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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和4年3月号

1. アルファルファヘイ

  1. カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     春に近づくにつれ気温が高まってきています。生産者は既に1番刈の収穫を始めており、2番刈は今月末に開始となる様子です。早刈りのアルファルファは非常に品質が良く高成分となりました。一方、相場は非常に堅調に推移しており、この状況は他の地域も含めて数か月間は継続するものと見られます。
     現時点において、中国は繰越在庫もなく在庫が薄い状況であるため、高品質品を中心に積極的に購買しています。一方、サウジアラビアや国内酪農家からの需要は、中国からの需要の高まりを受け直近ではやや落ち着いている様子です。
     乳価の高まりを受け、国内酪農家は以前よりも高成分品の購買意欲が高くなっています。また、米国西海岸での干ばつ傾向は続いているため、米国国内からの需要は高くなると見られます。
     3月のインペリアルバレー灌漑局からの発表によると、134,031エーカーが灌漑されています(前年同月:147,000エーカー、先月:134,690エーカー)。アルファルファの作付面積は昨年対比で約8%減少しており、小麦の作付けが増加したことが主要因と見られます。
  2. ワシントン州(コロンビア盆地)
     2月の降雨量については良好で、3月に入ってからも平野部には降雨があり、山間部には降雪が見られるなど、干ばつは全体的に若干和らいだように見受けられます。一方で、地域によっては依然として中程度以上の干ばつとなっている様子です。改善がみられる地域はオレゴン州北部、ワシントン州南東部、アイダホ州北部、モンタナ州西部ですが、直近の天気予報は変わりやすく、今後も状況を注視する必要があります。
     牧草供給については依然として品薄な状況が続いており、相場も堅調です。肥料および燃料価格はここ数か月間で急激に上昇し、今年産のアルファルファ価格に影響するものと見られます。作付面積は昨年度と同程度となると見られます。

2. 米国産チモシーヘイ

 特に天水地域では、昨年干ばつが続いたことから作付けが不十分となり、作付面積は前年と比べて少なくなる可能性があります。一方で、生育状況等については4月以降になれば情報が得られるものと思われます。

