しから、牧草生産農家の販売希望価格は、強い米国内需要と輸出需要を背景に上向いています。
     コロンビア盆地における天候はここまで総じて良好に推移しており、7月1週目から3番刈の収穫が始まっています。

2. 米国産チモシーヘイ

(1)米国コロンビア盆地
 5月下旬より開始された1番刈の収穫はおおよそ完了しています。当地での生産量は生産面積が他作物から移行したことにともない増加し、十分な供給量となっています。一方、品質面は、先月までの報告でも記載しましたとおり、暖冬の影響により雑草の種子の生存率が高まった結果、一部の圃場で、雑草割合が増加しています。また、散発的な降雨を軽く受けた圃場もあり、色あせ、全体的な茶葉の混入など、圃場により特徴は様々です。そのため、品質は昨年と比較すると見劣りする印象を受けます。
 圃場価格は十分な供給余力を背景に、牧草生産者と輸出業者とで価格交渉が繰り広げられています。色目、雑草混入など申し分ない上級品は生産量に対して少ないこと、チモシー生産費も他品目と同様に上昇していることから、生産者と輸出業者との値決めは例年よりも長引いています。

(2)エレンズバーグ
 主産地である当地でも収穫が本格化しています。生産動向、品質はコロンビア盆地と同様です。この地域での懸念は引き続き貯水量の少なさです。カスケード山脈における積雪量は少ない状態が続いておりました。キッタスバレーおよびヤキマバレーにおいては、生育時期の灌漑制限が2番刈チモシーの生育時期に影響を与えますが、これは昨年に続いて同様です。十分な灌漑を行えず、生産量は昨年よりもさらに少なくなる見通しです。

(3)アイダホ(天水地域)
 6月下旬から収穫が始まりました。例年は7月上旬から始まりますので、若干早いスケジュールとなっています。作物の生育状況は良好です。例年に比べて乾燥傾向にあったこと、主産地コロンビア盆地での潤沢な供給量を背景に、いくつかの圃場では早刈を行っています。当地のチモシーは他産地と比較すると、茎が硬めな仕上がりが特徴として見られます。しかし、柔らかく、葉量も多い貨物が例年よりも多い印象を受けます。一方で、断続的な降雨も6月下旬に発生し、収穫作業を遅らせた圃場の貨物では刈取適期を逃してしまう場面もあったようです。

3.米国産クレイングラス

 2026年6月時点の栽培面積は24,828エーカーであり昨年同時期対比で微増です。
 7月上旬時点において2番刈の収穫を終えています。早い圃場では3番刈に取り掛かっています。これまで収穫された貨物は例年通り高品質なものが中心です。3番刈の品質見通しは気温の上昇にともない、茎が硬い中級品質が中心です。
 DIPに参加するクレイグラス圃場は約18,000エーカーと見通されています。7月1日時点では約1,000エーカーがDIPに参加していますが、この圃場では8月中旬まで灌漑が行われないことになります。また、8月1日からは残り17,000エーカーの灌漑を中止しますが、これらは60日間の灌漑を停止となります。クレイングラスは他作物と比較し生育には長い日照時間を必要とします。そのため、8月1日から60日間の灌漑を停止した圃場では10月から灌漑開始となるわけですが、その時期の日照時間を考慮すると十分な生育が期待できないことが考えられます。これらの背景から、今シーズンの生産量は作付面積とは比例せず、十分な供給力が確保できるか不透明な状況と言えます。

4.米国産バミューダ

 2026年6月時点の栽培面積は88,417エーカーとなり前年同時期対比11%の増加となっています。
 バミューダグラスは2番刈りまで終了しており、品質は良好です。また、種子収穫の圃場では収穫後にヘイの生産へ切り替わることが通例ですが、今シーズンにおけるこれらの圃場ではDIPへ参加する面積が約60,000エーカーとみられ、ヘイの全体生産量は平年を下回ることとなりそうです。しかしながら輸出需要は限られているため現時点での供給に差支えはないとみられます。
 ストローの生産は7月から本格化します。アルファルファ欄で記載しましたとおり、今シーズンのアルファルファは低級品も供給量は少なくなります。これら低級品アルファルファは割安な繊維源として米国内で流通しますが、代替需要としてバミューダストローへ関心が高まっています。

