相場情報
食鳥情勢(令和7年12月)
生産動向
生産・処理動向調査((一社)日本食鳥協会令和7年11月末実施)によると、10月の推計実績は処理羽数65,293千羽(前年比101.1%)、処理重量197.8千トン(同101.6%)となった。11月は処理羽数が前年同月比98.5%、処理重量は同97.3%の見通し。12月は処理羽数が前年同月比100.7%、処理重量は99.0%の見込みとなっている。また、2026年1月は処理羽数前年同月比2.6%、処理重量は0.4%それぞれ増加の予測となっている。工場の人員については引き続き不足が課題となっている中、副産品(小肉・剣状軟骨など)・手羽中半割等の1.5次加工品は機械を導入し製造している産地が引き続き見られ、今後他産地にも広がっていくと予想される。
輸入動向
財務省の貿易統計によると、令和7年10月の鶏肉(原料肉)の輸入量は前月から▲0.5千トンの57.3千トン、国別ではブラジルが前月▲2.4千トンの41.1千トン、タイが+2.4千トンの15.7千トンとなった。(独)農畜産業振興機構(ALIC)によると今後の見通しは、輸入量は11月は49.8千トン(前年比95.7%)、12月は47.0千トン(同94.0%)と11月・12月ともに減少する予測である。要因としては「輸入量は、主要輸入先であるブラジルやタイにおいて、労働者不足等により生産量が減少した影響を受けて、11月はやや、12月はかなりの程度、いずれも前年同月を下回ると予測する。なお、3カ月平均でも、前年同期をかなりの程度下回ると予測する。」とされている。
令和7年10月の鶏肉調整品の輸入量は前月から+4.0千トンの49.0千トン、国別では中国が+1.0千トンの18.3千トン、タイが+3.1千トンの29.8千トンとなった。
(株)食品産業新聞社発行の畜産日報によると、10月の輸入鶏肉(モモ肉)の価格はブラジル産で460円/kgから480円/kg(前年390円/kg)、タイ産が500円/kg中心(同450円/kg)となっている。要因としては「輸入品は、依然として市中現物はタイトで、モノが出ない状況となっている。輸入品を扱う量販筋では国産へシフトする動きがみられる。円安やタイ・カンボジア紛争などの外部要因を背景に、しばらくは締まった展開が続くとみられる。」と報告されている。
消費動向
家計
総務省統計局発表の家計調査報告(全国・二人以上の世帯1世帯あたり)によると、令和7年10月の生鮮肉消費(購入)は数量4,248g(前年比103.2%)、金額6,894円(同104.3%)と、数量・金額ともに前年を上回った。鶏肉は数量1,583g(同99.9%)・金額1,734円(同108.7%)・単価109.6円/100g(前年同月+8.9円)と数量は前年を下回ったものの、金額・単価は前年を上回った。牛肉は数量・金額ともに下回った。一方豚肉は数量・金額ともに前年を上回った。
量販
一般社団法人全国スーパーマーケット協会の販売統計調査によると、令和7年10月の食品売上高は全店ベースで前年比103.7%と前年を上回り、生鮮3部門の売上高は全店ベースで同101.9%、既存店ベースは同101.0%。畜産部門の売上高は約1,267億円で全店ベース同103.4%、既存店ベース同102.4%となった。また同社が取りまとめたスーパーマーケット景気動向調査によると、「牛肉の低調と、豚肉・鶏肉など値ごろ商品への需要シフト傾向は継続しているが、国産豚肉の相場が安定してきて、スライスや切り落としなどが好調に推移し、気温低下により鍋需要も高まり、全体を牽引した。牛肉は高止まり傾向が続き、輸入牛は不振も、国産にはやや回復傾向もみられた。鶏肉は価格高騰が続くなかでも堅調に推移した。加工肉は不調とする店舗が多かった。」と報告されている。
加工筋
日本ハム・ソーセージ工業協同組合調べによると令和7年10月度の鶏肉加工品仕向肉量は、前年比104.5%の5.0千トンとなった。うち国内品は同100.0%の3.8千トン、輸入品については同122.3%の1.2千トンと国内品・輸入品ともに前年を上回る結果となった。
在庫状況
(独)農畜産業振興機構(ALIC)の10月末時点推定期末在庫では国産品34.4千トン(前年比107.0%)、輸入品129.9千トン(同92.0%)、合計で164.3千トン(同94.8)となった。
(独)農畜産業振興機構(ALIC)が発表した鶏肉需給表では、10月の出回り量は国産品150.6千トン(前年比101.4%)、輸入品57.7千トン(同100.0%)、合計208.4千トン(同101.0%)となり、前月からは国産品・輸入品の出回り量が増加した。10月以降、「出回り量は、11月はわずかに、12月はやや、いづれも前年同月を上回ると予測する。期末在庫は、11月はかなりの程度、12月はかなり大きく、いずれも前年同月を下回ると予測する。なお、過去5ヶ年の同月平均との比較では、11月はわずかに、12月はかなりの程度、いずれも下回る(11月:0.5%減、12月:7.8%減)と予測する。」とされている。
鶏卵情勢(令和7年12月)
生産動向
11月は気温低下による個卵重の回復が顕著となり、サイズバランスは小玉減、大玉増となった。販売需要も堅調に推移し、産地在庫は小玉中心に低位な状況が続いた。年末需要に向けて各エリアでは生産量ピークを迎え供給面では回復が予想されるが、高病原性鳥インフルエンザが各地で発生しているため予断を許さない状況である。
消費動向
家計消費
業務・加工動向
10月の外食全体の売上高は前年同月比107.3%となった。客数は伸び悩んだものの、客単価の上昇、ファーストフード業態やファミリーレストラン業態の季節メニューと低価格メニューが好調にはたらき、全体の売上を押し上げる結果となった。
10月の訪日外客数は3,896千人(前年同月比117.6%)となり、同月過去最高を更新した。5月から3,300千人/月前後と落ち着いていたが、万博最後の駆け込みや紅葉シーズンで多くの観光客が訪れた。一方、中国政府の日本への渡航自粛要請を受け、今後の訪日外客数の動向については注視が必要である。
輸入・輸出動向
2025年10月の鶏卵類輸入通関実績は3,987トン(前年同月比156.0%)と前年を上回った。ブラジル、マレーシアからの殻付き卵が大幅に増えている。
同月の殻付き卵輸出実績は、1,761トン(前年同月82.4%)と2か月連続で前年を大きく下回った。国内逼迫の影響で国内流通を優先させたと予想され、香港向けが前年比82.3%と大きく下回っている。
価格動向
今後について、供給面は高病原性鳥インフルエンザの発生次第だが、12月に稼働羽数は増加し生産量は増加傾向となることが見込まれる。需要面において、量販筋では本格的な需要期に突入し、鍋物等の喫食機会の増加によって需要の押し上げが考えられる。外食筋では、忘年会シーズンとなり引き合いが強くなることが予想される。加工筋では、年末年始の滞貨玉も含めた集荷に動くことが考えられる。
以上のことから、今後の鶏卵相場は保合もしくは強含みとなることが予想される。
その他
(1)鶏卵生産者経営安定対策事業加入者の販売実績数量
(2)鶏卵基金標準取引価格と補填単価
(3)2025年度鳥インフルエンザ発生状況について
12月9日時点で1道3県、6事例の発生(採卵鶏173万羽)
(北海道、新潟県、鳥取県、宮崎県)
②野鳥・環境での発生状況
12月9日時点で1道9県、53事例の発生
(北海道・山形県、新潟県、福島県、群馬県、福岡県、大分県、宮崎県、鹿児島県)