海外粗飼料情勢
輸入粗飼料情勢 / 令和7年7月号
1. 米国産アルファルファヘイ
-
- カリフォルニア州南部インペリアルバレー
- 7月に入り40℃を超える日々が続いています。圃場では4番刈りが行われており、品質は#1グレードが多く、CP19%、RFV150程度となっています。俗に言うサマーヘイは、更に品質が低下していきますが、それらは、7月後半から8月に掛けて収穫される見込みです。一方で、作付面積の50%以上がDIPプログラムに登録されているため、今後、45日間か60日間の節水が行われ、その期間は灌漑が行われないため、収穫も減少する見込みです。
需要面では、サウジアラビアがスタンダード品も含めて購買を進めていますが、中国含むその他国からの引き合いは低調です。
2025年6月12日のIIDの発表によれば、灌漑面積は145,699エーカー、昨年同期は144,432エーカー、先月は145,743エーカーでした。

-
- ワシントン州コロンビア盆地
- 6月末までに1番刈りのほとんどは収穫を終えました。80%以上が雨あたり品となっています。2番刈りも順調に進んでおり、7月上旬で70%程度が刈り取り開始されています。大きな降雨は無く、見た目も鮮やかな緑色のアルファが順次収穫されています。
中国からの需要低迷、チモシー集荷の最盛期であることから、当地でのアルファルファの取引は静かな状況です。昨年に比べ作付面積は25%程度減少しており、今後の供給量は絞られてくる見込みです。

2. 米国産チモシーヘイ
(1)米国コロンビア盆地
例年より若干早い5月末から収穫が始まり、6月は晴天が続き、順調に収穫が進みました。当地全体で気温が上昇したため、コロンビア盆地の北部から南部に至るまで一斉に刈り取りが開始され、収穫は終盤です。全体的にプレミアム品が多いですが、旧穀よりも若干茶葉が目立つ印象です。一方、#1グレードの発生が少なく、やや上級品に偏った品質分布になることが予想されます。

(2)エレンズバーグ
コロンビア盆地より1週間ほど遅れて6月から本格的に収穫が開始されました。晴天に恵まれて、雨当たりの無い貨物が多く収穫されていますが、例年よりも雑草の混入が多い傾向にあります。
(3)アイダホ(天水地域)
乾燥傾向にあり、気温が上昇したことから例年よりも早めに刈り取りが開始されています。現在収穫されている貨物は若刈りが多いことから、柔らかく、見た目もきれいな貨物が多い印象です。一方で、単収が下がっており、全体的な供給量は減少することが見込まれます。
(4)カナダ(アルバータ州南部)
例年よりも乾燥傾向にありましたが、6月の下旬にまとまった降雨があり、灌漑地域でも最後の生育へ好材料となりました。作付面積については昨年度から大きな変化は見られなく、1番刈りは7月に入り開始されています。今後の天候が安定していれば、7月中には、全体的な収穫が終わる見込みです。灌漑エリアでは、2番刈りも行われる見込みで、通常1番刈りの60日後を目途に収穫が始まります。
(5)カナダ(アルバータ州中部)
6月前半までは乾燥傾向にありましたが、6月下旬の降雨によって、土壌水分は回復したようです。前半の干ばつ傾向を受けたチモシーは一定の高さまで生育していますが、降雨のおかげで後半に育ったチモシーは、その半分程度の高さまで生育しており、スタックの中に、長さや成長段階違うチモシーが混ざって収穫されることになりそうです。このまま天候が安定していれば、7月中旬以降に収穫が始まる見込みです。
ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。

3.米国産スーダングラス
1番刈りが進んでいます。7月上旬で75%程度が収穫されており、色目は緑色から若干の色抜け品が多く、中軸から太軸の貨物が収穫されていす。残りの収穫は7月中に終えることが見込まれています。今後、湿度が上昇してくるに伴い、色抜け品と茶葉の発生が見込まれます。2番刈りは全体の40%程度の面積で行わられるだろうと予想されており、主に太軸貨物が集荷されることが考えられます。
2025年7月1日のIIDの発表によれば、灌漑面積は25,049エーカー、昨年同期は14,577エーカー、先月は24,754エーカーでした。


4.米国産バミューダ
6月の後半から、種子とストローの収穫が進んでいます。米国内からのストロー需要は旺盛で、旧穀よりも$10-15/st高い価格で取引されています。種子生産後のヘイの収穫は8月中旬から9月上旬に掛けて行われる予定ですが、30%程度の圃場はDIPへ登録されているため、生産を中止する見込みです。多くのバミューダ生産者は、ヘイの集荷では無く、種子とストローの生産を行っていますが、一部の生産者はヘイの生産も行っています。
ヘイとしての刈り取り収穫が行われている圃場では、1番刈りと2番刈りが収穫されており、品質は良好です。
6月12日のIIDの発表によれば、灌漑面積は77,830エーカー、昨年同期は67,626エーカー、先月は77,416エーカーでした。


