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食肉情勢(令和5年5月)

牛肉

供給

(1)国産
 3月の成牛と畜頭数は、92.8千頭と前年を上回った(前年比102.7%)。内訳を見ると、和牛:40.5千頭(前年比102.5%)、交雑牛:21.9千頭(同109.0%)、乳牛去勢:11.1千頭(同90.9%)となった。
 4月の成牛と畜頭数は、速報値(4月30日まで集計)で92.9千頭と前年を上回った(前年比100.4%)。
 (独)農畜産業振興機構の需給予測(4月26日公表)によると、4月の出荷頭数は、全品種での増加が見込まれることから、前年同月を上回ると予測する。5月も全品種で出荷頭数の増加が見込まれることから、前年を上回ると予測する。(4月97.9千頭(前年比105.3%)、5月87.7千頭(前年比104.2%))
 そのため、3か月平均(3月~5月)でも、出荷頭数93.3千頭(前年比104.5%)、生産量29.9千トン(同105.5%)と前年を上回る予測となっている。
(2)輸入
 3月の輸入通関実績は、全体で36.8千トンと前年を上回り(前年比108.5%、前月比96.9%)、内訳ではチルド;17.8千トン(前年比105.2%、前月比133.4%)、フローズン;19.0千トン(前年比111.7%、前月比77.1%)となった。輸入相手国別では、チルドは豪州やカナダが増加した。一方でフローズンは、米国からのショートプレートが伸長し、カナダも前年を上回ったが、その他の国からの輸入が減少した。
(参考:形態別相手国別輸入数量)
チルド:米国8.8千トン(前年比90.8%)、豪州7.6千トン(同140.9%)、カナダ0.7千トン(同103.3%)、ニュージーランド0.3千トン(同90.3%)、メキシコ0.2千トン(同64.8%)
フローズン:米国8.4千トン(同175.7%)、豪州5.3千トン(同86.1%)、カナダ3.0千トン(同197.8%)、メキシコ1.2千トン(同53.9%)、ニュージーランド0.9千トン(同79.8%)
 (独)農畜産業振興機構の需給予測によると、チルドの輸入量は、米国産は現地価格の高騰等により、4月、5月ともに前年を下回ると見込んでいる。フローズンは4月、5月は豪州産の取引価格高止まり等に加え、前年同月の輸入量が多かったこと等から、前年を下回ると見込んでいる。3か月平均でも、チルド・フローズンともに前年同期を下回ると見込んでいる。
令和5年4月 合計;56.3千トン(前年比91.5%)、チルド;18.0千トン(同87.9%)、フローズン;38.3千トン(同93.4%)
令和5年5月 合計;41.5千トン(前年比90.7%)、チルド;17.0千トン(同83.0%)、フローズン;24.5千トン(同97.0%)
直近3か月(令和5年3月~5月)平均 合計;44.7千トン(前年比95.1%)、チルド;17.5千トン(同90.8%)、フローズン;27.2千トン(同98.1%)

需要

(1)家計
 総務省発表の3月度家計調査報告によると、全国二人以上の1世帯当たり牛肉購入量は466g(前年比87.6%)、支出金額が1,596円(同91.8%)となり、購入量および支出金額は前年下回った。(※2019年度同月比:購入量 81.6%、金額 95.5%)
(2)小売
 日本スーパーマーケット協会など食品関連スーパー3団体の3月の販売統計速報によると、畜産部門の売上高は1,139億円(前年比102.1%、既存店ベース101.5%)と前年を上回った。相場高が続き、買上点数の減少は続いているが、豚肉や鶏肉ではやや回復傾向がみられた。牛肉は焼肉用の動きは良いが、和牛など高単価商品の動きが鈍い。豚肉は輸入品の価格高騰より国産が良好となっている。鶏肉は鳥インフルエンザの影響による高値が続くが良好に推移する店舗が多い。低価格商品に需要がシフトしており、売上高は確保できても利益が出にくい状況が続いている。
 日本チェーンストア協会が公表した3月販売概況によると、畜産品の売上は873.2億円(店舗調整後で前年比98.4%)となり、前年を下回った。豚肉、鶏肉の動きは良かったが、牛肉の動きは鈍かった。鶏卵の動きは良かったが、ハム・ソーセージの動きは鈍かった。
(3)外食
 日本フードサービス協会がまとめた外食産業市場調査3月度結果報告によると、歓送迎会や春休みシーズンで個人や家族客の中小宴会が増加したことにより、全体売上は前年比118.8%、2019年比では101.5%と好調となった。しかし、大規模宴会や夜遅い時間帯の集客は弱い。3/13よりマスク着用が個人の判断に委ねられ、コロナ規制緩和の動きが一層明確になってきた。
業態別;
①ファーストフード 前年比110.9%、2019年度比113.2% 消費意欲が高まり値上がり基調も消費者に浸透し始めたこと、歓送迎会やWBC観戦等でテイクアウト需要により売上伸長
②ファミリーレストラン 前年比126.2%、2019年度比 93.3% コロナ規制の大幅緩和や消費促進キャンペーン等で春休みの家族客が増加。焼肉店は春休み・卒業シーズンで団体客が戻り好調。
③ディナーレストラン 前年比136.2%、2019年度比89.1% 大口の法人利用は戻らないものの、中規模の歓送迎会やインバウンド客・個人客が増加し、客単価も伸び売上上昇
④居酒屋 前年比182.6%、2019年度比 60.0% 個人客やインバウンド需要の堅調が続き、送迎会等の中小宴会が回復傾向で売上増、会社需要は戻りが鈍い
(4)輸出
 3月の輸出実績は764.8t(前年比129.9%)と前年を上回った。香港向けが106t(同113%)、台湾向けが148t(同184%)と大きく増加したことに加えカンボジア向けが先月に続き増加傾向となったこと(75t、同139%)等から上回った。

