相場情報
食鳥情勢(令和7年5月)
生産動向
生産・処理動向調査((一社)日本食鳥協会令和7年4月末実施)によると、3月の推計実績は処理羽数66,856千羽(前年比103.6%)、処理重量201.5千トン(同102.5%)となった。処理羽数は前月時点の計画値から1.4%の上方修正となった。要因としては「産地からの報告では2月から3月にかけては寒さの影響による増体不良で全体的に苦戦しているという声が多かった。」ものの、「気温が上がるにつれて成績が回復してきたとのことで、特に3月後半は育成がかなり順調に進んだことから前月時点での予測を上回る結果になった」とのこと。
生産・処理動向調査((一社)日本食鳥協会令和7年4月末実施)によると、4月は前月時点の予測よりも処理羽数が1.4%上方修正、処理重量は0.5%上方修正の見通しである。処理羽数は前年増の一方、処理重量は前年割れの予測であることから、大腸菌症や脚弱は減少するものの、増体は冬場の影響が完全には抜けていないようだ。5月は処理羽数、処理重量ともに前月予測から上方修正され、処理羽数は前年同月比3.4%増、処理重量は同0.2%減の見込みとなっている。6月は処理羽数前年同月比1.6%増、処理重量は同2.2%減の予測。工場の人員不足については外国人技能実習生が都市部への就業に集中しており働き手の足りない産地が多いとのこと。また、従業員の高齢化もあり人員確保が難しくなっているとの声も聞かれる。副産品(小肉・剣状軟骨など)や機械で加工することが難しい手羽中半割といった加工品の調整を行っている産地もあり、この傾向は暫く続く見通しだ。

輸入動向
財務省の貿易統計によると、令和7年3月の鶏肉(原料肉)の輸入量は前月から▲5.4千トンの42.3千トン、国別ではブラジルが前月▲5.1千トンの26.3千トン、タイが+0.1千トンの15.6千トンとなった。(独)農畜産業振興機構(ALIC)によると今後の見通しでは、輸入量は4月が45.1千トン(前年比86.7%)、5月は45.1千トン(同84.7%)と減少していく予測である。要因としては「4月、5月ともにブラジル産地価格が高止まりしていることなどを受けて、輸入量の減少が見込まれること等から、前年同月をかなり大きく下回ると予測する。なお、3カ月平均でも、前年同期をかなり大きく下回ると予測する。」とのこと。
鶏肉調整品の輸入量は前月から+9.7千トンの43.5千トン、前年同月実績(38.3千トン)からも+5.2千トン上回る結果となった。国別では中国が+6.2千トンの16.7千トン、タイが+3.3千トンの26.0千トンとなった。国内の働き手不足やコロナ禍が明けた影響による外食筋の回復、共働き世帯の増加に伴い中食・総菜向け等の引き合いも継続している。
(株)食品産業新聞社発行の畜産日報によると、3月の輸入鶏肉(モモ肉)の価格はブラジル産で450円/kgから480円/kg(前年加重価格390円/kg)、タイ産が480円/kg(同400円/kg)となっている。概況としては「輸入品はコンスタントに動いているが、実需というよりは引続き入荷が少ないことを見越して在庫を確保しようとする動きが多い。例年3月は決算期で安い案内も聞かれるが、ことしは在庫が薄く浮遊玉はみられない。相場も上げ基調となり、この先のブラジルの船積み数量によってはさらに一段上げてくる可能性もある。」とのこと。

消費動向
家計
総務省統計局発表の家計調査報告(全国・二人以上の世帯1世帯あたり)によると、令和7年3月の生鮮肉消費(購入)は数量4,366g(前年比100%)、金額6,835円(同100.4%)と、数量・金額ともに前年並みとなった。鶏肉は数量1,650g(同102.2%)・金額1,719円(同104.2%)・単価104.2円/100g(前年同月+2円)と、数量・金額・単価ともに前年を上回った。また、牛肉は数量・金額ともに前年を下回る結果となった。公益財団法人日本食肉流通センターによると、2021年後半から、物価の上昇による消費者の生活防衛意識の高まりにより牛肉の消費量は年々低下傾向とのこと。豚肉も前月に引き続き為替による高値基調によって需要家からの積極的な引き合いが乏しくなった。調理食品は共働き世帯の増加に伴う需要は底堅いようだ。外食においては、ほぼコロナ禍前の水準程度まで回復したものの、統計外となるインバウンドによる集客もあることからエリア・業態によって濃淡があるようだ。
量販
一般社団法人全国スーパーマーケット協会の販売統計調査によると、令和7年3月の食品売上高は全店ベースで前年比105.1%と前年を上回り、生鮮3部門の売上高は全店ベースで同104.4%、既存店ベースは同103.2%。畜産部門の売上高は約1,236億円で全店ベース同102.3%、既存店ベース同101.0%となった。また同社が取りまとめたスーパーマーケット景気動向調査によると、「引き続き全般的に相場高が継続し、部門としての伸び悩みと豚肉・鶏肉への需要シフトが続いた。牛肉は引き続き、価格が抑えられる切り落としや小間切れなどが販売の中心となっており、週末も売上が伸びないとのコメントも。豚肉は国産豚の価格上昇もあり輸入豚や味付肉が好調となった。鶏肉は堅調に推移するも、価格に上昇傾向がみられ、伸び悩んだ店舗も。ハム・ソーセージなどの加工肉は、好不調の判断がわかれた。」とのこと。

