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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和4年1月号

1. アルファルファヘイ

  1. カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     いくつかの生産者は2022年産の収穫を実施しています。相場は依然として堅調に推移しており、多くの生産者が更なる価格上昇を予想しています。
  2. ワシントン州(コロンビア盆地)
     今年産の収穫は終了しました。直近の低気温と吹雪により需要の高まりが見られたため、牧草相場は依然として堅調に推移しています。
     12月の降雨のため地域によっては干ばつの程度が一定緩和されたものの、全体としては干ばつ状態が続いています。国立気象局は、米国西海岸北部および北カリフォルニアの多くの地域で干ばつが改善する可能性がある一方で、ニューメキシコ州とテキサス州を含む米国西海岸南部の多くが春まで干ばつ状態にとどまる可能性があると予測しています。米国西海岸北部において干ばつが改善すれば新穀の収穫量に対して好材料ですが、現在の気象条件は依然として牧草市場に圧力をかけています。
     西海岸でのコンテナ船の遅れ等の問題は輸出業者を依然として悩ませており、コンテナ輸送の信頼性が低下しているため、牧草購入のほとんどは国内業者により行われています。新穀アルファルファの作付面積は昨年と同程度と見られますが、昨年秋に作付けされた作物の春頃までの生育状況によっては、わずかに少なくなる可能性があります。もし春頃までの生育が芳しくない場合には、生産者は他の作物に転作する可能性があります。

2. 米国産チモシーヘイ

 コロンビア盆地では収穫が終了しました。生産者は例年の年間平均収量を下回ったと報告しており、その原因はアルファルファ同様に降雨不足と高気温と考えられます。
 作付面積は前年と同程度かわずかに少なくなる可能性があります。その理由として確認できているものは、昨年秋頃の作物の収穫が遅れたため、チモシーを作付けするタイミングを逸してしまったことが挙げられます。

3. スーダングラス

 収穫は既に終了しています。ロサンゼルス・ロングビーチ港における混雑やコンテナ船の遅れがスーダンの荷動きにも影響を及ぼしています。本邦での在庫不足もあり、早期の船積み貨物到着が期待されます。このようななか、輸出業者は依然として日本からの追加購入のリクエストを受けている状況です。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 収穫は既に終了しています。
 港の混雑や船のキャンセルを含めたスケジュールの乱れや船のスペース不足等により、船積みは非常に苦しい状況です。日本や韓国からの需要は高い一方で物流面での混乱は継続しており、輸出業者は2021年産ストローの在庫全体としての荷動きの遅れを懸念しています。
 2012年~2021年における日本および韓国向けの輸出量を下図に示します。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     全エリア収穫が完了しました。新穀の出荷が開始されています。
     既報の通り、新穀生産期間中の累積降雨量が例年より大きい西豪州(WA)は中位~下位グレードが多く発生する事から、一部のサプライヤーは上位グレードの出荷数量制限を行うと表明しています。南豪州(SA)は上位~中位グレードが多いものの下位グレードが少なく、ビクトリア州(VIC)は収穫後の降雨や湿度影響から若干の茶葉混入が確認されます。全豪オーツヘイ生産量は前年比で大幅に減少しており、輸出需要を満たせない可能性があるため、各サプライヤー毎に出荷制限を行う可能性が示唆されています。
     新穀価格は、海上運賃上昇受け引き続き上昇しています。既に前年同月比で$100の上昇となっており、今後も運賃上昇が継続するとさらなる値上げの懸念があります。
     このような環境下でも、日本を含め、中国、韓国、台湾からのオーダーは進んでおり、サプライヤーのプレススケジュールは既に5月上旬まで埋まっています。また、ブッキングの確保が依然として厳しいことから、追加オーダーを受けられない状況も見られます。現時点で最速オーダーを行っても、日本の各港への到着ベースは、6月下旬~7月上旬の到着予定が目安となります。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     小麦の収穫が完了しました。ベーリング作業が実施中ですが、新穀出荷は例年より大幅に遅れており、1~2月積が新穀最速出荷となる見込みです。
     小麦の作付面積が歴代最高となっていますが、そのほとんどは穀物としての収穫が行われており、ストローのすき込みが行われている事から、特にWAでは、集荷量が極端に不足しています。SAやVICでは畜産相場が最高値である事も牽引し、豪州国内の需要が強い事や、日本以外の輸入国からのオファーも強く、取り合いが発生しています。
     一部のサプライヤーの見立てでは、輸出需要に対して10万トン以上の原料不足が予想されており、日本や他国から事前にオーダーを受けていても、「出荷できない」もしくは、大幅に数量制限が必要という回答を返していると聞かれます。
     新穀価格は、上述の競合が影響している事や、海上運賃の上昇を受け、オーツヘイ低級品よりも高額になっている状況です。さらに、上述のオーツヘイ同様に海上運賃による値上げも発生しています。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路共に、動静の大幅な遅延および、ブッキングの確保が厳しい状況が続いています。
  1. 北米航路
     アジア発北米向けの貨物量は、引き続き堅調です。太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は継続しており、作業員不足およびトラッカー不足、また船社が設定しているターミナルへの搬入時間が限られていることから、予定していた本船に貨物をのせることができず、遅延につながる状況となっています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、年末に発生した寒波の影響でヤードやターミナルにつながる道路が一時閉鎖される事態となっていましたが、現時点では復旧しています。今後も寒波の影響で一か月程度の遅延が起こりうる可能性があるため、現地の天候には注視が必要な状況となっています。
     また、ブッキングの枠数についても非常に限定的な状況となっており、日本向けに希望している枠数を確保できない状況も続いています。今後の回復の見通しも非常に立ち難い状況となっています。
     1-2月積のGRI(海上運賃一括値上げ)についても実施のアナウンスがされており、今後も運賃は堅調に推移する見通しです。
     今後の懸念としては、2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉です。この期間に向けて在庫の積み増しが予想されており、今後迎える旧正月を超えて夏頃までは確実に、物流の混乱が見通されています。その先についてもたまった荷物の荷動きの解消には時間がかかると見通されており、船会社筋からは2022年中はこの混乱は収束しない可能性があると示唆されています。
  2. 豪州航路
     各船会社は、豪州航路においても北米航路同様に、中国/アジア向けに空コンテナを返却する事を至上命題にしています。今まで日本への直行便のサービスを提供していた船会社も、サービスの中止を表明しているため、日本の各港への到着まで、以前よりさらに日数を要するようになっています。
     豪州国内の港湾の状況ですが、未決の労使交渉はパトリック(CY運営会社)、Svitzer(タグボートの会社)を相手取ったストライキは妥結していないため、今後、再発の懸念があります。
     海上運賃は北米航路同様に値上げが続いています。加えて、船会社からのLSS(低硫黄燃料サーチャージ)の追徴も再開されており、さらなる値上げを産む状況となっています。

以上

令和4年1月25日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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