在庫

 (独)農畜産業振興機構の需給予測によると、3月末の推定期末在庫量は149.7千トン(前年比117.1%、前月比96.6%)と前年を上回った。内訳は、輸入品;137.1千トン(前年比119.6%、前月比96.1%)、国産品;12.6千トン(同95.6%、同102.4%)となり、輸入品は前年実績を上回ったが、国産品は下回った。なお、今後の期末在庫の推移は、4月末;154.1千トン(同122.3%)、5月末;156.1千トン(同119.3%)と、前年を上回って推移すると見込まれている。

市況

(1)4月~5月
 4月の東京市場枝肉卸売価格(速報値;4月30日時点)は、和牛去勢A5が2,634円(前年比98.0%)、A4が2,341円(同94.5%)、交雑牛B3が1,521円(同95.1%)、乳牛去勢B2が1,107円(同97.9%)であった。
 4月の相場は、例年よりGWが長期連休となったことから、行楽需要等の増加が期待されたことで需給が引き締まり、上旬は高値で推移した。しかし、消費者の生活防衛意識が依然高く、内食需要の低迷から中旬以降は弱含みでの推移となったことで、前月は上回ったが前年は下回った。
 5月の相場は、内食需要はGW行楽需要の反動から軟調が見込まれるが、新型コロナ規制の更なる緩和により訪日外国人の増加などによる外食需要の復調に期待感が出てきていることから需要面では底堅いものの、出荷頭数が和牛・交雑種とも前年より増加することから前年・前月より弱含みで推移するものと見込まれる。

豚肉

供給

(1)国産
 3月の全国豚と畜頭数は、1,470千頭と前年を下回った(前年比97.9%)。地域別と畜頭数(数値は前年同月比);北海道100.7%、東北101.1%、関東96.8%、北陸甲信越101.2%、東海93.5%、近畿96.4%、中四国100.3%、九州・沖縄96.4%
 4月の全国と畜頭数は、1,330千頭(速報値4月30日まで集計、前年比96.0%)と前年を下回る見込みとなった。なお、稼働日数は昨年同様で、1日当たりの平均と畜頭数は66,495頭(前年実績:69,268頭/日、前年差△2,773頭/日)となった。
 肉豚生産出荷予測(農水省食肉鶏卵課;4月21日付け)によると、5月;1,326千頭(前年比100%)、6月;1,312千頭(同98%)、7月;1,294千頭(同103%)、8月;1,308千頭(同99%)、9月;1,329千頭(同98%)であり、今後5か月間の合計頭数は前年比約100%と前年並み。
(2)輸入
 3月の輸入通関実績は、豚肉全体で69.1千トン(前年比96.1%、前月比96.9%)と前年を下回った。内訳は、チルドが36.0千トン(前年比92.1%、前月116.5%)、フローズンは33.1千トン(同100.8%、同81.9%)となった。国別でみると、チルドではメキシコが増加した。フローズンでは、チリ・カナダが増加した。
(参考)形態別相手国別輸入数量
チルド;米国17.0千トン(前年比83.7%)、カナダ16.3千トン(同99.3%)、メキシコ2.7千トン(同114.3%)
フローズン:スペイン10.6千トン(同97.3%)、メキシコ5.5千トン(同82.9%)、チリ3.6千トン(同184.0%)、デンマーク3.6千トン(同93.4%)、カナダ2.2千トン(同152.4%)
 (独)農畜産業振興機構の需給予測(4月26日公表)によると、4月の輸入量;93.5千トン(前年比85.9%)および5月の輸入量;79.0千トン(同102.0%)と4月は前年を下回るが5月は前年を上回る。チルドは、北米の現地価格の高止まりや為替の影響などから低調な数量が継続すると見込まれる。5月は前年が入船遅れにより減少していたことから上回ると見込まれる。フローズンは、欧州各国からの供給が安定的に行われると見込まれるが、昨年の輸入量が多かったため下回ると見込まれる。
令和5年4月:合計93.5千トン(前年比85.9%)、チルド34.5千トン(同92.5%)、フローズン59.0千トン(同82.5%)
令和5年5月:合計79.0千トン(前年比102.0%)、チルド32.3千トン(同120.6%)、フローズン46.7千トン(同92.2%)
直近3か月(3月~5月)平均:合計80.1千トン(前年比93.1%)、チルド34.1千トン(同99.3%)、フローズン45.9千トン(同88.9%)