加工筋
日本ハム・ソーセージ工業協同組合調べによると令和7年3月度の鶏肉加工品仕向肉量は、前年比99.2%の4.5千トンとなった。うち国内品は同99.8%の3.7千トン、輸入品については同96.2%の0.7千トンとどちらも前年を下回った。
在庫状況
(独)農畜産業振興機構(ALIC)の3月末時点推定期末在庫では国産25.8千トン(前年比69.9%)、輸入品131.2千トン(同101.7%)と合計で157.0千トン(同94.6%)となった。
(独)農畜産業振興機構(ALIC)が発表した鶏肉需給表では、3月の出回り量は国産146.5千トン(前年比103.3%・前月差+9.2千トン)、輸入品50.3千トン(同105.4%・同+2.6千トン)の合計196.7千トン(同103.8%・同+11.9千トン)となり、前年からは国産・輸入ともに出回り量は増加した。3月以降の生産量については直近3カ月平均(3~5月)では前年並みの予測。輸入量はブラジル産の価格が高止まりしていることから減少する見込み。このことから、期末在庫の部分では直近3カ月平均(3~5月)で減少することが予測される。

鶏卵情勢(令和7年5月)
生産動向
3月の餌付け羽数は、全国で8,718千羽(前年同月比106.3%)と前年を上回った。3月餌付け羽数のエリア別では東日本が前年比102.7%、西日本は前年比111.2%と各エリアとも3カ月連続で前年を上回った。



消費動向
家計消費

業務・加工動向
3月の外食全体の売上高は前年同月比107.0%となった。歓送迎会や春休みの家族需要、インバウンドが好材料となったが、物価高が続き一部業態では客数が前年を下回る等、業種・企業間で差が見られた。
3月の訪日外客数は3,497,600人(前年同月比113.5%)となった。3月として過去最高であった2024年の3,081,781人を大きく上回り同月過去最高を記録した。また、1月~3月までの累計で10,537,300人となり、過去最速で10,000,000人を突破した。3月は春の桜シーズンに入り、多方面での行楽訪日需要が高まったことが主として客数の押し上げ要因となった。



輸入・輸出動向
2025年3月の鶏卵類輸入通関実績は1,738トン(前年同月比79.3%)となった。前年同月を下回ったものの3月も高病原性鳥インフルエンザ発生時のリスクヘッジの観点から、一定程度国外調達が継続していると考えられる。
同月の殻付き卵輸出実績は、国内における需給逼迫の影響もあってか1,739トン(前年同月比92.1%)と前年を下回った。


価格動向
今後について、供給面は稼働羽数の増加は未だ見込めず、産地在庫は低位のまま推移することが考えられる。需要面において、加工筋では引き続き在庫確保へ向けて集荷が続くことが考えられるが、大型連休の終了や気温の上昇に伴い、業務筋やテーブルエッグでは好材料に乏しい状況となることが予想される。
以上のことから、今後の鶏卵相場は横ばいの推移となることが考えられる。


その他
(1)鶏卵生産者経営安定対策事業加入者の販売実績数量

(2)鶏卵基金標準取引価格と補填単価

(3)2024年度鳥インフルエンザ発生状況について
3月21日時点で14道県、51事例の発生(採卵鶏約842万羽)。
(北海道、岩手県、宮城県、埼玉県、千葉県、茨城県、新潟県、愛知県、岐阜県、島根県、香川県、愛媛県、宮崎県、鹿児島県)
②野鳥での発生状況
5月13日時点で19道県、202事例の発生。
(北海道、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、福島県、新潟県、埼玉県、千葉県、長野県、福井県、愛知県、滋賀県、鳥取県、徳島県、高知県、福岡県、熊本県、鹿児島県)