相場情報
食鳥情勢(令和7年6月)
生産動向
生産・処理動向調査((一社)日本食鳥協会令和7年5月末実施)によると、4月の推計実績は処理羽数66,450千羽(前年比103.8%)、処理重量199.4千トン(同101.2%)となった。処理羽数が前月時点の計画値から1.5%の上方修正となった。同調査によると「4月は全体的に堅調、3月は生産成績が落ち込んだという報告が多かった。寒さの影響による増体不良で、農場によって成績のばらつきが大きく、商品化率の低下や工場廃棄が増加した。」と報告されている。また、5月は前月時点の予測よりも処理羽数が0.1%下方修正、処理重量は0.2%上方修正の見通しである。6月は処理羽数、処理重量ともに前月予測から下方修正され、処理羽数は前年同月比1.5%増、処理重量は同8.4%減の見込みとなっている。7月は処理羽数前年同月比1.1%減、処理重量は同2.0%減の予測。工場の人員不足については外国人技能実習生が都市部への就業に集中しており働き手の足りない産地が多いと報告されている。また、従業員の高齢化もあり人員確保が難しくなっているとの声も聞かれる。副産品(小肉・剣状軟骨など)や機械で加工することが難しい手羽中半割といった加工品の調整を行っている産地もあり、この傾向はしばらく続くと思われる。

輸入動向
財務省の貿易統計によると、令和7年4月の鶏肉(原料肉)の輸入量は前月から+5.4千トンの47.7千トン、国別ではブラジルが前月+4.0千トンの30.3千トン、タイが+1.2千トンの16.8千トンとなった。(独)農畜産業振興機構(ALIC)によると今後の見通しでは、輸入量は5月が44.5千トン(前年比83.6%)と減少するも、6月は49.9千トン(同101.1%)と増加していく予測である。要因としては「5月はブラジル産現地価格が高止まりしていることなどを受けて、輸入量の減少が見込まれること等から、前年同月を大幅に下回る一方、6月はブラジル産の堅調な生産及び輸出を背景に、前年同月をわずかに上回ると予測する。なお、3カ月平均では、前年同期をかなりの程度下回ると予測する。」と報告されている。
鶏肉調整品の輸入量は前月から▲0.2千トンの43.3千トンと前月並み。国別では中国が+0.2千トンの16.9千トン、タイが▲0.9千トンの25.0千トンとなった。国内の働き手不足やコロナ禍が明けた影響による外食筋の回復、共働き世帯の増加に伴い中食・総菜向け等の引き合いも継続している。
(株)食品産業新聞社発行の畜産日報によると、4月の輸入鶏肉(モモ肉)の価格はブラジル産で450円/kgから480円/kg(前年加重価格390円/kg)、タイ産が480円/kg(同400円/kg)となっている。2025年5月16日、ブラジル南部リオグランデ・ド・スル州モンテネグロ市の商業用養鶏場において、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生が確認された。ブラジル国内での商業養鶏場におけるHPAI確認は初の事例となる。ブラジル農牧食料供給省(MAPA)は、直ちに当該施設の隔離、飼育鶏の殺処分、防疫措置を実施し、感染拡大の封じ込めを図っている。ブラジルの主な輸出先である中国やEU諸国は、ブラジル全土から一時的に全面停止する措置を発表した。しかし、日本は発生が限定的であることから発生州以外からの輸入は継続している。これ以上感染拡大がない場合は、日本国内のブラジル産の価格には大きな影響はないと予測する。

消費動向
家計
総務省統計局発表の家計調査報告(全国・二人以上の世帯1世帯あたり)によると、令和7年4月の生鮮肉消費(購入)は数量4,184g(前年比101.1%)、金額6,695円(同105.3%)と、数量・金額ともに前年を上回った。鶏肉は数量1,549g(同102.7%)・金額1,630円(同105.9%)・単価105.2円/100g(前年同月+3.2円)と、数量・金額・単価ともに前年を上回った。また、牛肉は数量は前年を下回ったが、金額は前年を上回る結果となった。輸入牛肉の価格高騰により、数量は前年を下回ったが金額が前年を上回る結果となったのではないかと考える。豚肉は前月に引き続き為替による高値基調により、金額は前月を上回った。調理食品は共働き世帯の増加に伴う需要は底堅いようだ。外食においては、ほぼコロナ禍前の水準程度まで回復したものの、統計外となるインバウンドによる集客もあることからエリア・業態によって濃淡があるようだ。
量販
一般社団法人全国スーパーマーケット協会の販売統計調査によると、令和7年4月の食品売上高は全店ベースで前年比105.6%と前年を上回り、生鮮3部門の売上高は全店ベースで同103.2%、既存店ベースは同101.6%。畜産部門の売上高は約1,228億円で全店ベース同103.9%、既存店ベース同102.2%となった。また同社が取りまとめたスーパーマーケット景気動向調査によると、「引き続き全般的な相場高が継続、豚肉・鶏肉への需要シフトが続くものの前年比では改善傾向がみられた。牛肉は引き続き厳しい状況が続くが、価格が抑えられる切り落としや小間切れなどが堅調に推移。一部からは週末の焼肉ニーズ、入学式などハレの日関連の販売が好調とのコメントもみられた。豚肉は国産豚の価格上昇もあり、前年不振となった輸入豚が好調となった。鶏肉は価格高騰傾向がみられ、伸び悩んだ店舗が多い。味付け肉や冷凍加工品などが、値ごろ感と簡便性で需要が高まっているとのコメントが多くみられた。」と報告されている。

