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食肉情勢(令和5年9月)

牛肉

供給

(1)国産
 7月の成牛と畜頭数は、95.3千頭と前年並み(前年比101.3%)。内訳を見ると、和牛:45.9千頭(前年比102.3%)、交雑牛:23.0千頭(同107.9%)、乳牛去勢:11.2千頭(同93.4%)となった。
 8月の成牛と畜頭数は、速報値(8月31日まで集計)で84.3千頭と前年を下回った(前年比98.7%)。
 (独)農畜産業振興機構の需給予測(8月29日公表)によると、8月の出荷頭数は、乳用種は減少するが、和牛および交雑種での増加が見込まれることから、前年同月を上回ると予測し、9月は、和牛が減少するものの、交雑種および乳用種の出荷頭数の増加が見込まれることから上回ると予測する。(8月86.0千頭(前年比100.3%)、9月90.2千頭(同100.1%))。そのため、3か月平均(7月~9月)でも、出荷頭数90.2千頭(前年比101.1%)、生産量28.7千トン(同102.2%)と前年を上回る予測となっている。
(2)輸入
 7月の輸入通関実績は、全体で38.7千トンと前年を下回った(前年比74.4%、前月比88.6%)、内訳ではチルド;19.4千トン(前年比99.2%、前月比117.4%)、フローズン;19.3千トン(前年比59.5%、前月比71.2%)となった。輸入相手国別では、チルドは豪州が増加したが、その他の国は減少した。フローズンは、全ての国が減少した。
(参考:形態別相手国別輸入数量)
チルド:豪州9.3千トン(前年比123.8%)、米国9.0千トン(同90.1%)、カナダ0.4千トン(同51.5%)、ニュージーランド0.3千トン(同59.0%)、メキシコ0.2千トン(同46.4%)
フローズン:豪州8.0千トン(前年比60.8%)、米国5.3千トン(同60.8%)、メキシコ2.1千トン(同85.2%)、ニュージーランド1.8千トン(同64.6%)、カナダ1.7千トン(同47.7%)
 (独)農畜産業振興機構の需給予測によると、チルドの輸入量は、国内需要の低迷や米国産の現地価格の高騰等により減少し、8月、9月ともに前年を下回ると見込んでいる。フローズンは、国内の輸入品在庫量が多い事や円安の影響等により、8月、9月ともに前年を下回ると見込んでいる。3か月平均でも、チルド、フローズンともに下回ると見込んでいる。
令和5年8月 合計;37.9千トン(前年比70.8%)、チルド;17.3千トン(同88.5%)、フローズン;20.6千トン(同60.8%)
令和5年9月 合計;39.5千トン(前年比76.1%)、チルド;16.8千トン(同98.9%)、フローズン;22.7千トン(同65.0%)
直近3か月(7月~9月)平均 合計;38.6千トン(前年比73.6%)、チルド;17.6千トン(同94.4%)、フローズン;21.0千トン(同62.2%)

需要

(1)家計
 総務省発表の7月度家計調査報告によると、全国二人以上の1世帯当たり牛肉購入量は475g(前年比94.2%)、支出金額が1,643円(同91.8%)となり、購入量、支出金額ともに前年を下回った。(※2019年度同月比:購入量 91.0%、金額 108.2%)
(2)小売
 日本スーパーマーケット協会など食品関連スーパー3団体の7月の販売統計速報によると、畜産部門の売上高は1,142.7億円(前年比103.9%、既存店ベース102.4%)と前年を上回った。牛肉はステーキや焼肉需要は好調だが、国産より輸入の動きがよい。豚肉は挽肉など普段使いの商品を中心に好調。国産にも回復傾向が見られたが、輸入の動きがよい。鶏肉はむね肉を中心に好調。加工肉は値上げの影響で好不調が分かれている。売上高は確保できても利益が出にくい状況が続いている。
 日本チェーンストア協会が公表した7月販売概況によると、畜産品の売上は884.2億円(店舗調整後で前年比102.3%)となり、前年を上回った。豚肉、鶏肉の動きは良かったが、牛肉の動きは鈍かった。鶏卵、ハム・ソーセージの動きは良かった。
(3)外食
 日本フードサービス協会がまとめた外食産業市場調査7月度結果報告によると、全国的に記録的な暑さの中、夏限定メニューが好調だった。花火や祭事などのイベント再開で人流回復が進み、インバウンドの回復と相まって、全体売上は前年比114.2%、2019年比では112.6%と好調であったが、値上げによる客単価の上昇と2019年7月が長雨低温で売上不調だったことが背景にある。
業態別;
①ファーストフード 前年比110.9%、2019年度比124.4% 季節限定商品によるメニューや新商品が好調、都市部でのインバウンド回復もあり、売上は好調
②ファミリーレストラン 前年比117.5%、2019年度比104.2% 全体では回復基調が継続している。焼肉店は駅前繁華街の小規模店舗でも集客が回復してきた
③ディナーレストラン 前年比121.1%、2019年度比98.2% 客単価が高いインバウンド客の回復が続き好調。商業施設立地の店舗は好調、一部路面店は猛暑日で客足が鈍りがち
④居酒屋 前年比126.1%、2019年度比65.2% 夏季キャンペーンもありビール販売が好調。依然として店舗減少が影響しコロナ前には戻らず
(4)輸出
 7月の輸出実績は631.1トン(前年比97.7%)と前年を下回った。台湾向け(135.8トン、前年比180.6%)は好調が続いているものの、香港向け(106.9トン、前年比96.6%)は再び前年割れとなった。また、カンボジア向け(53.3トン、前年比61.7%)は前月に引き続き前年を下回っており不安定な状況となっている。

