海外粗飼料情勢
輸入粗飼料情勢 / 令和8年8月号
はじめに
熊本での地震および千葉での豪雨災害により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。被災地の一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。
ここワシントン州においても、天災とは決して無縁ではありません。今年は山火事の発生件数や規模が例年を上回っており、連日のようにニュースで大きく報じられています。山火事による被害は、住宅や建物の焼失、煙に含まれる微小粒子による健康被害、大気汚染など多岐にわたります。さらに、本地域の主要産業である農業にもさまざまな影響を及ぼしています。今月は、山火事が農業に与える影響について触れてみたいと思います。
コロンビアベースン地域においては、山火事による直接的な被害よりも、広範囲に発生する煙の影響が懸念されます。煙によって日照量が低下すると、作物の光合成が阻害され、生育に影響を及ぼす可能性があります。現在、アルファルファは3番刈りから4番刈りの時期を迎えていますが、生育の遅れや乾燥不良による品質低下が懸念されています。
また、山火事の発生地域では放牧地や牧草地が焼失するケースも見られます。その結果、国内での飼料需要が高まり、本来輸出向けであった牧草が国内市場へ振り向けられる動きが生じています。こうした需給の逼迫により、圃場段階での牧草価格にも上昇圧力がかかっており、生産者や輸出業者にとって注視すべき状況となっています。
2026年のワシントン州での山火事は例年より早い時期から活発化しました。2025年の火災の増加は主に8月後半から9月にかけて発生し、ワシントン州天然資源局によると、焼失面積は89,168エーカーでした。一方、2026年は7月の時点で民間集計(WildfireTrackers.com)によると火災発生件数は前年同期比で約2倍、焼失面積は4倍以上のペースで推移しています。このように、2026年のワシントン州の山火事は、2025年と比較して発生時期が早く、火災規模および焼失面積ともに大幅に拡大しており、農業や地域経済への影響も例年以上に大きくなっています。
1. 米国産アルファルファヘイ
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- カリフォルニア州南部
- 2026年7月時点の栽培面積は155,594エーカーで前年よりも7%増加しています。
現在は5番刈および6番刈が実施されています。高温乾燥が続くこの時期に生産されるアルファルファは中級品から低級品が中心です。
当地でのアルファルファ圃場の多くはこれまでお伝えしてまいりましたDIPプログラムに参加しています。そのため、栽培面積と生産量が比例しないことに留意しなければなりません。西海岸全体では、干ばつ(アイダホ州、ユタ州、ネバダ州)、チモシーへの作付けシフト(ワシントン州)により生産量は大幅に減少しています。そのため、各産地でのアルファルファ価格は日々値上がりを続けています。
一方、輸出需要の中心である中国および中東勢の購買は積極的です。特に需給逼迫が現実的に感じ取られてきた7月からの動きは積極的です。
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- ワシントン州コロンビア盆地
- 南部および中央地域では3番刈の収穫が8月7日時点で約半分が終了しています。一方で北部地域ではこれから3番刈が始まろうとしています。
産地での取引価格はここ1か月間は堅調に推移しています。天候は高温乾燥が続き、いくつかの雷雨も発生させています。ワシントン州では報道されているように森林火災が例年よりも発生しており、この要因の一つが雷によるものです。森林火災は8月に入ってからも一部地域で継続しており、牛の放牧地においても同様です。このため、当地畜産農家の需要が強く、ここ1か月で当地の牧草価格を大きく押し上げる結果となっています。
また、森林火災による煙害と天日乾燥への影響は具体的にはまだ見られていません。収穫時期と天日乾燥の時期に、煙が日光を遮る天候となれば、貨物の外観などに影響があるかもしれません。
2. 米国産チモシーヘイ
(1)米国コロンビア盆地
1番刈はほぼ100%完了しています。また、南部地区では7月中旬から2番刈の収穫が始まっております。例年と比較すると茶色に変色した葉の割合がやや多くみられます。先月までにご報告しましたとおり、今年のチモシー圃場では雑草の混入が1番刈で多く見られますが、この傾向は2番刈にも同様にみられます。