3. スーダングラス

 2022年産の作付けが進められています。小麦の作付けが増加しているため、早播きスーダンの作付けは限定的となる一方で、小麦収穫後のスーダンの作付けは増加すると見られ、スーダンの全体的な作付面積は増加するものと見られます。
 2021年産の価格は既に高かったのにも関わらず、新穀では更なる価格上昇が予想されます。在庫が薄いことと生産コスト上昇、日本向け需要の高まりなどから相場は堅調に推移する見通しであり、また、燃料費、電気代、最低賃金、ラップ代やストラップ代などの生産資材費など、あらゆるコストが上昇しているため、輸出業者は新穀価格を非常に懸念しています。
 3月のインペリアルバレー灌漑局からの発表によると、2,934エーカーが灌漑されています(前年同月:2,441エーカー、先月:373エーカー)。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 新穀の収穫スケジュールを予測するには早すぎるタイミングです。一方で、コンテナ不足や、港の混雑、船のスケジュールの乱れ等が継続しており、輸出業者は引き続き船積みに苦戦している模様です。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     全エリアで新穀の収穫・ベーリングが完了しています。サプライヤー情報によると、2021年産のオーツヘイとしての生産量は、輸出需要に対して20万トン弱のショートが見込まれ、干ばつだった2019年産に迫るレベルでの不足が予測されています。
     各州のサプライヤーで状況が異なるものの、上位や下位グレード品で出荷制限が発生する見込みです。この背景として、①中国への輸出が継続できている3工場から年間20万トン強の輸出が行われている事、②韓国・台湾それぞれが昨年の10-20%増となる20-40万トンの輸出が行われている事、加えて③日本向けも10%以上の増となる40万トンを超える水準で輸出が行われており、各国の豪州産ヘイ(オーツだけではなく小麦、大麦へも)需要が高まっている事が背景となっています。また、豪州国内の畜産相場の高止まりを受け、内需と輸出業者との取り合いが続いており、現地価格が増嵩しています。(3)に記載の豪州東部の洪水による飼料の損失によりどのような影響が発生するか注視が必要となっています。
     サプライヤーのプレススケジュールは既に6月まで埋まっており、日本向け即積みを行っても、7-8月入船が目安となります。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     小麦の収穫が完了しました。①穀物相場が好調であること、②世界的な肥料価格の高騰を要因として、穀物収穫後のストローが収穫されず、「すき込み」が行われしまっているた、え、全豪でのストロー集荷量が極端に不足しています。SAやVICでは畜産相場好調である事や、日本を含めた輸出需要も強い事から、取り合いが発生しており産地価格が増嵩しています。サプライヤーの見立てでは、輸出需要に対して10万トン以上の原料不足が予想されており、日本や他国から事前にオーダーを受けていても、「出荷できない」という回答を返している例も聞かれます。
  • 豪州東部で発生した大洪水の影響について
     オーストラリア東部で2/24から記録的大雨に見舞われ、大洪水が発生しています。この規模は1,000年に1度とも言われており、現時点で死者20人を出しており、農業界にも打撃を与えています。大きな影響を受ける作物は、大豆やナッツで、今シーズンの生産量が半減する見込みのようです。畜産や酪農では家畜が流されただけでなく、飼料が壊滅的に減少したほか、港の閉鎖などサプライチェーン(調達・供給網)が寸断され輸出にも影響を与えています。洪水で被害を受けた酪農家は100軒超で、うち70軒が深刻な状況と聞かれます。ブリスベン港は豪州最大の牛肉の輸出港ですが、2/28以降3/13現在も制限が続いており、港湾に漂流物が多く、大型船の入港は制限が掛かっているものの、港自体は24時間稼働を行っているようです。食肉加工場の稼働にも影響し、下図の通り解体処理数も激減している状況で、日本向けなど牛肉輸出に大きな影響を及ぼす見込みとなっています。
     降雨による河川の増水がなかなか引かない状況のため。残骸の片付けが終わらない事から、完全復旧には数週間かかる見込みとの事です。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、引き続き動静の大幅な遅延および、ブッキングの確保が厳しい状況が続いています。
  1. 北米航路
     アジア発北米向けの貨物量は、引き続き堅調な推移となっています。太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港の混雑は引き続き継続しており、作業員不足およびトラッカー不足、また船社が設定しているターミナルへの搬入時間が限られていることから、予定していた本船に貨物をのせることができず、遅延につながる状況となっています。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港では、年末に発生した寒波の影響でヤードやターミナルにつながる道路が一時閉鎖される事態となっておりましたが、現時点では復旧をしています。今後も寒波の影響で一か月程度の遅延が起こりうる可能性があるため、現地の天候には注視が必要な状況となっています。
     また、ブッキングの枠数についても非常に限定的な状況となっており、日本向けに希望している枠数を確保できない状況も続いています。今後の回復の見通しも非常に立ち難い状況となっています。
     2-3月積のGRI(海上運賃一括値上げ)についても実施のアナウンスがされており、今後も運賃は堅調に推移する見通しです。
     今後の懸念としては、2022年7月1日まで延長した国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の交渉です。争点は、①港湾の自動化と②給与関係。業績が好調な船会社や港湾関係業者として②は対応ができる可能性があるものの、①は、現在の労働者にとって受け入れがたい内容となる可能性がある事から、交渉が難航する可能性を孕んでいます。
     このため、ストライキの発生懸念を鑑み、輸出入を行う各業者は、この期間に向けて在庫の積増しを行なう事が予想されており、夏頃までは確実に、物流の混乱が見通されています。その先についてもたまった荷物の荷動きの解消には時間がかかると見通されています。
  2. 豪州航路
     各船会社は、豪州航路においても北米航路同様となっており、トランジット港での混雑は相変わらず解消の目途が経たず、日本の各港への到着まで、以前よりさらに日数を要するようになっています。
     豪州国内の港湾の状況ですが、ストライキは落ち着いたものの、上述の通りオーストラリア東部で発生した大洪水の影響で、ブリスベン港が制限を受けています。豪州最大規模の都市である事から、輸入貨物も多く、また牛肉輸出の主要港である事から、大きな影響がでています。牧草コンテナ貨物の輸入に関しては、大きな遅延が見られない事から、ブリスベンの抜港を含めた対応を行っていると考えられ、今の所、本影響による大きな遅延は見られません。
     海上運賃は北米航路同様に値上げが続いています。加えて、船会社からのLSS(低硫黄燃料サーチャージ)の追徴も再開されており、さらなる値上げを産む状況となっています。

以上

令和4年3月17日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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