5. 米国産クレイングラス
圃場では2番刈りが行われており、3番刈りの多くは7月後半から8月上旬に始まる予定です。DIPプログラムにより、収穫は、少なくとも1回の刈り取り分は減少するだろうと見込まれています。1番刈りの品質については、例年よりも低下しているとの報告があり、昨年から始まったDIPにより休眠した圃場で、クレインに十分な水分が補給されていなかったことから、1番刈りへは雑草の混入率が高い傾向にあり、プレミアムグレードの収穫が少なかったようです。
1番刈り後にそれら雑草よりもクレインの方が強くなり枯れたため、2番刈りでは雑草の混入率は下がったようですが、#1グレードの貨物が多く集荷されました。
6月12日のIIDの発表によれば、灌漑面積は23,059エーカー、昨年同期は21,241エーカー、先月は22,857エーカーでした。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー
主要産地のウィラメットバレーでは、6月前半に暑く、雨が無かったため、予想よりも背丈の成長は進みませんでした。6月最終週に雨が降りましたが、茎の成長を伸ばすのにはタイミングが遅く、あまり寄与しませんでした。よって、単収は例年を下回ることが予想されていますが、収穫が終わるまで正確な状況は分かりません。
ウィラメットバレー中部では、7月に入りフェスクの刈り取りが開始され、7月2週目からコンバインおよびベーリングが開始される見込みです。
ペレニアルライグラスは、7月2週目から刈り取りが始まり、翌週からコンバイン後にベーリングが開始されます。輸出事業者は、集荷後にOSUでのエンドファイトテストの結果待ちのため、約2週間程度必要としますので、8月以降に新穀出荷が始まることが想定されます。

7. 豪州産品目
-
- オーツヘイ
- 24年産について、各州ともにベーリングが完了しました。
西豪州は、生育期間に好天に恵まれ当初は上級品の発生が中心になる見込みでしたが、収穫後ベーリングを待つ段階で広範囲に降雨があり、中級品の発生が中心となっています。
南豪州は生育期に干ばつに見舞われ、生産量は平年の30%程度と大幅に減少しました。出来栄えは、典型的な干ばつ型(細軸、茶葉の発生、高分析値)となる予想です。
ビクトリア州は例年よりも降雨が少なかったものの、おおむね順調に生育しました。上~中級品の発生が中心となる見通しです。国内畜産向け需要は依然として旺盛で、原料ヘイ価格は堅調に推移しています。
25年産新穀について、作付けが終盤を迎えています。
西豪州は、平年程度の土壌水分を保持していると見られています。作付は概ね順調に進みました。
南豪州は、昨年からの干ばつ状態が継続しています。6月に入り降雨が観測されたものの、作柄は今後2か月程度の降水量次第と見られています。
ビクトリア州は、6月に降雨が観測されましたが、土壌水分は平年以下の状態となっています。

-
- 小麦ヘイ/ストロー
- 24年産について、各州12月から収穫が始まりました。
西豪州は、12月の降雨により刈り取りが進まなかった地域が散見され、ベーリングが遅延しました。刈り取り後の雨当たりは少なく、上級品の発生が中心になっています。一方で、次年度産の肥料代を節約するために、ストローを圃場にすき込む農家が増加しています。結果として、ストローの相場は高止まりしています。
南豪州は、干ばつの影響から発生量が激減しており、価格競争力はありません。
ビクトリア州は生育期の降雨が例年よりも少なかったものの、輸出に適したストローが収穫できています。一方で畜産向け内需が強く、サプライヤーは生産者からの集荷に苦戦しています。
25年産新穀について、播種が概ね終了しました。
8. 海上運賃情勢
-
- 北米航路
- 5月の米中の関税合意により、中国発米国向けの輸送需要は急増し、北米向けの運賃は高騰しました。船会社は需要の高まりを受けて、4月以降に減らした船腹供給量を戻しましたが、中国発の需要は長続きしなかったたことで需給が緩和し、北米向けの運賃は下落しています。米国西岸向けは5月の米中関税合意前の水準を割り込み、東岸向けも下落圧力が強まっています。主要船社は7月に予定していたGRIやピークシーズンサーチャージの徴収を実施しないようです。
米国による相互関税の一時停止は7/9に期限切れとなる予定でしたが、この措置は8/1まで延長されると発表されました。中国に対する同様の一時停止は8/14に期限切れとなる予定です。今後の関税交渉によって荷動きや需給に変化が現れるとみられます。
-
- 豪州航路
- 豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。アジアから欧州向けの輸出の増加を背景に、中国と東南アジアの間で物流が活発化していることから、アジア域内での貨物量は増加しています。一部貨物では、ハブ港におけるスケジュール乱れにより本邦への到着遅延が発生しています。
以上
令和7年7月29日
全国農業協同組合連合会(JA全農)
バックナンバー(最新3カ月分)はこちら
-
2025.07.30
2025年 7月29日 輸入粗飼料情勢 / 令和7年7月号
-
2025.06.26
2025年 6月25日 輸入粗飼料情勢 / 令和7年6月号
-
2025.05.26
2025年 5月26日 輸入粗飼料情勢 / 令和7年5月号