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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和4年2月号

1. アルファルファヘイ

  1. カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     1番刈の収穫が進められています。天気が良好であるため収穫の進捗も良く、1番刈の前半に収穫されたものは一部国内向けに販売された模様です。相場は依然として堅調です。
  2. ワシントン州(コロンビア盆地)
     2021年産の収穫は終了しました。 先月は低気温かつ高湿度であったことから粗飼料給与への需要が高まり、牧草相場は堅調に推移しました。牧草供給業者は購買に消極的である一方で、国内酪農家や肥育農家の購買意欲は高く、また生産者も販売に意欲的であるため、現在の圃場在庫は少ないものと見られます。2月に入っても低気温は継続しており、この状況は今後も継続すると見られます。
     干ばつについては、一定改善している状況ではあるものの、1月の天候は予想されていたより湿潤であったとはいえず、今後の降雨が期待される地域もいくつかあります。国立気象局によると、ワシントン州、オレゴン州、アイダホ州、モンタナ州西部の状況は改善すると予測される一方で、モンタナ州東部、ワイオミング州、および米国西海岸南部の州では、1月以前に予想されていたほどには改善が見込まれない状況です。
     今後2か月の天候は新穀価格に大きな影響を与えると見られ、今後も注視する必要があります。肥料および燃料価格はここ2か月間で急激に上昇し、2022年産のアルファルファ価格に影響するものと見られます。

2. 米国産チモシーヘイ

 コロンビア盆地では収穫が終了しました。生産者は例年の年間平均収量を下回ったと報告しており、その原因はアルファルファ同様に降雨不足と高気温と考えられます。
 作付面積は前年と同程度かわずかに少なくなる可能性があります。その理由として確認できているものは、昨年秋頃の作物の収穫が遅れたため、チモシーを作付けするタイミングを逸してしまったことが挙げられます。

3. スーダングラス

 輸出業者は2022年産の新穀スーダン価格を非常に懸念しています。肥料価格、燃料費等エネルギーコスト、人件費、その他生産資材費が高騰していることが主な理由です。
 旧穀在庫が端境期に問題無く出荷されるかどうかは現時点では不明ですが、コンテナ物流の遅れ等により繰越在庫が発生する可能性があります。
 小麦の作付面積が増えており、現在でも作付けが継続している模様です。小麦の作付けが落ち着いた段階で、スーダンの作付面積に関してより深い考察が可能になると思いますが、小麦の増加により早播きスーダンの作付けが例年よりも少なくなる一方で、小麦収穫後のスーダンの作付けが増えるものと思われます。
 例年では早播きスーダンは上級品~中級品の中心占めるため、2022年産は相対的にこれらが少なくなる可能性があります。通常、スーダンの収穫は6月第1週頃に開始となります。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 旧穀在庫が圃場にあり、輸出業者に引き込みが行われています。一方、港の混雑や船のキャンセルを含めたスケジュールの乱れや船のスペース不足等により、船積みに関する困難は改善されていません。このようななか、オレゴン産ストローの相場は堅調に推移しています。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     全エリアで新穀の収穫・ベーリングが完了しています。サプライヤー情報によると、2021Cropのオーツヘイとしての生産量は、輸出需要に対して20万トン弱のショートが見込まれ、干ばつだった2019Cropに迫るレベルでの不足が予測されています。
     既報の通り、新穀生産期間中の累積降雨量が例年より大きい西豪州(WA)は中位~下位グレードが多く発生しますが、上位グレードが不足しています。南豪州(SA)やビクトリア州(VIC)では上位~中位グレードが多いものの下位グレードが不足しています。各州のサプライヤーで状況が異なるものの、出荷制限が発生する見込みです。この背景として、①中国への輸出が継続できている3工場から年間20万トン強の輸出が行われている事、②韓国・台湾それぞれが昨年の10-20%増となる20-40万トンの輸出が行われている事、加えて③日本向けも10-%以上の増となる40万トンを超える水準で輸出が行われており、各国の豪州産ヘイ(オーツだけではなく小麦、大麦へも)需要が高まっている事が背景となっています。また、低級グレードについては、好調な畜産相場を背景とした内需(特にSA/VIC)が強く、輸出業者との取り合いが発生しており、現地価格の増嵩が発生しています。
     サプライヤーのプレススケジュールは既に5-6月まで埋まっており、日本向け即積みを行っても、6-7月入船が目安となります。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     小麦の収穫が完了しました。小麦ストローの輸出は例年より大幅に遅れており、ようやく新穀の船積みが行われた状況です。
     穀物相場が好調であることを要因として、そのほとんどは穀物としての収穫が行われており、ストローのすき込みが行われている事から、全豪でのストロー集荷量が極端に不足しています。SAやVICでは畜産相場好調である事や、日本を含めた輸出需要も強い事から、取り合いが発生しており産地価格が増嵩しています。
     サプライヤーの見立てでは、輸出需要に対して10万トン以上の原料不足が予想されており、日本や他国から事前にオーダーを受けていても、「出荷できない」という回答を返している例も聞かれます。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路共に、動静の大幅な遅延および、ブッキングの確保が厳しい状況が続いています。
  1. 北米航路
     アジア発北米向けの貨物量は、引き続き堅調な推移となっています。太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は引き続き継続しており、作業員不足およびトラッカー不足、また船社が設定しているターミナルへの搬入時間が限られていることから、予定していた本船に貨物をのせることができず、遅延につながる状況となっています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、年末に発生した寒波の影響でヤードやターミナルにつながる道路が一時閉鎖される事態となっておりましたが、現時点では復旧をしています。今後も寒波の影響で一か月程度の遅延が起こりうる可能性があるため、現地の天候には注視が必要な状況となっています。
     また、ブッキングの枠数についても非常に限定的な状況となっており、日本向けに希望している枠数を確保できない状況も続いています。今後の回復の見通しも非常に立ち難い状況となっています。
     2-3月積のGRI(海上運賃一括値上げ)についても実施のアナウンスがされており、今後も運賃は堅調に推移する見通しです。
     今後の懸念としては、2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉です。争点は、①港湾の自動化と②給与関係。業績が好調な船会社や港湾関係業者として②は対応ができる可能性があるものの、①は、現在の労働者にとって受け入れがたい内容となる可能性がある事から、交渉が難航する可能性を孕んでいます。
     このため、ストライキの発生懸念を鑑み、輸出入を行う各業者は、この期間に向けて在庫の積増しを行なう事が予想されており、夏頃までは確実に、物流の混乱が見通されています。その先についてもたまった荷物の荷動きの解消には時間がかかると見通されています。
  2. 豪州航路
     各船会社は、豪州航路においても北米航路同様に、中国/アジア向けに空コンテナを返却する事を至上命題にしています。今まで日本への直行便のサービスを提供していた船会社も、サービスの中止を表明しているため、日本の各港への到着まで、以前よりさらに日数を要するようになっています。
    豪州国内の港湾の状況ですが、2020年1月から継続していたパトリック(CY運営会社)とMUA(オーストラリア海事組合)とのストライキが先週末ようやく妥結されました。これにより、2026年まで落ち着きを取り戻す事になる見込みです。
     海上運賃は北米航路同様に値上げが続いています。加えて、船会社からのLSS(低硫黄燃料サーチャージ)の追徴も再開されており、さらなる値上げを産む状況となっています。

以上

令和4年2月16日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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