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相場情報

全国食鳥新聞社サイトの鶏肉荷受相場、JA全農たまごが発表する鶏肉相場情報を掲載しています。
※各社の相場情報サイトへリンクします

食鳥情勢(令和6年12月)

生産動向

 生産・処理動向調査((一社)日本食鳥協会令和6年10月末実施)によると、10月の推計実績は処理羽数64,572千羽(前年比101.7%)、処理重量194.6千トン(同101.9%)となった。前月時点の計画値より処理羽数は前月予測から変更無し、処理重量は0.4%上方修正となった。北海道・東北エリア・九州エリアが前年から処理重量ベースで数値を伸ばしており、夏場の種鶏成績の低下はあったものの順調な生産状況だったようだ。
 11月の計画処理羽数・処理重量ともに前年を下回る予想となっており、前月予想から処理重量ベースで1.5%下方修正となっている。昼夜の温度差による飼育管理が難しいことも影響しているのではないだろうか。土・日・祝日数は前年と同じ10日間。12月については、土・日・祝日が前年から1日減り9日間。処理羽数・処理重量ともに前年を下回る見通しだ。前月予想から処理重量ベースで0.8%下方修正となっている。今夏の酷暑による種鶏成績の落ち込みに加えて一部産地で脚弱が発生していることも影響しているのではないだろうか。高病原性鳥インフルエンザの影響は数値に折り込まれていないと考えられるため、国内の発生状況によっては今後影響が出る可能性がある。工場の人員不足については外国人技能実習生が都市部への就業に集中していることに加え、来日が遅れている産地が一部あるようだ。また、従業員の高齢化もあり人員確保が難しくなっているとの声も聞かれる。副産品(小肉・剣状軟骨など)や機械で加工することが難しい手羽中半割といった加工品の調整を行っている産地もあるようだ。この傾向は暫く続く見通しだ。

生産動向表

輸入動向

 財務省11月28日公表の貿易統計によると、令和6年10月の鶏肉(原料肉)の輸入量は前月から+13.2千トンの62.3千トン、国別ではブラジルが前月+10.4千トンの43.4千トン、タイが+2.6千トンの17.9千トンとなった。(独)農畜産業振興機構(ALIC)による今後の見通しでは、輸入量は11月が51.1千トン(前年比130.3%)、12月は52.6千トン(同103.1%)となっている。ブラジル産鶏肉の輸入量が増加する見通しだ。輸入価格が落ち着いたことや、国産を含めた国内需要が堅調であることから輸入量が増加しているようだ。食料品全般の値上がりや消費者の生活防衛意識の高まりなどから、比較的安価な輸入鶏肉の需要が増加することを見越し、積極的に在庫を抱えている業者もあるようだ。ただし、国内倉庫の在庫量が多く、入庫が難しくなっているため放出する業者も今後は出てくるのではないだろうか。不透明な為替動向や他国の輸入状況次第では状況が変化する可能性はある。
 鶏肉調整品の輸入量は、前月から+10.0千トンの47.9千トンで国別では中国が+0.3千トン、タイが+7.4千トンとなった。前年同月実績44.4千トンとの差は+3.5千トンとなり、前年比では上回る結果となった。国内の働き手不足やコロナ禍が明けた影響による外食筋の回復、共働き世帯の増加に伴う中食・総菜向け等の引き合いも継続している。冷食関係でも輸入鶏肉を使用したメニューが増えており、鶏肉調整品自体の需要も高い水準を維持している。今後は価格次第では国内需要も見据え輸入量が拡大する可能性がある。
 財務省11月28日公表の貿易統計によると、10月の輸入鶏肉(解体品)の価格は前年同月より▲2.3%となった。解体品の国別価格は、ブラジル産の輸入価格が316.1円/kg(前月比+14円)、タイ産が424円/kg(同+5円)となっている(国別平均価格)。前月からは価格が上昇したものの、ブラジル産の価格が落ち着いてきたこともあり前年は下回った。中国がブラジルからの輸入量を前年から絞っており、中東向けが増加傾向にある。鶏肉調整品の重量は中国が前年同月より8.9%増加、タイが7.0%増加した。