在庫

 (独)農畜産業振興機構の需給予測によると、7月末の推定期末在庫量は159.1千トン(前年比105.6%、前月比99.3%)と前年を上回った。内訳は、輸入品;146.6千トン(前年比106.7%、前月比99.0%)、国産品;12.5千トン(同94.1%、同102.5%)となり、輸入品は前年実績を上回ったが、国産品は下回った。なお、今後の期末在庫の推移は、8月末;150.1千トン(同93.9%)、9月末;146.4千トン(同88.3%)と、7月、8月ともに下回ると見込まれている。

市況

(1)8月~9月
 8月の東京市場枝肉卸売価格(速報値;8月31日時点)は、和牛去勢A5が2,448円(前年比99.9%)、A4が2,060円(同94.6%)、交雑去勢B3が1,442円(同96.6%)、乳牛去勢B2が784円(同89.6%)であった。
 酷暑による消費減退に加え、お盆期に西日本や中部地区へ台風や豪雨の影響があったことで、需要が盛り上がらず相場は全畜種とも弱含みで推移した。また、乳牛去勢は、末端消費の冷え込みから輸入牛肉や交雑種牛肉との競合が激化しており、他畜種より需給バランスが崩れ前年・前月を大きく下回った。
 徐々に暑さが和らぐことから需要の回復に期待が持てること、中国からの団体旅行が解禁されインバウンド需要の増加が見込まれるため、和牛・交雑種ともに強含みで推移すると見込まれる。一方で、乳牛去勢は、学校給食の再開により需給バランスが改善し、前月より強含みで推移すると思われるが、前年の価格水準から大きく下回ることが見込まれる。

豚肉

供給

(1)国産
 7月の全国豚と畜頭数は、1,247千頭と前年並み(前年比99.7%)。地域別と畜頭数(数値は前年同月比);北海道104.8%、東北101.3%、関東99.9%、北陸甲信越98.6%、東海99.5%、近畿90.3%、中四国100.5%、九州・沖縄97.5%
 8月の全国と畜頭数は、1,294千頭(速報値8月31日まで集計、前年比98.0%)と前年を下回る見込みとなった。なお、稼働日数は昨年より2日少なく、1日当たりの平均と畜頭数は64,705頭(前年実績:62,926頭/日、前年差+1,779頭/日)となった。
 肉豚生産出荷予測(農水省食肉鶏卵課;8月25日付け)によると、9月;1,328千頭(前年比98%)、10月;1,451千頭(同104%)、11月;1,480千頭(同100%)、12月;1,485千頭(同102%)、令和6年1月;1,421千頭(同103%)であり、今後5か月間の合計頭数は前年比約101%と前年並み。
(2)輸入
 7月の輸入通関実績は、豚肉全体で74.9千トン(前年比90.2%、前月比92.0%)と前年を下回った。内訳は、チルドが30.3千トン(前年比98.0%、前月比97.7%)、フローズンは44.6千トン(同85.5%、同88.5%)となった。国別でみると、チルドではメキシコが増加したものの、カナダ、米国が減少し、フローズンでも、デンマーク、スペイン、カナダなどすべての国で減少した。
(参考)形態別相手国別輸入数量
チルド;米国14.4千トン(前年比98.2%)、カナダ13.1千トン(同93.1%)、メキシコ2.8千トン(同128.2%)
フローズン:スペイン14.4千トン(前年比68.8%)、メキシコ7.9千トン(同95.3%)、アメリカ4.5千トン(同93.7%)、カナダ3.6千トン(同89.3%)
 (独)農畜産業振興機構の需給予測(8月29日公表)によると、8月の輸入量;77.7千トン(前年比89.8%)および9月の輸入量;73.7千トン(同101.6%)と8月は前年を下回るが、9月は前年並み。チルドは、米国内での需要の高止まりによる現地相場の高騰などから下回ると見込まれる。9月についてはメキシコ産の輸入量の増加により前年を上回ると見込まれる。フローズンは、国内の輸入品在庫量が多いこと、昨年のスペイン産の輸入量が多かったことなどから下回ると見込まれる。
令和5年8月:合計77.7千トン(前年比89.8%)、チルド31.8千トン(同94.0%)、フローズン45.9千トン(同87.2%)
令和5年9月:合計73.7千トン(前年比101.6%)、チルド30.2千トン(同102.7%)、フローズン43.5千トン(同100.9%)
直近3か月(7月~9月)平均:合計76.5千トン(前年比94.8%)、チルド30.8千トン(同98.3%)、フローズン45.7千トン(同92.6%)

