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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和7年12月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     今年の収穫は終盤を迎えていましたが、11月後半にまとまった雨が続き、収穫のペースは大きく遅れました。収穫を終えた圃場は、暫くはそのままに維持され、年明け以降のクリッピング後に、灌漑を再開する見込みです。
     当地のアジア向けの取引状況は依然として低調で、中東からの引き合いのみが続いている様子です。新穀の収穫が開始され、輸出可能な品質となれば、中東向けに出荷されると見込まれています。
     2025年11月11日のIIDの発表によれば、灌漑面積は154,926エーカー、昨年同期は149,964エーカー、先月は138,083エーカーでした。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     2025産アルファルファの収穫は終了しています。圃場は休眠状態へ入っています。今年は1番刈りの大宗が雨あたり品となり、2番刈り3番刈りは順調に収穫された印象です。3番刈り後半から4番刈りまでは、山火事の影響や、散発的な降雨があり、品質にばらつきに見られました。今年の貨物の成分分析表を確認する限り、今年は例年よりも高成分貨物が少なく、単収を狙ったないし、収穫適期を逃した貨物が多いです。収穫を終えた圃場では、取引価格に回復が見込まれないため、他作物への転作が進んでおり、ここ2年間で、当地での作付面積は40%以上減少しており、次年度はより生産量が減少する見込みです。

2. 米国産チモシーヘイ

(1)米国コロンビア盆地
 1番刈りについては、ほとんどの貨物が降雨被害なしで収穫を終えました。全体的にプレミアム品が多く、低級品の発生が少なかったです。#1グレードの発生が少ないため、生産量の半分以上がプレミアム品として流通すると見込まれます。2番刈りは、1番刈りの20%程度の面積で収穫が行われ、散発的な降雨や山火事の影響で、上級品から低級品までの貨物が幅広く収穫されました。
 作付面積は、昨年よりも20%以上が増加したと見られていますが、旺盛な需要から市場取引価格は堅調に推移しています。

(2)エレンズバーグ
 晴天に恵まれて、雨当たりの無い貨物が多く収穫されましたが、例年よりも雑草の混入が多い傾向にあります。2番刈りの良品は少なく、茶葉の混入がある貨物が多い模様です。
 当地に拠点を置くAnderson Hay & Grain Co.(アンダーソン)が、連邦破産法第11章(Chapter 11)を申請しました。中国を中心とする輸出需要の低下、米国内のコスト上昇、粗飼料市場の不安定さによる経営不振によるものだと報じられています。同社は、長年にわたり米国粗飼料業界を牽引してきた企業でありますが、資金繰りの悪化からChapter 11により事業再編を図り、債権者との調整を進める方針です。同社における本年度の貨物は集荷され、既存の取引は継続される見込みですが、業界としての厳しさを物語る報道となりました。

(3)アイダホ(天水地域)
 例年よりも1-2週間早めに刈り取りが開始されました。収穫された貨物は若刈りが多いことから、柔らかく、見た目もきれいな貨物が多いです。一方で、十分に背丈が伸びなかったことにより単収が下がっており、供給可能な量は40%程度減少と見込まれています。

(4)カナダ(アルバータ州南部)灌漑地域
 1番刈りの収穫は半数以上が刈り取り適期を逃したか、雨あたり品となっています。そのため、良品の供給力は限定的です。2番刈りの生産も天候の影響で、生産数量は限定的です。

(5)カナダ(アルバータ州中部)天水地域
 2025年の収穫は完了しています。収穫期となる7月8月に降雨が連続し、充分な乾燥期間が確保できなかったため、水分の高いまま収穫された貨物は国内向けに、収穫適期を過ぎた貨物は低級品として収穫が行われました。今年は、中級品以下の貨物が多くなっています。
 ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。

3.米国産スーダングラス

 今年度産の収穫は完了しました。これまでの収穫情報をまとめると、60%程度が中軸から細軸品で、40%が太軸品。70%程度が緑色の貨物、30%が色抜け傾向となっています。
 2025年11月11日のIIDの発表によれば、灌漑面積は6,423エーカー、昨年同期は1,233エーカー、先月は10,613エーカーでした。