輸入動向表

消費動向

家計

 総務省統計局発表の家計調査報告(全国・二人以上の世帯1世帯あたり)によると、令和6年10月の生鮮肉消費(購入)は数量4,116g(前年比99.3%)、金額6,611円(同100.2%)と、重量は前年を下回り、金額は前年を上回った。鶏肉は数量1,584g(同105.5%)・金額1,595円(同100.5%)・単価95円/100g(前年同月▲4円)と、数量・金額は前年を上回ったものの、単価は前年を下回った。これは購入単価が高いモモ肉から比較的安価なムネ肉へシフトしたことや、ディスカウントストアなどの価格が低く抑えられた店舗での購入機会が増加したためではないだろうか。調理食品が金額13,068円(同101.5%)、外食が15,152円(同103.0%)となっている。畜産の購入数量は鶏肉が前年を上回り、牛肉・豚肉が前年を下回る結果となった。輸入品を含めた牛肉・豚肉の高騰が続いたことから安価な鶏肉へのシフトが進んでいると推察される。調理食品は共働き世帯の増加に伴う需要は底堅いようだ。外食においては、ほぼコロナ禍前の水準程度まで回復したものの、統計外となるインバウンドによる集客もあることからエリア・業態によって濃淡があるようだ。

量販

 食品関連スーパー3団体の販売統計速報によると、令和6年10月の食品売上高は全店ベースで前年比102.5%と前年を上回った。生鮮3部門の売上高は全店ベースで同101.7%、既存店ベースは同100.2%となった。また、畜産部門の売上高は約1,229億円で全店ベース同101.1%、既存店ベース同99.5%となった。一般社団法人全国スーパーマーケット協会によると、「全般的に相場高が継続するなか、気温が高く推移したため鍋関連の動きが鈍く、やや不調となった。牛肉は輸入牛が不振だが、国産牛は前年並みで推移した。豚肉は相場がやや落ち着き、ひき肉や小間切れなどの低価格商品の動きがよかった。鶏肉は節約志向の中で比較的堅調だが、鳥インフルエンザ発生の影響を心配するコメントもみられる。加工肉は高値傾向で不振が続いていたが、一部で回復傾向もみられている。」とコメントがあった。安価な商品に需要が集中している傾向は変わらないようだ。

量販表

加工筋

 日本ハム・ソーセージ工業協同組合調べによると令和6年10月度の鶏肉加工品仕向肉量は、前年比101.3%の4.8千トンとなった。うち国内品は同107.4%の3.8千トンと前年を上回り、輸入品については同82.8%の1.0千トンと前年を下回った。

在庫状況

 (独)農畜産業振興機構(ALIC)の10月末時点推定期末在庫では国産32.2千トン(前年比108.2%・前月差▲1.0千トン)、輸入品141.1千トン(同107.8%・同+4.6千トン)と合計で173.3千トン(同107.9%・同+3.6千トン)となった。
 (独)農畜産業振興機構(ALIC)が発表した鶏肉需給表では、10月の出回り量は国産148.6千トン(前年比101.9%・前月差+10.7千トン)、輸入品57.7千トン(同116.9%・同+7.2千トン)と合計で206.4千トン(同105.7%・同+18.0千トン)となった。前月からは国産・輸入品が共に増加している。国産・輸入品の出回り量が200.0千トンを超えるのは今年4月以来で、2024年以前は12月のみ200.0千トン超えることはあったが、本年は鶏肉自体の需要が伸長しているため増加している。10月以降の在庫については年末用の凍結在庫確保が進んでいない業者が多く、一時的に増加していくと予想する。輸入品についてはブラジルからの輸入量が増加する見通しのため、在庫は増加するものの、外食筋・加工筋の引き合いがあるため、急増することは考えにくい。

在庫状況表

鶏卵情勢(令和6年12月)

生産動向

 11月は生産調整明け鶏群の生産復帰も見られたが、8月後半~10月にかけて需給がひっ迫した際、誘導換羽などの後ろ倒しや酷暑の影響による生産減もあり、生産量は減少傾向で推移した。サイズバランスについては、外気温の低下により、大玉増・小玉減の展開となった。また、昨年よりも約1ヶ月早く発生した高病原性鳥インフルエンザは全国に蔓延しており、12月10日時点で11道県13事例発生し、約147.9万羽(うち採卵鶏は約125.5万羽)が殺処分の対象となっている。これはすでに昨年度の殺処分羽数(約85.6万羽)を上回っており、今後の鶏卵供給への影響が懸念される。
 10月の餌付け羽数は、全国計で8,349千羽(前年同月比100.0%)となり、前年と同じ水準まで回復した。尚、エリア別では東日本が前年比100.6%、西日本が前年比99.2%となっている。
エリア別餌付け羽数
当社推計全国飼養羽数
エリア別鶏卵生産量

