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食肉情勢(令和6年3月)

牛肉

供給

(1)国産
 1月の成牛と畜頭数は、85.2千頭(前年比101.7%)と前年を上回った。内訳を見ると、和牛:39.3千頭(前年比109.1%)、交雑牛:20.0千頭(同99.8%)、乳牛去勢:10.2千頭(同97.4%)となった。
 2月の成牛と畜頭数は、速報値(2月29日まで集計)で81.6千頭(前年比98.4%)と前年を下回る見込みとなった。
 (独)農畜産業振興機構の需給予測(2月27日公表)によると、2月の出荷頭数は、乳用種が減少するものの、和牛、交雑種で増加が見込まれることから、前年を上回ると予測し、3月は、全品種で減少が見込まれることから、前年同月を下回ると予測する。(2月84.9千頭(前年比101.9%)、3月86.8千頭(同93.0%))。そのため、3か月平均(1月~3月)では、出荷頭数84.8千頭(前年比97.5%)、生産量27.1千トン(同98.2%)と前年を下回る予測となっている。
(2)輸入
 1月の輸入通関実績は、全体で43.3千トンと前年を上回った(前年比108.4%、前月比119.8%)。内訳ではチルド:17.0千トン(前年比105.5%、前月比112.8%)、フローズン:26.3千トン(前年比110.3%、前月比124.8%)となった。輸入相手国別では、チルドは豪州が増加したが、それ以外は減少し、フローズンは豪州、ニュージーランド、米国、カナダが増加した。
(参考:形態別相手国別輸入数量)
チルド:豪州8.1千トン(前年比149.3%)、米国7.5千トン(同87.6%)、ニュージーランド0.6千トン(同83.2%)、カナダ0.4千トン(同58.6%)、メキシコ0.1千トン(同62.5%)
フローズン:豪州12.7千トン(前年比130.4%)、米国7.9千トン(同102.0%)、カナダ2.6千トン(同89.1%)、ニュージーランド1.8千トン(同112.7%)、メキシコ0.7千トン(同63.7%)
 (独)農畜産業振興機構の需給予測によると、チルドは、2月は前年の豪州産の輸入量が入船遅れの影響で少なかったことから、前年同月を上回ると見込んでいる。3月は輸入先全体の輸入量が少ないことから、下回ると見込んでいる。フローズンは、生産量の増加から豪州産輸入量が増加するものの、輸入先全体の輸入量が少ないことから、2月、3月とも前年同月を下回ると見込んでいる。3か月平均でも、チルド、フローズンともに下回ると見込んでいる。
令和6年2月 合計:35.1千トン(前年比92.4%)、チルド:14.6千トン(同109.7%)、フローズン:20.5千トン(同83.1%)
令和6年3月 合計:33.5千トン(前年比91.1%)、チルド:14.8千トン(同83.3%)、フローズン:18.7千トン(同98.5%)
直近3か月(1月~3月)平均 合計:37.2千トン(前年比97.2%)、チルド:15.7千トン(同99.9%)、フローズン:21.5千トン(同95.5%)

需要

(1)家計
 総務省発表の1月度家計調査報告によると、全国二人以上の1世帯当たり牛肉購入量は452g(前年比92.1%)、支出金額が1,752円(同98.3%)となり、購入量、支出金額ともに前年を下回った。(※2019年度同月比:購入量 82.5%、金額 96.8%)
(2)小売
 日本スーパーマーケット協会など食品関連スーパー3団体の1月の販売統計速報によると、畜産部門の売上高は1,253.8億円(前年比100.0%、既存店ベース99.3%)と前年並みとなった。精肉全般で相場高傾向のなか、牛肉から豚肉や鶏肉に需要がシフトする傾向が続いている。前年の鳥インフルエンザからの反動もあり、相場が安定している鶏肉が最も好調に推移した。牛肉は年始の焼肉、すき焼き用は、動きが良かったが、それ以外は不振となった。豚肉も国産、輸入ともに高値で伸び悩んだ。ハム・ソーセージの加工肉は引き続き動きが鈍い。
 日本チェーンストア協会が公表した1月販売概況によると、畜産品の売上は959.7億円(店舗調整後で前年比99.9%)となり、前年並みとなった。鶏肉の動きは良かったが、牛肉、豚肉の動きは鈍かった。鶏卵は良かったが、ハム・ソーセージの動きは鈍かった。
(3)外食
 日本フードサービス協会がまとめた外食産業市場調査1月度結果報告によると、元日に能登半島地震があり、一部で宴会や観光の自粛が見られたが、主として人口の多い地域が牽引し、年末から引き続き外食需要は概ね堅調。インバウンド需要も引き続き好調で、全体売上は前年比109.6%、2019年比では113.5%となった。消費者の間ではバリューを感じられる外食の選択が進み、利便性やコスパが優れているメニューの支持も強い。
業態別;
①ファーストフード 前年比108.9%、2019年度比128.6% CMの販促効果や価格改定による客単価上昇があり、繁華街や大型商業施設の客足が回復し好調
②ファミリーレストラン 前年比110.7%、2019年度比103.2% 新年会需要に合わせた高価格帯商品に加え、バリュー商品やクーポン利用が集客に貢献し好調。焼肉店は食べ放題業態が引き続き好調
③ディナーレストラン 前年比112.0%、2019年度比98.4% 関西では、能登半島地震の影響でキャンセルが一部で見られたが、その他の地域では引き続きインバウンドの需要が堅調
④居酒屋 前年比107.8%、2019年度比61.7% 平日は集客に苦戦したところもあったが、月末にかけてオフィス街立地の店を中心に中小規模の宴会が回復傾向となった。
(4)輸出
 1月の輸出実績は602.8トン(前年比139.8%)と前年を上回った。台湾向け(108.1トン、前年比214.0%)、香港向け(93.9トン、前年比151.6%)は上回ったが、米国向け(129.0トン、前年比73.2%)は前年を下回った。また、カンボジア向け(42.3トン、前年比350.5%)は前年を上回ったが、不安定な状況が続いている。

