海外粗飼料情勢
輸入粗飼料情勢 / 令和8年10月号
はじめに
全農ヘイ(ZHI)の所在地ワシントン州パスコ市では朝晩の冷え込みが増し、コロンビア盆地でも秋の訪れを感じる季節となりました。牧草輸出業界では冬季出荷に向けた準備が進む中、日本向けチモシー輸出においては植物検疫条件の遵守が重要となります。日本向けチモシーは、害虫ヘシアンバエ防除を目的としてホスフィン燻蒸による検疫処理が採用されており、20℃で7日間燻蒸する条件が日米当局間により承認されています。
夏季は外気温が高く、コンテナやベール内部の温度も自然に20℃以上を維持しやすいため、ホスフィンガスの発生や拡散が安定し、燻蒸処理を効率的に実施できます。一方で秋冬期は気温低下の影響を受けやすく、適切な燻蒸温度の確保が重要となります。
そのような中、当社では自社の屋内燻蒸設備を活用し、季節や外気温を問わず、計画的に燻蒸処理を実施できる体制があります。これにより、冬季においても日本向け輸出に必要な検疫条件を安定して満たし、高品質なチモシーを継続的に受渡できることが当社の強みの一つとなっています。
1. 米国産アルファルファヘイ
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- カリフォルニア州南部
- インペリアルバレーでは9月末に降雨があったものの、収穫作業は概ね順調に進行しています。また、2026年9月時点の栽培面積は143,036エーカーで前年よりも4%増加しています。しかしながら、作付面積の増加にもかかわらず産地価格は6月以降上昇基調を維持している状況です。背景は要因として、PNW地域の干ばつによる供給量減少、PNW産全域でのアルファルファ圃場価格の大幅上昇、アジア向け輸出需要の継続、輸出向け高品質品製品の不足、が挙げられます。サウジアラビア向け需要は地政学的要因でやや減速しているものの、輸出市場全体では依然として強い買い意欲が確認されています。
日本の需要にとっては、スポット購入による安値調達は難しい状況が続く見通しです。特に高品質品は供給量そのものが限られているため、年間契約や事前予約の重要性が高まっている状況です。
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- ワシントン州コロンビア盆地
- 10月に入り生産者は2026年産の仕上げ作業を進めています。多くの生産者が9月中に4番および5番刈の収穫を終えましたが、一部では10月上旬現在でまだ収穫作業が続いています。9月に3度の大きな風雨に見舞われたため、この地域特有の「濃い緑色」を保持したアルファルファは例年よりも少なくなっています。降雨による湿気と気温の低下で朝露が増え、アルファルファの色合いにも影響を及ぼしています。見た目の品質は平年をやや下回りましたが、成分分析結果は2番刈や3番刈と比べて良好な数値を示しています。
現時点での見通しでは、来年のコロンビア盆地におけるアルファルファの作付面積は増加すると予想されていますが、その程度を推定するにはまだ時期尚早です。
先月号でも記載したとおり、秋の訪れとともにアルファルファの生産量が限られてくる中、需要の動きは堅調、あるいはやや強含みで推移しています。コロンビア盆地北部およびエレンズバーグの輸出業者は、買付価格を上乗せし原料集荷を進めています。
オレゴン州東部では引き続きPNW域内で最高値圏でアルファルファが取引されており、州外の購買者が従来の調達地域での不足分を補うために同地から購買を行っています。また、いくつかの大手輸出業者らは、シーズン序盤の購買遅れを取り返すべく、現時点においても積極的な購買を見せているなど需要が依然として強い状態にあります。
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- クラマスフォールズ
- 同地区では4番刈の収穫が進んでおりますが、9月中旬の降雨によって3番刈の約15%と4番草の一部に品質被害が発生しています。
もともと米国内需が強かったため、圃場価格は非常に高水準で推移しています。日本向けへの影響として、これまで日本向け輸出の主要産地の一つとして位置付けられてきましたたが、輸出数量の減少、高価格化、品質リスク増加、という三重苦の状況となっています。輸出向け調達先としての優先順位はやや低下しているのが実態です。
2. チモシーヘイ
(1)ワシントン州コロンビア盆地
チモシーの主要な生産地域では収穫作業が完了しました。