消費動向

家計消費

 2024年10月の鶏卵の一人当たり家計消費量は902g(前年同月比101.2%)と、11ヶ月連続で前年を上回る結果となった。11月以降、鶏卵相場も前年を上回る形で推移しており、今後も前年を上回るか動向を注視したい。
鶏卵の一人当り家計消費量

業務・加工動向

 10月のドレッシング類原料卵の消費量については、前年同月比98.8%と前月に続いて2ヶ月連続で前年を下回る結果となったが、高病原性鳥インフルエンザの対策として加工メーカーの引き合いは強い。
 10月の外食全体の売上高は前年同月比106.1%となった。前年に比べて日曜日が少ない曜日回りとなり、客足に影響が出た業態もあったが、各種販促キャンペーンが堅調であったことに加え、まだ気温の高い日があり、依然として夏メニューも堅調であったことや、月間の訪日外客数が過去最高を記録したことなどが売上増につながったと考えられる。しかしながら、お米をはじめとした各種原材料費や水道光熱費、人件費などの高騰も続いており、経営の圧迫要因となっている。
 10月の訪日外客数は3,312千人(前年同月比131.6%)となった。10月までの累計では30,193千人となり、1964年の統計開始以降、過去最速で30,000千人を突破した。紅葉シーズンを迎え訪日外客数が増加傾向にあり、特に中国、シンガポール、米国などで前年同月に比べて訪日外客数が増加したことが押し上げの要因となった。
外食産業業態別売上高
訪日外客数
鶏卵の一人当り家計消費量

輸入・輸出動向

 2024年10月の鶏卵類輸入通関実績は2,555トン(前年同月比82.0%)となった。2024年4月以降、前年を大きく下回る形で推移しているものの、高病原性鳥インフルエンザ発生時のリスクヘッジの観点から、一部国外調達が継続していると考えられる。中でもブラジルからの殻付き卵の輸入は9月から増加している。
 同月の殻付き卵輸出実績は2,137トン(前年同月比121.6%)と3ヶ月連続で前年を上回ったが、2022年比では55.3%となった。

鶏卵類輸入通関実績
殻付卵輸出実績

価格動向

 11月の東京相場Mサイズ基準値平均は281円/kg(前年同月比+27円/kg、前月比+6円/kg)となった。供給面において、気温の低下による産卵率及び個卵重が増加し、小玉の発生が減少した。また、高病原性鳥インフルエンザの発生により、供給量が減少した反面、一部の道県においては輸出が制限された影響により国内向けに使用されたため、国内の需給に大きな影響はなかった。需要面において、量販筋では相場の上伸に伴った売価変更により発注数量に落ち着きが見られた。業務・加工筋では鳥インフルエンザの発生を見据えた集荷により、スポットでの引き合いがみられた。小玉需要が供給を上回る状況は続き、11月19日に小玉高、12月3日に上伸の展開となった。
 今後について、供給面は最需要期に向けた生産量の増加が予想され、更なる気温の低下により大玉増加と小玉減少の状況は継続することが考えられる。需要面において、国内の鳥インフルエンザの発生による供給不安からか殻付き卵の輸入量が増加傾向にあるが、テーブルエッグの消費増加や、加工筋では集荷の継続が見込まれる。また、外食筋では忘年会や新年会の開催による需要の高まりが期待される。
 年末へ向けて供給量は増加していくことが予想されるが、各業態において最需要期に突入すること、高病原性鳥インフルエンザの影響を見据えた需要の高まりから、今後の鶏卵相場は強含みで推移すると予想される。
JA全農たまご東京M基準値月間平均
JA全農たまご東京M基準値月間平均

その他

(1)鶏卵生産者経営安定対策事業加入者の販売実績数量
販売実績数量
(2)鶏卵基金標準取引価格と補填単価
取引価格と補填価格
(3)2024年度鳥インフルエンザ発生状況について
①国内養鶏場での発生状況
 12月10日時点で11道県、13事例の発生(採卵鶏約125.8万羽、肉用鶏約22.1万羽)。
 (北海道、宮城県、埼玉県、千葉県、新潟県、岐阜県、島根県、香川県、愛媛県、宮崎県、鹿児島県)
②野鳥での発生状況
 12月10日時点で14道県、64事例の発生。
 (北海道、岩手県、秋田県、宮城県、福島県、新潟県、埼玉県、福井県、愛知県、滋賀県、鳥取県、徳島県、福岡県、鹿児島県)

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