需要

(1)家計
 総務省発表の7月度家計調査報告によると、全国二人以上の1世帯当たり豚肉購入数量は1,765g(前年比101.1%)、支出金額が2,698円(同104.2%)となり、購入量、金額ともに前年を上回った。(※2019年度比:購入量 102.6%、金額 114.4%)
(2)小売
 日本スーパーマーケット協会など食品関連スーパー3団体の7月の販売統計速報によると、畜産部門の売上高は1,142.7億円(前年比103.9%、既存店ベース102.4%)と前年を上回った。牛肉はステーキや焼肉需要は好調だが、国産より輸入の動きがよい。豚肉は挽肉など普段使いの商品を中心に好調。国産にも回復傾向が見られたが、輸入の動きがよい。鶏肉はむね肉を中心に好調。加工肉は値上げの影響で好不調が分かれている。売上高は確保できても利益が出にくい状況が続いている。
 日本チェーンストア協会が公表した7月販売概況によると、畜産品の売上は884.2億円(店舗調整後で前年比102.3%)となり、前年を上回った。豚肉、鶏肉の動きは良かったが、牛肉の動きは鈍かった。鶏卵、ハム・ソーセージの動きは良かった。
 月前半は、酷暑の影響から発育が遅れたことで出荷頭数が減少したものの、消費減退の影響もあり需給はバランスしていた。月後半は、西日本から中部地区において台風や豪雨の影響から需給が緩和したものの、一部地域での学校給食再開や九州での豚熱発生等の影響から需給が引き締まった。
(3)加工品
 日本ハム・ソーセージ工業協同組合発表の7月の豚肉加工品仕向量は27.8千トン(前年比89.7%)と、加工品の値上げによる販売不振は続き、前年を下回った。内訳は、国産原料5.3千トン(前年比89.6%)・輸入原料22.5千トン(同89.7%)で、国産・輸入原料ともに前年を下回った。なお、上記仕向量とは別枠のシーズンドポークは9.4千トン(前年比91.6%)と、下回った。

在庫

 (独)農畜産業振興機構の需給予測(8月29日公表)によると、7月末の推定期末在庫量は240.8千トン(前年比108.8%、前月比98.4%)となり、前年を上回った。内訳は、輸入品;220.1千トン(前年比110.0%、前月比97.7%)と前年を上回り、国産品;20.8千トン(同97.7%、同106.1%)と前年を下回った。また、今後の期末在庫は、8月が235.5千トン(同103.1%)、9月が227.8千トン(同101.8%)と、いずれも前年を上回って推移するものと見られる。

市況

(1)8月~9月
 8月の東京市場枝肉卸売価格(速報値;8月31日時点)は、714円/kg(前年比110.9%)と前年を上回った。8月の枝肉相場は、月前半が酷暑による肉豚出荷頭数の影響はあったが、消費減退等から需給はバランスし7月後半の相場水準で推移した。月後半は、西日本から中部地区において台風や豪雨の影響から需給が一時的に緩和したものの、一部地域での学校給食再開や九州での豚熱発生等の影響から需給が引き締まったことで相場は急騰し、月平均では前年・前月を上回る700円/kgを超える水準となった。
 9月の枝肉相場は、前半が酷暑や九州での豚熱等の影響から肉豚出荷頭数が減少することが見込まれていること、学校給食の全国的な再開により需要が回復することから需給が引き締まり高値推移することが予想される。一方で3連休以降は徐々に肉豚出荷頭数が増加することで需給が緩和すると思われるため、月平均では前年を上回るものの前月は下回る弱含みでの推移を見込む。

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