コロンビア盆地では、2027年産の作付面積は減少すると見込まれています。現時点での予測では3~5%の減少が見込まれていますが、まだ時期尚早であり、10月中にいくつかの生産者の圃場で追加でチモシーが播種される可能性もあります。
(2)エレンズバーグ
来シーズンの作付面積は2026年と同水準と予想されていますが、懸念されるのは水不足の問題です。取水制限が発表・実施されるのは2025年、2026年と2年連続となりました。水不足の懸念が引き続き継続するとした場合、収穫量へ与える影響は今から心配されます。
(3)アイダホ(天水地域)
今夏の間、在庫として積み上げられていたチモシーは、その後、買い手がつき徐々に搬出されている模様です。最近の状況を見る限り、残っている在庫はごくわずかです。また、同地域の圃場では、6年以上チモシー圃場を更新せず収穫した圃場が多くなっている状況です。それにともない、雑草が混じり、生育の衰えた圃場もあるため、生産者は来シーズンに向けて、圃場の更新を行っていきます。これは、チモシーの作付面積が大幅に減少することを意味しています。
(4)カナダアルバータ州(天水地区)
天水地区では今年度産チモシーの品質と収量が良好な年となりました。特にクレモナ地区を中心とした輸出向けチモシーは旺盛な需要を背景に販売が進み、10月初旬時点で追加販売できる数量は限定的となっている模様です。特に輸出向けの上級品は大部分が完売となっており、今後は追加手当が難しくなる可能性があるようです。そのため、価格も底堅く推移しています。
(5)カナダアルバータ州(灌漑地区)
9月の同地区は、夏の暑さから一転して不安定な天候となりました。9月初旬は高温が続いたものの、その後はまとまった降雨に見舞われました。この影響により、2番刈りチモシーの収穫作業は大幅に遅れました。
雨の後は気温が回復しましたが、高い湿度、朝露、日照時間の短縮によって牧草の乾燥作業は難航しました。特に2番刈りチモシーは収穫からベールまでに例年以上の時間を要し、生産者は品質維持に苦慮しています。
3.米国産クレイングラス
2026年9月時点の栽培面積は27,010エーカーであり昨年同時期対比+13%です。これは過去最高水準です。
大部分の圃場は現在DIP(節水プログラム)の対象となっており、本格的な収穫は10月から11月にかけて実施される見込みです。
品質はおおむね中級品から低級品が見通されており、上級品質を除いて輸出向け数量は問題なく確保される見込みです。
4.米国産バミューダ
2026年9月時点の栽培面積は89,468エーカーとなり前年同時期対比4%の増加となっています。
バミューダヘイは2026年も馬糧用途をはじめとした米国内需要が非常に強く、輸出向けよりも国内販売が優先される傾向が引き続きみられています。作付面積は過去最高を更新しましたが、収穫後に灌漑せずDIPに入った圃場も多く、2027年以降の供給見通しには不確実性が残ります。生産者が、採種圃場へ戻るのか、ヘイ生産へ戻るのか、が現時点で見通すことは難しく、来シーズンの供給量には注視が必要です。特にバミューダストローは米国内フィードロット需要との競合が強く、輸出向け供給量の確保をする時期に注意を払いたいところです。
5. 米国産スーダン
2026年9月時点の栽培面積は9,465エーカーとなり昨年同時期対比39%減少しています。収穫はほぼ終了しており、輸出向け3番刈はほとんど存在しない状況となっています。
スーダンは比較的水利用量が多い作物であることから、今後予定されるコロラド川関連の節水政策の影響を受けやすい品目です。そのため、産地では今後さらに作付面積が減少するのではないか、との見方も広がっています。
日本向け輸出量もさらに減少する可能性があるため、中長期的なスーダングラスから代替イネ科牧草への検討が必要なのかもしれません。
6. 米国産ライグラス、フェスクストロー
2026年のオレゴン産ストローの収穫作業は、8月中旬に完了しています。
現在は主要輸出先である日本、韓国での需要動向に注目が集まります。まず、韓国における需要の動向について、同国での稲刈りシーズンを迎えるとともに状況が注視されます。10月中には作柄の詳細が判明するとともに、輸入ストロー類の需要動向も見えてくるものと思われます。
日本向けの輸出に関しては、需要が本格的に変化するような動きは、今のところなく、安定した出荷が続いています。