(2)エレンズバーグ
取水制限が懸念されていた当地では、引き続き「干ばつ」と位置付けられている状況です。7月の降水量が比較的良好であったため若干の改善をみせています。8月に入った現在では灌漑用水に制限はなされておりませんが、具体的に農業用水の供給停止が発動されるか注目されます。
なお、当地における1番刈はおおよそ終了しています。
(3)アイダホ(天水地域)
当地の1番刈の収穫も完了しました。販売先の決まっていない貨物を有する生産者はまだ見られますが、これらの貨物は早々に完売する見込みのようです。アルファルファ(ワシントン州コロンビアベースン)欄で記載しましたように、放牧地の牧草が森林火災の影響から例年よりも少ない状況で、チモシーも供給力に余裕があるとは言えない状況に今後なる可能性があります。
(4)カナダアルバータ州(天水地区)
7月後半から収穫が始まりました。6月には降雨もあり生育状況は良好です。生産量、品質ともに期待されます。収穫は8月中旬ごろには完了する見込みで、単収は2.7トン~2.8トン/エーカー程度とみられます。近年は干ばつなどの天候不順で生産量が低下していましたが、今年は平年作に戻るとみられます。
(5)カナダアルバータ州(灌漑地区)
当地での1番刈は7月末までにおおよそ完了しています。単収は3トン/エーカー、品質は上級品~中級品が大半を占める良好な仕上がりとなっています。
馬糧用途需要からの引き合いが強いものの、各輸出業者は米国ワシントン州などの相場も睨みながら買い付けを進める動きがあるようで輸出用の取引は今のところ様子見の姿勢が続いています。
2番刈も順調に生育しています。1番刈と2番刈の収穫間隔は50~70日であり、多くの圃場は9月に収穫がなされる予定です。
3.米国産クレイングラス
2026年7月時点の栽培面積は24,977エーカーであり昨年同時期対比+9%です。
7月下旬より3番刈の収穫が始まっています。また、一部の生産者は8月中旬から4番刈に入ります。
これまでの品質は、1番刈は色味は良好であったものの、高温乾燥の天候が続いたことによりやや茎の硬い貨物が特徴的です。一方、2番刈は適度な湿度により柔らかい品質で収穫されています。しかし色味はやや劣るのが特徴と言えます。
圃場での価格は高品質品を中心に堅調に推移してきましたが、中級品の供給力が回復したことから若干軟調になり始めています。
4.米国産バミューダ
2026年7月時点の栽培面積は83,310エーカーとなり前年同時期対比10%の増加となっています。
バミューダ種子・ストローの収穫は6月から8月まで続きます。なお、当地でのバミューダ栽培の80%がこの時期には種子・ストローの収穫を目的にしています。また、残り20%の圃場はヘイとして3番刈を行うか、ヘイも種子・ストローも生産を行わない判断がなされたものになります。
DIPプログラムへの参加、肥料価格の高騰によりバミューダの生産量も栽培面積と比例することなく、減少します。
5. 米国産スーダン
2026年7月時点の栽培面積は20,590エーカーとなり昨年同時期対比14%減少しています。
7月末時点で1番刈りの収穫はおおよそ完了しています。早刈された圃場も多く、上級品から中級品を中心に収穫されています。産地の取引価格は生産者にとって魅力的なものとはなっておらず、現時点で輸出業者への販売を行わず、貨物にタープを掛けて保管し、取引価格が上昇した後に販売することを決めた生産者も中にはいるようです。このような動きはこの地域では珍しく、タープを掛ける追加費用を負担してでも相場の上昇を期待していることがうかがえます。
2番刈の収穫も始まっています。しかしながら、産地での取引価格が生産者にとって魅力的ではないため、作付け面積の約半分のみが2番刈を行われる見込みです。2番刈の品質の特徴は茎が太い中級品が中心になり、色も明るい貨物が収穫されていきます。これら2番刈は8月中旬ごろには完了する見込みで、3番刈まで行う圃場があるかどうかは不透明です。
6. 米国産ライグラス、フェスクストロー
7月20日過ぎに主産地であるウィラメットバレーで散発的な降雨がありました。この影響からペレニアルライグラスの収穫が1週間程度遅れています。最も早く収穫されたペレニアルライグラスストローは8月3週目にエンドファイトテストを完了し出荷できる見込みですが、多くの貨物は8月末もしくは9月初旬ごとになるとみられます。なお、フェスクストローとアニュアルライグラスストローはすでに新穀の出荷は可能な状態になっている貨物があります。
