相場情報
食鳥情勢(令和7年3月)
生産動向
生産・処理動向調査((一社)日本食鳥協会令和7年2月末実施)によると、1月の推計実績は処理羽数61,207千羽(前年比100.6%)、処理重量185.3千トン(同100.2%)となった。処理羽数は前月時点の計画値103.3%より2.7%の下方修正、処理重量は同計画値102.1%より1.9%下方修正となった。1月は東北エリアを中心に脚弱や疾病が散見されていることから、同エリアにて前年から処理羽数を落としているようだ。
土・日・祝日数が前年よりも2日間少ない10日であるが大腸菌症等の発生により、2月は計画処理羽数・処理重量ともに前年を下回る予想となっている。しかし、前月予想から処理重量ベースで3.2%上方修正となっている。3月については、土・日・祝日が前年より1日少ないことに伴い1日処理日が少ない産地が多いようだ。3月処理羽数・処理重量ともに前年を下回る見通しだ。前月予想から処理重量ベースでは、ほとんど変わらない予想である。産地別に見ると千葉県で高病原性鳥インフルエンザが頻発したことから関東エリアの処理羽数が前年から落ち込む見通しだ。工場の人員不足については外国人技能実習生が都市部への就業に集中していることに加え、来日が遅れている産地が一部あるようだ。また、従業員の高齢化もあり人員確保が難しくなっているとの声も聞かれる。副産品(小肉・剣状軟骨など)や機械で加工することが難しい手羽中半割といった加工品の調整を行っている産地もあるようだ。この傾向は暫く続く見通しだ。

輸入動向
財務省の貿易統計によると、令和7年1月の鶏肉(原料肉)の輸入量は前月から+2.4千トンの52.3千トン、国別ではブラジルが前月+3.2千トンの37.5千トン、タイが▲0.8千トンの14.1千トンとなった。(独)農畜産業振興機構(ALIC)による今後の見通しでは、輸入量は2月が45.9千トン(前年比82.9%)、3月は43.1千トン(同81.7%)となっている。食料品全般の値上がりや消費者の生活防衛意識の高まりなどから、比較的安価な輸入鶏肉の需要が増加することを見越し、積極的に在庫を抱えている業者もあるようだ。また、日本以外のアジアの国(主に中国と韓国)でも鶏肉の引き合いが強くなっており日本よりも高値で鶏肉を輸入していることから主要輸出国であるブラジル・タイ産の鶏肉輸入量は前年同期をかなり大きく下回ると予想する。ただし、不透明な為替動向では状況が変化する可能性はある。
鶏肉調整品の輸入量は、前月から▲7千トンの38.6千トンで国別では中国が▲1.0千トン、タイが+0.3千トンとなった。前年同月実績35.7千トンとの差は+2.9千トンとなり、前年比では上回る結果となった。国内の働き手不足やコロナ禍が明けた影響による外食筋の回復、共働き世帯の増加に伴い中食・総菜向け等の引き合いも継続している。冷食関係でも輸入鶏肉を使用したメニューが増えており、令和7年度は鶏肉調整品自体の需要も前年より高い水準になると予想される。
株式会社食品産業新聞社発行の畜産日報によると、1月の輸入鶏肉(モモ肉)の価格はブラジル産で380円/kgから400円/kg(前年加重価格390円/kg)、タイ産が450円/kg(同430円/kg)となっている。為替が円安に推移し続けている影響や中東だけでなくアジア圏の国々から需要が増加傾向にあることによって価格が上昇したと予測する。生産国の自国消費も増加しているため、急激な価格の下落は暫く無いのではないだろうか。

消費動向
家計
総務省統計局発表の家計調査報告(全国・二人以上の世帯1世帯あたり)によると、令和6年1月の生鮮肉消費(購入)は数量4,203g(前年比94.4%)、金額6,730円(同102.4%)と、重量は前年を下回り、金額は前年を上回った。鶏肉は数量1,563g(同104.1%)・金額1,650円(同102.6%)・単価105.6円/100g(前年同月▲1.5円)と、数量・金額は前年を上回ったものの、単価は前年を下回った。鶏肉は前年と比べて購入数量と購入金額は前年を上回ったが、牛肉と豚肉は購入数量が前年を下回る結果となった。牛肉は輸出や為替の影響で価格が高騰したことから数量と金額が減少したと予測する。2025年1月16日発行の日本経済新聞によると、豚肉も為替による高値基調によって需要家からの積極的な引き合いが乏しくなった。調理食品は共働き世帯の増加に伴う需要は底堅いようだ。外食においては、ほぼコロナ禍前の水準程度まで回復したものの、統計外となるインバウンドによる集客もあることからエリア・業態によって濃淡があるようだ。
量販
一般社団法人全国スーパーマーケット協会の販売統計調査によると、令和7年1月の食品売上高は全店ベースで前年比105.2%と前年を上回った。生鮮3部門の売上高は全店ベースで同105.4%、既存店ベースは同104.0%となった。また、畜産部門の売上高は約12,403億円で全店ベース同101.7%、既存店ベース同100.3%となった。同社が取りまとめたスーパーマーケット景気動向調査によると「引き続き牛肉や輸入肉の相場高が継続し、なかでも輸入品の価格高騰が続き、不調となった。牛肉は、成人式などハレの日前後にブランド牛が動いた店舗もみられたが、それ以外では価格を抑えた切り落としや小間切れなどが販売の中心となった。豚肉は、スライスやしゃぶしゃぶ用に回復傾向がみられたが、国産豚の価格上昇もあり伸び悩んだ。鍋関連は水産へのシフトを指摘するコメントも。鶏肉は鍋需要の受け皿となったが、鳥インフルエンザによる国産価格の上昇により好不調の判断がわかれた。」とコメントがあった。前月に引き続き消費者の節約志向は高いようだ。

