相場情報
食鳥情勢(令和7年10月)
生産動向
生産・処理動向調査((一社)日本食鳥協会令和7年9月末実施)によると、8月の推計実績は処理羽数61,311千羽(前年比104.3%)、処理重量181.2千トン(同105.1%)となった。処理羽数が前年同月比104.3%で、前月時点の計画値から2.9%上方修正された。処理重量は同105.1%と、同じく前月時点の計画値から2.8%上方修正されている。産地からは暑さの影響で鶏の食欲が低下し、増体不良による歩留まり低下や内臓廃棄が増加しているという報告も多かったが、熱死の発生がかなり抑えられているとのことで、処理羽数・重量ともに前月時点の予測を上回り、前年同月比でもプラスの結果となった。9月も引続き厳しい暑さとなったが、現在の鶏種が暑さに強くなっているため、熱死をはじめとした大きなトラブルは起こらなかったとのこと。10月も処理羽数、処理重量ともに前月予測から上方修正され、処理羽数は前年同月比0.5%、処理重量は同0.3%それぞれ上方修正の予測となっている。
工場の人員については引き続き不足が課題となっている中、副産品(小肉・剣状軟骨など)・手羽中半割等の1.5次加工品は機械を導入し製造している産地が見られる。この省人力化の流れは、今後他産地にも広がっていくと思われる。

輸入動向
財務省の貿易統計によると、令和7年8月の鶏肉(原料肉)の輸入量は前月から+1.4千トンの49.6千トン、国別ではブラジルが前月+5.7千トンの37.7千トン、タイが▲4.5千トンの11.4千トンとなった。(独)農畜産業振興機構(ALIC)によると今後の見通しは、輸入量は9月は57.8千トン(前年比117.7%)、10月は47.3千トン(同75.8%)と9月は増加するものの、10月は大きく減少する予測である。要因としては「輸入量は、以前、主要輸入先の一つであるブラジルで発生した高病原性鳥インフルエンザにより出船できなかったものが通関されたことなどから、9月は前年同月を大幅に上回る一方、10月はブラジルからの輸送船の遅延等の影響を受けて、前年同月を大幅に下回ると予測する。なお、3カ月平均では、前年同期をかなりの程度下回ると予測する。」とされている。
令和7年8月の鶏肉調整品の輸入量は前月から▲8.6千トンの41.5千トン、国別では中国が▲5.6千トンの15.0千トン、タイが▲2.9千トンの25.5千トンとなった。要因としては輸入業者の在庫調整を行ったこと等が考えられるが、詳細な情報は得られていない。
(株)食品産業新聞社発行の畜産日報によると、8月の輸入鶏肉(モモ肉)の価格はブラジル産で440円/kgから460円/kg(前年加重価格390円/kg)、タイ産が500円/kg中心(同480円/kg)となっている。要因としては「8月、9月とブラジル産を中心に多めの入荷が見込まれるものの、入船のタイミングによっては手前の在庫が薄くなるなど、全体的に余剰感はないようだ。ブラジル産は引き続きオファー数量自体が少なく、タイ産も現地工場のワーカー不足などから、先は締まった展開が予想される」と報告されている。

消費動向
家計
総務省統計局発表の家計調査報告(全国・二人以上の世帯1世帯あたり)によると、令和7年8月の生鮮肉消費(購入)は数量4,134g(前年比103.1%)、金額6,934円(同105.0%)と、数量・金額はともに前年を上回った。鶏肉は数量1,449g(同103.6%)・金額1,575円(同110.4%)・単価108.68円/100g(前年同月+6.7円)といずれも前年を上回った。牛肉は数量は上回ったものの、金額は下回った。豚肉は数量・金額ともに前年を上回った。外食においては、ほぼコロナ禍前の水準程度まで回復したものの、統計外となるインバウンドによる集客もあることからエリア・業態によって濃淡があるようだ。
量販
一般社団法人全国スーパーマーケット協会の販売統計調査によると、令和7年8月の食品売上高は全店ベースで前年比102.4%と前年を上回り、生鮮3部門の売上高は全店ベースで同102.3%、既存店ベースは同101.2%。畜産部門の売上高は約1,272億円で全店ベース同103.3%、既存店ベース同102.0%となった。また同社が取りまとめたスーパーマーケット景気動向調査によると、「相場の高騰傾向が続く中でも、お盆時期は販売が好調に推移したという店舗が多い。それ以外の時期は、牛肉の不振と豚肉・鶏肉への需要シフトの傾向が継続している。牛肉は国産、輸入共に高値推移が続き、全般的に苦戦傾向だが、雨が少なく休日を中心にBBQ、焼肉需要は好調に推移した。豚肉は国産の価格高騰が続き、比較的安価な輸入豚が好調。鶏肉は価格高騰が続くなかでも販売が堅調となった。ハムなどの加工肉にはやや回復傾向がみられた。利益確保が難しいとのコメントが多くみられた。」と報告されている。

