食鳥情勢(令和5年11月)
生産動向
生産・処理動向調査((一社)日本食鳥協会令和5年9月末実施)によると、9月の推計実績は処理羽数60,740千羽(前年比102.1%)、処理重量176.6千トン(同100.2%)となった。前月時点の計画値より処理羽数は0.1%下方修正、処理重量は1.8%下方修正された。9月も引き続き気温が高い日が続いたため、昨年よりも出荷体重が低かったとみられる。昨年のような台風被害もなく、育成は比較的順調であったが、暑さの影響で内臓類の質が悪く廃棄が多かったとのこと。
10月の計画は処理羽数、処理重量とも前年並みの見通しとなっている。処理羽数は中部地区と南九州地区で前年を下回る予想となっており、処理重量は関東地区・中部地区・南九州地区が前年を下回る予想となっている。10月に入り、北海道・東北地区で野鳥より鳥インフルエンザの発生が報告されている。今後、家きんへの拡大が懸念される。工場の人員不足は技能実習生が来日するようになったことで、少しづつ解消されており、加工品(切り身・手羽中二ツ割・砂肝スライス等)や副産品(小肉・ハラミ等)の生産は徐々に回復していくと思われる。

輸入動向
財務省10月27日公表の貿易統計によると令和5年9月の鶏肉(原料肉)の輸入量は前月から▲7.6千トンの48.4千トンで、国別ではブラジルが前月▲10.6千トンの31.3千トンでタイが+2.8トンの15.5千トンとなり、ブラジルは前月より減少しタイは増加となった。前年同月の実績に対しては+1.6千トンとなった。(独)農畜産業振興機構(ALIC)による今後の見通しでは、鳥インフルエンザによる輸入停止措置の影響によりブラジルからの輸入量減少が11月まで見込まれるため、10月が43.5千トン(前年比80.7%)、11月は39.3千トン(前年比78.9%)となっている。ただし、ブラジル産の国内在庫は前年より増加傾向となっており、12月には輸入量も回復することが予想されるため、年内は潤沢な状況が続くと思われる。タイ産についても引き続き安定した輸入量が予想される。今後の国産鶏肉への影響を注視したい。
鶏肉調整品の輸入量は前月から+0.4千トンの40.8千トンで、国別では中国が+0.5千トン、タイが▲0.2千トンとなった。前年同月の実績に対しては▲3.5千トンとなり、前月比は上回ったが前年比は下回る結果となった。タイの生産は引き続き安定しており、9月実績は増加となった。価格については依然として高騰しており、上昇傾向が予想される。外食についてはインバウンド需要等で回復しつつあり、中食・総菜向け等の引き合いも継続して強い状況である。
財務省が10月27日に公表した貿易統計によると9月の輸入鶏肉(解体品)の価格は前年同月より17.6%下降し、鶏肉調整品は前年同月より2.1%上昇した。国別ではブラジル産の価格が321円/kg(前月比14円下げ)、タイ産が405円/kg(同8円高)となっている(国別平均価格)。前年比ではブラジルが下降し、タイが上昇した状況である。ブラジル産は一時輸入停止措置が解除された影響もあり、9月実績は下げ基調となっており、国内市場価格も下降傾向となっている。タイ産についても国内市場価格は下げ基調になっており、今後の国産鶏肉への影響を注視したい。

消費動向
家計
総務省統計局発表の家計調査報告(全国・二人以上の世帯1世帯あたり)によると、令和5年9月の生鮮肉消費(購入)は数量4,049g(前年比94.0%)、金額6,275円(同99.9%)と、数量・金額とも前年を下回った。鶏肉は数量1,424g(同95.4%)・金額1,487円(同107.3%)・単価104.4円/100g(前年同月+11.5円)と、数量のみ前年を下回る結果となった。調理食品が金額12,278円(同106.1%)、外食が13,148円(同110.0%)となっている。生鮮品の購入量は相場高騰の影響を受け牛・豚・鶏とも前年を下回る結果となった。調理食品においては光熱費の高騰や猛暑による調理敬遠が働き順調に推移している。外食においては、イベント開催の回復や、入国規制緩和による外国人旅行客によるインバウンド需要もあり、コロナ前に戻りつつあると考えられる。
量販
食品関連スーパー3団体の販売統計速報によると、令和5年9月の食品売上高は全店ベースで前年比105.8%と前年を上回った。生鮮3部門の売上高は全店ベースで同104.5%、既存店ベースは同103.9%となった。また、畜産部門の売上高は約1,110.4億円で全店ベース同100.7%、既存店ベース同100.9%となった。一般社団法人全国スーパーマーケット協会によると、9月は厳しい残暑が続いたため、涼味商材の好調の日配や、イベント需要も回復し、光熱費の高騰や猛暑による調理敬遠を追い風に総菜部門が引き続き好調であったとのこと。畜産部門においては、精肉全般で相場高傾向のなか、牛肉から豚肉・鶏肉に需要がシフトしてきている。牛肉では、週末の販売は好調であるが、その他の時期は苦戦している。豚肉は国産が高騰しており、輸入品を中心に安価な小間切れ・挽肉が好調。相場の安定している鶏肉では値ごろなムネ肉が好調。ハムやソーセージなどの加工品は値上げの影響で不振。低価格商品に需要がシフトしており、売上高は確保できても利益が取れない状況が続いているとのこと。

加工筋
日本ハム・ソーセージ工業協同組合調べによると令和5年9月度の鶏肉加工品仕向肉量は、前年比106.6%の4.7千トンとなった。うち国内品は同92.5%の3.5千トンと前年を下回り、輸入品については同190.8%の1.2千トンと前年を上回った。
在庫状況
(独)農畜産業振興機構(ALIC)の推定期末在庫では国産30.0千トン(前年比116.3%・前月差▲2.0千トン)、輸入品132.5千トン(同109.3%・同▲0.8千トン)と合計で162.5千トン(同110.5%・同▲2.8千トン)となった。
(独)農畜産業振興機構(ALIC)が発表した鶏肉需給表では、9月の出回り量は国産137.5千トン(前年比99.5%・前月差+5.4千トン)、輸入品49.2千トン(同105.2%・同▲3.0千トン)と合計で186.7千トン(同100.9%・同+2.4千トン)となった。10月以降の国産在庫については、夏場、凍結に回ったモモ肉の在庫が多いことや年末特殊品の在庫等により前年を上回ると予測する。輸入鶏肉については(独)農畜産業振興機構(ALIC)の予測では、入荷量は、ブラジルのサンタカタリーナ州において鳥インフルエンザが発生した影響により輸入量が減少することから、10月、11月は大幅に前年を下回ると予測されている。出回り量は前年をわずかに上回る予測であるが、9月末の国産品・輸入品の在庫が多かったことから、10月の期末在庫は前年同月をやや上回り、11月はわずかに下回ると予測する。