加工筋
日本ハム・ソーセージ工業協同組合調べによると令和7年4月度の鶏肉加工品仕向肉量は、前年比98.5%の5.1千トンとなった。うち国内品は同100.1%の4.3千トン、輸入品については同91.4%の0.9千トンとどちらも前年を下回った。
在庫状況
(独)農畜産業振興機構(ALIC)の4月末時点推定期末在庫では国産25.0千トン(前年比70.3%)、輸入品127.4千トン(同100.3%)と合計で152.4千トン(同93.8%)となった。
(独)農畜産業振興機構(ALIC)が発表した鶏肉需給表では、4月の出回り量は国産149.3千トン(前年比101.1%・前月差+2.8千トン)、輸入品51.5千トン(同95.3%・同+1.2千トン)の合計200.9千トン(同99.5%・同+4.2千トン)となり、前月からは国産・輸入ともに出回り量は増加した。4月以降の生産量については直近3カ月平均(4~6月)では前年同月をわずかに上回る予測。輸入量はブラジル産の価格が高止まりしていることから、5月は前年同月をわずかに下回る見込み。6月はブラジル産の堅調な生産及び輸出を背景に、前年同月をわずかに上回ると予測。このことから、期末在庫の部分では5月・6月で減少することが予測される。

鶏卵情勢(令和7年6月)
生産動向
4月の餌付け羽数は、全国で8,350千羽(前年同月比102.3%)と前年を上回った。エリア別では東日本が前年比104.1%、西日本は前年比100.2%と各エリアとも4カ月連続で前年を上回った。



消費動向
家計消費

業務・加工動向
4月の外食全体の売上高は前年同月比106.0%となった。春休みや桜シーズン、大型連休による家族需要、インバウンドが好材料となったが、物価高によるメニュー価格改定による客単価上昇も売上高を牽引した。
4月の訪日外客数は3,908,900人(前年同月比128.5%)となった。過去最高であった2025年1月の3,781,629人を大きく上回り単月過去最高を記録した。4月は先月同様に行楽訪日需要が高まったことや、一部のアジア・欧米豪市場ではイースター休暇に合わせて海外旅行需要が増加したこと等が押し上げ要因となった。



輸入・輸出動向
2025年4月の鶏卵類輸入通関実績は2,644トン(前年同月比136.2%)と前年同月を上回った。4月も高病原性鳥インフルエンザ発生時のリスクヘッジの観点から、一定程度国外調達が継続していると考えられる。
同月の殻付き卵輸出実績は、前月に続き国内における需給逼迫の影響もあり1,506トン(前年同月76.4%)と前年を下回った。また、鶏卵輸出の主要相手国に新たにパラオが追加となった。


価格動向
今後について、供給面は6月から7月にかけて稼働羽数が減少していくことが予想され、産地在庫は低位のまま推移することが考えられる。需要面において、梅雨時期に突入に伴い購買意欲の低下が考えられるが、一方で加工筋では引き続き在庫確保へ向けて集荷が続き、引き合いが強いまま推移することが予想される。
以上のことから、今後の鶏卵相場は横ばいの推移となることが考えられる。

その他
(1)鶏卵生産者経営安定対策事業加入者の販売実績数量

(2)鶏卵基金標準取引価格と補填単価

(3)2024年度鳥インフルエンザ発生状況について
3月21日時点で14道県、51事例の発生(採卵鶏約932万羽)。
(北海道、岩手県、宮城県、埼玉県、千葉県、茨城県、新潟県、愛知県、岐阜県、島根県、香川県、愛媛県、宮崎県、鹿児島県)
②野鳥での発生状況
5月30日時点で19道県、226事例の発生。
(北海道、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、福島県、新潟県、埼玉県、千葉県、長野県、福井県、愛知県、滋賀県、鳥取県、徳島県、高知県、福岡県、熊本県、鹿児島県)