一方で、ウィラメットバレーにおけるこれら主要2品目の作付時期について、ペレニアルライグラスは通常秋に、フェスクは通常春に播種されるのが一般的です。ただし、フェスクであっても、夏の終わりや秋の早い段階で圃場が確保でき、冬を越せるだけの生育期間が確保できる場合は、秋に播種されることもあります。ここ数ヶ月、当地では乾燥した天候が続いているため、1年目のペレニアルライグラス圃場での発芽が順調に見られるかどうかが注目されます。2027年産の作付面積に関する詳細は2027年1月頃になる見込みです。
7. 豪州産品目
西豪州:7~8月上旬の降雨不足により、単収が平年を下回る地域がありそうです。8月下旬には一部の地域で降雨がありましたが、収量の改善には至りませんでした。刈取して圃場乾燥している牧草の一部は少し雨に当たっています。ベーリングされたオーツヘイは中間~上位グレードです。今年は例年よりも雨が少なかったため、成分分析結果は良いです。
南豪州:十分な降雨により生育はかなり順調に進んでいます。牧草・ストローは健康的で青々としています。高単収のため、ベーリングには少し時間がかかる可能性があります。収穫時期の天候に恵まれれば、中間~上位の発生が期待できます。
VIC州:降水量が平年を上回る状態が続きました。直近でもかなり雨が降ったため、刈取が少し遅れています。早撒きのオーツヘイは平均以上の単収が期待できますが、軸太になることで高品質品の割合が減り、さらに乾燥させる時間を要することが考えられます。遅撒きの作物は早撒きより比較的単収は減りますが、高品質品の発生が期待できます。
ABARES(豪州農業資源経済科学局)の9月の報告によると、豪州全体の小麦の生産量は29,881千トンになる見通しです。前回6月の報告では26,742千トンであったため、12%上方修正されました。適時の降雨を受け、生育地域で作柄改善がされたことが要因と考えられます。昨年度の生産量と比較すると、17%減少していますが、10年平均対比では3%上回る見通しです。
8. 海上運賃情勢
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- 北米航路
- 西海岸積みについて、ポートランド港でヤード運営やコンテナ輸送の事業を行っていたNWCSが8月下旬に事業を停止するという通知を行いました。この影響で各船会社は別業者へ切替を図っていますが、一部の船会社では輸出コンテナを一時的に停止し、代替策を模索しています。
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- 豪州航路
- 本船スケジュールの変更により積替港での遅れが発生しています。また豪州の船積も満杯な状況であり、即積みオーダーは受け付けにくい状況となっています。本船によっては空コンテナをアジアに輸送しているようです。
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- 欧州航路
- 航海日数の短縮が船会社間の競争の中では重要とされており、複数の船会社は喜望峰経由からスエズ運河経由のルートへの切替を加速させています。とある調査会社はスエズ運河回帰が従来想定よりも早まっていると分析しており、2027年2月には紅海情勢悪化前の80%まで回復すると予測しています。
あとがき
今、何かと話題の「じゃがいも」について触れてみたいと思います。
ちょうど今(10月中旬)、コロンビア盆地を代表する農産物の一つであるジャガイモは収穫の最盛期を終えようとしています。牧草と同様、大量に収穫されたジャガイモが次々と大型トラックで貯蔵施設へ運び込まれる光景は圧巻で、この地域の農業のスケールの大きさをあらためて実感させます。
コロンビア盆地は世界最高水準の単収を誇るジャガイモ生産地として知られ、ワシントン州のジャガイモ産業を支える中心地域と言えます。生産量ではアイダホ州が全米第1位、ワシントン州が第2位ですが、ワシントン州は冷凍フライドポテトをはじめとする加工品の輸出において世界有数の産地です。実際、冷凍フライドポテトはワシントン州最大の農産物輸出品目であり、日本もその主要な輸出先の一つとなっています。私たちが日本で口にするフライドポテトの約7割は、コロンビア盆地で収穫されたジャガイモが原料になっているとも言われています。
一方で、日本における米国産生鮮ジャガイモの輸入解禁に向けた当局間協議の動向にも注目しています。コロンビア盆地の農業に携わる者として、病害虫対策や検疫条件、消毒・燻蒸手順などが今後どのように整理されていくのか関心を持って見守っています。・・・が、細かいことはさておき、日米両国間の協議結果が将来の日本人にとって最善の結論となることを願っています。
以上
令和8年10月15日
全国農業協同組合連合会(JA全農)