在庫

 (独)農畜産業振興機構の需給予測によると、1月末の推定期末在庫量は133.9千トン(前年比86.2%、前月比103.2%)と前年を下回った。内訳は、輸入品;122.2千トン(前年比85.3%、前月比104.3%)、国産品;11.6千トン(同97.2%、同92.1%)となり、輸入品、国産品ともに前年実績を下回った。なお、今後の期末在庫の推移は、2月末;131.0千トン(同84.5%)、3月末;123.2千トン(同82.3%)と、1月、2月ともに前年を下回ると見込まれている。

市況

(1)2月~3月
 2月の東京市場枝肉卸売価格(速報値;2月29日時点)は、和牛去勢A5が2,578円(前年比102.7%)、A4が2,255円(同103.0%)、交雑去勢B3が1,545円(同112.8%)、乳牛去勢B2が845円(同92.6%)であった。
 1月の和牛価格が高値となったため、末端需要の一部が交雑種へ移行したことから、和牛は前月は下回ったものの前年は上回り、交雑種は前月・前年ともに上回った。
 3月前半は和牛から交雑種への需要移行が続くと見込まれ、和牛は需給が緩むことから弱含み、交雑種は需給が引き締まるため強含みで推移すると見込まれる。月後半はコロナ5類移行後初の卒業式や送迎会時期となり和牛への需要回帰が起こることから和牛は強含み、交雑種は弱含みで推移すると見込まれる。月平均では和牛・交雑種とも横ばいの推移が見込まれる。乳牛去勢は、需給バランスに大きな変化がないことから横ばいを見込む。

豚肉

供給

(1)国産
 1月の全国豚と畜頭数は、1,414千頭と前年を上回った(前年比102.2%)。地域別と畜頭数(数値は前年同月比);北海道98.6%、東北101.7%、関東103.7%、北陸甲信越99.0%、東海101.6%、近畿110.9%、中四国100.6%、九州・沖縄102.5%
 2月の全国と畜頭数は、1,345千頭(速報値2月29日まで集計、前年比102.6%)と前年を上回る見込みとなった。なお、稼働日数は昨年と同様で、1日当たりの平均と畜頭数は70,789頭(前年実績:69,027頭/日、前年差1,762頭/日)となった。
 肉豚生産出荷予測(農水省食肉鶏卵課;2月21日付け)によると、3月;1,437千頭(前年比98%)、4月;1,409千頭(同106%)、5月;1,330千頭(同97%)、6月:1,307千頭(同98%)、7月:1,297千頭(同104%)であり、今後5か月間の合計頭数は前年比約101%と前年を上回る見込み。
(2)輸入
 1月の輸入通関実績は、豚肉全体で72.1千トン(前年比96.2%、前月比106.4%)と前年を下回った。内訳は、チルドが34.7千トン(前年比100.3%、前月比112.3%)、フローズンは37.4千トン(同92.8%、同101.5%)となった。国別でみると、チルドではカナダ、メキシコが増加し、フローズンでは米国、チリが増加し、デンマーク、カナダが減少した。
(参考)形態別相手国別輸入数量
チルド;カナダ16.4千トン(前年比103.2%)、米国15.1千トン(同95.9%)、メキシコ3.2千トン(同108.4%)
フローズン:スペイン12.1千トン(前年比93.6%)、メキシコ5.0千トン(同91.2%)、米国4.0千トン(同141.0%)、デンマーク3.4千トン(同67.1%)、カナダ3.1千トン(同69.1%)
 (独)農畜産業振興機構の需給予測(2月27日公表)によると、2月の輸入量:68.3千トン(前年比95.9%)と下回り、3月の輸入量:66.6千トン(同96.5%)と下回ると見込まれる。チルドは、2月は前年のカナダ産の輸入量が入船遅れの影響で少なかったことから、前年を上回ると見込まれ、3月は為替の影響に加え、北米産の現地相場高から前年を下回ると見込まれる。フローズンは、2月は紅海周辺の情勢悪化により物流の混乱等が生じ、欧州産の輸入量が減少することから、前年を下回ると見込まれる。3月は北米産およびその他の国からの輸入量が増加することから、上回ると見込まれる。
令和6年2月:合計68.3千トン(前年比95.9%)、チルド31.3千トン(同101.3%)、フローズン37.0千トン(同91.7%)
令和6年3月:合計66.6千トン(前年比96.5%)、チルド31.9千トン(同88.6%)、フローズン34.7千トン(同105.1%)
直近3か月(1月~3月)平均:合計68.5千トン(前年比95.5%)、チルド32.5千トン(同96.2%)、フローズン35.9千トン(同94.8%)