5. 米国産スーダン

 2026年6月時点の栽培面積は21,229エーカーとなり昨年同時期対比14%減少しています。
 収穫開始は5月中旬から始まり例年よりも早いスケジュールで進んでいます。現在は1番刈の9割を終え、品質は細茎が中心となりました。2番刈は7月上旬時点で始まっておりますが、圃場により生育期間に30日~60日とばらつきがみられます。また、2番刈の収穫を行わない圃場も存在しており、一部では鋤きこまれている圃場もあります。肥料や燃料費、人件費などの生産費用が上がっているにも関わらず、スーダン生産者から輸出業者への販売価格は昨年と比較すると下がっています。生産費を賄えない価格となっているため、2番刈を収穫しない圃場が多くなる背景はここにあります。また、DIPも2番刈生産量が減少する要因です。約50%~70%のスーダン圃場で2番刈を行わない見込みです。
 今シーズンの生産量は昨年よりもさらに減少する見通しですが、日本を中心に需要も減少しているため、需給は均衡する見通しです。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 7月初旬の時点におけるウィラメットバレー中部では、アニュアルライグラスストローの刈り取りを終えています。ベーリングも間近です。6月下旬に中部および南部で降雨があったため、例年とは異なる色味になっている状況です。また、フェスクストローもおおよそ同時期に刈り取りとベーリングが行われますが、同様に降雨の影響を受けている圃場が見られます。圃場によっては種子採取のためのコンバインが入る時期が異なり、その時期と降雨のタイミングにより色味に差が出ます。色味のばらつきが大きい可能性がありますが、全体像を推し量るにはもう少し時間が必要となります。
 一方、ペレニアルライグラスストローは7月初旬時点では刈り取りはなされていません。6月下旬の降雨は生育を促すこととなりました。降雨の物理的な作用による倒伏、種子が雨水を含んだことによる自重での倒伏などが発生している圃場も見られます。このような倒伏は、ストローを刈り取る際の地面からの高さと、それにともなう収穫量に影響する可能性があります。刈り取りはこれから始まりますが、倒伏の影響と、刈り取り後の天候次第で品質も左右されるため注視されます。
 新穀輸出スケジュールについて、アニュアルライグラスおよびフェスクストローは最短で7月中に、ペレニアルライグラスストローは、8月中に準備が整う見込みです。

7. 豪州産品目

  • オーツヘイ
    西豪州:作付けは概ね完了しました。ほとんどのオーツが穀物もしくは牧草用として植えられています。降雨が不足しているため、一定の降雨が望まれます。
    南豪州:一定の降雨があったことから例年よりも早く作付けが進んでおり、完了しています。温暖な気候もあり、今年は早く収穫が開始する可能性があります。
    VIC州:一定の降雨があったことから例年よりも早く作付けが進んでおり、完了しています。いくつかの農家はこれまでで最も良いスタートだと述べております。

 新穀の生育はある程度順調に進んでいますが、引き続き7-9月の降雨予報では西豪州・南豪州・VIC州の生産地域で例年よりも降雨が不足することが示唆されています。

  • 小麦ヘイ/ストロー
     豪州全土の小麦作付面積は2019年以降で最小になると予想されています。小麦は肥料を比較的使用する作物ですが、肥料価格は中東情勢を受けて急騰しているため、一部の農家は他作物に移行しております。現時点で小麦の作付面積は前年から12%減少、生産量は前年から26%減少する見込みです。

8. 海上運賃情勢

  1. 北米航路
     中東情勢による燃料価格の上昇により、各船会社は4月の船積貨物から緊急燃料サーチャージの適用を開始しております。この影響で4月以降に日本へ入港している貨物の価格が上昇しております。依然として緊急燃料サーチャージの適用は続いております。
  2. 豪州航路
     中東情勢による燃料価格の上昇により、各船会社は4月の船積貨物から緊急燃料サーチャージの適用を開始しております。この影響で4月以降に日本へ入港している貨物の価格が上昇しております。また、中東行きだった船舶がスケジュールを変更したことで、シンガポールや中国の積み替え港での積み替え遅延が発生しており、日本港への到着が遅れるケースが発生しています。
  3. 欧州航路
     中東情勢による燃料価格の上昇により、各船会社は4月の船積貨物から緊急燃料サーチャージの適用を開始しております。この影響で4月以降に日本へ入港している貨物の価格が上昇しております。中東情勢を受けてホルムズ海峡は事実上の閉鎖、また紅海情勢によるスエズ運河の通航制限により、貨物は喜望峰まわりでの輸送が行われていましたが、一部の船会社は特定の運航サービスを喜望峰経由からスエズ運河経由に変更することを発表しており、これが実現した場合にはアジアー欧州の航海日数の短縮が期待できます。

あとがき

 コロンビア川は、当地の農業を支える生命線であると同時に、地域住民にとっての大切な憩いの場にもなっています。川沿いには公園やサイクリングロードが整備され、週末ともなればバーベキューを楽しむ家族連れや、自転車を走らせる人々、ゴルフに興じる人々の姿が見られます。コロンビア川は、暮らしのすぐそばにありながら、様々な余暇の選択肢を提供してくれる存在です。
 せっかくこの地に住んでいるのだから、ここでしかできないことに挑戦してみたい。そう思っていたある日、釣り好きの同僚との立ち話の中で、ふと「食べられる魚は釣れるのか?」と尋ねてみた。すると返ってきたのは、「そこのコロンビア川ならサーモンが釣れるよ」という意外な答えだった。コロンビア川は太平洋から遡上してくるサーモンの川としても有名らしい。自分でも(うまくやれば)釣ることができるとは思っていませんでした。
 話を聞けば、釣りを始めるには必要なライセンスを取得しなければならないようです。魚釣りのための基本ライセンスに加えて、サーモン釣りのための追加ライセンス。まずはその準備にとりかかろう。そして次は道具。ロッド、リール、ライン、ルアー・・・考え始めると必要なものはいろいろありそうですが、それもまた新しい趣味を始める楽しみの一つで、小学生のころにバス釣りに熱心になっていたこともふと思い出します。
 広大なコロンビア川の流れを眺めながら、自分の竿にサーモンが掛かる瞬間を想像・・・果たして本当に釣れるのか、それとも自然の厳しさを釣りでも思い知ることになるのか。
ライセンスよし。道具よし。
いざゆかん、コロンビア川へ。

 こんなのが釣れるらしいです。
(引用:TRI-CITY GUIDE SERVICEのHPより)

以上

令和8年7月27日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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