4.米国産バミューダ

 圃場における収穫は、終了しました。ヘイは、台湾を中心に出荷が進み、ストローは国内向けと輸出用の需要が堅調に推移しています。
 11月11日のIIDの発表によれば、灌漑面積は87,841エーカー、昨年同期は78,087エーカー、先月は88,752エーカーでした。

5. 米国産クレイングラス

 収穫はほぼ終わりました。今年は、5番刈りまで行った生産者が多かったです。不安定な天候の影響で、幅広い品質の貨物が収穫されました。11月11日のIIDの発表によれば、灌漑面積は25,021エーカー、昨年同期は22,834エーカー、先月は24,595エーカーでした。

 インペリアルバレーにおけるDIPプログラムは、コロラド川の水資源の保全を目的に2026年までの3年間で最大70万エーカーフィートの節水を目指しており、2024年から試験運用が開始され17万エーカーフィートを節水しました。

6. 米国産ライグラス、フェスクストロー

 主要産地のウィラメットバレーの収穫は完了しています。降雨被害なく、順調に収穫され、品質は良好でしたが、収穫前の5、6月の成長期間に十分な降雨量が無く、背丈が伸び悩んだことから、単収の減少が顕著で、フェスクとペレニアルライグラスは昨年より20-30%の減少、アニュアルライグラスは15%程度が減少したと見られます。
 種子会社での在庫率は高水準を維持しており、宅地向け芝生種子の売れ行きが低調なため、次年度も作付面積は減収することが予想されています。
 韓国産わらの不作、同国のスペイン産ストローの禁輸措置から、当地におけるストロー需要は旺盛で、在庫は非常にタイトです。

7. 豪州産品目

  • オーツヘイ
     24年産について、上級品~下級品まで在庫は払底しています。
     各州における25年産新穀は収穫およびベーリング作業が概ね終了しました。
     西豪州の発生グレードは、10月中下旬にかけて少量の降雨があったことから中級品中心ではあるものの、上級品から下級品までバランスよく発生すると見られています。単収は平年を少し上回ると見られています。
     南豪州では、収穫からベーリングまでの期間において多量の降雨が観測されたことで、発生グレードは中級~下級品が殆どになる予想です。
     ビクトリア州では11月の降雨が予報よりも多く、多くの圃場が雨に当たったことから、中級~下級の発生が中心となる見通しです。播種の遅れと8月~9月の気温の低さから、単収は平年を下回る予想です。
  • 小麦ヘイ/ストロー
     24年産について、在庫はほぼ払底しています。
     25年産新穀小麦ストローは、各地で収穫作業が始まりました。西豪州から始まり、今後1月にかけて南豪州~ビクトリア州でも収穫が進んでいく見通しです。

8. 海上運賃情勢

  1. 北米航路
     米国の関税政策をにらんだ前倒し出荷が一巡し、北米向けの輸送需要は落ち込んでいます。新造船投入による供給像の影響もあって需給は緩んでおり、コンテナ船社は需給調整を続けています。小売業者は十分な在庫を抱えており、年明け以降も輸送需要は弱いまま推移するとみられます。11月には米国の中国への追加関税の一部見直しや中国関連船への入港料徴収停止など、荷動きへのプラス材料ありましたが、短期的には需要の押し上げには繋がっていません。アジア向けでは大きな動きはありませんが、ポートランド港において深刻な空コンテナ不足が発生しており、スケジュールの乱れが危惧されます。
  2. 豪州航路
     豪州貨物の多くはシンガポール港等のハブ港を経由し、本邦へ輸入されます。一部貨物では、ハブ港におけるスケジュール乱れにより本邦への到着遅延が発生しています。
  3. 欧州航路
     一部の船会社でスエズ運河航行復帰の動きがみられます。これが本格化すればサプライチェーンの安定化に繋がりますが、一時的な港湾の混雑が引き起こされる可能性があります。ただし、各船会社は紅海情勢の見極めを優先するため、本格的な復帰にはまだ時間がかかるとみられます。

以上

令和7年12月23日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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