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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和6年12月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     本年の途中からDIPプログラムが開始され、当地域における牧草生産について、ギアが変わった印象です。価格相場が上がらない作物を育てるよりも、圃場、機械を休ませて補助金をもらう方が良いと判断した生産者は多いです。DIPプログラムとは、多年作物の使用する灌漑水について、一定期間(45ー60日)の使用停止を行うことにより、エーカーフット当たりに対価が支払われるものです。なお、圃場面積が 20 エーカー未満の場合は DIP プログラムに参加できません。
     アルファルファの需要は回復を見せており、米国内乳価の若干の上昇を受けて、需要が回復してきているようですが、導入牛および後継牛の価格が高く、飼養頭数の拡大まで繋がっていないため、需要の増加は制限されているようです。
     11月12日のIIDの発表によれば、灌漑面積は149,964エーカー、昨年同期は145,411エーカー、先月は139,302エーカーでした。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     収穫作業は終了しています。11月下旬より雨が増えてきており、12月に入り寒波の影響で、PNW全般で、朝方は氷点下になっています。
     11月までの需要面については、過去5年と比べて、依然として低迷している状況にありましたが、堅調に貨物は動いています。引き続き米国内の酪農家および肥育農家からの短期的な購買が進められており、4ー6か月分程度の需要までの購買に抑えられているようです。
     現在の価格水準が生産者へは魅力的では無いため、当地ではアルファルファの作付面積が減少しており、20ー30%減少する可能性があります。 これらの作付面積は、より収益性の高い他の作物へと移行しており、現在は、チモシーへの移行が多いようです。

2. 米国産チモシーヘイ

(1)米国コロンビア盆地
 全ての収穫が終わりました。産地に余剰在庫は無く、1番刈りの購買は終わり、2番刈りが若干残っている程度です。例年よりも数週間早めに刈り取りを行ったため、全体的に茶葉が少ない貨物が多い印象です。今年は馬糧用および米国国内需要が好調で、3タイでの収穫が多くみられました。
 生産者がアルファルファより収益性の高い作物を探しているため、今秋はアルファからチモシーの作付移行が進んでいます。よって、作付面積は増加する見込みですが、来春の作付開始前に変更される可能性もあるため、まだ未確定な要素が多いです。

(2)カナダ(アルバータ州南部)
 今年度の収穫は終わりました。5、6月の春先に干ばつに見舞われ、例年の灌漑用水の50%が使用許可されるアナウンスがあり、その後、降雨があったものの、60%に緩和されたのみでした。1番刈りは主に上級品(65~70%)が収穫され、中低級品が30%程度収穫されました。国内からの需要は依然として堅調に推移しています。

(3)カナダ(アルバータ州中部)
 収穫の品質と収量は良好で、8月初旬に終了しました。主に上級品が収穫されました。収量は例年よりやや少なく、国内需要は堅調に推移しています。
 ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。

3.米国産スーダングラス

 2024年度産スーダンの収穫は終了しました。作付け面積が減少し、2番刈りを行わない圃場もあったため、供給力は大幅に減少しています。日本からのスーダンへの需要は8月以降増加しており、安定しているようです。
 11月12日のIIDの発表によれば、灌漑面積は1,233エーカー、昨年同期は1,399エーカー、先月は3,947エーカーでした。

4.米国産バミューダ

 種子を収穫した圃場、DIPを適用した圃場それぞれが、今年の収穫を終えました。多くの圃場はこれから冬に向けて休眠に入ります。
 バミューダヘイの需要については、大きな変化は無いですが、バミューダストローについては、一部の輸出事業者が国内へ販売しているようで、荷動きが活発化しているようです。
 3タイの小売り需要は堅調で、テキサス東部を中心に米国内へ販売されています。
 11月12日のIIDの発表によれば、灌漑面積は78,087エーカー、昨年同期は69,727 エーカー、先月は78,842エーカーでした。

5. 米国産クレイングラス

 日本および韓国向けの需要は低迷しており、現時点での需要見通しでは、全体の供給量に問題はありません。冬季は、休眠時期ともなるため、事前にクリッピングと呼ばれる表面をきれいにするための刈り取りを行った圃場は来年に向けて休眠に入っています。通常、クレイングラスの1番刈りは、3月下旬か4月上旬に始まります。
 11月12日の IIDの発表によれば、灌漑面積は22,834エーカー、昨年同期は21,609エーカー、先月は22,624エーカーでした。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 2024 年の収穫は7月8日頃に始まり、8月中旬に終了しました。天候は概ね良好で、数回のにわか雨がありましたが、品質に大きな影響はありませんでした。現在、経済が鈍化しており、住宅や商業施設向けを含めた牧草種子の在庫は重く、キャリーオーバーが多いため、種苗会社から生産者へ生産面積は下方修正される見込みです。結果的に、次年度以降、ストローの生産量は少なくなる可能性が高いです。需要側では、今のところ日本と韓国が順調に出荷されています。

7. 豪州産品目

  • オーツヘイ
     各州ともにベーリングが完了しました。
     西豪州は、生育期間に好天に恵まれ当初は上級品の発生が中心になる見込みでしたが、収穫後ベーリングを待つ段階で広範囲に降雨があり、中級品の発生がメインになっています。
     南豪州は降雨の少なさが以前より指摘されていましたが、生産量は平年の30%程度と大幅に減少する見込みです。出来栄えは典型的な干ばつ型(細軸、茶葉の発生、高分析値)となる予想です。
     ビクトリア州はおおむね順調に収穫が終わり、上~中級品の発生がメインとなる見通しです。国内向け需要が強く、足元の原料ヘイ価格は堅調に推移しています。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     現行の23年産について、各産地の在庫は払底しました。
     24年産新穀について、収穫時期が近づいています。各州の出来栄えは、オーツヘイと同じ状況で、西豪州とビクトリア州では生育は順調である一方南豪州では雨が少なく収量が落ち込む見通しです。

8. 海上運賃情勢

  1. 北米航路
     日本海事センターによる太平洋東回り航路(アジアから北米への出荷)のコンテナ貨物量は2024年1月~9月までの累計で15,784千TEU(昨年同時期対比116.5%)でした。また、2024年9月単月では1,959千TEUとなっており、直近5年で最も大きな数量となっています。米国トランプ新大統領による輸入貨物に対する関税引き上げの懸念から前倒しで貨物量が一時的に増加しているとみられます。一方、太平洋西回り航路(北米からアジアへの出荷)のコンテナ貨物量は昨年並みで推移しており、東回りと西回り航路での貨物量格差が大きくなっています。
     カナダ・バンクーバー港における労使交渉について、カナダ連邦政府の命令により、11月14日の午後より港湾業務が再開されました。しかしながら、労使協定が完全に決着してはおらず、港湾設備の自動化が主な争議として未だに協議は続いていますので、まだ注視が必要です。港の機能は再開されていますが、多くの船舶と貨物の到着が集中し、同州港湾全域での労働力で捌ききれず本邦へ到着する貨物にも遅延が発生してきます。遅延の影響は、主にバンクーバー港とシアトル/タコマ港をルートにする本船貨物に影響があり、平常に戻るまでまだ時間が必要とみられます。
  2. 豪州航路
     北米航路で記載しました通り、アジアから米国への輸出量は堅調である影響を受け、豪州へ寄港する本船と輸出用空コンテナの不足が心配されます。また、豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。これらハブ港におけるスケジュールの乱れによる一部の貨物で本邦への到着遅延が発生しています。

以上

令和6年12月23日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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