加工筋
日本ハム・ソーセージ工業協同組合調べによると令和7年8月度の鶏肉加工品仕向肉量は、前年比104.4%の4.5千トンとなった。うち国内品は同105.3%の3.5千トン、輸入品については同101.5%の1.0千トンと国内品・輸入品ともに前年を上回る結果となった。
在庫状況
(独)農畜産業振興機構(ALIC)の8月末時点推定期末在庫では国産品33.2千トン(前年比94.5%)、輸入品126.7千トン(同91.9%)、合計で159.9千トン(同92.4%)となった。
(独)農畜産業振興機構(ALIC)が発表した鶏肉需給表では、8月の出回り量は国産品136.2千トン(前年比104.4%・前月差▲5.2千トン)、輸入品47.0千トン(同89.8%・同▲6.0千トン)、合計183.2千トン(同100.2%・同▲11.1千トン)となり、前月からは国産品・輸入品の出回り量が減少した。8月以降、「出回り量は、9月は前年同月をわずかに上回る一方、10月は前年同月をわずかに下回ると予測する。期末在庫は、9月はやや、10月はかなり大きく、いずれも前年同月を下回ると予測する。なお、過去5カ年の同月平均との比較では、9月はわずかに上回る一方、10月はやや下回る(9月:2.6%増、10月:4.1%減)と予測する。」とされている。

鶏卵情勢(令和7年10月)
生産動向
9月は連日の猛暑による産卵率や卵重の低下が顕著となり、大玉中心に生産量が減少した。サイズバランスは小玉中心となったが、大玉の振替や月見プロモーションによる引き合いがあり、産地在庫は全体的に低位となった。



消費動向
家計消費

業務・加工動向
8月の外食全体の売上高は前年同月比108.4%となった。お盆の帰省需要の好調や台風の影響も少なく猛暑が続き、涼味麺やデザート等の季節メニューやビール類が引き続き好調となった。
8月の訪日外客数は3,428千人(前年同月比116.9%)となり、同月過去最高を更新するとともに同月として初めて3,000千人を超え、引き続き好調であることが伺える。



輸入・輸出動向
2025年8月の鶏卵類輸入通関実績は2,493トン(前年同月比171.7%)と前年を上回った。国内での原料卵集荷の不安定さから殻付き卵は4月以降大幅に増加が続いている。
同月の殻付き卵輸出実績は、2,147トン(前年同月117.0%)と前年を上回った。香港、シンガポール向けが増えているほか、グアム向けの出荷量が17tと過去最大となっている。鶏卵輸出の主要相手国に新たにミクロネシア連邦が追加となった。


価格動向
今後について、供給面は気温の低下に伴い生産量と個卵重共に回復傾向で推移することが考えられる。
需要面において、量販筋では冬場の需要期に向けて、発注数量が徐々に増加していくことが予想される。
外食筋では、月見プロモーションの終了により一定程度落ち着きが見られるが、秋冬メニューの開始により引き合いを一定水準に保つことが考えられる。加工筋では、年末の高病原性鳥インフルエンザを見据えた集荷が見込まれる。
以上のことから、今後の鶏卵相場は強含みとなることが考えられる。

その他
(1)鶏卵生産者経営安定対策事業加入者の販売実績数量

(2)鶏卵基金標準取引価格と補填単価