以下の写真は8月3日に撮影されたものですが、前日にベールされたものです。雨の重みとフェスクの自重により、倒れたままになり刈り取りができなかった様子です。
7. 豪州産品目
- (1)オーツヘイ
西豪州:生育は今のところ通常どおりに進んでいますが、単収を平均以上に保つためには降雨が必要な状況です。
南豪州:十分な降雨により生育はかなり順調に進んでいます。また温暖な気候により、今年は収穫の開始が早まる可能性があります。
VIC州:十分な降雨により生育はかなり順調に進んでいます。また温暖な気候により、今年は収穫の開始が早まる可能性があります。
9月は豪州の生産地域全体で例年よりも降雨が少なくなることが示唆されています。VIC州・南豪州は土壌水分をある程度確保できているため、今のところ大きな心配はされていませんが、西豪州の生産地域は土壌水分が不足しているため、単収減少につながる可能性が危惧されています。
- (2)小麦ヘイ/ストロー
豪州全土の小麦作付面積は2019年以降で最小になると予想されています。小麦は肥料を比較的使用する作物ですが、肥料価格は中東情勢を受けて急騰しているため、一部の農家は他作物に移行しております。現時点で小麦の作付面積は前年から12%減少、生産量は前年から26%減少する見込みです。
8. 海上運賃情勢
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- 北米航路
- 中東情勢による燃料価格の上昇により、船会社は引き続き緊急燃料サーチャージを課しています。東海岸積みでパナマ運河を通航するコンテナ船について、段階的に喫水制限がかけられています。これにより、1本船あたりのコンテナ積載量を減らさざるを得ない状況が発生しています。パナマ運河のエルニーニョによる干ばつと本船通航後に閘門に淡水を補充するガトゥン湖の降雨量が少ないことが関係しています。
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- 豪州航路
- 中東情勢による燃料価格の上昇により、船会社は引き続き緊急燃料サーチャージを課しています。豪州発の船舶は混雑しており、また積替港のシンガポールや中国でも積替に時間がかかっているため、日本への貨物の到着が遅れるケースが発生しています。
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- 欧州航路
- 中東情勢による燃料価格の上昇により、船会社は引き続き緊急燃料サーチャージを課しています。一部の船会社は7月にスエズ運河・紅海経由で航海をスタートさせた本船が無事通航できたことから、スエズ運河・紅海経由の航海を定期化することを発表しており、アジア-地中海航路の航海日数の短縮が期待されます。
あとがき
「ドーナツ・ピーチ(Donut Peach)」という名前を初めて耳にしたとき、私はてっきり桃味のドーナツか何かのお菓子だと思っていました。ところが調べてみると、そうではありません。これは実在する桃の品種で、ドーナツのように平たく、中央がくぼんだユニークな形をしていることから、その名で呼ばれています。
普段からコロンビアベースンを車で走ることが多いのですが、道路沿いの無人販売所や農産物スタンドの案内板に「DonutPeach」と書かれているのを時折見ることができます。それまでは特に気にも留めていなかったのですが、ある休日に「一度試してみよう」と思い立ち、購入してみることにしました。
家に持ち帰り、早速ひと口かじってみると、そのおいしさに驚かされました。果肉は白く、とってもジューシー。何より甘みが際立っており、桃特有のやさしい香りと相まって、思わずもう一つ手が伸びます。これまで食べてきた果物の中でも、間違い9なく上位に入るおいしさと言ってよいでしょう。
ワシントン州での主な産地は、ここコロンビアベースンのほか、ヤキマバレー(Yakima Valley)やウェナチー(Wenatchee)などの果樹地帯です。旬は7月から9月にかけてで、最盛期は8月。ちょうど牧草シーズンとも重なる時期です。
地元では比較的よく知られた果物らしいですが、もし牧草シーズンに当地を訪れる機会があれば、ぜひ一度おためしください。見た目の愛らしさだけでなく、その濃厚な甘さとみずみずしさは、きっと印象に残るはずです。日本からの牧草検品出張に加わる「意外な逸品」として、自信を持っておすすめしたい果物です。
以上
令和8年8月17日
全国農業協同組合連合会(JA全農)