需要

(1)家計
 総務省発表の1月度家計調査報告によると、全国二人以上の1世帯当たり豚肉購入数量は1,823g(前年比97.4%)、支出金額が2,866円(同98.0%)となり、購入量、金額ともに前年を下回った。(※2019年度比:購入量 97.4%、金額 110.6%)
(2)小売
 日本スーパーマーケット協会など食品関連スーパー3団体の1月の販売統計速報によると、畜産部門の売上高は1,253.8億円(前年比100.0%、既存店ベース99.3%)と前年並みとなった。精肉全般で相場高傾向のなか、牛肉から豚肉や鶏肉に需要がシフトする傾向が続いている。前年の鳥インフルエンザからの反動もあり、相場が安定している鶏肉が最も好調に推移した。牛肉は年始の焼肉、すき焼き用は、動きが良かったが、それ以外は不振となった。豚肉も国産、輸入ともに高値で伸び悩んだ。ハム・ソーセージの加工肉は引き続き動きが鈍い。
 日本チェーンストア協会が公表した1月販売概況によると、畜産品の売上は959.7億円(店舗調整後で前年比99.9%)となり、前年並みとなった。鶏肉の動きは良かったが、牛肉、豚肉の動きは鈍かった。鶏卵は良かったが、ハム・ソーセージの動きは鈍かった。
 3連休が2度あり、連休前は手当が集中したことで需給が引き締まった。さらに、関東地区では降雪の影響から出荷に混乱が生じたことで需給が引き締まった。
(3)加工品
 日本ハム・ソーセージ工業協同組合発表の1月の豚肉加工品仕向量は24.5千トン(前年比87.1%)と、加工品の値上げによる販売不振は続き、前年を下回った。内訳は、国産原料4.7千トン(前年比89.5%)・輸入原料19.8千トン(同86.6%)となった。なお、上記仕向量とは別枠のシーズンドポークは9.0千トン(前年比99.4%)と、前年を下回った。

在庫

 (独)農畜産業振興機構の需給予測(2月27日公表)によると、1月末の推定期末在庫量は194.0千トン(前年比93.6%、前月比101.3%)となり、前年を下回った。内訳は、輸入品;173.2千トン(前年比91.8%、前月比101.8%)と前年を下回り、国産品;20.8千トン(同112.4%、同97.2%)と前年を上回った。また、今後の期末在庫は、2月は191.5千トン(同91.6%)、3月は184.0千トン(同87.7%)と前年を下回って推移するものと見られる。

市況

(1)2月~3月
 2月の東京市場枝肉卸売価格(速報値;2月29日時点)は、594円/kg(前年比101.0%)と前年を上回った。寒暖の差が例年より大きかったことなどから、予想より鍋物需要がふるわず需要は伸び悩んだものの、関東地区での降雪による出荷乱れや寒暖差による成育遅れなどから需給が引き締まり強含みで推移した。
 3月は、肉豚生産出荷予測では前年を下回る見込みであるものの、2月の成育遅れなどが解消することで出荷頭数が増加し需給が緩む可能性があることや、月後半は学校給食の休止等により需給が緩むことが予想されるため、弱含みでの推移を見込む。

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