加工筋
日本ハム・ソーセージ工業協同組合調べによると令和7年1月度の鶏肉加工品仕向肉量は、前年比100.2%の4.1千トンとなった。うち国内品は同103.1%の3.4千トンと前年を上回り、輸入品については同89.1%の0.8千トンと前年を下回った。
在庫状況
(独)農畜産業振興機構(ALIC)の1月末時点推定期末在庫では国産26.3千トン(前年比84.3%・前月差▲3.3千トン)、輸入品139.2千トン(同110.5%・同+4.3千トン)と合計で165.4千トン(同105.3%・同▲4.9千トン)となった。
(独)農畜産業振興機構(ALIC)が発表した鶏肉需給表では、1月の出回り量は国産142.4千トン(前年比99.9%・前月差▲13.2千トン)、輸入品48.1千トン(同108.1%・同▲6.2千トン)と合計で190.5千トン(同101.9%・同▲19.4千トン)となった。前月からは国産・輸入ともに減少している。前年と比べて国内の生産処理重量ははほぼ並みであり、輸入品の出回り量が増加していることから需給は締まっていたと考える。1月は特に前月に比べて生産処理重量が減少していることから不足感が強い1ヶ月だった。1月以降の国産品在庫については生産不調によって生産量が需要に対して不足し、減少していくと予想する。輸入品については価格が高騰していることから在庫はあまり減少しないと予測する。在庫は昨年と比較すると増加傾向にあるものの、消費者の節約志向や外食筋・加工筋による引き合いがある、国内の生産状況も全国的に不要気味のため急増することは考えにくい。

鶏卵情勢(令和7年3月)
生産動向
1月の餌付け羽数は、全国で7,973千羽(前年同月比107.3%)と9ヶ月ぶりに前年を上回った。2024年1月~12月の累計では全国で前年比93.9%と年間での餌付け羽数は減少傾向であったが、1月餌付け羽数のエリア別では東日本が前年比105.6%、西日本は前年比109.6%となった。



消費動向
家計消費

業務・加工動向
1月の外食全体の売上高については前年同月比107.7%となった。年末年始の長期連休で国内移動が活発であったこと、インバウンドの増加により外食需要は堅調であった。外食全体の売上は前年を超えているが、断続的な価格改定による単価上昇で、消費者の低価格志向が強まる中、一部で客数が前年割れのところもあり、業種間・企業間で差が見られる。
1月の訪日外客数は3,781,200人(前年同月比140.6%)となった。過去最高であった2024年12月の3,489,800人を上回り、単月過去最高を記録し、単月として初めて370万人を突破した。アジアの多くの市場で旧正月(春節)に合わせた旅行需要の高まりが見られた他、ウィンタースポーツ需要等により豪州や米国を中心に前年同月に比べ一層の旅行者数の増加があったこと等が押し上げ要因となった。



輸入・輸出動向
2025年1月の鶏卵類輸入通関実績は2,380トン(前年同月比152.5%)となり、2ヵ月連続で前年を上回った。1月も高病原性鳥インフルエンザ発生時のリスクヘッジの観点から、一部国外調達が継続していると考えられる。
同月の殻付き卵輸出実績は1,498トン(前年同月比112.1%)と6ヶ月連続で前年を上回った。


価格動向
今後について、供給面は高病原性鳥インフルエンザからの復帰の目処は立っておらず、生産量は継続して不足することが予想される。需要面において、量販筋では引き続き数量制限の動きがあるが、外食筋での大手ファストフードチェーン店のプロモーションは3月中も継続することや、加工筋でも引き続き集荷の動きがみられることから、引き合いが強くなることが予想される。
以上のことから、需要に対して供給が追い付いていない状況が続くため、今後の鶏卵相場は強含みで推移すると考えられる。


その他
(1)鶏卵生産者経営安定対策事業加入者の販売実績数量

(2)鶏卵基金標準取引価格と補填単価

(3)2024年度鳥インフルエンザ発生状況について
3月13日時点で14道県、51事例の発生(採卵鶏約932万羽)。
(北海道、岩手県、宮城県、埼玉県、千葉県、茨城県、新潟県、愛知県、岐阜県、島根県、香川県、愛媛県、宮崎県、鹿児島県)
②野鳥での発生状況
3月13日時点で17道県、130事例の発生。
(北海道、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、福島県、新潟県、埼玉県、千葉県、福井県、愛知県、滋賀県、鳥取県、徳島県、高知県、福岡県、鹿児島県)