食鳥情勢(令和5年5月)
生産動向
生産・処理動向調査((一社)日本食鳥協会令和5年3月末実施)によると、3月の推計実績は処理羽数64,760千羽(前年比99.1%)、処理重量197.2千トン(同100.2%)となった。前月時点の計画値より処理羽数は0.6%の下方修正、処理重量は、0.6%上方修正された。寒さが和らいだことで鶏舎の環境が安定し、大腸菌症が減少。増体も比較的順調になっている模様。
4月の計画は処理羽数、処理重量とも前年をわずかに下回る見通しとなっている。地区別で見ると処理羽数、処理重量とも関東地区、北部九州地区で前年を上回る見通しであり、北海道・東北地区、中部地区、近畿・中国・四国地区、南九州地区は前年を下回る見通しである。鳥インフルエンザの発生は、4月は2例と発生を抑えられているが、前年は5月まで発生しており、今後も予断を許さない状況である。工場の人員不足は引き続き厳しい状況が続いており、加工品(切り身・手羽中二ツ割・砂肝スライス等)や副産品(小肉・ハラミ等)の調整は続くと思われる。

輸入動向
財務省4月27日公表の貿易統計によると令和5年3月の鶏肉(原料肉)の輸入量は前月から+0.4千トンの47.5千トンで、国別ではブラジル・タイ共に前月並みとなっている。前年同月の実績に対しては+2.4千トンとなった。タイ産の輸入量がほぼ完全に回復し、ブラジル産・米国産共に安定した数量となっている。(独)農畜産業振興機構(ALIC)による今後の見通しでは、4月が41.8千トン(前年比95.9%)、5月が48.8千トン(前年比114.9%)となっている。4月は前月に比べ減少が予想される。ブラジル産の現地価格は高止まり傾向ととなっており、先物のオファーにおいては高値の話が聞こえている。今後の国内価格市場へどのような影響が起きるか注視していきたい。需要としては国産もも肉の価格が徐々に下降傾向となっており、今後の需要は落ち着いていくことが予想される。タイ産は引き続き安定した入荷が予想されるが、現地価格は上昇傾向となっており、国産ムネ肉への影響が考えられる。
鶏肉調整品の輸入量は前月から+8.5千トンの40.6千トンで、国別では中国が+5.7千トン、タイが+2.9千トンとなった。前年同月の実績に対しては▲7.2千トンとなり、前月比は上回ったが前年比は下回る結果となった。タイの生産は回復し3月実績は増加となった。令和4年4月~令和5年3月累計では前年比100.8%となっている。価格については依然として高騰しており、上昇傾向が予想される。外食についてはコロナ前に回復しつつあり、中食・総菜向け等の引き合いも継続して強い状況である。
財務省が4月27日に公表した貿易統計によると3月の輸入鶏肉(解体品)の価格は前年同月より2.0%上昇し、鶏肉調整品は前年同月より18.3%上昇した。国別ではブラジル産の価格が274円/kg(前月比10円安)、タイ産が347円/kg(同9円高)となっている(国別平均価格)。前年比では上昇傾向の状況である。ブラジル産は3月実績では下げ基調となっているものの、国内市場価格は高止まり感が出ている。先物については強気の価格が提示されているとの話が聞こえており、為替の影響もあるが上昇傾向となることが予想される。タイ産についても現地価格が上げ基調になっているとの話が聞こえており、今後の国産鶏肉への影響を注視したい。

消費動向
家計
総務省統計局発表の家計調査報告(全国・二人以上の世帯1世帯あたり)によると、令和5年3月の生鮮肉消費(購入)は数量4,200g(前年比95.0%)、金額6,352円(同100.1%)と、数量は前年を下回り、金額は前年を上回った。鶏肉は数量1,497g(同96.6%)・金額1,511円(同105.0%)・単価100.9円/100g(前年同月+8.1円)と、数量は前年を下回り、金額・単価とも前年を上回る結果となった。調理食品が金額12,131円(同103.3%)、外食が14,758円(同131.9%)となっている。あらゆる商品の値上げが相次ぐ中、相場高騰により鶏肉の店頭売価も上がり、買い控えが進んだと思われる。外食においては、行動制限もなく、加えて入国規制緩和による外国人旅行客によるインバウンド需要もあり、コロナ前に戻りつつあると考えられる。
量販
食品関連スーパー3団体の販売統計速報によると、令和5年3月の食品売上高は全店ベースで前年比102.1%と前年を上回った。生鮮3部門の売上高は全店ベースで同99.2%、既存店ベースは同98.2%となった。また、畜産部門の売上高は約1,138.8億円で全店ベース同102.1%、既存店ベース同101.5%となった。一般社団法人全国スーパーマーケット協会によると、前年に比べ、高めの気温、行楽需要や花見需要が回復した恩恵が加わったが、食品価格の高止まり傾向が続くなか、依然として買上点数の減少は続いている。外出機会の増加による家庭内消費需要の減少と節約志向による内食・中食需要の拡大という、読みにくい消費環境が続いているとのこと。畜産部門においては、精肉全般で相場高が続いており、買上点数の減少が続いていたが、豚肉・鶏肉ではやや回復傾向がみられた。牛肉では焼肉用の動きがよいが、和牛など高単価商品の動きが鈍い。低価格商品に需要がシフトしており、売上高は確保できても利益が取れない状況が続いているとのこと。

加工筋
日本ハム・ソーセージ工業協同組合調べによると令和5年3月度の鶏肉加工品仕向肉量は、前年比100.5%の4.7千トンとなった。うち国内品は同97.3%の3.7千トンと前年を下回り、輸入品については同114.0%の1.0千トンと前年を上回った。
在庫状況
(独)農畜産業振興機構(ALIC)の推計期末在庫では国産27.0千トン(前年比83.2%・前月差+2.0千トン)、輸入品126.9千トン(同101.4%・同▲1.2千トン)と合計で153.9千トン(同97.6%・同+0.8千トン)となった。
(独)農畜産業振興機構(ALIC)が発表した鶏肉需給表では、3月の出回り量は国産141.0千トン(前年比97.0%・前月差+7.9千トン)、輸入品48.8千トン(同99.1%・同+4.2千トン)と合計で189.8千トン(同97.6%・同+12.1千トン)となった。4月以降の国産在庫については、物価上昇に伴う家計防衛意識の高まりで消費が減衰している影響で、増加していくと予測する。輸入鶏肉については(独)農畜産業振興機構(ALIC)の予測では、入荷量は、4月はブラジル産の輸入量が減少し前年同月を下回る予測となっているものの、5月についてはタイ産が新型コロナウイルス感染拡大による作業員不足が解消され、回復基調にあることから、前年を同月を上回ると予測されている。