需要

(1)家計
 総務省発表の3月度家計調査報告によると、全国二人以上の1世帯当たり豚肉購入数量は1,857g(前年比96.2%)、支出金額が2,762円(同103.4%)となり、購入量は前年を下回ったが、金額は前年を上回った。(※2019年度比:購入量 99.0%、金額 108.8%)
(2)小売
 日本スーパーマーケット協会など食品関連スーパー3団体の3月の販売統計速報によると、畜産部門の売上高は1,139億円(前年比102.1%、既存店ベース101.5%)と前年を上回った。相場高が続き、買上点数の減少は続いているが、豚肉や鶏肉ではやや回復傾向がみられた。牛肉は焼肉用の動きは良いが、和牛など高単価商品の動きが鈍い。豚肉は輸入品の価格高騰より国産が良好となっている。鶏肉は鳥インフルエンザの影響による高値が続くが良好に推移する店舗が多い。低価格商品に需要がシフトしており、売上高は確保できても利益が出にくい状況が続いている。
 日本チェーンストア協会が公表した3月販売概況によると、畜産品の売上は873.2億円(店舗調整後で前年比98.4%)となり、前年を下回った。豚肉、鶏肉の動きは良かったが、牛肉の動きは鈍かった。鶏卵の動きは良かったが、ハム・ソーセージの動きは鈍かった。
 月前半は、消費者の生活防衛意識が高く末端消費が低迷したことで需給は軟調に推移していたが、中旬以降は学校給食の再開に加え、量販店での特売需要の増加やGW向け手当て等による需要が重なったことで需給がひっ迫した。
(3)加工品
 日本ハム・ソーセージ工業協同組合発表の3月の豚肉加工品仕向量は28.6千トン(前年比93.9%)と、加工品の値上げによる販売不振は続き、前年を下回った。内訳は、国産原料5.3千トン(前年比91.4%)・輸入原料23.3千トン(同94.5%)で、国産・輸入原料ともに前年を下回った。なお、上記仕向量とは別枠のシーズンドポークは10.7千トン(前年比107.1%)と、上回った。

在庫

 (独)農畜産業振興機構の需給予測(4月26日公表)によると、3月末の推定期末在庫量は209.8千トン(前年比116.5%、前月比100.4%)となり、前年を上回った。内訳は、輸入品;189.6千トン(前年比121.4%、前月比100.3%)で前年を上回り、国産品;20.2千トン(同84.3%、同101.5%)で前年を下回った。また、今後の期末在庫は、4月が214.3千トン(同111.5%)、5月が224.9千トン(同111.8%)と、いずれも前年を上回って推移するものと見られる。

市況

(1)4月~5月
 4月の東京市場枝肉卸売価格(速報値;4月30日時点)は、562円/kg(前年比114.5%)と前年を上回った。4月の相場は、上旬は内食需要の低迷から弱含みでの推移となったが、中旬以降は学校給食の再開、量販店向けの特売需要の増加やGW向け手当て等により需要が伸長したため、強含みで推移したことで、前年を上回ったが前月は下回った。
 5月の相場は、需要面では消費者の生活防衛意識が依然高いため、牛肉から豚肉への需要シフトが進むと見込まれることから底堅く推移するものと思われる。一方で、供給面では中旬以降に出荷頭数の減少が見込まれていることから、需給がひっ迫する可能性があるため、前月より強含みで推移すると見込まれる。

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